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株式交換と株式移転はどんなものなのか?メリットとデメリット、相違点、手続きを解説

2020/11/13
更新日:2021/01/06

はじめに

株式交換と株式移転は、経営統合や事業再編などを目的として使われるM&Aの手法の一種です。それぞれどんなケースに使われるのか、活用の場面やメリットとデメリット、相違点、手続きなどについて、M&Aの専門家であるクローバー会計事務所の柴田 亮さんに解説していただきました。


1.株式交換とは

地球儀と地球儀の交換

株式交換とはどんなものなのか、その定義を説明しましょう。

(1)株式交換とはなにか?

株式交換とは複数の会社が互いの株式を交換しあうことによって、親会社と子会社という関係を成立させるM&Aの手法の一つです。相手会社の100%の株式を所有している親会社を完全親会社、100%の株式を所有されている子会社を完全子会社と呼びます。株式交換は相手の会社を完全子会社することが目的なので、すべての株式を取得することが不可欠です。

相手先の株式を取得するという点においては株式譲渡と共通するところもありますが、株式譲渡と違って、株の売買ではなく、株の交換によって成立するものであるということが大きな特徴となっています。また株式譲渡の場合は株主との間で株式譲渡契約を結ぶ必要があり、株主総会を開催しなければならないのに対して、株式交換は株主総会を省略できるケースもあり、その場合には会社間の合意だけで実行できるため、迅速な対応が可能です。

なお株式交換の比率は当事者である会社同士の間で決定され、通常は親会社の株式の比率が高くなる傾向があります。たとえば親会社の株式1株に対して、子会社の株式は1.5株などといった比率で設定されるのです。また株式の他に資産を加えて、株式の交換に当てることも可能ですが、その場合は課税対象となります。

2.株式交換と株式移転の相違点

FINANCEの文字が浮かび上がるビルの窓に映る白い雲
株式移転とはなんなのか、そして株式交換と株式移転の相違点はどこにあるのか、解説します。

(1)株式移転とはなにか?

株式移転とは、複数の会社の再編をする際の手法のひとつで、新たに持株会社(ホールディングス)を作り、既存の複数の会社の株式を持株会社に移して、それぞれの会社を傘下に納めるというものです。既存の会社は株式移転が行われることによって、持株会社の子会社ということになります。

会社の再編を目的として行われ、大企業、もしくは中堅企業以上でよく使われている手法と言っていいでしょう。

(2)株式交換と株式移転の相違点

株式交換と株式移転の大きな違いは親会社が新設されるか、既存の会社が親会社になるのかという点にあります。既存の会社が親会社となるのが株式交換、新しく設立された持株会社が親会社となるのが株式移転です。持株会社が新設された場合は、それ以外の会社はすべて子会社ということになります。

通常、子会社となった会社の中での実質的なリーダー会社のオーナーが新しい持株会社のオーナーとなります。そしてグループ全体を統括し、経営権を掌握することが多いようです。

株式交換と株式移転とでは手続きの面でも大きな違いがあります。株式移転をする場合には株式移転計画書の作成と公開、さらには株主総会での承認が必要です。つまり数多くの手続きが不可欠となるのですが、株式交換はこうした手続きが不要、もしくは省略することが可能になるケースがあります。

上場企業が株式移転を行う場合には、新しく設立される持株会社は非上場企業として扱われるため、上場審査を経て、上場基準を満たした後に上場されることになります。

3.株式交換の活用場面とメリット・デメリット

株価の推移が表示されたモニター画面

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株式交換はどんな場面で使われるのか、さらにどんなメリットとデメリットがあるのか、それぞれ見ていきましょう。

(1)株式交換の活用場面

株式交換は経営の拡大、統合などを考えている会社が他の会社を子会社化しようと考えている時に使う手法のひとつです。株式譲渡と共通する部分もあるのですが、株式の売買ではなく交換によって成立しているところがポイントです。

基本的には大企業、中堅企業などで使われることが多いのですが、未上場の親族が経営する会社をひとつにまとめるなどの目的がある場合には中小企業でも活用されます。

(2)株式交換のメリット

株式交換のメリットはいくつかあります。見ていきましょう。

①経営の効率化と合理化

経営者が複数の会社を経営していて、1つの会社にまとめたいと考えた場合に、株式交換を行うケースがあります。母体となる会社以外をすべて完全子会社化することによって、経営の効率化や合理化などの効果が期待できるからです。

②分散した株式を1つにまとめて管理

中小企業において経営者の親族の所有する株式を整理する目的で株式交換を行うことがあります。株式交換によって該当する会社を完全子会社し、少数株主をゼロにするのです。その結果、相続などで分散していた株式を1つにまとめて管理することができます。

(3)株式交換のデメリット

株式交換にはいくつかのデメリットがあります。

①手続きが煩雑

株主総会を開催しなくても株式交換はできますが、手続きは株式譲渡と比較してもかなり煩雑で手間がかかります。株券の提出公告を始めとする法的な手続きが必要だからです。

②株式の現金化が難しい

未上場会社の株式を使用した株式交換では、株式の現金化は簡単ではありません。そのために完全子会社となった会社の株主の利益が不安定になる傾向があります。

4.株式移転の活用場面とメリットとデメリット

互いの手首を握る5本の腕
株式移転はどのような場面で使われるのか、またメリットとデメリットはどんなことなのか、説明しましょう。

(1)株式移転の活用場面

株式移転は大企業同士の再編、グループ化を目的として行われることの多い手法です。それぞれの会社の組織を維持したままで、互いの関係を強化し、さまざまな業務で連携していくことが可能になるため、事業拡大、新規事業の展開などでも有効な経営戦略となり得ます。グループ化することによって、スムーズな業務提携が見込めるのです。

オーナーが複数の会社を所有していて、ひとつにまとめたいという意向を持った時に活用されることもあります。中小企業で目立っているのは事業承継対策の一環として活用するケースです。株式移転のやり方によっては相続税の節税対策としての効果も期待できます。

(2)株式移転のメリット

株式移転にはいくつかのメリットがありますが、主なものは次の三つです。

①緩やかな統合なので従業員が順応しやすい

ホールディングスを介しての統合になるので、二つの会社が完全に合併する場合とは違って、緩やかな連携となります。そのためにそれぞれの会社の自主性や独立性や文化が維持されるのです。会社の従業員にとっても環境の変化が最低限に抑えられるため、順応しやすいというメリットがあります。

②子会社間での序列がつきにくい

株式交換の場合は、二つの既存企業は親会社と子会社という関係になります。しかし、株式移転の場合、既存企業のすべてが新設した持株会社の子会社となるので、並列の関係となります。もちろん子会社同士であっても、上下関係が生じるケースも多々あるのですが、形の上では親会社と子会社といった明らかな主従関係ではありません。そのために従業員のモチベーションを保てるなどのメリットが考えられます。

③相続で有利になる場合がある

持ち株会社を作ることによって、既存会社の株値に関する相続税上の評価引き下げが期待できます。間に持株会社をはさむことによって、資産の含み益に対する法人税が38%控除されることになるので、節税のために株式移転を行うケースもあるのです。

(3)株式移転のデメリット

いくつかのメリットのある株式移転ですが、デメリットもあります。

①経営権の維持が難しくなる場合がある

株式移転を行うことによって、新たな株主が参入することになり、親会社もしくはホールディングスの株式の比率が希薄化する可能性があります。その結果、経営権の維持が難しくなるケースが考えられるのです。

②株式移転の比率がトラブルの原因となる可能性がある

株式移転において、株式の比率をどう設定するかが大きなポイントです。トラブルの原因となる場合もあるので、専門家に客観的に算定してもらう必要があります。

5.株式交換の一般的な手続き

株主総会が開催されている大きな会場
株式交換の手続きがどのようになっているのか、一般的な流れを説明しましょう。

(1)株式交換契約の締結

株式交換の比率などはそれぞれの会社の事情によって変わるため、専門家に比率を算出してもらい、その数値に基づいて交渉し、決定します。契約書に明記する必要があるのは交換比率の他に、株式交換の目的、スケジュール、完全親会社と完全子会社の商号、事業内容、資本金などの情報などです。親会社側、子会社側それぞれで契約書を作成して締結します。

(2)事前開示書類の備え置き

株式交換をする場合には事前開示書類の備え置きをする必要があります。書類に記載するのは株式交換契約の内容、対価(交換する株式の比率)、相手の企業の情報などです。書類の公開は株主総会の開催日の2週間前まで。備え置く期間は最低6か月となっています。

(3)株主総会の開催と承認決議

株主総会の開催の通知は株主総会開催日の1週間前まで(上場企業の場合は2週間前まで)にする必要があります。完全親会社と完全子会社にはそれぞれ、株式交換契約で定めた効力発生日の20日前までに株主に対して株式交換を行うことを通知する必要があり、株主総会の招集通知と併せて行うことが可能です。株主総会では効力発生日の前までに承認決議する必要があります。

ただし簡易株式交換もしくは略式株式交換に該当する場合は、株主総会の開催と承認決議を省略することもできます。

(4)株式交換の登記申請

株式交換契約で定めた効力発生日から2週間以内に、株式交換の登記を行う必要があります。通常は完全親会社の変更登記だけでいいのですが、親会社側が新株の予約権を承継した場合には、子会社側も同時に変更登記を行わなければなりません。その際に書面とともに登録免許税の支払いも必要となります。

(5)事後開示書類の備え置き

効力発生日となったら、速やかに事後開示書類を作成して、親会社と子会社の双方の本店に備え置かなければなりません。

6.株式移転の手続き

書類へのサイン

株式移転の手続きは株式交換と共通する部分もたくさんありますが、大きく違うのは株式交換契約ではなく、株式移転計画の作成をする点にあります。詳しく見ていきましょう。

(1)株式移転計画の作成

株式移転計画には株式交換の目的、スケジュール、完全親会社と完全子会社の商号、事業内容、資本金などの情報を明記します。また、株式交換と違って、発行可能株式の総数、持株会社設立時の役員編成も記載する必要もあるのです。

(2)事前開示書類の備え置き

株式移転を行う場合は、株式交換と同様に事前開示書類の備え置きをする必要があります。書類に記載するのは株式交換契約の内容、対価(交換する株式の比率)、相手の企業の情報などです。書類の公開は株主総会の開催日の2週間前まで。備え置く期間は最低6か月となっています。

(3)株主総会の開催と承認決議

株式交換と違って、株式移転では株主総会のプロセスを省略することはできません。株主総会開催日の1週間前まで(上場企業の場合は2週間前まで)に株主総会の開催を通知し、正当な手順を踏んで開催して承認決議する必要があります。債権者保護が必要な場合は、同時に債権者保護の手続きも進行します。

(4)株式移転の登記申請

株式移転の登記申請をする際の注意点は、新設した持株会社の設立登記と完全子会社の変更登記とを同時に行わなければならないということです。登記申請の完了によって、株式移転が成立します。

(5)事後開示書類の備え置き

株式交換と同じように、株式移転においても、効力発生日となったら、速やかに事後開示書類を作成して、持株会社と完全子会社の本店に備え置かなければなりません。

7.まとめ

ノートパソコンと紙資料を見ながらのミーティング
株式交換も株式移転も資金を使わずに会社の再編や子会社化が可能になるM&Aの手法ですが、株価評価や交換比率の算出、登記など、数多くの手続きが必要となります。また税務面でも税金がかかるケースもあり、かなり複雑となっているため、専門家に相談して進めていくことが必要です。株式の移動だけで、金銭の売買がなかったとしても重要度が下がるわけではありません。株式交換や株式移転を行う場合にはスピードを重視するあまり、丁寧さと慎重さを失わないように注意してください。会社は役員や従業員など、多くの人によって構成されています。また取引先をはじめ、さまざまな関わりの中で成立しているものです。社会的な存在であることを認識した上で株式交換や株式移転を上手く活用してください。

話者紹介

柴田亮さん

クローバー会計事務所
公認会計士・税理士
柴田亮(しばた あきら)

上智大学卒業。地方銀行や中堅監査法人を経て、2006年に新日本監査法人入社。上場企業の会計監査業務を経験。
2008年に公認会計士登録。財務系コンサルティングにて中堅・中小企業の株価算定・事業再生・M&A業務を経験。2011年より東京さくら監査法人のパートナーに就任。またクローバー会計事務所を開設して所長に就任。2012年に税理士登録を行い、株価算定や株式公開支援を中心として多くの企業のアドバイザリー業務に従事。

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