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事業承継の相続税・贈与税対策。事前に準備すべきこととは? 事業承継税制についても解説

2020/07/20
更新日:2021/02/26

はじめに

中小企業の経営者の高齢化と後継者不足が深刻化しており、黒字であるにも関わらず廃業を選択する中小企業の数は全体の半数以上を占めています。企業を存続させるためには円滑な事業承継の推進が必要不可欠といっていいでしょう。事業承継で大きなポイントになるのは会社を譲渡する際にかかる費用です。相続税を払うことができず、事業承継が難しくなるケースもあります。どう準備しておくべきなのか、相続税対策にはどのようなものがあるのか。事業承継の専門家、クローバー会計事務所の柴田亮(しばた あきら)さんにうかがいました。


1.事業承継の際に支払う相続税・贈与税とは?

コインと家の模型
親族承継も親族外承継も会社という財産を相続することなので相続税がかかります。最初に相続税について解説します。

(1)相続税と贈与税の違い

相続税も贈与税も財産を譲り受けるという点では共通しますが、事業を譲る側が死亡している場合は相続税、生きている場合は贈与税です。その他にも基礎控除の算出の仕方や税率など、仕組みも含めてかなり違いがあります。

相続税の基礎控除は3000万円+法定相続人の数×600万円。贈与税の基礎控除は年間一人当たり110万円です。相続税は一括して納めるものですが、贈与税は年ごとに分割して払う選択肢もあります。どちらがより節税をする上で有効かはケース・バイ・ケースであり、一概にはいえません。

生前贈与を考えるのであれば、数十年単位の長期的な視野に立って計画的に進める必要があります。

(2)高額になることもある相続税・贈与税

経営者が亡くなって後継者が会社を受け継ぐ場合、会社の資産とともに株式も相続税の対象となります。株式の時価が予想以上に高くて、持っている資産だけでは相続税を払えないケースは少なくはありません。

創業者社長には会社を作ったときの資本金のイメージが強く残っていることが多々あります。最初に資本金1000万円で会社を設立したとすると、それくらいの額だと認識して、その印象が更新されないまま現在に至ることもあるでしょう。しかし数十年間にわたって会社を経営し、安定した業績を収めて利益をストックしていくと、株価は高くなりがちです。1000万円だったものがいつのまにか億を超えていたというケースもありえます。

株式の譲渡時の相続税・贈与税はかなりやっかいです。一部上場の会社ならば、一部の株を売って相続税に充てることもできますが、中小企業の場合は未上場の株なので、一部を売却して換金することはできません。

資産価値の上昇は会社が所有する土地にもいえることです。土地の値段が何十年か経過して買った当初と比較してとんでもない金額になっていたという話もよくも聞きます。経営者が亡くなってしまってから、後継者が驚きとまどう事態にならないために、経営者が事前にするべきことはたくさんあるのです。

将来、後継者が事業承継をスムーズに行うためには、現在の時点で株式や不動産を含めた会社の時価総額がどれくらいなのか、相続税はどれくらいか、把握しておく必要があります。

2.事業承継に備えて経営者がやっておくべきこと

ノートパソコンとメモ用紙

経営者が突然亡くなったときに、家族や親戚、会社の役員も従業員も大混乱という事態は防がなければなりません。事前に準備しておけば、相続税問題の解消も可能です。では将来の事業承継に備えて経営者が何をやっておくべきなのか、具体的に説明していきましょう。

(1)最初に後継者候補を決める

相続税対策の準備を早めにする必要があります。しかし後継者が決まっていなければ、準備のやりようがありません。親族承継なのか、親族外承継なのか、それともM&Aを選択するのか。相手によって相続税対策も変わるからです。親族承継ならば、会社の株式を一括相続、生前贈与、売買による譲渡という3つの中から選択することも可能です。生前贈与の場合は毎年分割して行う暦年贈与方式が採られる場合もあるので早めに着手する必要があります。

(2)株式の株価が下がるタイミングを確認

株式の株価は必ずしも一定ではありません。それは会社の業績、資産も含めて算出されるからです。大型の設備投資、不動産購入、役員・従業員への退職金の支払いなどの後は会社の純資産額が減るため、株式の評価額も下がります。そのタイミングで相続時精算課税制度(株価が贈与時に固定される制度。一括して贈与税を払うことが条件となる)を利用して事業承継すると、大幅な節税が可能になるのです。

(3)不動産の購入によって株式の株価は下がる

節税対策の一環として、経営者が不動産を購入するケースはかなりあります。なぜ不動産の購入をすることが節税につながるのでしょうか? 一般的に現金保有よりも不動産保有において評価額が低くなる傾向があるからです。所有している資産の評価額が低くなることによって、課税される金額も低くなります。その結果、節税効果が期待できるのです。

また、不動産の中でも賃貸マンションなど、賃貸物件を購入すると、さらに節税の効果が上がります。賃貸物件は一般的には購入価格の6割から7割程度に評価額が下がるために、会社の資産が減少したと判断されるからです。その結果、株式の株価も下がるために、有効な節税対策となるのです。

(4)経営者が持ち株会社に株式を売却

相続税対策として後継者が持ち株会社を設立し、経営者が株式をその会社に売却する方法を採ることもあります。メリットは売却ということになるので、相続税・贈与税がかからないこと。経営者は株式の売却益も手にすることができます。

デメリットは売却益が出ることによって経営者に所得税がかかることです。また後継者としても株収得のために多額の資金が必要となるため、購入資金を用意しなければなりません。しかも株価は法人税法上の算出となるので、相続税よりも割高になります。後継者の自己資金が足りない場合、銀行から融資を受けることになりますが、借入金が多額だと、返済が大きな負担になることもあるでしょう。

(5)経営者が生命保険に加入する

経営者が生命保険に入り、後継者を受取人にすることによって、保険金を相続税にあてることができます。相続税が多額になることが予想される場合には、その額に見合った保険金を設定するなどして対策するといいでしょう。また、後継者が自分の子どもであり、その以外にも兄弟がいる場合は、あえて後継者ではない子どもを受取人とすることによって、後継者に事業の資産を残すというやり方もあります。

3.事業承継のタイミングで可能な相続税対策とは?

グラフを指で指す手

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相続対策をしないまま経営者が亡くなり、事業承継のタイミングを迎えてしまって相続税を払うのに苦慮した場合にはどんな選択肢があるのでしょうか。

(1)銀行から融資を受けて相続税を支払う

会社の株価がそれほど高額でない場合は、取引先の銀行から融資を受けて相続税を払うという選択肢もあります。ただしこれはあくまでも株価がそれほど高額でない場合です。会社の株価が1000万円くらいならば、給料の分割で返すこともできますが、億単位になってくるとそうはいきません。

(2)不動産などを換金

中小企業では株式を部分的に換金化することはできません。不動産など換金できる資産を売って、相続税に充てるやり方もあるでしょう。不動産を売ることで得た金額だけでは足りない場合は銀行の融資と合わせるなどして、必要な金額を確保します。

(3)株式を分散

経営者、後継者と関係の深い人や組織に株を分散して、株主になってもらうという手もあります。長期間にわたって株を保有してもらえるならば、会社も安定し、相続税の額も抑えることが期待できます。株主として考えられるのは会社の役員、従業員、付き合いのある金融機関、取引先などです。

相続税の支払いで困った場合、最初におすすめしたいのは事業承継税制の活用です。次の章でくわしく説明してきます。

4.事業承継税制を活用する

高層ビルと空
事業承継をする際に活用してほしいのが事業承継税制です。事業承継を推進する目的で作られた税制ですが、当初は従業員の雇用、持ち株率の比率など、いくつかの要件を満たさなければ適用できない制限が設けられており、使いづらいところもありました。しかし特例措置を付けるなど、たびたびの改定を経て、かなり使いやすく税制になったのです。

(1)さらに使い勝手がよくなった事業承継税制

一定の条件を満たせば、株式取得時の相続税・贈与税を猶予するというのが事業承継税制の大きな柱です。2018年度の特例措置によって、中小企業であること、経営者と後継者がともに会社の代表取締役であること、最低でも5年の事業の継続、雇用の8割の維持といった条件を満たせば、相続税・贈与税が100%猶予されることになりました。

猶予期間が繰り延べられていくことで実質的に相続税・贈与税の支払いがゼロになる可能性もあります。

(2)事業承継税制にはデメリットもある

相続税・贈与税が100%猶予されるわけで、圧倒的にメリットが大きいのですが、デメリットも考えられないわけではありません。問題となるのは相続税の支払いが免除されたわけではなく、猶予されているという点です。もし要件を満たさずに相続税の支払いの義務が生じた場合には相続税に加えて、利子税を支払う義務が生じます。

まだこの事業承継税制は運用が始まったばかりであり、どのような問題が生じるか、わからないところもあります。新しい制度であり、具体的な例がまだないため、経営者・後継者だけでなく専門家にとっても未知の要素がたくさんあるのです。その見えない部分、将来への不安感もデメリットのひとつといえるでしょう。

5.M&Aでも適応される事業承継税制

オフィスでの握手

相続税の猶予は親族だけでなく、第三者にも適応されます。つまりM&Aにおいても有効に活用することが可能なのです。

(1)後継者がいないときにはM&Aを

後継者がいない場合の事業承継として、M&Aを選択する割合が年々増えています。かつては親族承継がもっとも多かったのですが、帝国データバンクの調査によると、2007年以降、親族外承継と第三者承継を合わせた数が親族承継を上回るようになりました。M&Aであれば、広く後継者を探すことができるため、最適な人材に会社を託せる可能性も増します。

(2)M&Aなら将来への不安感がなくなる

事業承継税制を活用した場合のデメリットとして、前の章で将来への不安感をあげました。これは事業を続ける限り、事業承継税制が適応されるものであるからです。M&Aであれば、事業を継続してくれそうな候補者に受け継ぐことも可能であり、M&Aが成立した時点で相続税を支払う対象も買手となるので、経営者の子どもや家族が金銭面で悩まされることもなくなります。

6.まとめ

積木に書かれたREADYの文字

経営者に求められるのは安定した会社運営とともに、事業承継を円滑に進めるための準備です。会社の運営が現在に関わるものだとすると、事業承継は会社の未来に関わるものです。家族、就業員、取引先など、影響は大きくなるので、よりよい事業承継のためには早めの準備が不可欠です。

事業承継税制の活用を考えている場合には、様々な手続きが必要であり、特例承継計画の提出期限が限定されていることもあり、こちらも早めの対応が求められます。

まずは顧問税理士に相談することをおすすめします。税理士が事業承継は専門外というケースもあるでしょう。その場合は顧問税理士から紹介してもらうなどしてネットワークを広げていき、M&Aの専門家やM&A仲介会社に相談するのが良いでしょう。まずは自らの知識を深め、そして専門家も交えてじっくり話して、未来のビジョンを具体化し、将来に向けて準備してください。

話者紹介

柴田亮さん

クローバー会計事務所
公認会計士・税理士
柴田亮(しばた あきら)

上智大学卒業。地方銀行や中堅監査法人を経て、2006年に新日本監査法人入社。上場企業の会計監査業務を経験。
2008年に公認会計士登録。財務系コンサルティングにて中堅・中小企業の株価算定・事業再生・M&A業務を経験。2011年より東京さくら監査法人のパートナーに就任。またクローバー会計事務所を開設して所長に就任。2012年に税理士登録を行い、株価算定や株式公開支援を中心として多くの企業のアドバイザリー業務に従事。

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