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MBOとは?TOBやLBO、EBOとの違いについて専門家が解説

2020/07/20
更新日:2021/02/09

はじめに

M&Aの解説などを見ていると、アルファベット3文字に略された経済用語がたくさんでてきます。これらの意味がわからず、内容が理解できなくて困ったことはないでしょうか。

そこで今回は、MBO(マネジメント・バイアウト)を中心に、関連するTOBやLBO、EBOなどの用語との違いも踏まえて専門家に解説していただきます。自身もMBOの経験がある、エクステンド株式会社の沖原厚則さんにお話を伺いました。


1.MBO(マネジメント・バイアウト)とは何か?

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MBOとは、M&Aの手段のうちのひとつです。日本語では「経営陣買収」といいます。さまざまなM&Aの手法があるうち、自社の経営陣が現在の株主から自社株を買い取って、オーナー経営者となる場合に使用します。

MBOを実施する際には、銀行や投資ファンドからの融資・出資、もしくはSPC(特別目的会社)を立ち上げて資金を調達しておこないます。そして、その資金を用いて、自社の事業部門、もしくは全ての株式を買収して、独立した経営権を手にするのです。

2.TOBやLBO、EBOとはなにが違うのか?

沖原厚則さん(1)
MBOと同じように株式を買い付ける手段に、TOB(株式公開買付)があります。MBOでは社内の経営者が株式を買い取りますが、TOBの場合はその企業を買収したい企業や、関連会社や子会社への支配権を高めたい企業が市場外で株式を買い集めます。その際に、新聞などを通して買い取り価格や日付などの株式の買付情報を公開するため「株式公開買付」と言われます。

MBOもあまり中小企業が行うことはありませんが、TOBは普段は市場で売買されている株式を買い取る方法となるため、上場企業でしか行うことはありません。MBOとTOBは、株式を買付した経営の実権を握るという目的においては同様ですが、買手の立場が異なるのです。

さらにMBOと近しいものに、LBO(レバレッジド・バイアウト)やEBO(エンプロイー・バイアウト)があります。

LBOは譲渡企業の資産や今後期待されるキャッシュフローを担保に、譲受企業が金融機関などから資金調達をして買収すること。少ない自己資金で買収に必要な資金を確保できてリスクが小さくなるため、実際にはMBOよりもLBOのほうが行われるケースが多くなっています。例えば、ソフトバンクがボーダフォンを買収したときにもLBOが使われました。孫社長によるソフトバンク経営が「レバレッジ経営」と言われるのには、ここが原点といえます。

EBOというのは、MBOと同様の手法を経営陣ではなく従業員が行うケースをいいます。また、経営陣と従業員が一緒におこなう場合にはMEBOとなります。このように、だれがM&Aをするかで使われる用語が異なっているのです。

3.MBOをおこなうときのメリット

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MBOは主に、経営を立て直す目的でおこなわれますが、経営陣がMBOを通じて株式を持つことで大きく3つのメリットがあります。

(1)長期的な視点で経営できる

株主は、特に上場企業においてはいつでも株式を売却することができるので、必然的に会社の利益よりも自身の利益を優先しがちです。そのため、成長性を考えずに短期的な要求をすることがあります。つまり、株主が多い企業ほどあまり長期的な視点で経営ができないというデメリットがあるのです。

そこで、MBOをおこなうことで経営陣に経営権が集中し、長期的な視点で経営戦略を建てることが可能になります。その結果、会社の成長につながるのです。また、中長期的な成長戦略を実践できようになるため、社員や取引先から見ても安心できます。

(2)従業員の理解を得られやすい

他社に買収されるM&Aに比べ、現経営陣が株式を買収するMBOであれば、経営方針が変わらないために従業員は安心できます。経営陣の経営権が強固になることで、従業員のモチベーションアップも期待できるでしょう。

M&Aをして第三者に買収されると、その後の第三者がどのような経営をするのかわからないため、従業員はどうしても不安を経営陣となるため従業員には不満が生まれやすくなってしまいます。MBOであれば現経営陣が引き続き経営陣に留まるので、従業員の目線からみても安心できる手法だといえます。

(3)意思決定がスピーディになる

経営陣以外が株主の場合、意思決定の際に承認を得る必要がでてくるので、その分余計に時間がかかってしまいます。しかしMBOをおこなえば、株主を意識した短期的な収益戦略などに捕らわれる必要がありません。株主の意思=経営陣の意思となり、スピーディに意思決定ができるようになるのです。

また中小企業にとっては、株式の持ち主が社内に集中するため後継がラクにできるというメリットがあります。

そのほかに、経営権争奪を巡るTOB(敵対的買収)からの防衛策としてや、事業部門の事業会社化、中小企業の事業承継や事業譲渡など、MBOは幅広い目的に活用される経営戦略でもあります。

4.MBOをおこなう上でのデメリット

スーツの男性
メリットがある一方で、当然デメリットも存在します。実際にMBOをおこなう場合は、デメリットのほうも把握しておく必要があります。

(1)上場企業の場合は上場廃止になる

MBOによってすべての株式を経営陣が持つようになるので、上場廃止になります。上場廃止にもメリットとデメリットがそれぞれにありますが、一番のデメリットは資金調達がしづらくなることでしょう。

(2)限られる資金調達の手段

中小企業がMBOを実施する場合は、自社の株式をすべて買取るための十分な資金を持っていないケースが多くなります。金融機関や投資ファンドからの融資や出資を受けたり、SPCを活用したりして、株式を購入する資金を調達しますが、どの手段においても借りた資金を返済しなければいけません。株式の購入という、事業に無関係の借り入れが増加する点はデメリットです。

このときに、上場企業で再上場できる企業という見込みがある場合には、VC(ベンチャー・キャピタル)が融資をしてくれるケースもあります。

(3)既存株主と対立するリスク

株式を売買するときには、どうしても売手と買手の間に利益相反がおこります。一般的に考えて、経営陣サイドはなるべく株式を安く買取りたいと考える一方で、既存株主は少しでも高い価格で株式を売却したいからです。

これをうまく勧めるためには、既存株主に配慮しながら、用意できる資金と今後の経営などをしっかりと事前に計画しておく必要があるでしょう。その準備如何によっては、既存株主が買取りに応じず、MBOができなくなってしまう可能性もあり得ます。

5.MBOをおこなうときの流れ

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ここまでにも説明してきたとおり、MBOは企業の経営陣が経営権を取得することです。その際にまず必要なこととして、どのように資金を調達するかという問題があります。

そのために、まずはどのくらいの資金が必要となるのか、株式を購入する会社の企業価値を算出します。また、現経営陣は株式購入に向けて新会社を設立する必要があります。

よほど小規模な会社でない限り、経営陣がすべての株式を購入できるほどの資金を持っていることはありません。そこで、一部は自己資産を投入するとしても、大部分を投資ファンドや金融機関から資金調達をおこなって賄うことになります。その方法のひとつとして、SPCという手段を行うケースはよくあります。実際に、私がMBOを行った際にもSPCをつかいました。

SPCはもともと、リーマンショックで不動産の売買が停滞したときに不動産の流動性を高めるために生まれた方法です。これが、MBOにおいても活用できるということがわかり、現在では活用されるケースが増えています。SPCとは、特別な目的のために立ち上げる会社のことで、不動産なら不動産のための資金、MBOならMBOのための資金を金融機関や投資家などから資金を調達します。MBOで利用した場合は、MBOされた会社の子会社とするのが一般的です。

6.有名企業がおこなったMBOの事例

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有名企業でもたとえば、すかいらーく、幻冬舎、CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)、吉本興業、アデランスなどが過去にMBOを行っています。いくつかを具体的にご紹介しましょう。

(1)すかいらーくのMBOの場合

すかいらーくはMBOをした2006年当時、業績の悪化に苦しんでいました。そこで、経営陣はMBOによる上場廃止を選択し、国内最大のMBOとして大きな話題になったケースです。

その内容は、いったん非上場化して大幅な経営改革を行ない、企業価値を上げながら再上場を目指すというもの。SPCで野村HDと英系ファンドによる出資と銀行の融資を受け、当時の経営陣も少額を出資しましたが、このケースは実質LBOに近く、MBO後に当時の経営陣は解雇されています。その後、5年後の再上場を目指して、ガスト、バーミヤンなどブランド別に採算の責任を持ってもらうカンパニー制を導入。結果、非上場化から8年後の2014年に再上場を果たしました。

(2)幻冬舎のMBOの場合

数々のベストセラーを打ち出した、出版業界で名物編集者としても有名な見城社長率いる幻冬舎もMBOをおこなっています。見城社長は2010年、SPCとしてTKホールディングスを設立。ジャスダックに上場していた幻冬舎の株式をTOBによって取得し、非公開化を目指すことを発表しました。MBOの成立後、幻冬舎を存続会社としてTKホールディングスを吸収合併しています。

紙からデジタルへの転換を背景に、新たなビジネスモデルの見直しを迫られていた出版業界。そんななか幻冬舎は、大胆な経営に舵を切るためにMBOをおこないました。しかしそれ以前に、幻冬舎のビジネスは大規模な資金調達を予定もなく、上場会社である必要性に乏しかったことが理由だともいわれています。

(3)カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のMBOの場合

「TSUTAYA」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)も2011年にMBOをおこなっています。この事例は、「本当の意味で株主が非上場化の是非を判断」するものとして大きな話題となりました。

CCCの創業者である増田社長は、動画配信サービスの普及に伴い、主力事業であったDVDやCDのレンタルが縮小するなか、事業再構築のためにMBOを決意します。そこで、増田社長が全額を出資してSPCのMMホールディングスを立ち上げTOBを発表しました。

このときに取締役会は、株式の非公開化には賛同したものの、株主に対しては「TOBへの応募を特に推奨しない」という中立の立場を取りました。その背景としては、TOBにおける株式の買取価格が低かったことにあるといわれています。

上場企業のMBOの事例では、買い取り価格の評価に既存株主が納得いかないケースがみられます。中小企業においても、株価の評価額の決定においては、慎重に進めていく必要があるでしょう。


〈話者紹介〉

沖原厚則さん(2)
エクステンド株式会社 代表取締役社長
沖原 厚則(おきはら あつのり)

大阪府出身。2005年、 株式会社フィナンシャル・インスティチュート入社。2015年、MBOにより株式会社フィナンシャル・インスティチュートの経営を引き継ぐ。商号を株式会社エクステンドに変更し、代表取締役に就任。人材派遣会社のM&Aにも成功。前身の会社から踏襲した事業再生コンサルティングを軸に中小企業に特化したサービスを行っている。業務改革を専門としながら、営業、財務に至るまで幅広く指導。主な著書は『接客(販売)の実務(共著)』

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