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児童発達支援/放課後等デイサービスの事業承継 M&Aの現状と買手の注意点を詳しく解説

2020/06/15
更新日:2020/06/15

はじめに

小学校に入る前の6歳までの障害のある児童が通い、生活能力の向上や自活に必要な知識や技術をつけることを目的とした児童発達支援。

2012年の児童福祉法改正をきっかけに、参入のハードルが下がったため、全国的に新規参入事業者が増えています。読者の方の中にも、新規参入や事業エリア拡大を目指して、M&Aによる事業承継を考えている方もいるのではないでしょうか。

とはいえ、児童発達支援・放課後等デイサービス業界には、特有の課題や注意点があります。M&Aによる事業承継を成功させるためには、買手側は入念な準備が必要です。また、クリアしなければならない課題もあります。そこで、児童発達支援・放課後等デイサービス業界のM&A事情に詳しい、キャピタル・エヴォルヴァー株式会社の前垣内佐和子さんに、業界の現状とM&Aにおける買手側の注意点を詳しくお聞きしました。


1.児童発達支援・放課後等デイサービスとは

保育イメージ
まずは、児童発達支援・放課後等デイサービスとは、どういった内容のものなのかを見ていきましょう。

(1)児童発達支援とは

「障害児通所支援」とは、「児童発達支援」、「医療型児童発達支援」、「放課後等デイサービス」、「保育所等訪問支援」をさします。この「障害児通所支援」の1つである「児童発達支援」とは、障害のある未就学の子供に対し、児童発達支援センター等において、日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練その他の便宜を提供するものです。
2012年の児童福祉法改正によって定められた児童発達支援制度は、障害のある子どもが住んでいる地域で療育や日常生活の自立のための支援を受けやすくするために設けられました。それまでは障害の種別で分けられていたのですが、一元化されて制度化されたのです。最近では、障害の特性に応じた専門的な施設も出てきています。
なお、児童発達支援を行う施設は、児童福祉施設と定義される「児童発達支援センター」と「それ以外の児童発達支援事業所」とに分かれています。

(2)児童発達支援と放課後デイサービスの違い

児童発達支援と放課後デイサービスは、2012年より前までは「児童デイサービス」と呼ばれていましたが、障害児支援の強化を図ることを目的として、「児童発達支援」と「放課後デイサービス」に改称されました。この2つは、障害のある子どもの支援施設という点では同じです。両者の違いは、支援やサービスを受けることのできる子どもの年齢と、子どもの預かり時間にあります。

児童発達支援の対象年齢は、小学校に通う前の6歳まで(未就学児)です。対して放課後デイサービスは、6歳から18歳まで(就学時)を対象年齢としています。なお、子供の状況次第では、20歳まで放課後デイサービスを利用することができます。

市区町村では、子供の障害状況を見て施設の利用可能日数を決定します。日数は障害児通所受給者証に記載されるので、その範囲内で、児童発達支援や放課後デイサービスを利用することができます。

なお、放課後デイサービスは、放課後や日曜日、夏休みなどの休校日に利用することができます。

(3)児童発達支援センターの役割

児童発達支援センターは、児童福祉法において児童福祉施設として定義されている施設です。各地域の児童発達支援の中核的な役割を担っています。

保育所などの施設に通う子どもの通所支援のほか、地域にいる障害のある子どもや子供の発達の基盤となる家族に対する日常生活の動作指導、知識や技能の付与、集団生活への適応訓練といった支援を行っています。

また、地域社会への参加・包容を推進するために、障害のある子どもを預かる保育所、認定こども園、幼稚園、小学校、特別支援学校等と連携を図りながら、障害のある子供の支援を行うと共に、これらの施設に訪問して、障害児童がほかの児童との集団生活に適応するための専門的な指導や支援を行う他、専門的な知識・経験に基づき、保育所等の後方支援を行うことも役割のひとつです。

放課後デイサービスを併設する児童発達支援センターや医療機関と連携した医療機能を有する医療型児童発達支援センターなどもあります。また、児童発達支援センターは子どもを1日預けることができるので、保育所代わりに通っている子どももいます。

(4)児童発達支援事業所の役割

児童発達支援事業所の役割は、専ら利用障害児やその家族に対する支援を行う身近な療育の場です。

児童発達支援事業譲渡所の目的は、障害をもっている未就学児が、身近な地域で発達支援を受けられることです。「地域にできるだけ数多く設置しましょう」という国の方針もあり、一つひとつの施設規模は小さく、児童発達支援センターより人員配置基準は緩く設定されています。

重度の障害等の状態にある障害児であって、障害児通所支援を利用するために外出することが著しく困難な障害児に対し、障害児の居宅を訪問して発達支援を行う「居宅訪問型児童発達支援事業所」などもあります。

2.児童発達支援・放課後等デイサービス業界の将来性

子どもが遊ぶイメージ
次に、児童発達支援・放課後等デイサービス業界の将来性を見ていきましょう。M&Aを検討する上で、業界全体の将来性は必ず把握しておくことが重要です。

(1)少子化で補助金が減る可能性がある

日本は、現在でも少子化ですが、今後はさらに少子化が進むと見られています。少子化が進んだ結果、補助金が減らされる可能性も出てきます。

この業界はもともと利益率が高くなく、私が携わってきた企業にも、補助金を除いて考えると、赤字の企業が多いです。福祉医療機構の2018年のデータに基づいても、児童発達支援センターは25%以上が赤字、それ以外の児童発達支援事業所は約30%が赤字、放課後等デイサービスは約45%が赤字となっているようです。これ以上さらに補助金を減らされると、経営としてはより一層厳しくなるといわざるを得ません。

(2)利益を上げている企業もある

業界全体を見れば、決して利益を上げられる業界ではありませんし、今後、急激に市況が良くなることも考えづらいのは事実です。しかし、個々の企業で見れば、施設の利用率を高め人件費を抑えるなどして、確実に利益を出している会社もあります。利益を上げている企業を事業承継できれば、やり方次第ではさらなる利益拡大を期待できるでしょう。

3.児童発達支援・放課後等デイサービス業界におけるM&Aの手法

前垣内佐和子さん

M&A・事業承継を検討している方へ

当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。


ここでは、児童発達支援・放課後等デイサービス業界におけるM&Aの手法について詳しくお話します。事業譲渡と法人ごとの譲渡では、取らなければならない手続きや注意しなければならないポイントが異なりますので注意してください。

(1)事業譲渡の場合

児童発達支援・放課後等デイサービスは、児童福祉法に基づく許認可事業です、そのため、事業譲渡の場合には、施設のある場所の自治体への指定申請のやり直しになることがあります。認可のハードルは新規設立による新規取得よりは容易ですが、決して低いものではないので注意しましょう。要件を満たした内容で申請をしなければ、許認可は下りません。

また、事業開始のタイミングと事業譲渡の契約に関するスケジュールにも注意しましょう。行政へ日程に余裕を持った事前相談が必要になります。これらのスケジュール感と事業譲渡の契約・支払いスケジュールを考慮し、上手に計画を組み立てていく必要があります。

(2)法人ごとの譲渡の場合

法人ごとの譲渡の場合は、株主が変わるだけなので、理論上には、改めての認可は必要ありません。しかし、実際は、株式譲渡の後、代表者、管理者、役員、事業所(施設)の名称などの主要部分が変更になることが多いでので、手続きが必要になることが多いです。

また、経営陣が変わると中身も全部変わったと見られてしまうケースがあります。その際、自治体にどのような判断をされるかは状況によって異なりますので、様々な場合を考慮して、責任の所在を明確化させる株式譲渡契約を作成する必要があります。

さらに、事業譲渡の場合も法人ごとの譲渡の場合も、保護者などからもクレームが来る可能性も想定しておきましょう。その場合、結果的に経営陣が変わったばかりに児童がほかの施設に流れていってしまうこともあるわけです。

4.児童発達支援・放課後等デイサービス業界におけるM&Aの注意点

M&A検討イメージ
お伝えしているように赤字体質の企業が多い業界ですが、利益を出している企業もあります。やり方次第では、M&Aによる事業承継で利益を出すことも増益することも可能でしょう。その反対に、適切な会社を適切な条件で買収できなければ、ほかの業界で企業を買収するケースよりも見通しは厳しくなってしまいます。そこでここでは、M&Aを行う際に買手側がおさえておくべき注意点をお伝えします。

(1)損益分岐点を見極める

あらゆる状況において、損益分岐点を超えることができるかどうかを見極める必要があります。具体的には、現在は利用する児童も増え続けていますが、少子化が加速したとき、また、同じ地域に事業所が増えた時に、損益分岐点を超えられるかがポイントです。補助金は将来的には減らされる可能性があります。どの程度減らされると損益分岐点を下回ってしまうのかも確認しておく必要があるでしょう。

(2)施設の広さや賃料を確認する

損益分岐点を見極めるためにも、月々の固定費を把握する必要があります。施設の広さは想定している子どもの数に対して適当か、賃料はいくらになるのか、保証金の有無と金額などをはじめにチェックしておきましょう。

(3)フランチャイズ加盟の有無

これも、月々の固定費に関わる要素です。フランチャイズに加盟しているかどうかで、月々の固定費は変わります。フランチャイズに加盟している場合、月に10万円ほどのロイヤリティや数百万円の加盟金が必要となるのが一般的です。損益分岐点を見極める上でも、フランチャイズ加盟をしているかどうかは必ず確認しましょう。

(4)最大何人まで受け入れ可能かを確認する

施設の収益は、受け入れる子どもの人数によって大きく変わります。現在何人の子どもを受け入れていて、最大何人まで受け入れ可能なのかを確認しましょう。損益分岐点を見極めるためにも、最大人数を受け入れた場合に、どれくらいまで収益を上げられるかの試算も必要です。

(5)スタッフの資格を確認する

スタッフの保有している資格は必ず確認してください。児童支援管理責任者など専門の資格を持っている人が何人いるかによって、利益に大きく影響します。年間に数千万円の利益が出ている会社もありますが、この会社の場合、管理者が障害特性の専門知識を持ち合わせています。通所相談に行ったときに、保護者が「ここに任せよう」と契約に繋がっているのです。

(6)スタッフが残ってくれるか

事業承継をしたとき、元々のスタッフにどれくらい残ってもらえるかは重要なポイントです。オーナーの人柄やカリスマ性でスタッフが集まっている施設は少なくありません。オーナーがいなくなると同時にスタッフも一緒に辞めてしまうとなると、一から人を集めなければなりません。職員を雇う手間やコストも余計に掛かってしまいます。また、必要な職員を揃えられないために事業を継続できないと言う可能性もあります。

(7)立地を確認する

立地によって人の集まりやすさは大きく変わります。子どもや保護者が通いやすい場所にあるかどうかは、人を集める上で非常に重要なポイントです。また、地域にサービスを必要とする子どもの人口がどれくらいなのかも確認しておきましょう。

(8)ローンやリースなどの残債の有無

保有する車などのリースやローンがいくら残っているのかも確認する必要があります。いわゆる借金ですので、事業承継をすれば返済の義務は新たなオーナーに移ります。実は、残債の有無を確認せずに買収してしまう経営者は少なくありません。

(9)機材や内装の入れ替えの必要の有無

機材や内装が老朽化している場合、入れ替えなければなりません。入れ替えが必要な場合、買収金額とは別に費用がかかってしまいます。機材や内装の入れ替えが必要か、必要な場合いくらくらいの費用がかかるのかを買収する前に確認しましょう。

5.まとめ

児童発達支援・放課後等デイサービス事業は許認可事業です。会社を買収した後に、改めて許認可を得なければならないケースもあります。買収をしたけれど、許認可が下りない、また、十分な職員の獲得ができず事業を継続できないことも充分ありえるのです。

こうしたリスクを回避するためには、たとえば契約書に「2ヶ月間事業をやって何も問題がなかったら買収金額を支払う」といったような条項をつけるなどの工夫が必要になります。そのためには、契約書をきちんと作成できて読み取れる、経験豊富で優秀なM&Aアドバイザーに相談することをおすすめします。

M&Aを仲介する会社はたくさんありますが、ただマッチングするだけで、契約書をきちんと作ることができない、読めないといったM&A仲介会社も珍しくありません。こうした業者に許認可事業のM&Aの仲介を依頼することは、避けた方が良いでしょう。

話者紹介

前垣内佐和子さん

キャピタル・エヴォルヴァー株式会社
代表取締役 前垣内 佐和子(まえがいち さわこ)

大学時代、外資系の投資銀行でM&Aアドバイザリー業務の一端を初めて経験してから、東証一部上場会社の経営企画部やM&A専門ファームで経験を積み、キャピタル・エヴォルヴァー株式会社を立ち上げる。同社は既に12年目となり800社以上もの顧客を抱える経験豊富な企業となっている。
2019年にはThe N.Y. Timesで「新しい時代のアジアのリーダー」として選出され、また、世界的な週刊誌のNewsweek(2019年)にも掲載され、今最も注目されているM&Aアドバイザーの一人である。

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