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人材派遣業界 M&Aの背景と動向、注意点を詳しく解説

はじめに

人材派遣業界は、バブル経済下の1986年の労働者派遣法制定により誕生しました。経済情勢や世論によって度重なる法改正に多大な影響を受けながら、好調と不調を繰り返しています。
外から見ると、ともすれば一人当たりいくらで、人さえ居れば稼げると言ったイメージを持たれがちな人材派遣業界ですが、今後はAIや産業ロボットの発達により、いかに付加価値の高い人材を供給出来るか、派遣社員の量より質が問われる時代になることが予想されます。今回は派遣業界のM&Aの事情に詳しいストライクの橋口さんにお話を伺いました。


1.人材派遣業界とは?

電話する女性
人材派遣業界はその名の通り労働集約型産業の最たるものです。人材を効率的に集めるため上、人材派遣会社は地方より主要都市に集中する傾向があります。事実、全国の人材派遣会社の実に7割が東京に存在します。

前述の通り、人材派遣会社は1986年にできた労働者派遣法に端を発する業界です。正式な誕生からまだ30年程度の比較的若い業界ですが、実は江戸時代から人材斡旋を業とする「手配師」として、その生業は存在しました。

しかしながら近年においては職業安定法により、前述の法改正がある1986年まで人材派遣は禁止されていたのです。これは使用者と比べて弱い立場となりがちな労働者保護を目的とする規制だったのですが、好景気のもとで働き方の多様化や人手不足が叫ばれて、つまりは時代のニーズに合わせて労働者派遣業が解禁されました。

法改正当初は厳しい規制があり、派遣を行うことが出来るのは専門的な知識を持つ人に限定されていました。派遣本来の意義である、「必要な業務を担える人材を補う為に派遣する」というコンセプトに基づくものです。しかし景気拡大による人手不足から、規制は徐々に緩和され「質より量」へと変化していきました。

「質より量」の変化として最も顕著なのが2004年の製造業派遣の解禁です。工場のライン等、比較的単純労働に近い業務にも人材派遣を行うことが出来るようになることで、市場が一気に拡大し、業界全体が右肩上がりを続けます。

しかし、2008年にリーマンショックが起こり、俗にいう「派遣切り」が起こったことで状況は一転。「派遣切り」は、必要な労働力を補うという人材派遣業本来の目的と離れて、不況時の雇用の調整に派遣労働者が使われたというイメージを世間に強く与えると共に、派遣労働者の弱い立場を露呈させました。

よってこの後、労働者保護の観点に立ち返り、派遣業の規制がどんどん厳しくなりました。現状の法改正のトレンドは引き続き労働者を保護する方向です。

2020年の法改正により、「同一労働同一賃金」によって、正社員でも派遣社員でも同じ仕事なら同じ賃金を払うことが必要となっています。派遣社員を受けいれる企業は、派遣社員への賃金の他に、派遣会社に対していわゆるマージンも支払っています。つまり完全に同一労働同一賃金であれば受入会社からみると、派遣社員は正社員よりも総額のコストが高くつくことになります。

この問題は人材派遣業界では「DD(同一労働同一賃金)問題」と呼ばれて重く捉えられており、今後の人材派遣市場の縮小を憂慮する声も少なくありません。雇用に関する法律は改正が多いので、人材派遣業界はその都度影響を受けやすいという特徴があります。

2.人材派遣業界におけるM&Aが活発な理由

3人のビジネスマン・ビジネスウーマン(ビジネス状況)
人材派遣業界はM&Aが活発な業界です。それには売手企業、買手企業の双方に様々な理由があります。それぞれの視点で詳しく解説しましょう。

(1)売手企業がM&Aをする理由

人材派遣事業者が会社を譲渡する理由として、大きく4つが挙げられます。

一つ目が後継者不在です。これ自体は業界特有という訳でもありませんが、他業界と同じく、人材派遣会社がM&Aを行うのは、オーナーの高齢化という理由が最も多いです。ちょうど派遣法改正から30年程度が経ち、派遣業の先駆けであったオーナーが世代交代を考える年齢になっている為です。しかし、他の業界と同様、後継者がなかなか見つからず、M&Aを選択することが増えています。

二つ目は、創業者利潤の獲得です。一つ目と相反するようですが、後継者を考える年代に至る前に、創業者利潤の獲得を目指すオーナーによる売却が比較的多いのもこの業界の特徴です。2004年の製造業派遣の解禁あたりから、人材派遣業界に新規参入する会社が多く出てきました。人材派遣会社というサービスは開始すること自体には大資本を必要とせず、オフィスと電話があれば開業できてしまうためです。

その時代の新規参入組のオーナーは年齢的にはまだ若いのですが、良い時期に小資本で始められた分、流行りが廃る前に高値で売却したい・・・というビジネスライクな感覚からM&Aを選ぶケースが多くみられます。時代に則したビジネスを上手く立ち上げ、育ててこられた方らしいセンスと言った印象です。

三つ目は、企業としての生き残りや成長のためです。法改正のトレンドが労働者保護であることから、派遣社員の管理コストは増加しています。近年、マイナンバーの管理や、派遣社員のキャリアアップ支援等が企業に求められるようになりました。より影響が大きいのはマイナンバーの管理で、派遣スタッフを多く抱える企業には管理自体手間とコストがかかります。

マイナンバーの導入を機に適切に社会保険料を支払うと従来のような利益がでない・・・という声も多く聞かれます。中小零細の事業者では社会保険の未払い分だけ利益が底上げされているケースがあったためです。これとは別に、人材不足によって採用にかかるコストが増加傾向であることも、中小事業者には逆境です。生き残りのため、更なる成長の為に大資本による後ろ盾を得るべく大手の傘下に入る企業も増えています。

最後に、そもそも人材派遣業はビジネスモデルがM&A向きです。人材派遣会社は「人が商品である」という特性上、その事業は実にシンプルです。

M&Aでは、例えば製造業であれば製品同士のシナジー、取引先の系列など、吟味するポイントが非常に多く、相性の良い先はある程度絞られてきます。しかし人材派遣においては、専門性の濃淡はあれ、商品は一律で「人」であり、単純にグループに入る・迎えることでも売手買手ともに一定のメリットを得られるような部分があります。

後述しますが、買収意欲の強い買手が多いことに加えて、この構造から買手候補を極端に狭めることがないために、売りやすい環境が整っており、この環境が一層M&Aを喚起するというある種の好循環ができています。事業がシンプルであり中小事業者が多いという構造は、調剤薬局や運送業にも当てはまることなのですが、この両者もM&Aが活発であることから、同じ土壌があるということが出来るでしょう。

(2)買手企業がM&Aをする理由

次に買手企業が買収を行う理由を解説致します。こちらはかなり多岐にわたりますので、業界特有のものをご紹介いたします。

一般的なM&Aにおけるリスクとして、元オーナーへの依存度が高いことでM&Aを理由従業員が突然辞めたり、これによりうまく会社が機能しなかったりと色々不具合が起こることが挙げられます。例えば、製造業においてオーナーの理念に共感し、背中を見てついてきた従業員が、M&Aによってオーナーが去ることで辞めていくケース等です。

ところが、人材派遣業界の従業員の多くは派遣先に行って仕事をしているので、M&Aによりオーナーが変わっても彼らはあまり気に留めることはありません。

もちろん、社長の顔で取引を行っている先があったり、管理側のスタッフや派遣先としての得意先を持つ担当者等のキーマンが存在していたりしますが、何よりの資産である派遣社員へのリスクが限定的であることで、買手企業にとって買収のハードルが低いのです。

二つ目に、人材派遣業という事業の特性として、成長のために行える投資が限られていることが挙げられます。人材派遣会社は大きな設備投資を必要としないため、基本的には売上が順調に伸びれば現金が貯まるビジネスです。加えて売掛金等も過大になり難く、回収も早いため、経営状況が悪くなければキャッシュリッチな会社が多いという特徴があります。

しかしながら、特に上場会社であれば社内に過大な現預金を眠らせると株主からその有効活用や、過度の配当を求められてしまいます。設備投資を必要としない、というよりも有効な設備投資が難しい業界ですので、成長したくとも投資できる対象は限られます。そこで効果的な成長のための手段として企業買収を行うモチベーションが働くのです。

余談ですが、リーマンショック後にM&Aでの成長が雌雄を分けた事例として、パソナグループとパーソルホールディングスが挙げられます。いずれも2009年時点では売上高は2,000億円程度ですが、大型の買収を繰り返したパーソルホールディングスは2020年3月期で約9,258億円、パソナグループは3,270億円と大きく差が開いています。

上記の二つの理由に加えて、売手側の譲渡理由でも挙げた、ビジネスモデルがM&Aに馴染むという特性から、人材派遣業においては多くの企業が非常に買収に前向きです。

売手市場であるように聞こえてしまうかもしれませんが、こうしたマーケットを理解しているからこと譲渡を考える会社も多数あり、買手にとっても良質な案件に出会いやすい環境であると言えるでしょう。

3.人材派遣業界におけるM&A成功のポイント

採用面接の風景
買手は人材派遣会社を買収するにあたりターゲットとする分野での有資格者の数や専門知識を持つ技術者がどれだけいるかなど、他に代え難い人材をどれだけ稼働させているかという面を重要視します。例えば建設業では、一定数の有資格者がいなければ公共工事の入札ができず、工事を受注できません。

しかし社内に常時絶対数を確保することは難しいので、派遣社員で対応することも多いのです。こうした形が人材派遣本来の姿であり、重宝される人材をどれだけ抱えているかが売手企業にとって企業価値を向上させ、よいM&Aを成立させるためのポイントとなります。

4.人材派遣業界におけるM&Aは今後どうなるか

2004年以降の規制緩和により、人材派遣業界の企業のニーズに広く対応できるようになってきた経緯があります。しかし今後は、間口が広い一方で付加価値の高くない一般事務や経理などの派遣社員をいくらたくさん抱えていても企業の評価は上がらず、M&Aも難しくなるでしょう。

あるいは、同一労働同一賃金問題により、そもそもそうした人材への需要そのものが低迷することも考えられます。AIやロボットの台頭により、人材派遣業へのニーズは付加価値の高い人材にしかできない分野に限定されていくでしょう。専門職の派遣はなくならず、これからも残っていくと考えられますが、それ以外の人材派遣は縮小を余儀なくされるでしょう。

また、譲渡理由の項目でも触れましたが、採用に関して一般的には大手であれ中小零細であれ採用のための求人広告費に予算を遣います。人手不足の現代において優秀な技術者を一人雇うためには、数百万から数千万円ものコストがかかるのです。

仮に大手企業が専門職の求人費用として数億円の予算を組むのであれば、いっそ意中の人材を擁する企業をM&Aをした方が効率的ではないかと考えることもあります。求められる方向性は量から質に変わりながらも、M&A自体はより一層進んでいくことでしょう。

5.人材派遣業界におけるM&Aの注意点

ピースを合わせるイメージ

人材派遣業界でM&Aを行うときに注意すべき点があります。参考に紹介しておきましょう。

(1)M&Aにおけるスキーム

一般的にM&Aのスキームとしては、株式譲渡と事業譲渡の2つがよく使われます。私たちは、派遣会社については株式譲渡を推奨いたします。なぜなら、事業譲渡であればありとあらゆる契約関係がまき直しになりますが、株式譲渡であれば会社の持ち主である株主が変わるに留まり、法人の有する契約関係はそのまま維持されるからです。

つまり、数十から数百人にも及ぶ派遣社員との雇用契約を巻きなおさなくてもよいのが株式譲渡であり、全てを巻きなおす必要があるのが事業譲渡です。個別に雇用契約を巻きなおすとなると、手続き上の手間が増えることはもちろんのこと、M&A後に事後報告するよりも反対意見が起きやすいとうデメリットがあります。

(2)労務問題がないか

売手企業を見極めるに当たっての注意点は簿外債務や労務問題(社会保険の未払いなど)がないかどうかです。表面上の財務数値を元にある程度の値決めをした後でこれらが判明した場合、希望譲渡価格とのバランスが取れなくなったり、何とか価格が折り合って買収に至った場合でも、後に大きな労働問題に発展したりして、訴訟が起きる可能性もあります。

M&Aに際しては売手がそれらの問題の不存在を担保する「表明保証」が契約に織り込まれていますが、後で事実と異なることが判明した場合、売手買手間の訴訟に至ることも少なくありません。

働き方改革等が叫ばれる近年において労務管理は、特に人が財産である人材派遣業において一番のポイントとなります。良い決算書と良い経営内容は別なのです。コンプライアンスの問題や過重労働がある売手企業は、いくら決算書が素晴らしくても内実が伴っておらず、M&Aを契機としてこれらの問題が表面 化することも少なくありません。

(3)M&A仲介会社選びが重要

人材派遣会社に限らず、M&Aを行うに際して取引先や横のつながりのある同業者等とM&A仲介会社を使わず話を進める場合があります。これ自体は、何事もなく良い縁組となるならがこんなに喜ばしいことはありません。

問題は、取引先、あるいは知己の相手との交渉となるため、突っ込んだ交渉や詮索を遠慮してしまい本来は契約を結ぶ前に行うべきであるデューデリジェンスと呼ばれる買収監査をせずに買収し、後から問題が露見するケースです。買収監査は財務・税務・労務・法務関係をチェックして、リスクを評価に織り込む作業です。

買収監査を省いてM&Aを行うと、必ずといってよいほど後からトラブルが起こります。M&A仲介会社が入れば、事前のヒアリングと買収監査によって、トラブルがある程度避けられます。知人同士では聞きにくいことも仲介者の言葉としてヒアリング、質問を行うことができ、交渉もまた同様です。親しい仲にも礼儀を守りつつ、余計な遠慮を排除した合理的なM&Aを行うことができるのではないでしょうか。

なお、もちろん業界の事情や法改正に精通した、当該業界でのM&Aの実績が豊富なM&A仲介会社が良いでしょう。上場している大手M&A仲介会社であればいずれも実績・買手のネットワークは申し分ありませんので、担当者とフィーリングが合いそうか、困難な局面でもしっかり支えてくれそうか等、最後は個人と感性の問題に落ち着くと思います。

ディールは数か月から1年に及ぶこともありますので、実は以外と大切なことです。

6.まとめ

ビジネス拡大のイメージ
派遣業界は法改正と世論にその市場を左右されつつも、一定のニーズは間違いなく存在する分野です。しかし誰でもできる業務の派遣は先細り、企業が求める質の高い人材をどれだけ確保できるかが重要です。そうして生き残る企業に残存者利益が待っているのではないでしょうか。

買手が潤沢なマーケットで、年齢等の理由で事業承継を考えているオーナーは、M&Aという選択肢を前向きに捉える風潮があるように思います。しかし、満足のいくM&Aを遂げるためには自社の財務や税務はもちろん、労務管理もしっかり行い、同時に質の高い派遣ができる「人材」を集めておくことが求められます。

M&A市場でも、企業価値向上のためにたゆまぬ努力をした会社だけが選ばれるようになっていくでしょう。逃げ道としてではなく、成長の手段としてM&Aを考えるには最高の環境であると言えます。

話者紹介

樋口さん
株式会社ストライク 執行役員

橋口 和弘(はしぐち かずひろ)

2010年ストライクに入社。主に、人材ビジネス業界のM&Aを中心に手掛ける。 プロジェクト立案から新規開拓、提案、クロージング業務を経験。現在に至る。

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