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LPガス販売業界におけるM&Aの注意点と成功のポイント

2020/06/11
更新日:2021/06/01

はじめに

電力販売の自由化や都市ガス販売の自由化など、日本のエネルギー業界を取り巻く環境は、近年大きく変化しています。LPガス販売は、元々自由化されている業界でしたが、都市ガス販売が自由化されたことやオール電化住宅の普及などで、市場全体は縮小傾向にあります。

こうした中、LPガス販売業界では、生き残りをかけてM&Aが積極的に行われています。LPガス販売業界に詳しい税理士で中小企業診断士の落合和雄さんに、LPガス販売業界の業界動向、M&A事情を伺いました。


1.LPガス販売業界の業界動向

ガス点検のイメージ
まずは、LPガス販売業界全体の業界動向をお話しましょう。

(1)LPガス業界の需要・供給が減少している

日本LPガス協会が公開している需給情報によると、LPガスの国内需要・供給は、1990年代あたりをピークに年々減少しています。たとえば、1992年度のLPガスの国内需要は1962.3万トンでしたが、2019年度には1393,1万トンになっており、約30%減少しているのです。こうした背景には日本の人口が減少傾向にあり、市場が縮小していることがあると考えられます。

(2)LPガス販売事業者数が減少している

経済産業省の調査によると、LPガス販売事業者数も年々減少しています。2015年度のLPガス販売事業者数は約1万9,500でしたが、2019年度には約1万7,600まで減少。5年間で約30%も事業者が減少しています。後述するようにLPガスの事業者の多くが小規模であり、高齢化による後継者不足の影響を受けていると考えられます。

(3)大手事業者と中小事業者で二極化している

LPガス販売業者は、古くから地域に根ざして事業を行ってきた中小の事業者と、全国的な規模の大手事業者に二極化しています。これまで、大手事業者が地方に進出するケースは稀でした。しかし、近年は地方のパイを奪うために、大手事業者の地方進出が目立ってきています。大手としては、業界全体の市場が縮小傾向にあるため、売上を上げるためには地方に出ざるを得ないという側面があることは確かです。

(4)価格競争が厳しさを増している

大手事業者が地方に進出すると何が起こるかといえば、市場の過当競争です。過当競争の市場では、価格競争が激しさを増すのが一般的です。価格の面では、中小の事業者は大手と比べるとどうしても厳しい戦いを強いられてしまいます。以前は十分儲かっていた中小の事業者でも、過当な価格競争の中で収益を上げることができなくなってしまった事業者は珍しくはありません。

(5)多角経営化が進んでいる

大手の進出で地方の中小事業者は、LPガス販売という本業だけでは収益を上げることが難しくなっています。そのため、LPガス販売のノウハウや顧客データなどを活かすことができる分野へ、多角経営化する事業者が増えています。

最も多い例が、LPガス販売と水の宅配や灯油の宅配をセットにする事業者です。そのほかにも、弁当の宅配サービス、エアコン交換、防犯カメラ設置といった分野が比較的参入しやすく、これまでのノウハウや顧客データが活かせる分野であるため、参入する事業者が多い傾向です。中には、内装工事を請け負うLPガス販売事業者も出てきています。

(6)事業を売却したい企業は多い

LPガス販売の本業だけでは収益を上げられない事業者が増えているため、廃業を視野に入れている事業者も少なくありません。そのため、買手から見れば、M&Aによる事業承継はしやすい業界といえるでしょう。

うまくM&Aによる買収をすることができれば、その事業者がそれまで培った地域のネットワークや販路、顧客データを効率的に手に入れることができます。労力をあまりかけないで、スピード感を持った事業エリアの拡大が可能なのです。

2.LPガス販売業におけるM&Aの動向

M&Aイメージ
ここでは、LPガス販売業界におけるM&Aの動向を詳しく見ていきましょう。この業界ならではのM&Aの傾向があります。特に買手になろうと考えている方は、チェックしてください。

(1)廃業が絡むM&Aが増えている

LPガス販売業界のM&Aに多いのが、廃業が絡んでいるケースです。経済産業省の「商務流通保安グループガス安全室」が発表した「全国の販売事業者数・保安機関数等」によると、2019年時点での全国の販売事業者数は17,603で、前年の17,805よりも減少。保安機関数も17,960と前年の18,140から減っています。大きく減っているのが小規模事業者であり、経営者や従業員が高齢化しても後継者などの人材が不足していることがその原因だと考えられています。

廃業をするしかない状況の事業者でも、「お客さんもまだいるので、誰かに引き継いで欲しい」とM&Aによる売却のニーズが高まっています。
以前であれば、こういったケースは自分で知り合いの会社に持ち込むことが一般的でした。しかし、最近では、インターネットなどを使ってオープンに売却先を探すケースが増えているのです。

ただ、M&Aによる事業承継という選択肢を知らない経営者はまだまだ多いのが実状です。

(2)業界再編が進んでいる

エネルギー業界では、価格を下げることや資源の再配分を目的とした規制緩和が行われました。エネルギーの小売業への参入が自由化され、電気や都市ガスの販売の自由化が進んでいます。LPガスの販売は1960年代から自由化されていましたが、エネルギー業界の再編を受けて消費者が都市ガスやオール電化へと流出しています。結果として、小規模事業所の多いLPガス業界では事業所の数が減少の一途をたどり、市場縮小対策としてM&Aによる業界再編が加速しています。2014年には伊藤忠エネクスが大阪カーラーフグループを子会社化。2018年には大阪ガスとで50%ずつ出資するエネアークを設立し、経営統合を行っています。

3.LPガス販売業者の買収を成功させるポイント

LPガスの販売業者の買収する際に、成功させるポイントや注意点として次のようなことが挙げられます。

(1)しっかりとした情報収集

小規模のLPガス事業所が多く、地方では市町村単位で地域に密着した事業を展開しています。買収したいLPガス事業所が自身の拠点から離れていると、情報収集が難しくなってしまいます。情報不足のため売手の事業所を割高で買収する可能性もあります。貸借対照表には計上されない簿外債務を見落としてしまうと、M&Aが難航するでしょう。こうした事態に陥らないよう、買収したいLPガス事業所や拠点とするエリアの経済状況など、しっかりと情報を収集することが必要です。地域の状況に詳しいM&A仲介会社を選ぶことも重要でしょう。

(2)追加投資に備えて資金計画を立てる

買収を検討するLPガス事業所の中には、資金不足で設備の管理や投資を十分に行えていない事業所もあります。設備管理の不備により設備が劣化したり老朽化していたりすると、設備改善のために想定以上の追加投資が必要になってくる場合もあるでしょう。こうした追加投資に備え、設備投資用の資金計画を立ててLPガス事業所の買収に臨んでください。

(3)業界に詳しいM&A仲介会社を選ぶ

LPガス事業所のM&Aの場合、資産と管理戸数をもとに譲渡価格を計算します。譲渡価格はアパートか戸建てなのか、家庭用なのかあるいは商業用なのかなど、建物の形態によっても変わってきます。また異業種間でのM&Aの場合には、従業員や顧客情報といった「のれん」と呼ばれる目に見えない資産価値が計上されていることもあります。各事業所によって状況は千差万別であるため、LPガス業界に詳しいM&A仲介業者や公認会計士とネットワークをもつ業者に相談することが、相場観を知る上で大事になってくるでしょう。

4.LPガス販売会社・事業を売却する際のポイント

LPガス事業所を売却する上で重要になるポイントや注意点は何でしょうか。

(1)秘密保持の徹底

売手のLPガス事業所が最も気をつけたいことは秘密保持の徹底です。M&Aが進行中であることなどが外部に漏れてしまうと顧客の信頼や従業員のモチベーションを失ってしまい、離散してしまうこともあるでしょう。結果として買手がつかなくなることもあります。

(2)ベストのタイミングでM&Aを検討・実施

LPガス業界は競争が激しく、不動産業界や電力業界などシナジー効果を期待した異業種からのM&Aなどが行われています。競争で優位に立つために、M&Aが加速していくでしょう。しかし買手の需要がなければ、LPガス事業所の売却を希望してもM&Aを行えないかもしれません。LPガス業界の流れをくみ取って、ベストなタイミングでM&Aを行うことが重要です。

5.LPガス販売業における事業承継の事例

落合和雄さん

M&A・事業承継を検討している方へ

当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。


ここでは、私が実際に手掛けた事業承継の事例を紹介します。LPガス販売業界の事業承継で起こりがちな事例です。

■多角経営企業の事業を事業承継により分割した例

後継者である兄とその弟が事業承継した例です。事業と不動産をどうやって兄弟で分けるかというところが課題の案件でした。多角経営をしていた企業のため、不動産はもちろんですが事業自体も兄弟で分ける必要があったのです。
メイン事業であるLPガス販売のほかに、灯油販売、コンビニ経営、リフレッシュ工事事業、買い物代行業を手がける企業でした。このうち、リフレッシュ工事事業を弟に、そのほかの事業を兄に事業承継しました。

この事例では、先代オーナーである父親の遺言書作成もセットで請け負ったため、特段揉めることもなく事業承継を行うことができました。しかし、こういったケースでは往々にして揉めます。家族間の親族間承継であればなおさらです。
LPガス販売業界は、多角経営している企業が多い業界で、事業承継によるトラブルは決して少なくありません。遺言書作成も含めて、事業承継をトータルでアドバイスしてくれる専門家を間に入れることを考えるべきでしょう。

6.まとめ

LPガス販売業界でM&Aをする場合、誰にアドバイスを求めるかが非常に重要です。この業界のM&Aは小規模なものが多いため、採算が取れないと断られてしまうケースも考えられます。
とはいえ、M&Aは複雑な手続きが必要で、税金の取り扱いも難しいため、専門家に相談せずに進めてしまうことは危険です。中小企業診断士や税理士の中で、契約書や税金面を含めてM&Aをトータルでアドバイスしてくれる専門家に相談しましょう。

〈話者紹介〉

落合和雄さん

一般社団法人 多摩経営工房副理事長、落合和雄税理士事務所所長、(株)落合マネジメント・オフィス 代表取締役
落合和雄(おちあい かずお)

税理士、中小企業診断士、ITコーディネータ、AFP、PMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)、情報処理技術者(特種、システム監査)1977年東京大学卒業。新日鉄情報通信システム(株)などを経て、現在税理士、経営コンサルタント。30年の診断士経験、15年の税理士経験を活かして、事業承継、相続対策、経営計画立案、プロジェクトマネジメント等の分野で、コンサルティング・講演・執筆等、幅広い活動を展開。著書に、「実践ナビゲーション経営」(同友館)、「金に頼らない蓄財術」(アスキー新書)などがある。

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