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借金や債務があっても廃業できる?廃業の手続きや注意しなければならないポイントも解説

はじめに

日本政策金融公庫総合研究所が2019年に行った調査によると、日本の中小企業のうち、後継者が決まっている会社はわずか12.5%。自分の代で会社を閉じることを予定している会社は、52.6%にも上りました。会社が廃業を決める一番の理由は、経営が立ち行かなくなることですが、近年、後継者不足による廃業が増えてきており、その流れはこれからも変わらないと考えられています。

現在、中小企業を経営している方の中にも、廃業を考えている方は多いと思います。また、中には、廃業したいけど借金や債務が残ってしまって、どうすればいいかわからない方もいるのではないでしょうか。そこで、中小企業の廃業に詳しい中山会計の小嶋 純一さんに、詳しくお話を伺いました。


1.廃業とは

まずは、廃業とはどのような状態を指すものなのか、廃業するには大まかにどのような手続きを踏む必要があるのかを見ていきましょう。ここでいう廃業とは、借金などで追い込まれて会社をたたまざるを得なくなった状態ではなく、経営者が自らの意志で「きれいに会社をたたもう」とするケースと考えてください。

(1)廃業と倒産、破産の違い

廃業は経営状態や、経営者の年齢、後継者不在などの状況を踏まえて経営者自ら行うものです。経営状態の先行きを懸念しての廃業が数としては最も多いのですが、近年では後継者不在による廃業が年を追うごとに増えてきています。

一方、破産は経営状態の悪化によって、支払わなければならない資金を支払えない状態のことを指します。破産は、倒産状態に陥った企業が手続きを取る必要がある法的制度です。「破産法」という法律によって規定されています。

(2)「解散」と「清算」

廃業の手続きとしては、まずは「解散」という手続きを取る必要があります。会社を解散した後に、清算して廃業という流れです。廃業時の残務や資産、負債を処理することを清算といいます。清算は、会社をからっぽにする作業とイメージしてください。

最終的な清算日を期日目標として定めて、それに沿って廃業のスケジュールを組んでいくのが一般的です。解散、清算は法的な手続きを踏む必要があり、中には「2週間の間をあけなければならない」という規定がある手続きもあります。そのため、どれだけ迅速に動いたところで「1ヶ月で清算したい」といった短期間での清算はできません。

2.廃業時の事務手続き


次に、廃業時に取らなければならない事務手続きを細かく見ていきましょう。

(1)株主総会で解散を決定する

廃業をする場合、まずは株主総会の特別決議で解散を決定する必要があります。解散の決定は、定時株主総会はもちろん、臨時株主総会でも行うことができます。なお、特別決議には株主の過半数が出席したうえで、3分の2以上の賛成が必要です。

(2)登記と関係者への通知

解散が決定したら、解散の事実を登記するとともに、関係者への通知を行う必要があります。ここでの関係者とは、金融機関などのお金を借りている人や、まだお金を支払っていない仕入先のことです。関係者へ通知を行うことを、「公告」といいます。公告の手続きを取ると、官報に解散の事実が掲載されます。

(3)公告から2ヶ月は清算できない

公告を出してから2ヶ月間は会社を清算することはできません。この期間は、関係者が廃業する会社に対して「待った」を掛けることができる期間です。

(4)解散確定申告をする

次に、解散時点での決算書類を作成します。決算書類を作成したら、解散確定申告を行わなければなりません。解散確定申告とは、事業年度開始日から解散日までの確定申告です。確定申告書は、通常の確定申告と同様のものを使います。

(5)借金や財産を整理する

会社に残っている借金や自動車、土地、機械といった財産を整理します。会社に残っている財産をお金に変えて、まずは残っている借金の返済にあて、残余財産があれば株主に分配します。すべての財産の換金が終了することが「結了」です。結了をもって、会社の法人格は消滅します。

3.取引先や従業員への告知のタイミング

突然、「明日廃業する」といっても手続き上不可能ですし、従業員やステークホルダーに多大な迷惑をかけてしまいます。円満に廃業をするには、廃業のスケジュールが重要です。スケジュールを決定する際に考慮しなければならないのが、取引先と従業員への告知のタイミングです。

(1)取引先への告知

まずは、従業員や仕入先、販売先といった取引先に廃業を伝えなければなりません。取引先とは現金でやり取りすることは少なく、請求書などを通じて取引することが一般的です。廃業して会社がなくなった後に、請求書のやり取りをするわけにはいきません。請求書を元にお金を支払ったり、受け取ったりという時間が必要になります。請求書のような、タイムラグが発生する取引は廃業が完了する前までに終えておく必要があるのです。

(2)従業員への告知

従業員に対しては、廃業決断後、できるだけ速やかに知らせてください。従業員に「明日辞めてください」といっても、多くの人は路頭に迷ってしまうでしょう。従業員は新しい仕事を見つけなければなりせんので、廃業の3ヶ月前には告知すべきだと考えます。

なお、廃業をするときには、従業員に「解雇予告通知」を出す必要があります。解雇予告通知から30日に満たない場合、不足する日数分の賃金を「解雇予告手当」として支払わなければなりませんので、注意してください。

4.廃業時に注意しなければならないポイント


ここでは、廃業時の注意点をお伝えします。対応次第では、余計な税金がかかってしまうなど、不利益を被る可能性がありますので、廃業を検討している人は必ずチェックしてください。

(1)廃業できるかどうかを見極める

まずは自社が廃業をできる会社であるか見極めなければなりません。実は、どの会社でも廃業できるというわけではないのです。資産がマイナスの状態に陥っている債務超過の会社は、廃業できません。債務超過の会社は、廃業ではなく破産の手続きを取る必要があります。会社の財産をお金に換えたときに、債務を返しきれるのかを事前にシミュレーションしておくことが必要です。

(2)関係者への通知のタイミング

関係者に通知するとき、廃業と聞いて良い反応をする人はほぼいません。これはあらかじめ覚悟しておかなければなりません。そのため、関係者へ通知するのは、関係者に迷惑がかからない範囲内でできるだけギリギリのタイミングが良いでしょう。

また、伝え方も気をつけたいポイントです。「廃業」という言葉のイメージが悪いためか、円満に会社をたたむのではないと思われがちです。「年齢もあって決断した」、「病気があり、どうしても継続が困難だった」などの伝え方をした方が、誤解なく受け入れられやすいでしょう。従業員へ伝える場合も、同様の配慮が必要です。

(3)税金の取り扱い

廃業にあたって、税金の取り扱いは注意しなければならないポイントです。清算にあたって会社の財産をお金に換える段階で、税金がかかる可能性があります。たとえば、帳簿上は500万円の価値の土地を持っていたと仮定しましょう。この土地を時価で評価し直したら3,000万円の価値があった。このような場合、差し引き2,500万円に対して税金がかかってしまうわけです。「お金がかからずに清算できると思ったのに、税金を払わなければならなくなり、清算できなかった」ということにもなりかねません。

この原因は、手続きの順番を間違えたことにあります。同じ行為を行う場合でも、順番によっては税金が異なる点にも注意が必要です。手続きの順番を間違えてしまったがために多額の税金がかかってしまった。こういった話は、中小企業の廃業では決して珍しくありません。税金の取り扱いは高度な専門知識が必要です。税理士に依頼しながら廃業の手続きを取らないことは、非常に危険なことだと認識しましょう。

5.清算時に借金や債務が残ってしまった場合

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債務超過である会社は、廃業をすることはできません。しかし、清算の段階では借金や債務が残っていても、廃業ができる可能性もあります。借金を個人で穴埋めして通常清算をするか、「特別清算」という手法を取るか、2つの道に分かれます。

(1)個人が会社の借金を返済する場合

個人のお金をいったん会社に入れて、銀行などの債権者にお金を返していくというステップを踏みます。個人で支払いが無理な場合、金融機関に借り入れをしたときの連帯保証人が支払うというケースもあります。個人が借金の穴埋めをすることで会社自体は清算をすることができるわけです。

(2)特別清算

借金や債務が残っている状態でも廃業したいときに認められているのが、「特別清算」という方法です。株式会社だけに認められていて、裁判所を通して手続きが進められます。廃業というよりは倒産のイメージに近く、債権者への支払い義務がなくなることから、廃業のようにキレイに会社をたたむことは難しくなるでしょう。

(3)自己破産と特別清算の違い

イメージとしては、特別清算は最後まで自分たちで責任を持つのに対して、自己破産は途中で責任を放り投げているというものです。

特別清算は、複数の会社を経営している場合に取られることが多い手法です。1つの会社の経営状態が極端に悪化してやめるべきだけど銀行からの借入額が大きいために、廃業できないというケースに用いられます。1社は潰しても他の会社が借入を返済するのであれば、債務者である金融機関も特別清算を認めることが多いです。

一方、自己破産の場合は違います。1社を自己破産してしまうと、経営する他の会社の経営もできなくなります。そのため、抱えている会社が複数であれば、自己破産という道は選択しづらいでしょう。

6.まとめ

手塩にかけて育てた会社の廃業を決断することは非常に苦しく、辛いことであることは十分理解できます。しかし、廃業をすることによって、大切な家族や従業員、取引先を救うことができる可能性もあることはぜひ覚えておいてください。決して、後ろ向きな選択でないことは、お伝えしておきたい最大のポイントです。ただし、廃業は思い立ってやるものではありません。ぜひ、計画的に行ってください。


話者紹介

税理士法人中山会計
常務社員税理士 小嶋 純一(こじま じゅんいち )

横浜国立大学卒業後、税理士法人中山会計にて常務社員税理士を務める。相談しやすさNo.1を体現する税理士として自社の経営の実践並びにお客様の経営のサポートを兼務。M&Aスペシャリスト及びM&Aシニアエキスパートの資格を有し、事業承継の出口をサポートするコンサルティングを15年来推進。保険会社・銀行・商工会議所・各士業等とのタイアップによるセミナーなどで講演を全国にて多数行い、身近な相談窓口として活動中。

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