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アパレル業界のM&Aとは?その実態を詳しく解説!

2020/05/20
更新日:2020/05/21

はじめに

ブティックや紳士服など服飾を販売する小売店(いわゆるアパレル業界のショップ)は、80年代には過当競争といわれるほどの隆盛を誇っていました。しかしながら、バブル経済崩壊に伴う全国的な景気の後退に加え、特に若年層における消費動向の変化に伴い、アパレル業界ではかつての勢いが次第にしぼみつつあります。
同時に、アパレル業界自体の販売戦略も、年ごとに大きく変容してきており、時代の潮流にうまく乗れずに売上不振にあえぎ、閉店に追い込まれたり倒産を余儀なくされたりするケースも少なくありません。

このような情勢もあり、M&A市場ではアパレル業界関連の案件が活況を呈しています。そこで、アパレル業界のM&Aに詳しい、西村あさひ法律事務所弁護士の柴原先生に詳細を解説していただきました。


1.現在のアパレル業界の情勢

1.現在のアパレル業界の情勢

一見きらびやかで華やかに見えるアパレル業界ですが、その内実は様々です。アパレル業界は、消費者動向がトレンドに敏感に反応しやすく、先行きが読みにくい業界ともいわれています。

それだけに、アパレル業界にM&Aを仕掛ける買手側としては、現状を正確かつ的確に判断することがM&Aを成功に導く大きな鍵であるともいわれています。そんなアパレル業界の現状について分析してみましょう。

(1)現在起きている問題点

景気後退が叫ばれて久しいアパレル業界ですが、M&Aを実行するにあたっては、業界で起きている現在の情勢とその問題点を正確に把握し、しかるべき対応策を事前に練っておくことが重要です。アパレル業界が抱えている代表的な問題点を列挙してみましょう。

①ハイブランドとカジュアルの2極化

いわゆる「ブランド」と呼ばれる高額なハイブランド品は、それほど人気が衰えてはいません。そして「ユニクロ」「しまむら」など、大手に代表される比較的安価なカジュアルショップも、若者を中心に安定した人気を維持し続けています。

問題なのは、ハイブランドとカジュアルの中間に位置するショップです。カジュアルより少し高めだがハイブランドとはいえない中間層のショップが次々に厳しい状態に追い込まれており、アパレル業界は現在「2極化」しているといってもよいでしょう。

すなわち、今の消費者は「贅沢にハイブランドの服を買う富裕層」と「安価でもそれなりの品質の服を買う一般層」の両極に別れてしまっているというのが現実なのです。

②購買志向の転換

2000年代後半からEC(電子商取引)、すなわちネット上の仮想店舗が急速に売上を伸ばしたことが、現在のアパレルショップの閉店を導いた大きな要因とも指摘されています。ECの利点は、なんといっても店のテナント料や店員の人件費などのコストが抑えられることで、その分販売する品物の価格をディスカウントできる点にあります。

しかしながら、アパレル業界ではほんの少し前までは「いくらECが普及しても、自分が着る洋服を手にとって見もせず、試着もせずに購入する客は少ないだろう」という見方が大勢を占めていました。実際にECがスタートした初期はそのとおりだったのですが、2010年代に入ると、ECに偏見がない、主に若者層において「洋服もネットで買う」ことが普通になってきたのです。

たしかに、1980年代から90年代にかけて「カタログ販売」が隆盛を極めた過去の実例を鑑みると、EC全盛という現在の状況もあり得たはずなのですが、これほどまでに急速にECが進むというのは想定外だったのかもしれません。

(2)従来から続く問題点

ECの急成長が不景気の大きな外的要因となっていることは確かではありますが、現在のアパレル業界の不況は、業界自体の構造的問題点が内的要因となっていることも指摘されています。過去から現在に続く業界の問題事項を挙げてみましょう。

①トレンドに左右される

元来、ファッションの世界では流行の移り変わりが激しいといわれていました。それでも以前は、一度流行した服のデザインなどはある程度長続きしていたものですが、この10年ほどでトレンドのサイクルはかなり短くなってきています。アパレル業界としては、「トレンドの消費期限」の見極めが年々難しくなっているのが現実です。トレンドの流行り廃りに一喜一憂することが多くなっていることもアパレル業界を覆う深刻な現状といえるでしょう。

②大量の在庫が発生

トレンドの見極めが現実と乖離してしまうことにより、大量の在庫が発生することが大きな問題点として挙げられます。大量消費の現代だけに、業者側は「流行りもの」となれば大量生産して、短期間にできるだけ数多くさばき、利益を得ようとします。ところが、トレンドの熱が冷めると、大量の在庫を抱えてしまうという困った事態に陥ってしまうのです。

③貿易取引の際に起きるリスク

アパレル業界である程度の規模になると、服飾の製造を海外に発注することが多くなっています。製造における人件費を考えると、日本と比べて人件費が安価なアジア諸国に品物の発注をするのは道理にかなっています。

しかし、同時期に輸入元の国にトラブルが発生した場合、期限までに品物が入ってこないというトラブルも発生することがあります。

上記のように、近年アパレル業界にはいくつかのマイナス要因が重なり、苦境に立たされる会社が相次ぎ、それに比例してM&Aが増加している傾向にあるのです。

2.アパレル業界におけるM&Aの実態

2.アパレル業界におけるM&Aの実態

いわゆる「アパレル系ショップ(服飾の実店舗)」は、M&A市場において現在人気案件となっています。買手側の企業は、アパレル業界のどの部分に魅力を感じてM&Aに乗り出しているのでしょうか?

アパレル業界におけるM&Aの実態をみてみましょう。

(1)株式譲渡の場合

M&Aでは「株式の譲渡」が最も頻繁に行われているケースです。売手側が自社株を買手側となる企業に譲渡する方式が「株式の譲渡」で、ごく単純に株式を移動させるだけなので手続も簡単というメリットがあります。買手側企業は、売手であるアパレル企業の株式を握ることにより、実質的に自社の傘下に収めることができるという構図で、買手側にメリットが大きい方法です。

ただし、株式譲渡方式では、売手側企業が抱えている様々な問題点も、株式と一緒にそのまま買手企業に移行してしまうというデメリットもあります。
さらに、買収後に多額の負債が発覚したり、簿外債務が判明したりするリスクも絶対にないとは言い切れません。また、労働組合やテナントの大家とのもめごとなど、内部に入らねばわからないトラブルを抱えているパターンも少なくありません。
株式譲渡を行う場合には、このような不測の事態を防ぐためのリスクヘッジが求められます。

(2)事業譲渡の場合

アパレルショップの事業自体を譲渡する方式も少なからず見受けられます。アパレル業界に参入を希望している企業や、事業拡張に意欲的な企業が「当社なら再生可能」と判断し、事業をそのまま承継するケースです。
実際には、売手側のよい部分のみをピックアップして事業を継続させ、買手側が「不要」と判断した部分は切り捨てるということが起きています。業界用語で「チェリーピック」といいます。「つまみ食い」を意味する英語で、鳥が熟したさくらんぼの実の部分だけをついばむさまになぞらえたと言われています。
「チェリーピック」によって、問題のない部分を集中して伸ばすことが可能となり、同時に従業員の選別もできるというメリットがあります。また、数店舗が同時運営されている場合には、黒字店舗だけを買収するという買手側にメリットのある戦略が実現できるわけです。

「チェリーピック」方式での事業譲渡は、買手側には大きなメリットがありますが、黒字店舗だけが買収成立したあとに赤字店舗の処理をどうするか、という問題が残ります。売手側が途方に暮れることになりますので、この問題がクリアできなければM&A自体も成立しないということになりかねません。

また、ショップ(実店舗)の大半はテナント契約をしているので、店のオーナーが交代するとなると、テナントの貸主から承諾をとる必要があり、すんなり貸主の了解が得られるかどうかという問題もあります。

(3)会社分割(包括承継)の場合

売手が経営する会社を分割した上で経営権を譲渡するのが「会社分割」方式で、「包括承継」ともいいます。この方式なら、テナント貸主の承認が法律上は不要となる場合が考えられます。ただし、テナントの賃貸契約書に「店舗の経営者の変更の場合は必ず貸主の同意を得ること」という内容の条文がある場合は、同意が必要になる可能性があるので注意が必要です。買手側が包括承継を望むケースでは、店舗の賃貸契約書を精査する必要があるのはいうまでもありません。

買手側のメリットが大きい会社分割方式ではありますが、従業員の承継については、そのまま承継すると従業員に与える影響が大きいため、「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する 法律(労働者契約承継法)」によって、労働者の立場は法的に保護されています。

買手側は、この法律の内容と趣意を把握しておく必要があります。同法の要点を念頭に置いてM&A交渉に入ることが大切です。

M&Aにおける労働問題に詳しい弁護士など、法律の専門家に相談して対応することが望ましいでしょう。

3.アパレル業界のM&Aを成功に導くポイント

3.アパレル業界のM&Aを成功に導くポイント

M&A・事業承継を検討している方へ

当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。

M&A市場で活況を呈しているアパレル業界ではありますが、かといってあらゆるケースでM&Aが容易に運ぶというわけではありません。トレンドに左右されやすく、加速度的に成長を続けるECというネット上の強力なライバルが存在するだけに、対応策を誤ると不調に終わる実例が存在しています。

以下に、M&Aを成功させるためのポイントを挙げてみましょう。

(1)業界のトレンドと市場動向を分析

流行の移り変わりが激しい業界だけに、これからのトレンドや、立地条件で異なる市場性を事前に分析し、それらの結果が果たして対象案件に合致するのか否かを判断する「目利き」も、アパレル業界のM&Aでは必要不可欠な項目です。

(2)デューデリジェンスを入念に

買手側の現時点での経営状況などを調査することを、M&Aの現場では「デューデリジェンス」といい、重要な事前作業と位置付けています。売手側が複数のショップを経営しているケースでは、それぞれの店舗について、黒字なのか赤字なのかだけでなく、その理由まで綿密に調査する必要があります。特に、店長の資質や固定客の比率なども重要なチェックポイントです。場合によっては、買手側と売手側の責任者同士が合同で検証作業をすることも必要でしょう。

(3)将来性の見極め、タイミングを測る

アパレル業界を対象とするM&Aで最も神経を使うべき項目は、対象案件を実際に稼働させた場合の将来性の見極めといわれています。それに加え、デューデリジェンスによって決まった「ゴーサイン」を、どのタイミングでスタートさせるかも大きな課題点です。早すぎても遅すぎても失敗するリスクがあるだけに、この点においては過剰過ぎるくらいに計画を練り上げることが望ましいでしょう。

4.まとめ

アパレル業界に限ったことではありませんが、実店舗を運営する企業のM&Aにおいては、処理しなければならない事案が多く、それらの対応と煩雑な手続などに忙殺されることもしばしばです。そのため、進捗管理に悩むM&A仲介会社も少なくないのが現実のようです。

また、いかに「やる気がある」M&A仲介会社であっても、「実際の実務対応能力」が「やる気」に比例するという保証はありません。細かい作業や煩雑な手続が多くあるだけに、アパレル業界のM&Aを成功させるには、M&A仲介会社の適応能力と同時に「本気度」の高さ、実現できる見込みを正確に測ることが買手側企業には必要とされます。

まずは売手企業が置かれている現状と実店舗の経営状況を、買手側が正確かつ的確に掌握することが重要です。そして、自社のニーズに適合したM&A仲介会社を選択し、なおかつ買手側企業の担当者が主体的に行動することによって、ようやく成立となるのがアパレル業界のM&Aであると理解されておいてください。


話者紹介

柴原 多さん
西村あさひ法律事務所
弁護士 柴原 多(しばはら まさる)
1996年、慶應義塾大学法学部卒業。1999年に弁護士登録(東京弁護士会)。
長年にわたり、M&A案件、事業承継・事業再生案件等を担当。M&A案件は大型案件から中小企業案件まで幅広く対応し、企業の資金繰り対応・経営者保証の相談にも従事している。また訴訟案件も、企業の紛争案件を中心に広く関与している。
最近の執筆としては、「相続法制改正のポイントと銀行実務論文」(共著、銀行実務2018年7月号)、「事業承継を考える際には、後継者及び従業員への配慮も大事」(日経MOOK「よくわかる事業承継&経営者の相続」)、等。

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