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電気通信会社の事業承継 M&Aのポイントや事例 流れを詳しく解説!

2020/07/20
更新日:2020/07/20

はじめに

専門性の高いことから技術者などの人材不足を抱えているのが電気通信業界です。電気工事といっても、ネットワーク回線の接続からビルなどの大規模な配線工事まで多岐にわたり、資格や免許が大きく変わります。

電気通信業界の現役オーナーには40代、50代が多いにもかかわらず、息子の年齢が若いために事業承継を行うのは難しい側面があります。そこで電気通信業界における第三者へのM&Aを含めた事業承継について、株式会社エクステンドのM&Aアドバイザーである岩永敦司さんにお話を伺いました。


1.電気通信業界の現状

電気工事とよく一括りでまとめられますが、電気工事の中にもいろいろな種類があります。店舗内で配線工事を扱う会社やウェブ用のLANケーブルをつなぐ会社、戸建てなど住宅の電気工事を請け負う会社など様々です。取り扱う分野により従業員の免許や資格が変わるのが電気通信業界といえます。

(1)高齢化する従業員

電気通信業界では、技術者の年齢が上がっているのが現状です。その一方で免許の取得や仕事の難しさがあるため、高卒や大卒などの若い人材がいきなり業界に入ることは難しい面もあります。

(2)仕事は引く手あまた

建物の建て替えや公共工事が増えると、そこには電気工事が伴います。仕事が多いので、電気通信業界は業績のよい状態を保っています。ただし、電気工事に携わる人材が少ないので、中小企業の電気工事会社は仕事を請け負えないという構図になっています。

(3)M&Aで人材確保

こうした厳しい状況下で、M&Aなどの手法によって社内に人材を確保するのが今の電気通信業界の主流だと考えます。

2.電気通信会社における事業承継

ビルの電気工事の想像図
大企業や中小企業など、会社の規模にかかわらず人材不足という事情を各会社は抱えています。そのため経営者の息子が会社に入り、仕事を手伝うケースが非常に多いです。会社の規模によりますが、65歳と高齢になったオーナー自身が電気工事の現場で動くケースもあります。

ところが、経営者が現場作業や経営を続けられなくなったあとに社内を見回しても、後継者を見つけられない難しい状況があります。電気通信業界の事業承継については以下のような状況が多くみられます。

(1)3代目を誰が引き継ぐかが難しい

40代、50代で電気工事に携わる会社オーナーは、親など先代から事業承継を一度は済ませています。しかし、次の後継者がなかなか見つからないのが現状です。

オーナーの息子が自身の会社で働いている場合には、事業承継の可能性が高いでしょう。しかし、そうでない場合の選択肢としては、M&Aしかありません。現在の2代目オーナーは、昭和の時代に生まれていることが多いでしょう。先代オーナーは結婚も早く、現オーナーとの年齢差は25歳前後が一般的だと思います。そのため、事業承継もスムーズに済ませられました。
一方で、電気通信会社の現オーナーに多い40代、50代の世代は晩婚化が進んだ世代でもあるため、オーナー自身が60歳になった時点で息子は大学を卒業したばかりの年齢が想定されます。やはり、息子が40歳前後でないと経営を引き継ぐのは難しいという印象を受けます。

(2)後継者がいないのでM&Aに

後継者が見つからないので事業を売却したいというオーナーから相談を受けるケースが非常に多いです。売上規模が1億~2億円で、事業規模が15~20名ほどの会社の場合、仕事はそれなりにあっても後継者がいないのです。オーナーの子供が女性の場合や、息子であっても年齢が若いため後継者の対象ではないなどの理由から、事業の売却を検討しているオーナーが非常に増えています。

(3)財務状況のいい会社は事業承継が多い

事業承継と売却のどちらを選択するかというと、財務状況のいい会社は事業承継を選択します。業績が安定していて借入も少ないので、経営を引き継ぐ立場の抵抗感は薄いのだと思います。弊社で扱っている複数社を買収しているオーナーも、企業規模が30億~50億円の会社を抱えています。2代目である現オーナーは60歳を過ぎていますが、社内で働いている娘とその夫に経営の一部を任せています。このような会社は、どんどん支店を展開してエリアを広げ、M&Aによって別会社をさらに買収できますし、その準備もできています。業績がさらによくなるので親族内での承継が起こりえます。

3.電気通信業界のM&Aで売手が満たすべき条件

M&Aでの商談の想像図
M&Aを成立させるために買手がどのポイントを確認しているのかを、売手自身が理解しておく必要があります。これにより、売手は前もって準備しておくことが可能です。電気通信業界の場合、売手はどのような条件を満たすべきでしょうか。

(1)買手が確認する売手のポイント

買手は、売手の財務内容を当然重視しますが、まずは従業員名簿を確認し、次に資格を確認します。

①技術者がどんな資格をもっているか

買手が売手のどのポイントを注視するかというと、電気工事の資格を取得した従業員が社内にいるかどうかや、どのような仕事ができるかです。また、ノンネームシートに電気工事業といったように案件が掲載されるので、どういう工事をしているのかという内訳を買手が確認します。中でも注視するポイントは、高圧電圧と低圧電圧のどちらを扱うかです。高圧電圧というのは交流で600~7,000V、直流で750~7,000Vの電圧で、ビルやマンションの電気工事やエレベーターなどで扱われます。低圧電圧は交流で600V以下、直流で750V以下の電圧で家庭用です。

電気は、電圧が高くなるほど危険度が増します。M&Aの買手になるような大きな会社は、高圧を取り扱える技術者を希望していて、そのニーズを満たす会社は売手として重宝されます。

②従業員が若ければ社内教育も可能

会社を売却したいというオーナーが、先日相談に来られました。年商規模が2億円前後、従業員が17名の会社で、電気通信工事の中でも防犯やカメラの設置、ウェブの回線工事など、インフラ系を扱っているという話でした。このケースでは買手のニーズと売手の実態がかけ離れていましたが、25歳から30代前半までの若い従業員が17名のうち半数近くでした。規模が50億円ほどの会社で仕事はたくさんあるので、請け負うための人材を確保したいのでしょう。技術をどの程度保有しているのかという条件を売手が満たしてないかもしれませんが、売手にいた従業員を社内で育てていくと買手のオーナーが考え、従業員が若いという部分を評価して買収に踏み切りました。従業員の資格と個人の能力がこのケースでは重視され、売手の会社がもつ取引先はそれほど重視されませんでした。

(2)売手が備えておくべき条件

小さい会社でも、売却されるためには人材など個人の資格と、入札など会社の資格の2つを充実させるのが重要です。

①人材の確保

電気通信業界全体が人材不足に陥っていますので、従業員が資格を取得しているかどうかを買手が注視していることに、売手は気を配る必要があります。会社を売却するか確定していない状況であっても、社員教育や資格の取得は従業員自身のスキルアップだけでなく会社の単価を上げるので、人材への投資を前もって行っても損はありません。

また、自社に募集した際に人材が入ってくるルートを確保できているかどうかも、会社の評価のひとつにはなっています。

②入札できる環境を準備

公共工事の場合には、電気工事に入札資格というものが存在します。予定価格に応じてA・B・C・Dという4つの等級に工事のランクが分類され、Aランクだとそれ以上しか入札できない仕組みになっています。そのため、どの工事にどのランクで入札の資格があるのかが評価のひとつになります。たとえば、Dランクの等級に入札できる別会社を買収すれば、その等級に入札できて落札される確率が上がるわけです。

公共工事に入札するためには経営事項審査という審査を受けて参加資格を得る必要があり、この審査では経営規模や経営状況、技術力など4項目を加味して総合評定値が算出されます。しかし、この経営事項審査を受けていない電気工事会社もあるので、入札できる環境を会社として売手も準備しておくとM&Aがスムーズに行えます。

4.電気通信会社におけるM&Aの流れ

売手・買手の双方から依頼があった場合、M&Aが成約するまでの流れは若干異なります。

(1)売手の流れ

売手のM&Aの流れは次のようになります。

①ヒアリング

売手からM&Aの相談を依頼された場合、まずは面談をして会社のヒアリングをある程度行います。

②アドバイザー契約書の締結

実際に会社を売却するとなれば、会社の売買を支援するというアドバイザリー契約書を弊社と売手との間で締結し、M&Aの仲介やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)を行います。

③案件概要書の作成

契約締結後に細かい資料などを売手から提出してもらい、売却価格の算定や従業員の資格など、会社の強みや弱みを案件概要書にまとめます。M&Aの相談を受けてから案件概要書作成までに約1ヶ月かかります。

④ノンネームの作成

続いて、会社名がオープンでなく「東京都電気工事、従業員何名」と売手を特定できないように会社の概要を要約したノンネームを作成し、買手に提示します。

⑤トップ面談

ノンネームを確認した買手が売手と話を進めたいとなれば、売手と買手双方の代表によるトップ面談へと移ります。この段階では価格交渉の話はまったくありませんが、売手は自社の現況やどうして売却という結論に至ったのか、買手は自社の概要など、お互いの自己紹介を交わします。

⑥意向表明書・基本合意書

価格の提示など、どういう条件で、またどういったスケジュールで契約していきたいかという意向表明書(LOI)を買手から売手に提出します。LOIに照らし合わせて合意条件を詰め、基本合意書を売手と買手間で締結します。

⑦デューデリジェンス

基本合意書の締結後にデューデリジェンス(買収監査)へと移ります。より細かな資料を売手から提出してもらい、買手が顧問税理士や外部の公認会計士などにデューデリジェンスを依頼します。売手に問題があれば売却価格に跳ね返るような形にします。もし1億円で基本合意を結んでいたとしても、デューデリジェンスで問題点がいろいろ見つかれば8,000万円にするなど、条件交渉を再度行います。

⑧最終契約書の締結とクロージング

その後、最終契約書の締結を行い、株式や事業の譲渡などのクロージング(決済)を完了するというのが一般的なM&Aの流れです。

(2)買手の流れ

買手からもM&Aの問い合わせが弊社に届きます。まず、どういう案件に興味があるのかを買手からヒアリングします。

買手から相談を受けた場合、案件の有無によって2つのパターンに分かれます。買手に案件があれば、買手が提示した条件を満たすものを紹介し、興味のある売手が見つかればその段階で買手から資料をもらいます。その後トップ面談を行うという流れは先述と同じです。

もし買手から問い合わせをして興味のある売手が見当たらなかった場合、買手と弊社間でどういう企業を買収したいかというロングリストを作成します。帝国データバンクなどが持つ会社のデータから100~200件ほどを抽出して作成するのです。その中から30件ほどに絞ってショートリストを作成し、「買収の意向があるので一度面談させてくれませんか」、あるいは「御社に興味があるので一度面談させてください」という具合に、売手に対して弊社からアプローチします。売手が同意すれば、そこからM&Aの交渉が再度スタートするというのが大きな流れです。

5.電気通信業界のM&Aの仲介事情

M&A仲介会社同士の横のつながりがありますので、買手からこういうオーダーを受けているので売り案件がないかというやり取りがM&A仲介会社間で行われます。ただし、不動産業界と違って情報が1ヶ所に集まっていないなど、整備されていない状況です。最近は、ネット上で売手と買手の情報をマッチングさせるM&A仲介サイトもありますが、1ヶ所に集約されておらず、情報の整備についてお互いが競争しあっている状況です。これから何年か経てばどこかに集約されると思いますが、ネットでのM&Aのマッチングが始まってまだ2、3年ほどなので、これからの状況次第でしょう。

(1)売手が相談するルート

相談する入口は2パターンあり、1つ目は広告やネット媒体からの問い合わせです。相談される方は数社を検討したいため、2、3社ある候補から1社を選ぶパターンが多いです。2つ目はホームページを直接確認されての問い合わせです。この場合1社しか相談されないことが多いです。

(2)マッチング方法

M&A業界の一般的な習慣として、買手は別として、売手からの依頼は基本的に1社だけです。3社が同時並行で用意してきた買手とマッチングすることはありませんし、ほとんどのM&A仲介会社はそれを好んで行いません。まず売手と契約した上で買手を探すというプロセスを踏みます。

アドバイザリー契約書のなかに、弊社と契約したらそれ以外の会社に相談や仲介の依頼をしないでくださいという専属専任が雛形として入っています。専属専任を省いてほかの会社にも依頼させて欲しいというお客様もおられますが、基本的にはお受けしません。しかし、一般論でいうと依頼を受けてから弊社でM&Aの相手先を探し、弊社で見つからなければ別のM&A仲介会社にも依頼し、双方がFAになって買手と売手をマッチングするケースはあります。とにかく面談でしかM&Aの候補となる相手会社の状況がわからない難しい状況でありますが、現状では専属専任によるマッチングをお客様に選択してもらっています。

6.売手がM&A仲介会社に依頼する際の注意点

M&A仲介会社に相談する想像図

M&A・事業承継を検討している方へ

当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。


M&A仲介会社に依頼する際のポイントはいくつかあります。

(1)仲介会社間で業界精通度の差はない

飲食や旅館、医療系という括りだと専門的な要素があります。そのため、抱えている買手が充実している業界に精通したM&A仲介会社に依頼した方がいいでしょう。また、電気工事業やサービス業一般になると、おそらくどのM&A仲介会社も扱っているので精通度の差は大きくないという印象です。

(2)譲渡代金と手数料とのバランス

自社の譲渡代金、つまり会社規模と相手方の手数料との割合のバランスが取れているかどうかは重要です。最低報酬額でいうと、150万円から上場している会社まで数種類にランク分けされています。譲渡代金が5,000万円なのに、2,000万円の対価を払うのは選択として難しいでしょう。希望金額や、会社の価値と相手方が行う上での成功報酬額を確認し、自分の会社を売却したのち手元にどのくらいお金が残るかを鑑みてM&A仲介会社を選びましょう。

逆にいうと、手数料体系はM&A仲介会社の意思表示でもあるので、成功報酬が2,000万円であれば売却金額は1億~2億円になりますので、それ以下の場合には別のM&A仲介会社を探してくださいとなります。

(3)M&A仲介会社の実績

ホームページの情報だけでは実績があるかどうか判断が難しいので、実際の面談においてどういう実績があるのか、具体的な買手としてどういう会社を想定しているか、そういった会社を抱えているかどうかが、売手として相談する際に確認すべきポイントです。

(4)相性のよさ

面談で対応した担当者が実際に自社の売却を手伝ってくれるのか、オーナー自身との相性がいいのかを確認することが最後のポイントです。直接買手と話をするタイミングというのはオーナー同士のトップ面談です。売手であるオーナーの立場からみると、自分の考えや条件、意思をきちんと相手方の会社に伝えてくれる人間をアドバイザーに選ばないと、コミュニケーションが取りづらく、ボタンの掛け違い等でなかなか交渉が進まなかったりします。実際に成約になったとしても何か不満が残るケースも多々あります。そのため、ある程度自分の意思をきちんと伝えてくれる、信頼できる担当者を選ぶべきでしょう。

7.まとめ

電気通信業界における事業承継では、親族への事業承継かM&Aによる第三者への事業承継かの2つの選択肢があります。ただ電気通信業界の場合、M&Aによって規模を拡大する大きな会社と、後継者や技術者などの人材不足に苦しむ小規模の会社とに二極化する傾向があります。売手のオーナーは後継者を含めて事業承継を考える段階に差し掛かっているかもしれませんが、ある程度の規模の会社でないと事業承継が難しい環境にあるでしょう。大手の電気通信会社の傘下に入るというのも、選択肢としてあるのではないでしょうか。

話者紹介

岩永敦司氏
株式会社エクステンド
岩永 敦司(いわなが あつし)

金融機関から不動産、M&Aに携わる企業に在籍。資金調達(融資、リース)から、経営戦略の立案からM&Aによる事業拡大、M&Aによる財務リストラ、経営承継など企業のステージにあった提案を行っている。

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