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増加する保育園(保育所)のM&A!保育業界のM&A動向と事例をわかりやすく解説

はじめに

女性の社会進出や保育士不足を背景に、都市部を中心に待機児童の問題が深刻化しています。国をあげての子育て支援も制度化されたことで、保育園(保育所)市場は好調に推移しています。また、多くの事業者が売上を伸ばしていることから、業界内のM&Aや異業種からの新規参入も目立ってきています。ここでは、保育業界の現状やM&A動向・事例、保育業界のM&Aを成功させる売却のポイントについて、かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社の佐武伸氏に伺います。


1.保育業界の市場環境について

1.保育業界の市場環境について

著しい少子化と女性の社会進出とともに、都市部を中心に待機児童の問題は深刻化しています。当然のことながら、今後も待機児童の増加が見込まれることから、民間の大手保育関連企業を中心に保育園を開設する動きが活発化しています。実際、保育園と託児所を対象にした調査結果によると、2018年度の市場規模は前年度比6%増の3兆3,500億円と言われており、今後も拡大基調にあると見られています。

しかし、その一方で保育士の人材不足はより深刻です。厚生労働省では、待機児童の解消を目指し、2020年度末までに約32万人分の保育の受け皿を確保するとしていますが、保育士の有効求人倍率は依然として高く、保育士の確保が喫緊の課題となっています。さらに、保育士養成施設で保育士資格を取得したとしても、実際に保育園などに就職するのは約半数程度とも言われ、仮に就職したとしても、半数が5年未満に退職してしまうという調査結果もあります。

保育士が早期離職を決断する理由はさまざまですが、責任の重さや事故への不安、保護者との関係性に悩んでいる方も少なくありません。そのため、保育士確保や離職防止のために、労働条件や職場環境の改善に取り組んでいる保育園も増えています。

近年の保育業界において、多様化する保護者のニーズに対応したサービスを提供する保育園も増加しています。例えば、内閣府が平成28年度から始めた取り組みで、企業のニーズに応じて、企業が設置・運営する「企業主導型保育所」。また、企業が従業員に対する福利厚生の一環として、企業の内部や近隣に設置・運営する「事業所内保育所」。特に、女性従業員の多い企業では、企業内に保育園を設置することで、子育て中の従業員の助けになるだけでなく、企業全体のブランドイメージ向上にもつながります。こうした動きは医療、介護、人材サービス、金融など、さまざまな業界で増えていくと考えられます。

子どもを預けたくても預けられない保護者が数多くいることから、大手民間保育関連企業にとっては、大きなビジネスチャンスと捉えられています。保育園の多くは社会福祉法人の運営で、民間企業運営の認可保育園は多くありませんが、今後、民間の保育関連企業の参入が増加していくと考えられています。


2.保育業界のM&A動向

2.保育業界のM&A動向

前述したように、大手民間保育関連企業による保育園開設、他業界からの新規参入の動きが目立っています。前者は保育士確保や市場シェアを拡大するための戦略として、後者は既存保育所の運営ノウハウ獲得のための戦略として、M&Aを活用しています。

保育所の設立・運営は決して簡単なものでなく、異業種から参入する場合、国の定める基準をクリアし、都道府県知事の認可を受ける必要があります。さらに、開設するにあたって新たに保育士を採用するコストもかかります。ゼロから保育所を設立するよりも、M&Aをした方が短期間で経営資源、顧客を取り込むことができるので、異業種からの参入においてM&Aは効率的な手段と言えるでしょう。

異業種からの新規参入では、既存事業とのシナジー効果獲得を狙ったM&Aも見られます。例えば、学習塾が新たに保育園を買収することで、顧客層やサービスの幅を広げることができ、売上の拡大が期待できます。また、不動産管理会社が新たに保育園を買収することで、自社が抱える不動産を有効活用でき、不動産のバリューアップが期待できます。

地域的な特性で言えば、待機児童が多い首都圏で買収ニーズが高まっています。とりわけ人口密度が高い首都圏における保育園の増加は顕著で、今後もこの傾向は続くでしょう。保育園には「認可保育園」と「認可外保育園」がありますが、国や自治体から運営費の補助を受けられる認可保育園に比べて、認可外保育園は基本的に自費運営しているため、都市部の賃料が負担になっているケースが見られます。M&Aのニーズから見ても、国の基準をクリアしているという安心感ゆえに認可保育園を買収したいという企業が増えています。

認可外保育園でM&Aのニーズが高いのは、独自の教育方法を持っている施設です。認可外保育園は、サービス内容を自由に設定できるメリットを生かし、英会話や体操など、子どもたちの成長につながるような教育に力を入れている園もたくさんあります。認可外だからと言って売却できないと考えるのは早計です。他の園にない特徴があれば、買手からも十分興味を持ってもらえるはずです。

これまで、保育業界における買手ニーズの高まりについて紹介してきましたが、その一方で、売却を検討する保育園も増えています。近年、保育所の売却動向として増えているのが、社会福祉法人による売却です。公益性が高く、小規模の事業体が多いことから、民間ほど利益を得ることができません。保育士の労働環境や待遇改善にまで資金を回せず、保育士が離職してしまい、経営を続けることができなくなった保育所を売却するというケースも見られます。


3.保育業界のM&A事例

3.保育業界のM&A事例

M&A・事業承継を検討している方へ

当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。


近年では、売手の後継者不在や業績悪化による廃業を避けるために、第三者への承継を視野に入れたM&Aが活用されています。ここでは、保育業界におけるM&Aの事例を紹介します。

資生堂とJPホールディングによる合弁会社設立

株式会社資生堂と株式会社JPホールディングスは、2017年2月に事業所内保育園の運営受託などを事業の柱とした合弁会社「KODOMOLOGY(コドモロジー)株式会社」を設立。働く女性の育児と仕事の両立に早くから取り組んできた資生堂と、認可保育園を中心に日本の子育て支援を展開してきた民間保育関連企業最大手のJPホールディングがともにお互いの企業資産を活用し、事業所内保育園の運営受託を行うことで話題になりました。運営ノウハウや採用はJPホールディングスのノウハウを活用していくとともに、事業所内保育の新しい姿を提示するものとして期待されています。

双日グループによるアンジェリカの株式取得

双日のグループ会社である双日総合管理株式会社は、保育所の運営会社である株式会社アンジェリカの全株式を取得し、保育業界に参入しました。アンジェリカは2004年から保育所の運用を開始し、農園、食育、絵本、英語、リズム(音楽)にこだわりを持った質の高い保育を実践しており、現在、東京23区内に15施設を運営しています。双日グループの一員となることで、働く人や住まう人に対して高い付加価値を提供できるとしています。

アドバンテッジパートナーズによるやる気スイッチグループホールディングス買収

株式会社アドバンテッジパートナーズがサービスを提供するファンドが出資する特別目的会社は、株式会社やる気スイッチグループホールディングスの全株式を譲り受けました。やる気スイッチグループは傘下の子会社を通じて「スクール IE」で有名な個別指導塾や英会話スクール、幼児教育、託児保育などの運営を行っています。やる気スイッチグループの経営基盤を強化して、将来の上場を目指すと考えられています。投資ファンドも保育業界に参入した事例として話題になりました。


4.買手が見るポイントと、売却のポイント

4.買手が見るポイントと、売却を成功させるポイント
保育園の売却を考えるとき、「できるだけ高い価格で売却したい」という方は多いと思います。ここでは、M&Aを成功させるために、買手が見るポイントを紹介します。

【買手が見るポイント】

①保育園の立地

保育園のM&Aでは、当然のことながら立地が重視されます。駅周辺や住宅・マンションが密集する地域の保育園は、買手がつきやすいでしょう。

②保育園のブランド・商標の継続利用

地域住民から高い認知度を誇る保育園をM&Aできれば、既存の顧客を獲得できるだけでなく、効率的なブランド展開が見込めます。地域に密着したブランドかどうか、また、そのブランド名を継続して利用できるかどうかは、M&Aを行う上で問題になります。買手がそのブランド名を継続して使用したいという場合、商標の使用料、利用期間などを交渉してみるのも一つの手です。

③行政機関からの注意・保護者からのクレーム

保育園は公共性が高い上、サービス業として捉えられています。そのため、大手民間保育関連企業だとしても、行政機関からの注意喚起や保護者から寄せられたクレームなどを気にします。過去にどんなクレームが何件あったのか、そこでどんな対応を行ったのか、状況把握できるようにリストにしておくと良いでしょう。

④保育士の定着率

保育園を運営していく上で、保育士の存在は欠かせません。保育士が流出してしまっては、提供しているサービスのクオリティの維持も難しくなるため、保育士の定着率は重要なポイントです。仮に保育士の定着率が低い場合、原因が待遇にあるのか、労働環境にあるのか、原因を突き止めておくと良いでしょう。

⑤地域や保護者のニーズに合ったサービス

教育水準の高い地域であれば、ただ、子どもを預かるだけでなく、英語や体操といった子どもの成長を支援する取り組み内容も重要視されます。地域や保護者のニーズと、施設の提供するサービスが合っているかどうか確認しましょう。

【売却を成功させるポイント】

①経営課題は伸び代として捉える

どんな保育園でも何らかの経営課題を抱えていると思います。これからM&Aを検討する上で意識したいのは、経営課題をネガティブなものとして捉えるのではなく、「伸び代」として捉えること。つまり、自分たちで解決できない経営課題を解決してくれる買手かどうかを、買手選びの基準にすべきです。例えば、保育士の採用に課題を感じているのであれば、採用に強い買手と組む方が良いですし、資金が不足しているのであれば、資金に余裕がある買手と組むことがM&Aを成功させるポイントになります。

②赤字の原因を明らかにする

「赤字だから売却できない」と考える方もいますが、そんなことはありません。保育園を売却する上で、重要なのは赤字の原因を明らかにすること。例えば、赤字の原因が保育士不足にあるとしましょう。その場合、保育士が不足していて売上がこの程度にとどまっているが、保育士を採用できればここまで売上を伸ばせると語れるのと、そうでないのとでは説得力が違います。さらに、赤字の原因を解消できた状態の事業計画を準備しておけば、その伸び代が買手から高く評価されることも珍しくありません。

③保育士の引き抜きを目的としたM&Aに注意

M&Aのプロセスを進める上で、買手から従業員リストの提出を求められる場合があります。中には保育士の引き抜きを画策する買手もいるため、個人名などの固有名詞は伏せた方が安心です。それと同時に、M&Aが従業員に与える影響は大きく、不安を感じる保育士は多いものです。保育士の離職につながらないよう、情報漏洩には注意しましょう。従業員に開示するタイミングは最終契約書を締結した後が望ましいでしょう。

④成約後は速やかに保護者説明会を開催

保育園の運営において、保護者との信頼関係は重要な要素。保護者の反応を心配する買手がほとんどです。保護者の理解を得るためにも、M&Aが完了した段階で速やかに保護者説明会を行い、買手が安心できる企業であることや、子どもを預かる上ではM&A前と何も変わらないことを伝えましょう。

⑤行政とのコミュニケーションは密に行う

M&Aを行うことで、買手は売手の許認可を引き継ぐことができ、効率良く事業を始めることができますが、認可保育園などは、国や都道府県知事の認可を受けて保育事業を行っているため、M&Aを実行するにあたっては行政の事前手続きを完了させる必要があります。売手または買手によっては、この事前手続きがなかなかスムーズに進まない可能性もゼロではないため、M&Aのプロセスを進める際に必ず行政との相談は早めに行いましょう。


話者紹介

佐武 伸さん
かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社
代表取締役
佐武 伸(さたけ しん)

朝日監査法人 (現あずさ監査法人) にて上場企業数十社の会計監査、システム監査、株式公開準備 (IPO) プロジェクト等に参画。その後、奥田公認会計士事務所で中堅・中小企業の国内・国外税務戦略立案、株価対策、IPO等の幅広いコンサルティング業務に従事。専門はM&Aコンサルティング、企業評価、会計・税務コンサルティング。現在、かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社代表取締役、かえで監査法人・かえで税理士法人代表社員。米国サンダーバード国際経営大学院卒(MBA取得、国際経営及び企業評価専攻)。

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