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ガラス加工業界の現状とM&Aを成功させるためのポイントを徹底解説!

2020/05/27
更新日:2020/05/27

はじめに

ガラス加工業界は、リーマンショックの影響を大きく受けた業界の1つです。リーマンショック後、経営改善を図りながら企業を存続させるべく努力を続けてきました。しかしながら、建築用や自動車用の需要が戻らないなどの先行き不透明感により、事業を譲渡せざるを得ない企業も現れ、M&Aによる業界再編が進んでいます。

一方、スマートフォンやタブレット用の需要の広がりや、特別な機能を付加した商品を開発することにより、業績回復の明るい兆しも現れ始めています。

ここでは、かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社の八木敦史さんに、ガラス加工業界の現状とM&Aの動向について詳しくお話を伺いました。


1.ガラス加工とは

ガラス加工とは、基本となる「板ガラス」をニーズに合わせてサイズを変えたり穴をあけたりして、様々なデザインに成形することです。

形を変えるだけでなく、ガラスそのものに付加価値をつけた安全性の高い防犯ガラスや強化ガラス、環境を考慮したエコガラスなどもあり、その製造品の種類は多岐にわたります。これらは、建築や自動車メーカー、電気メーカー、スマホメーカーなど各産業に卸されています。

2.ガラス加工業界の現状

ガラス

2008年のリーマンショックがガラス加工業界に与えたダメージはとても大きいものでした。売上は半分近くに落ち込んだほどです。特に、建築や自動車関連の需要の落ち込みによるダメージは大きく、中小企業はなんとか経営を回して窮状を凌いでいる状況です。

その後、パソコンやゲーム機、携帯電話、カーナビなど薄型ディスプレイの用途が広がり、各社は市場の変化やニーズに合わせて技術革新に取り組んできました。その結果、液晶ガラスの分野において、日本企業は世界トップクラスのシェアを誇るまでに成長しています。

自動車用ガラスの分野においては、耐久性や強度に優れたガラスファイバーの需要が今後も高まることが期待できます。また、環境意識が高まるにつれ、太陽光パネルのための需要も増え続けるでしょう。

日本のガラス加工業界は、こういった市場のニーズに合わせて柔軟に対応することで成長してきました。しかし、市場のシェアは、上位3社が独占している状況が続いています。

上位3社のうちの1つであるAGC株式会社は、売上高・シェアともに最大手。2018年7月に旭硝子からAGCに社名変更しており、フロート板ガラス、自動車ガラス、ステッパー用レンズに使用する石英素材、ETFE樹脂においては世界ナンバー1のシェアを誇っています。国内需要の動向から早くに海外展開を図り、グループ企業は約210社となっています。

ガラス加工業界は、国内の需要は縮小傾向ですが、世界全体でみれば拡大傾向にあり、早い段階で海外展開に乗り出した企業は成長し続けているのです。しかし、これまでは日本が大きなシェアを占めていた液晶ガラスの分野ですが、昨今は中国企業の追い上げが激しく、低価格化が進んでいます。

海外の商品は、品質の面で日本製品より劣っていましたが、その品質も徐々に向上し、低価格を武器に競争力を高めています。中国のみならず、台湾や韓国企業の市場参入もあり、日本企業には今後さらなる付加価値をつけた新商品の開発が望まれるでしょう。

3.ガラス加工業界におけるM&Aの動向

ここでは、ガラス加工業界におけるM&Aの動向を説明します。

(1)国内需要の低迷による海外進出

ガラス加工業界は、リーマンショック後、国内需要の低迷が続いています。国内需要が伸び悩んでいるところへ海外企業が進出し、競争は一層激しいものになっています。国内での事業拡大が見込まれないなか、一つの解決策として市場が拡大しつつある海外への進出が欠かせません。海外でゼロから事業を立ち上げるより、海外企業を買収することでスピーディーかつ成功確度を高めた海外進出が可能となるでしょう。

(2)国内企業における業界再編

国内の企業間においては、業界再編の動きが活発化しています。海外展開への足がかりとするためのM&Aも多いですが、高機能・高付加価値をつけたガラス製品を供給している企業を買収することで、新しい技術や人材の確保を図っています。

ガラス加工業界は狭い業界であるため、同業への事業譲渡だと噂が広まりやすいといった特徴があり、異業種企業への譲渡を希望するケースが多いようです。また、隣接事業とのM&Aも少なくありません。たとえば、建設や自動車などの関連企業が買収するといったケースです。

また、同業同士のM&Aは敬遠されがちですが、エリア拡大のためや別ジャンルの商品獲得、販路拡大のための買収はあります。M&Aによって事業の「集中と選択」を行う企業は、今後も増え続けるでしょう。

(3)経営者の高齢化によるM&A

ガラス加工業界のみならず、日本の中小企業は深刻な後継者不足といった問題を抱えており、後継者問題を解決するためのM&Aも活発に行われています。今後は、IT化やグローバル化により、今までと同様の経営では生き残ることが難しいと予想されます。そういった市場の変化に対応するため、大手企業へ事業譲渡したり、社外の優秀な第三者へ企業自体を引き継いだりと、様々な理由からM&Aが活用されるでしょう。

4.ガラス加工業界においてM&Aを行うメリット

人の指

それでは、ガラス加工業界においてM&Aを行うメリットについて説明します。

(1)従業員の雇用を守ることができる

M&Aを行うことの一番のメリットは、従業員の雇用を守れる点です。経営が上手くいかずに廃業や事業からの撤廃となれば、従業員を解雇せざるを得なくなり、従業員だけでなく従業員の家族にまで影響を及ぼします。

(2)後継者問題が解決する

親族内承継ではなく、M&Aによる事業承継を選ぶ経営者も少なくありません。子どもや孫がいても、個人の意思を尊重して後継者としないケースもあるようです。

特に事業を引き継いでくれる子どもや従業員がいない場合は、M&Aによる事業承継が有力な選択肢です。親族内承継や従業員への引き継ぎには数年単位の期間が必要ですが、M&Aであれば短期間での引き継ぎも可能となるでしょう。

(3)自社や事業を残すことができる

経営難に陥っている場合、破産してしまうとこれまで築いてきた会社も事業もすべて失うことになります。自社での再生が無理な場合、他社の支援や資本が入ることで、会社や事業を残せる可能性が出てきます。どのような形であれ、可能性があること自体がM&Aの大きなメリットではないでしょうか。

(4)大手企業や自社の弱みを補完できる異業種へ譲渡することで経営が強化される

ガラス加工業界は、上位数社でシェアを占めている状況です。大手企業の傘下に入れば経営基盤が強固なものとなるでしょう。また、自社の弱みを補完できる異業種の会社へ譲渡することで経営を改善することもできます。たとえば、技術力・商品力はあるが営業力に課題がある会社であれば、マーケティング・営業に強い異業種とのシナジーが期待できます。今後は、国内でも競争がより激しくなってくることが予想されています。自社のみで生き残るのが困難であれば、大手企業やシナジーのある異業種企業に事業を譲渡することも選択の1つです。

(5)海外進出が可能となる

今後、ガラス加工業界の競争において生き残るためには、海外進出は欠かせません。単独での海外進出は、コストや人材・販路獲得など難しい面が多いと言わざるを得ません。海外展開をしている企業に事業承継すればゼロから立ち上げる必要がなく、販路や人材、技術、ノウハウまで獲得でき、海外進出がより実現しやすくなるでしょう。

(6)売却益を獲得できる

事業を第三者へ譲渡することで、売却益を得ることができます。会社や株主に売却益が入るため、借入金の返済や既存事業への資本投入、老後の資金などを手に入れられるというメリットがあります。

5.ガラス加工業界のM&Aを成功させるポイント

黒板に書かれた人と文字

M&A・事業承継を検討している方へ

当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。

ガラス加工業界のM&Aを成功させるためのポイントを、売手と買手のそれぞれの立場から説明します。

(1)売手側からみた成功のためのポイント

まずは、売手側の成功のためのポイントを説明します。

①しっかりと事前準備をする

M&Aでは、対象企業の選定や交渉、デューデリジェンスの対応など、いくつかのプロセスを踏む必要があります。このプロセスをスムーズに進めるには、財務状況の把握や在庫管理、全ての株券把握など、事前の準備がとても大事です。

特に中小企業にありがちなのが、会社の損益をしっかりと把握できていないというケースです。まずは1年分だけでもいいので、拠点別、商品別などの採算を算出し、社内のセグメント状況を客観的にわかるように資料にまとめておきましょう。

事業を譲渡する体制をしっかりと整えておくことで、早い段階で売却が可能となり、より良い買手を見つけることが可能となるのです。

②売却する条件の優先順位を決める

売却する条件は、企業によって異なります。譲渡価格や取引、従業員の雇用契約の継続など、譲れない条件を事前に把握しておきましょう。これらの条件をはっきりとさせておくと、交渉するときに妥協点を探りやすくなり、より納得のいく結果が得られるでしょう。M&Aの仲介会社などに相談しながら、慎重に決めていく必要があります。

③M&Aを行う目的を明確にする

なぜM&Aを行うのか、その目的を明確にすることは非常に大切です。後継者問題の解消なのか、会社や事業の継続なのか、ほかの事業への集中なのか、目的によって選ぶスキームは異なります。目的に沿ったスキームを選択することで、より良い買手が早くに見つかる可能性が高くなります。

④自社の強みを把握する

数ある企業のなかからより良い買手の目に留まるためには、自社の秀でているポイントのアピールが何よりも重要です。自社の優秀な人材や技術、ノウハウ、充実した取引先、幅広い販路など、自社の強みをきちんと把握しておきましょう。事前準備同様、自社の収益、取引数、在庫などのデータをまとめておくことは必須です。

⑤M&Aの専門家に相談する

ガラス加工業界のM&Aでは、再生型M&Aが使われることが多いです。中小企業庁管轄の「中小企業再生支援協議会」や金融庁管轄の「地域経済活性化支援機構」などでは、過大な負債を負っている中小企業の事業再生を支援しています。

直接、相談に行くこともできますが、制度を活用するには一定の条件を整える必要があるため、あらかじめ仲介会社、弁護士、再生コンサルタントなどの専門家に相談するとよいでしょう。仲介会社等の専門家に相談することで問題点がより明確になり、どのようなスキームを選択すべきかなど、目指すべき方向性が定まります。

昨今の後継者不足により、M&Aを手がける仲介会社も増えています。ガラス加工業界に詳しく実績がある仲介会社をいくつかあたってみましょう。M&A仲介会社は、自社の将来を決める大切な相談役です。相談するのも買手と交渉するのも「人対人」。信頼のおける相手を選ぶことが何よりも重要なのです。

(2)買手側からみた成功のためのポイント

次に、買手の立場からみた成功のためのポイントを説明していきます。

①デューデリジェンスをしっかりと行う

中小企業は、財務状況をしっかりと管理できていない会社もあります。たとえば、在庫は資産として計上されますが、不良在庫や滞留在庫が資産として計上されていることがあるため、本当に資産となりうるのかどうかのチェックは必要でしょう。買手は、きちんとしたデューデリジェンスを行うことが大切です。専門家に依頼して、財務、法務、税務などのあらゆる方面から確認しましょう。

②従業員が離職しないように対策を取る

買手が気をつけるべき点は、売手企業の従業員が、M&A後に離職しないようにすることです。従業員が離職してしまうと、買収後の事業経営に支障をきたします。新たな人材の確保には、時間もコストもかかります。そういった状況に陥らないように、従業員の待遇や労働環境を整えること、買収後に会社が目指す方向性や従業員への期待を伝えることは非常に重要なことです。

③M&Aの専門家に相談する

売手同様、買手もM&Aの専門家に相談しましょう。特に、デューデリジェンスをきちんと行うためにも、プロの知恵を借りることは必要不可欠です。専門家に依頼することで、スキームの選定から買収価格の提示、交渉や手続きまで支援してもらえます。費用はかかりますが、より良い結果を得られる可能性が高くなります。

6.ガラス加工業界のM&A事例

ここでは、ガラス加工業界におけるM&Aの事例をいくつか紹介します。

(1)セントラル硝子株式会社によるGuardian Industries Corp.の子会社2社の買収

セントラル硝子株式会社は、ガラス・化成品事業を展開する企業です。2014年、セントラル硝子株式会社は、アメリカのGuardian Industries Corp.の子会社2社のすべての株式を取得しています。

セントラル硝子株式会社は、海外における自動車ガラス事業の拠点を探していました。この2社を買収することで、自動車ガラス製造の生産・販売・顧客・人材まで手に入れることができ、海外展開を図ることが可能となりました。

(2)旭硝子株式会社によるAGCフラットガラス・ノースアメリカの建築加工ガラス工業の売却

旭硝子株式会社は、国内のシェアNo.1を誇る企業です。国内のみならず、アジア・欧州・アメリカなどでガラス・電子部材・化学品事業を展開しています。旭硝子株式会社は、2014年にAGCフラットガラス・ノースアメリカの建築加工ガラス事業を売却しました。当該事業の経営改善に努めていましたが、プラスへの転換が図れず売却に踏み切ったのです。

今後は、AGCフラットガラス・ノースアメリカの主力事業である、フロートガラス製造・コーティング技術に集中することで黒字化を目指す方針です。これは、事業の「集中と選択」が図られた事例といえるでしょう。

ちなみに、旭硝子株式は、2018年にAGC株式会社に社名変更しています。

(3)異業種企業への譲渡による事業再生

某中小ガラス加工会社は、経営者の世代交代と事業再生の課題を解決する手段としてM&Aを決断しました。同社はモノづくりへのこだわりを強みとしていましたが、営業や経営管理については課題が山積みの状況でした。M&Aを行った後は、同社経営者の後継者が新たな経営者となり、異業種である買手の主導のもと、営業、マーケティング、経営管理の体制を刷新し、1年目から利益を大幅に改善することに成功しました。いまでは、規模拡大に向け、同業の買収を企図するほどの好業績となっています。

中小ガラス加工会社の経営者様にご参考にしていただきたい事例です。

7.まとめ

ガラス工場

ガラス加工業界は、国内での需要が伸び悩み、事業の発展のためには海外展開が必要不可欠です。単独での海外展開は困難ですが、M&Aで大手企業の傘下に入ることで海外展開も可能となっていくでしょう。自社での海外展開を目指すなら、海外企業を買収することで、製造拠点から人材や販路まで手に入れることができます。

国内の中小企業は、海外企業の低価格・高品質な商品と競争しなければなりません。生き残るためには、新しい付加価値をつけた商品開発が欠かせません。この場合でも、隣接事業を手がける企業とのM&Aは1つの解決策になるのではないでしょうか。

M&Aによる企業存続を図る際には、仲介会社などの専門家に相談しましょう。いずれにせよ、どのように自社や事業を残していくのかを選択し、早めに準備にとりかかることが何よりも大切です。

話者紹介

八木 敦史さん

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社
マネージャー 八木 敦史(事業承継士・宅地建物取引士)

中堅・中小企業様が直面している事業承継や事業再生などの経営課題を解決するべく、M&Aアドバイザリー業務に従事。メーカー、不動産、農林水産、食品、旅館など各種業界の成約実績を有する。以前は、ベンチャー企業にて経営管理および組織構築に従事。売却企業、買収企業におけるM&Aの実務経験を有する。慶應義塾大学商学部卒。

 

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