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酒蔵廃業を回避するために。現状把握と生き残りのための選択肢を紹介

はじめに

酒蔵は日本の伝統的な産業の一つです。酒蔵も多くの伝統産業と同じように人手不足や経営難によって廃業する企業が増えています。酒蔵には老舗が多く、100年以上の歴史を持つ企業も珍しくありませんが、現状を変えるための手を打たなければ生き残ることが難しくなっております。

一方で、2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、多くの酒蔵が海外の品評会で評価されるなど、日本のお酒の価値が世界的に認められつつあります。
そこで今回は酒蔵の廃業を回避するために、現状把握と生き残りのための選択肢を紹介していきましょう。


1.酒類業界の市場はどのように変化している?

酒蔵の外観

まずは、酒類業界の市場環境の変化や現状について解説していきましょう。

(1)国内の酒類消費量は減少傾向

国内の酒類消費量は減少傾向にあります。酒類の課税移出数量は平成11年をピークに、成人人口が増加しているにも関わらず消費量は落ちています。
酒類消費量が減少した理由は、飲酒運転の規制強化、健康志向の高まり、若者の酒離れなど様々です。日本は人口減少社会に入っていることから、今後も酒類消費量は減少していく傾向にあるでしょう。
清酒(=日本酒)についても課税移出数量も減少が続き、平成30年度は昭和48年度の3割以下の数量となっていますが、内訳としては、普通酒の消費減少が著しく、逆にこの数年は高付加価値商品である純米酒及び純米吟醸酒の消費が増えており、清酒製造業の出荷金額は平成24年以降増加の傾向にあります。

 

(2)廃業や休業するメーカーが増加

清酒製造業の事業者数は平成30年度調査で1,378であり、そのほとんどが中小、零細事業者ですが、毎年廃業する酒蔵があり事業者数は減少し続けています。酒蔵が廃業する理由の多くに後継者、職人の担い手不足が挙げられますが、ほかにも消費量が減っていることから経営難により事業継続を断念するケースも見受けられます。

(3)反対に清酒の輸出は増加

国内では酒類消費量が減少していますが、酒類の輸出量は増加傾向です。欧米や中国などで日本食ブームが起こり、清酒もこのブームの中で人気を集めるようになりました。日本貿易振興機構(JETRO)や金融機関などがマーケティングや貿易手続など輸出や海外進出をサポートしており、清酒の輸出についてはこの10年で倍増していますが、金額や数量の観点でみると酒類消費量全体に比べてまだまだ少ない状況です。

中小企業においても商社を通じて海外にお酒を出荷している例は珍しくありません。しかし、一般的な商社はたくさんのアイテムを取り扱っており、また、関税も含めた中間流通コストの高さも問題となり蔵元に還元される利益がごく僅かということが多いです。海外進出を成功させている企業は、経営者自ら海外に足を運び顧客の開拓営業を行うなど、輸出を事業の一つの柱として積極的なマーケティング活動を行っている傾向がありますが、一般的な中小企業では資金、人材、ネットワークの制約からまだまだ敷居が高いのが現状です。

 

2.酒蔵が生き残るためにできることとは

杉玉

酒蔵が市場の縮小や人手不足を乗り越えるためにはどんな工夫が必要でしょうか。ここでは酒蔵が生き残るための方法について解説します。

 

(1)新しい販路の開拓

海外向けの販路開拓も一つの選択肢ですが、国内の販路開拓を続けていくことがなにより大切です。酒蔵の多くが酒卸企業への売上に依存している傾向があり、自社の製品を消費者がどこで買い、どの飲食店で飲んでいるかを十分に理解できている企業は多くありません。卸売企業とも連携しつつ、地道に飲食店や小売企業との関係を構築する努力が必要です。ECによる一般消費者への販売も有効なチャネルとなる可能性があります。数あるお酒の中から自社の商品を選んでもらうためにも、自社のお酒の特徴、こだわり、ストーリーを言葉にして伝えられる準備が重要です。ホームページやSNSでの情報発信の充実も期待されます。

 

(2)商品の差別化・高付加価値化を図る

商品価値を高めていき、差別化や高付加価値化を図ることも重要です。酒蔵には老舗が多く、100年企業や200年企業も珍しくはありません。しかし、この伝統が逆に変化を拒んでしまっている可能性もあります。老舗の酒蔵には地元を中心に昔からの味を応援しているファンがいるため、経営者や杜氏が味を変えることに抵抗感を持つ場合があるでしょう。

 

しかし、既存ユーザーの高齢化が進んでおり、新しい顧客の獲得が欠かせない状況においては、一般消費者の声に耳を傾け、世の中でどのようなお酒が流行っているのか、自社のお酒がどのように評価されているのかを正面から受け止め、変化を恐れずに商品の開発・改良にチャレンジすることが必要です。

 

(3)最新技術の活用

中小企業でも最新技術を活用することで、効率的な酒造りに取り組む事例が増えています。具体的な例を2つ紹介しましょう。

 

職人技を機械学習によってAIが学ぶ

日本三大杜氏の一つ南部杜氏発祥の地、岩手県にある株式会社南部美人は「南部美人」というトップブランドを持つ酒蔵です。この南部美人で日本初となる取り組みが行われています。これは東京のベンチャー企業と提携し、「ディープラーニングの技術を酒造りに取り入れる」という取り組みで、職人の技術(視覚)をデータ化しようという内容です。酒造りの再現性が高まり、次世代への技術の承継に貢献することが期待されます。

 

IoTによって効率的な温度管理をおこなう

北九州市にある溝上酒造では、酒造りに不可欠な麹やもろみの発酵温度を管理するためにIoTを活用にトライしています。酒造りでは温度管理が大切で、これまでは杜氏らが勘と経験で昼夜問わずに温度管理を実施、その間他の仕事ができず生産効率が上がらず、また職人の負担も大きいという状況です。そこで同社は地元IT企業と提携し、酒樽にセンサーをつけてスマートフォンで遠隔で温度操作することに取り組んでおり、現場の負荷軽減、少人数で生産体制を維持できるようになることが見込まれます。

3.昨今の酒蔵の売却や買収の動向とは

酒造りの様子

続いて、昨今の酒蔵を取りまく売却や買収の動向について解説していきましょう。

 

(1)後継者不在や経営難によりM&Aは増えている

20~30年前とは環境が変わってきており、酒蔵のような伝統的な業界でもM&Aが事業承継の選択肢として選ばれるようになってきました。事実、M&Aを検討している経営者からの相談も増加しています。酒蔵の後継者問題や経営難の問題は今後益々本格化することが予想され、再編の流れは続いていくと予想されます。

 

(2)許認可取得のための買収も見られる

M&Aによる買収を検討している企業の中には、地酒の酒造免許を目指している企業もあります。現在は地酒の酒造免許を新規に取得することは基本的に認められず、また許認可は工場に紐づいて認められるのが原則なので、新規に酒造りを行いたい企業にとっては、M&Aによって許認可と工場をセットで取得することが現実的な手法となります。酒造りには様々な設備に加えて、技術を持った人材も必要となるためやはりM&Aが有効です。

 

(3)異業種からの参入も多い

酒蔵の買収は同業だけでなく異業種からの参入が多いです。一般的に同業者がM&Aをする場合は買収によってスケールメリットを得たいという理由があります。しかし、酒造業は他業種と比較するとスケールメリットを得られにくいのが実情です。

 

酒蔵を売却する経営者はお金を得ることよりも、これまで続けてきた商品やブランド、従業員の雇用を守りたいケースが多いですし、買手となる同業者にとってもブランドを活きた形で引き継がなければ買収の意味がありません。地酒ブランドの価値、歴史は地域性が強く、工場をなくす前提での買収は検討しづらく、「工場を集約して人件費・製造経費を大幅に削る」といった経営は望めません。

いくつかの酒蔵を傘下に収めてグループ経営を行っている会社もありますが、最近はこのような動きは活発ではなく、酒蔵経営で収益を上げていくことの難しさが垣間見えます。

 

異業種の参入の場合は、販売面でシナジーのある会社が参入するのが一般的です。例えば飲食店や小売店を経営している企業が酒蔵を買収すると、オリジナルブランドを作ることができます。これまでの実際のM&A成約事例でという観点では、地元の有力企業が伝統文化と雇用を守るためにスポンサーとして支援しているケースも多く見受けられますが、最近では、海外ネットワークを持っている会社が清酒を海外で販売したいというニーズ、中国をはじめとする海外企業が酒蔵に投資したいというご相談が増えております。

 

4.酒蔵のM&A実例を詳しく紹介

酒米の仕込み

紹介できる事例としては、買手は高級車の販売をコア事業とする中堅企業、売手は売上2億円従業員30人規模の酒蔵のM&Aの事例が挙げられます。

買手は商品を購入してくれた顧客への手土産、グループの飲食店での販売、社員の婚礼時の贈答利用などのためグループ企業を合計すると毎年1億円程度お酒を仕入れていたこと、海外ネットワークを活用した輸出も見込めることから、自社でオリジナルのブランドを持つという案が浮上しました。

売手としては自社の経営努力による立て直しに限界を感じていたところ、M&Aによって酒蔵の売上が大きく伸び、経営が安定することが期待できるためM&Aが成立しました。補助金を受け入れていたため、自治体の承認が必要でしたが、丁寧に必要性を説明したことで経営譲渡に理解を頂くことができました。

 

同じように内製化したいという観点で、飲食店グループが自社ブランドを持つためにM&Aを行なった事例もあります。しかし、単にM&Aをしただけではシナジーが発揮できません。酒蔵を買収した居酒屋チェーン本部がグループ内に十分に周知しなかったため、各店舗の仕入れの商品切り替えが進まずシナジーを発揮できなかった失敗事例もあります。M&A後の統合戦略・成長戦略についても十分に検討して取引を進めていきましょう。

 

5.酒蔵におけるM&Aのメリットとデメリットとは

大樽

酒蔵がM&Aを行う場合のメリットとデメリットは何でしょうか。それぞれのポイントを紹介していきましょう。

 

(1)M&Aを実施するメリットとは

売手のメリット

売手がM&Aを検討する理由は人材不足や経営難の解決が挙げられます。後継者がいない場合には経営権を譲ることで長く続いたブランドや従業員の雇用を守ることが可能です。また、酒造業はタンクにお酒を貯蔵し、寝かしてから出荷することが多いため運転資金(在庫資金)が必要な業種ですし、建物や設備が老朽化していても設備投資資金を捻出できていないという企業も多いです。資本力のある企業の傘下に入って財務面の支援を受けられることも期待できるでしょう。

 

買手のメリット

買手は酒蔵の持つ許認可や酒の製造ノウハウ、設備や人材、既存ブランドと酒造りに必要な全ての要素を得られるのがメリットです。売手は販売力が課題としている場合が多いため、販路を提供できる場合はシナジーを発揮しやすいといえるでしょう。

 

(2)M&Aを実施するデメリットとは

売手のデメリット

M&Aによって売却する企業はこれまでの経営で上手くいっていないケースが多くあります。同じ商品を同じように売れば良いという時代ではなくなり、様々なニーズに対応する必要が出てきました。自らの価値観、経営方針ばかりを押しすぎると買手の戦略・ニーズとかみ合わない可能性があります。M&Aによって、ある程度買手の考え方に合わせる必要が生じることには留意が必要です。

 

買手のデメリット

酒蔵経営は地域社会と密接に紐づいています。ブランドを守り、会社のアイデンティティを保ちながら長期的な目線で酒蔵を育てていく姿勢がないと周囲の理解を得られず企業価値を毀損してしまうリスクが高まるでしょう。

 

6.まとめ

清流

酒蔵を取りまく環境は厳しく、多くの企業が事業継続に懸念を抱えています。人口減少によって長期的に成長が見込める業界ではありません。しかし、特定名称酒の需要が増えていたり、輸出市場は好調に伸びていたりと、収益増加の機会を捉える工夫次第では企業を成長させることは可能です。

 

成長戦略を描いてもそれを実現するための経営資源(資本・人材・ネットワーク)に恵まれていない、というのが中小企業の実情です。自社に足りない要素を他社との提携によって補完することができる手法としてM&Aが有効です。今後は後継者難や資金難の解決という消極的な理由だけでなく、自社の長期的な発展のための前向きな手段としてM&Aを活用する例が増えてくることを期待しています。

 

M&Aを検討される場合には、専門家に相談することで候補先の情報提供・紹介や、具体的な進め方についてのアドバイスを受けることができます。初期相談は費用がかからないことも多いので、積極的に専門家を活用して頂くことをお勧めします。我々も歴史と文化の継承の一助になれたら良いなと思います。

 

〈話者紹介〉

小森勝仁さん

山田コンサルティンググループ株式会社

経営コンサルティング事業本部 副部長

小森 勝仁(こもり かつひと)

早稲田大学法学部卒業後、山田ビジネスコンサルティング株式会社(現 山田コンサルティンググループ株式会社)に入社。中堅・中小企業の事業再生案件を中心に事業計画策定・実行支援業務、M&Aアドバイザリー業務に従事。東日本大震災で被災した酒蔵の復興計画策定、老舗酒蔵のスポンサー企業への譲渡支援など酒類関連業界での役務提供実績多数。

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