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資金調達コスト(WACC)の計算と費用を抑えて資金調達を行う方法

2020/02/13
更新日:2021/04/15

はじめに

ビジネスを大きくしていくために経営者にとって「資金調達」は避けては通れない道です。しかし資金調達をする際にもある程度コストはかかるもの。そのコストはどのように算出でき、どのように経営に関わってくるのでしょうか。資金調達で発生するコストの概念やコストを抑えた資金調達の方法を、Seven Rich会計事務所の日野陽一さんに教えていただきました。


1. 資本コスト(WACC)とは?

個人や法人が事業のために資金を調達すると、「資本コスト」(通称「WACC」Weighted Average Cost of Capitalの略、ワック)と呼ばれるコストがかかることになります。なぜコストがかかり、またどれくらいかかるのでしょうか。

(1)借入先や出資先に支払う必要がある

事業を開始する際や拡大する際などには、多くの個人や法人が銀行や資本家から銀行借入や増資を受け、資金を調達します。資金は銀行や資本家の資本から捻出されますが、資本を集めるのにはコストがかかるため、銀行や資本家は貸付先から利息や配当金を得ることで回収をしなければなりません。

よって個人や法人が資金を調達する際にも必ずコストはかかります。銀行借入をした場合は債務者は銀行に利息を支払い、増資をした場合は株主が配当やキャピタルゲイン(売却益)を渡すことになります。こうしてかかったお金を資本コスト(WACC)と呼び、これを低く抑えられる方が企業の利益は大きくなるのです。

(2)「企業の信用度」が関わる資本コスト

資本コストは、資本を調達する企業の信用の度合いによって増減します。企業の財務体質が強固で収益性が景気に左右されにくく、安定して高い場合にはリスクが低いと判断され、資本コストは低く抑えられます。一方で、リスクが高いと判断されれば資本コストは高くなります。

2020年1月現在、一般上場企業の資本コストは5〜8%程度。ベンチャー企業であれば20%〜50%のところが多いのではないでしょうか。

信用の度合いを上げるためには業績や資本金、企業規模などが重要になってきますので、資本コストを抑えたい経営者はその点を留意しておくとよいでしょう。

2.資本コスト(WACC)を構成するコストの種類

資本コスト(WACC)を構成するコストの種類

資本コストは、「負債コスト」と「株主資本コスト」と呼ばれるもので導き出されます。各々の項目を見てみましょう。

節税の効果も?「負債コスト」とは

負債コストとは「債権者へ支払う金利」のことです。これは下記に当てはめて簡単に算出することができます。

負債コスト=支払利息の利率×(1−法人実効税率)

法人実行税率には「法人住民税」や「法人事業税」が含まれます。概算するときには30%程度で計算することことが一般的です。

負債コストが大きくなると返済しなくてはならない額が大きくなり、キャッシュフローが厳しくなることがあります。返済不能となり倒産するリスクも上がります。

負債コストが一度上がってしまうと、借入利率以上に利益の出る事業にしか投資ができなくなるため、事業リスクの高い分野へ投資をせざるを得なくなり企業は危機的な状況に。その状況はさらに負債コストの上昇を招くのです。

一方で負債コストは節税の効果もあります。負債が経営のための費用として計上できるため、結果的にコストを抑えることにつながる場合もあります。

株式での資金調達にかかる「株主資本コスト」
株主資本とは、株主が要求する「リターン」(配当)や「キャピタルゲイン」のことを指します。計算方法は下記です。

株式資本コスト=リスクフリーレート+β×マーケットプレミアム

「リスクフリーレート」とは、無リスク金利のこと。一般的には現在金利が0%の5〜10年国債金利などを指すため、ほぼ0です。

「β」は過去一定期間における株式市場の変化に対する、譲渡する株式の銘柄の「株式のリターンの反応度」を意味します。大きく変動があるほどリスクが高いと見なされ、値は大きくなります。上場していない企業の場合は上場している同業他社の株式を参考にしますが、参考先よりも数値が上乗せされることが多いです。

「マーケットプレミアム」とは、株式市場が国債よりもどれだけ多くのリターンを投資家へ提供できているかで決まります。超長期間において、株式市場全体の平均が生み出すリターンから、同期間に国債が生み出すリターンの差を差し引いて算出します。どの期間を抽出するかにもよりますが、一般的には5〜6%とするケースが多いです。

株式資本コストについては、自社で株式を保有している中小企業などはあまり考慮する必要がありません。

頭に入れておきたい「内部留保コスト」

本来、株式会社が挙げた利益は「配当」という形で株主に還元すべきですが、企業が事業投資に使った方が有利だと判断した場合は企業の内部に留めることがあります。これに伴うコストを「内部留保コスト」といいます。

しかし、内部留保した資本は株主資本コストと同額以上のリターンとする必要があります。そのため、実質内部留保コストは株主資本コストと同義です。よって、内部留保コストは資本コストを考える際にはあまり気にしなくて良いのが現状ですが、内部留保が増えると課税額が増えるので注意しておきましょう。

3.資本コスト(WACC)の計算方法

資本コストはここまで見てきた「負債コスト」と「株主資本コスト」によって、下記の計算式で導き出すことができます。

資本コスト(WACC)=RE×(E/(E+D))+RD(1-t)×(D/(E+D))
RE:株式資本コスト RD:負債コスト E:株式資本 D:有利子負債 t:実行税率

ただし増資を受けることが少ない中小企業の場合、大切なのは資本コスト(WACC)よりもDとEの割合です。負債が大きくなるほど銀行は貸付を嫌がり利子が大きくなります。業績はD/Eが小さいほど良いとされ利子等は小さくなります。

ちなみに、企業価値を算出するための計算の一種「DCF法」では、資本コスト(WACC)が必要になってくるので覚えておきましょう。

4.資本コスト(WACC)を抑えるために。資金調達への考え方

資本コストを抑えるために大事なことは、業績を良くして企業の信用の度合いを上げることです。そうすることで負債コストと株主資本コストの双方を下げることができ、資本コストを抑えられます。

資本コストは、ある一定の基準までは節税効果のある負債によって資金調達をし、ある基準からは株主資本コストを増やしていくことで最も低く抑えられます。これを「最適資本構成」と呼びます。

「最適」という言葉が示す通りここには画一的な基準はありませんが、負債と資本の割合(D/E)すなわち「負債比率」は、一般的に80〜100%が最適資本構成だと言われています。

中小企業の場合は増資という選択肢はあまり一般的ではありません。そのため内部留保や代表借入金の資本組み入れ(デットエクィティスワップ)を利用し、適切な負債比率を維持しながら負債コストをコントロールすることが重要でしょう。

企業を経営するにおいて、あらゆるコストは単に抑えられればいいというものではありません。高い利益率を期待できる事業があるのであれば、多少利率が高くても積極的に事業資金を調達し、利益を出して自己資本を厚くすることで 結果として財務体質が強固になり、資本コストが低くなることもあるのです。コストを考える際には、中長期の視点で考えることが大切です。


話者紹介

日野陽一さん

Seven Rich会計事務所 日野陽一(ひの・よういち)さん

2011年に青色申告会に入社。2015年に公認会計士試験に合格し、有限責任監査法人トーマツ東京事務所に入所。金融機関の法定監査などに携わる。2018年からはSeven Rich会計事務所に勤務し、ベンチャーやスタートアップ企業を中心に資金調達やIPOの支援、税務申告のサポート等を行っている。

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