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中小企業の事業承継における後継者問題の現状と解決策

2020/05/22
更新日:2021/02/26

はじめに

中小企業の経営者の高齢化が進み、後継者不在という問題が顕在化してきています。事業承継における後継者問題の現状はどうなっているのか、そして問題を解決していくためにはどんな手を打つ必要があるのでしょうか。事業承継、M&Aの専門家であるアルファ財産コンサルティング代表の田中 一さんに解説していただきました。


1.中小企業の現状と抱えている課題

思い悩む経営者
日本国内では人口減少、少子高齢化という大きな流れがあります。人口減少の影響は産業そのものだけでなく、企業の運営にも影響を及ぼしており、特に人材不足と後継者不足は慢性的な問題となっています。

(1)人手不足にどう対応していくべきか?

長期的な流れで見たときには労働人口は確実に減っているので、中小企業に限らず、多くの企業にとって人材不足は大きな問題です。社員が採用できない、定着しないなど難問は山積みです。問題解決のためにはITの活用を始めとして、少ない人数で生産性を高める仕組みを作らなければなりません。また、個人の能力をいかに上げていくかを考える必要もあります。

経営者からよく相談されることのひとつは「売上は順調で需要もあるのだが、仕事を回せる人がいなくて売上を諦めなければいけない。どうしたらいいのだろうか?」ということです。こういった相談はここ10数年、確実に増え続けています。作業の効率化を進めていくためには、時間も資金も必要です。特に、中小企業にとっては簡単には解決できない問題なのです。

(2)経営者の高齢化が招く「2025年問題」

最近、よく使われているのが「2025年問題」というワードです。中小企業庁の調査によってクローズアップされていますが、2025年になると中小企業の経営者の3分の2が70歳に達する、という予測が立てられています。現在、個人事業主を含む中小企業の数が380万社あり、その6割を超える約245万社で経営者が70歳以上に達する見込みです。
もちろん個人差はありますが、一般的に経営者が交代する上限の年齢は70歳といわれています。その段階までに次の経営者に橋渡しを完了しないと、経営者自身が年を取るのと同じように、会社も老化して活力がなくなっていく傾向があるからです。

(3)後継者不足は日本経済全体の大きな課題

2025年に経営者が70歳以上に達する約245万の半数の約127万社で後継者不在、もしくは後継者が決定していないという状況です。このまま世代交代しないまま事業を継続していくと、ゆくゆくは廃業せざるを得ないという可能性が出てきます。
経済産業省の推計によると、127万社が廃業となった場合には約22兆円のGDP損失という試算が出されています。雇用者数に換算すると、約650万人の雇用が失われる可能性があるのです。中小企業にとってのみならず、日本経済全体にとっても大きな問題となっています。政府も事業承継を促進させるような手立てを講じ始めていますが、問題解決に向けてスタートラインに立ったところというのが現状です。

2.中小企業はなぜ後継者不足なのか?

そもそも中小企業が抱えている後継者不足という問題はなぜ生まれたのでしょうか?くわしく見ていきましょう。

(1)後継者不足の要因とは?

中小企業で後継者が不足している、もしくは後継者が決まらない要因はいくつかあります。

20~30年前までは親子または親族で承継するのが当たり前のことで、8割方は子供が承継する、あるいは身内の血縁者が承継していたのですが、少子化や核家族化が進み、以前ほど血縁関係の結びつきも強いものではなくなってきたため、「親族内承継」は当たり前のものではなくなってきました。親の跡を継ぐのではなく、自分の好きな道を行くという選択をするケースが増えてきたのです。

「親族外承継」として従業員が引き継ぐケースもありますが、従業員の中に適任者がいない、もしくは資金が不足して引き継げないといった状況も多々あります。

また、事業の将来性に不安を感じていて、後継者に引き継ぐことをためらっている経営者もたくさんいます。

(2)黒字にもかかわらず廃業を選ぶケースも

統計データをみると、約127万社の半数は経常黒字であるにもかかわらず後継者がいないという状況で、このままでは廃業に追い込まれる可能性があります。

基本的に黒字ならば需要があり、必要とされているわけですから、本来は残していかなければならない会社です。
赤字ならば、「これ以上続けられないので、廃業します」と言われても納得できますが、黒字企業が廃業しなければいけない状況に追い込まれているところに問題の深刻さがあります。

(3)後継者不足は東京よりも地方でより深刻

私は、青森で生まれて18歳まで育ったのですが、帰省すると町全体に活気がないと感じます。地方創生という政策スローガンが掲げられていますが、現状はほど遠い状況にあり、後継者問題も地方ではより深刻です。
東京などの大都市では後継者不足という問題をサポートする専門家がいて、専門の団体もたくさんありますが、地方ではそうしたサポート体制があまり整っていません。
もっと早めに手を打っておけば解決できたはずなのに、手遅れになってしまったというケースも多く見受けられます。

3.中小企業の後継者不足問題の解決策とは?

新芽を守る手

中小企業の後継者不足はどうやって解消していけば良いのでしょうか。解決策を探っていきましょう。

(1)親族承継には意識的な経営者教育が必要

後継者候補になりうる家族や血縁者がいる場合は、早い段階から積極的に経営者になるための教育を施す必要があります。次の経営者を育てるのは簡単ではありません。育成する上での明確なビジョンと計画、加えて後継者を育てる意志が必要です。

創業社長は、自分で社長を日々体験しながら会社とともに大きくなり、社長らしくなってきました。日々自分で社長としての行動を実践しながら、社長として成長してきたのです。
ところが、後継者はすでに箱(会社)があって、その中に入っていかなければなりません。その時点で後継者に経営者たるべき資質があるのか、その力があるのかが問われます。

中小企業で経営者の育成が計画的に行われているケースはきわめて少ないといえます。親の会社に子供が入るのはよくあることです。しかし、意識的な教育が行われているかどうかは疑問が残ります。後継者に現場の仕事をさせる段階で終わっているケースが目立つからです。箱(会社)はあるけれど、後継者とサイズがミスマッチになっていて、大きすぎるジャケットを着てブカブカといったことにもなりかねません。

経営者として必要なことを短期間で習得するのは難しいので、創業社長は早い段階から経営者を育てる目標を掲げて実行しなければなりません。経営者育成の仕組み作りも必要です。

(2)理論も経験も必要

創業社長は、自分の体験を通じて身に付けてきたことを体系化し、後継者に引き継いでいく必要があります。何事にもいえることですが、実践だけでも理論だけでも駄目で、その両輪が必要です。

創業社長は、トライして駄目だったらまた違うトライをして、という試行錯誤を繰り返して自らの体験で得てきたものがたくさんあるはずです。独学で社長として必要なことを身に付けてきているのです。しかし、もしも事前に経営理論を勉強していたら、もっと早く目標を達成できたかもしれないということがたくさんあるに違いありません。

後継者に自身の体験を体系化してインプットすることは大きなプラスとなるはずです。ただ会社を継げばいい、株を継げばいいというのではなく、創業社長の体験もともに引き継いでいくことは、きっと将来の会社経営の大きな武器になります。

もちろん、創業社長と同じことをしなさいということではありません。後継者が自分なりに咀嚼して吸収し、次の経営に活用していけばいいのです。

(3)従業員の育成が組織をより強靱なものにする

大企業と違って、中小企業は人材育成する教育研修の仕組みがないケースがほとんどです。圧倒的に多いのは現場で学ぶOJT(On-the-Job Training=職場内教育、企業内教育)というやり方です。もちろん、現場で学べることもたくさんあるのですが、OJTだけでは不十分な部分もあります。
特に人材不足の状況においては、一人ひとりの能力を上げていく必要があるので、中小企業も教育研修の仕組みを確立すべきです。

事業承継において経営者を承継するのと同時に、組織もスムーズに承継していく必要があります。社長が交代した瞬間に従業員も離れてしまっては、会社の運営に支障をきたしてしまいます。社長の交代は無事に済んだけれど、会社がバラバラになってしまっては元も子もありません。

人材不足との兼ね合いもありますし、会社という組織を強くしていくことも考える必要があります。次世代の経営者の育成とともに、従業員の人材育成も重要です。

4.経営者育成のための5つの方法

経営者育成セミナー

M&A・事業承継を検討している方へ

当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。

経営者を育成するためには色々なやり方があります。代表的な方法を5つ紹介していきましょう。

(1)ジョブ・ローテーションで複数の部門を経験

現場を知らない社長ほど危ないものはありません。複数の現場を実際に体験できるという点で、ジョブ・ローテーション(一定の期間、複数の部門や業務にローテーションで携わっていく人材研修の手法のひとつ)は効果的な育成方法といえます。幅広い体験と多様な視点を獲得できるメリットがあるからです。

経営者の中にはジョブ・ローテーションをやることで、教育をしているという認識を持っている方も多いのですが、現場を知ることはあくまでも経営の中のひとつの要素にすぎません。経営者としてどう会社を運営するのかという視点は別のやり方で養っていく必要があることに留意しておきましょう。

(2)責任ある役職によって成功体験を

これをやっておけば後継者が社長になっても大丈夫、という基準やタイミングがあるわけではありませんが、成功体験を重ねることは会社を運営する上で重要な要素になります。

管理職などの責任のある立場に就いて、小さな成功体験を重ねていくこと、すなわちスモール・ステップの積み重ねが後継者を成長させます。一般的な会社における昇進の仕方とも共通しますが、役職が上がるほどに権限が大きくなり、責任も重くなり、判断力や決断力が養われます。成功体験を積んで、立場に見合った自信を持つことが大切です。

(3)他社で修行してより大きな視野を獲得

創業社長の後継者候補である子どもがいきなり自社に入るのではなく、まず他社で修行することのプラスは大きいです。経営者の方にもよく「自社のお客様のお客様をよく知っていますか?」と質問することがあります。どれだけ大きな視野を持てるかが、経営者にとってとても重要だからです。
目配りする範囲が自社と取引先のことだけになると近視眼的になり、目先のことしか見えなくなる危険性があります。例えば、経営している会社が下請企業だった場合、その取引先の企業の商品やサービスを買っている「お客さま」のことを理解することは、下請企業としての自分の会社のあり方を考える上でも重要なポイントになります。

後継者が取引先や関連会社などに入社して修行を積むことで、自社にいるだけでは見えなかったことが見えるようになり、視野が広がります。外から自分の会社を俯瞰して見る目を養えるという意味でも大きな効果が期待できます。

(4)セミナーを活用して人脈作り

経営塾、後継者塾などのセミナーに参加することで経営理論を学べるメリットもあるのですが、学びながら人脈を作ることができるのも大きなメリットです。
セミナー参加者は同じ業種だけではないので、他業種や異業種の方と交流を深めることができます。さらに後継者同士であれば、同じ立場であるがゆえの悩みも共有できます。
同じ業種の中にいると相談しにくいこと、話しにくいことでも、他業種や異業種ならば、しがらみなく同じ後継者同士で率直に話すことができます。そうした相手の存在は貴重です。

後継者だからこその悩みはあるはずです。すでにできあがった会社の中に入っていって事業を引き継ぐわけで、必ずしも自分が思い描いた経営ができるとは限りません。これまでのスタイルを守りつつ、独自色を出していくのは簡単なことではないですし、当然、前社長と比較されることも出てきます。そんなときに同じ立場で同じ悩みを共有できる仲間の存在は大きな助けになるはずです。

(5)新規事業で管理と経営を習得

新規事業の立ち上げに関わることで、創業するのに近い体験が可能になります。しかも会社の設立と違って、新規事業であれば、仮に失敗したとしてもダメージはそれ程大きくなく、本体でフォローすることもできます。成功体験と同様に、ときには失敗体験もかけがえのないものになるはずです。新規事業で成功した場合には後継者としての独自色を打ち出す第一歩になります。

5.後継者がいない場合のM&Aという選択肢

手から手へ渡されるバトン
後継者が不在で、これから育てるべき人材もいないという場合の選択肢として考えられるのは外部への事業承継、つまりM&Aです。

(1)M&Aへのハードルは下がっている

後継者がいない場合、会社ごと引き継いでもらうM&Aという選択肢がクローズアップされます。かつては中小企業の経営者の中にはM&Aに対する抵抗感が根強くあったのですが、時代の変化ととともに、マイナスのイメージは払拭され、ひとつの有効な選択肢として認知されるようになってきました。

M&Aをサポートする組織も増え、仕組みもできてかなりハードルが下がり、M&Aを活用する素地が整ってきたといえます。

(2)マッチングサイトを活用する上で必要なこと

かつてはマッチングサイトがなかったので、M&Aの相手先や外部から後継者を探すのもひと苦労だったのですが、今は新たなサービスが出てきて、後継者がいない会社とその会社を承継したい会社や経営をやりたい人とをつなげる仕組みができてきたことからM&Aが行いやすくなってきました。

ただし、単純にAとBを合わせればいいわけではありません。次の経営者を募集する側も、どんな会社や経営者が望ましいのか条件を明確にしなければならないですし、自分の会社がどういう組織なのか、運営はどうなっているのか、業績はどうなのかをはっきり示す必要があります。次の経営者の候補として名乗りでる側も自分はこんな能力があって、こんな経営ならできるということを明確にしておく必要があります。

6.廃業という選択肢

閉店の看板がかかった店
どうしても後継者が見つからず、M&Aもできないという場合の最後の選択肢となるのが廃業です。廃業も準備と決断が必要です。

(1)早い段階から検討し、決断することが重要

後継者が身内にも従業員にも外部にも見つからない場合には、廃業という選択肢を考える必要があります。

その場合、社長が引退するタイミングで会社をたたむことになるのですが、その時期の決定は簡単ではありません。従業員がいるからとついつい頑張りすぎてしまうケースが多々あります。本当はもっと早く引退したいのだけれど、あと1年あと1年と先延ばしして業績が悪化していくのは誰のためにもなりません。
もっと早く廃業していたら老後のための個人資産を残して引退できたはずなのに、頑張りすぎてしまったがために、個人破産してようやく会社をたためたというケースもあります。先送りするほどに打つ手が少なくなっていくので、廃業を決めた場合は早めに決断して早めに準備することが求められます。

(2)笑顔のままで廃業できる形作り

廃業を選択することは会社がなくなることなので、経営者にとって喜ばしいことではありません。ですが、悲観的に考えすぎる必要はありません。ひとつの選択肢として前向きに捉えて、行動することが求められます。
廃業のサポートをしてくれる組織や専門家も増えています。経営者はもちろん、家族、従業員など、みんなが笑顔のままでいられる廃業に着地する形作りが大切です。

7.まとめ

会社の業績を分析する社員

事業承継は、経営者が会社を経営する中で何回も経験するものではありません。創業者であれば、渡す側で1回経験するだけです。2代目3代目であっても、引き継ぐときに1回と、引き継がせるときに1回しかない経営判断なので難しいものになります。日々の経営とは違うものなので、専門家に任せた方が本業の経営にも集中できます。特に親族承継の場合は、家族・血縁であることが邪魔をして、客観的な判断ができなくなってしまうケースもあります。第三者が入って場をコントロールすることが必要な場合もあります。

M&Aを行う場合も専門家に任せることをおすすめします。経営者にとってはM&Aが目的ではなく、M&Aによって会社がよい形で存続していくことが目的なので、M&A後にどういう経営をしてほしいのか、先々のビジョンを相手と共有することが大切です。

事業承継であれ、M&Aであれ、体系化されたやり方があり、その道で習熟している専門家がいます。公認会計士、税理士、弁護士などの専門家やサポートする団体があるので、しっかり情報を収集して任せるべきとこるは任せることが大事です。

話者紹介

田中一さん

田中 一(たなか はじめ)
アルファ財産コンサルティング株式会社

国税専門官として勤務後、現EY税理士法人で事業承継、M&Aコンサルティングに従事。現在は、アルファ財産コンサルティング株式会社、サンブリッジコンサルティング株式会社、税理士法人タックスウェイズ代表として、経営者と後継者が経営理念を共有し、お金を生み出す力のある事業のシームレスな承継の実現に注力。
資格:税理士、CFP(R)、宅地建物取引士

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