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ダンボール業界のM&Aについて解説。売手のメリットや成功のポイントは?

はじめに

ダンボール業界では、近年、後継者不在や業績悪化に伴う中小ボックスメーカーの売却や大手メーカーの海外進出を目的としたM&Aが活発化しています。ダンボール業界のM&A動向と事例、買手側・売却側双方のメリット、売手が押さえておくべき成功ポイントなどについて、名南M&A株式会社の青木将人氏に聞きました。


1. ダンボール業界の現状、M&A動向、特徴

ダンボール業界の現状、M&A動向、特徴
1950年代以降、政府が主体となって木箱からダンボールへの切り替え運動が積極的に展開され、1990年代後半以降はリサイクル意識の高まり等もあって、国内ダンボール市場は順調に拡大してきました。リーマンショックにより一時的に市場は停滞するものの、それ以降、インターネット通販の伸びやオリンピック需要などに支えられて、市場は緩やかな増加基調を維持しています。

一方で、日本は人口減少社会に突入し、今後、国内市場が劇的に伸びることは考えにくい状況にあるため、大手企業を中心にアジアなどの海外市場へと販路を拡大する動きが活発化してきています。

また、原材料費、燃料費、運送費などのコストが高止まりし、なかでもインターネット通販の伸びが運送費の高騰をもたらしており、特に業界の川下に位置する中小規模のボックスメーカーの収益を圧迫しています。後継者不在と業績不振により、M&Aを検討するボックスメーカーが増えてきています。

【ダンボール業界のプレイヤー構造について】

ダンボール業界は、大きく分けると商流が三段階に分かれています。一番川上がロール紙を作る原紙メーカーで、王子製紙や日本製紙などの超大手企業が複数存在します。次に、原紙メーカーからロール紙を仕入れてダンボールのシートを作るシートメーカーがいます。シートメーカーは、準大手クラスの企業が全国に数100社程度存在するとみられます。そして、シートメーカーからシートを仕入れて社名や商品名を印刷したり、切込みを入れてすぐに組み立てられるようにしたりするボックスメーカーが川下に位置し、エンドユーザーに販売するという流れです。中小規模のボックスメーカーは全国に多数存在しています。

商流は完全にピラミッド構造になっており、川上に行けば行くほど優位性が高いという構図になっています。一方、川下のボックスメーカーは、シートメーカーからのシートの仕入れ価格が会社の収益に直接影響するため、単価が1円上下するだけで業績が大きく左右されます。差別化が図りにくいダンボール製品の価格競争に加え、原材料費、燃料費、運送費等の高騰がボックスメーカーの業績悪化をもたらしています。

【ダンボール業界のM&A動向】

10年程前は大手原紙メーカーを中心に業界再編の動きが活発化しましたが、それも一巡し、現在は事業承継または経営安定化のためのボックスメーカーの売却、あるいは大手メーカーの海外進出を目的としたM&Aが主流となっています。

なかでも、シートメーカーがボックスメーカーを買収するパターンが最も多くみられます。というのも、ボックスメーカーの業績はシートの仕入れ価格によって左右されるため、シートメーカーの傘下に入ることで安定した仕入れが出来るようになり、結果的に収益の安定化をもたらします。一方、シートメーカーにとって、顧客であるボックスメーカーの買収は、販路拡大につながります。シートメーカーによるボックスメーカーのM&Aは、買手・売手ともにウィンウィンの関係になれるというメリットがあります。

ボックスメーカー同士のM&Aも可能性として考えられますが、レアケースでしょう。ダンボール業界は差別化が難しく、価格競争に陥りやすい傾向にあります。差別化を図るべく、ダンボールを使った家具を作ったり、ポップなどの販促ツールを作ったりしている会社や、ダンボールだけではなく、紙器や包装用品まで作って差別化を図っている会社もありますが、純粋に箱としてのダンボール製品に限定すると、差別化を図るのが非常に難しく、規模を追求する余裕もないというのが実態でしょう。そのため、ボックスメーカー同士のM&Aは現実的には難しいと考えられます。

【ダンボール業界のM&Aの特徴】

他業界のM&Aと大きく異なる点はありませんが、細かな点で言うと、以下のような特徴が挙げられるかと思います。

① 売手に対する買手の事業理解が早い

シートメーカーはボックス自体を自社で作っている会社が多いため、買収するボックスメーカーの事業内容に対する理解が早いという点が特徴として挙げられます。結果的に、M&Aプロセスがスムーズに進む可能性があります。

② 仕入れ値を最初に確認する

買収を検討する際にシートメーカーが最初に確認するのは、シートの仕入れ値です。高い単価でシートを仕入れている場合、それよりも安い単価で納品できればそれだけでボックスメーカーの収益が改善します。仕入れ単価の変更により、ボックスメーカーの業績が改善する見通しが立つかどうかがM&Aに踏み切る判断に大きく影響します。

③ 地域性が重視される

また、ボックスメーカーは地域性の強いビジネスで、どのエリアを商圏とし、どの程度の顧客を抱え、今後どの程度伸びる見込みがあるのかが買収を行う重要な判断材料の一つになります。営業活動を強化することで、売上を伸ばせる余地があるエリアであれば人気が出ますが、辺鄙な場所にあって今後の伸びも期待できないとなると難しくなる傾向にあります。

④ 工場からの距離も重視される

シートメーカーが所有する工場からの「距離」も重要な判断材料の一つです。ダンボール業界は高い運送費を要するため、あまりに遠距離だと運送費がさらに高くなり、収益を圧迫します。そのため、工場の100キロ以内、あるいは150キロ以内など、なんらかの基準を設けてボックスメーカーを買収する会社もあります。

⑤ 異業種参入が難しい

ダンボール業界は川上から川下までの関係性をどう構築していくかが非常に大事になりますので、他業界のM&Aと比べて、異業種参入が非常に難しい業界と言えます。


2.ダンボール業界のM&A事例

ダンボール業界のM&A事例
ここではダンボール業界の注目すべきM&A事例を紹介します。

【業界最大手のレンゴーが国内の小規模ボックスメーカーを次々に買収】

業界最大手のレンゴー株式会社(大阪府大阪市)は、2017年9月に、千葉県館山市に本社を構える株式会社杉井工業所の発行済株式の100%を取得し、子会社化しました。杉井工業所は房総半島南部を中心に事業を展開するボックスメーカーで、社員25名、売上高4.5億円(2017年1月期)という小規模な事業者です。それ以降も、三和段ボール株式会社(高知県高知市)、博多段ボール株式会社(福岡県糟屋郡)、西原紙業株式会社(神奈川県高座郡)、武田紙器株式会社(千葉県柏市)など、全国の小規模なボックスメーカーの買収を続けています。これらは販路の拡大を目的とした買収と考えられますが、同社は、海外や国内の中堅規模企業の買収のみならず、小規模なボックスメーカーまでを自社または子会社を通じて直接買収する動きを強化してきています。

【業界大手のダイナパックがマレーシアの段ボールメーカーを買収】

段ボール、印刷紙器、包装資材の製造・販売を行う業界大手のダイナパック株式会社(愛知県名古屋市)は、2018年10月、マレーシアの GRAND FORTUNE CORPORATION SDN. BHD. の全株式を取得し、子会社化しました。マレーシアは高い経済成長が期待されており、拡大する包装資材需要を取り込むべく現地の段ボールメーカーを買収したと考えられます。同社は、香港、中国、ベトナム、フィリピン等に子会社を構えて既に海外展開を進めていますが、この買収により段ボールの製造拠点の獲得し、現地生産を加速させ、製造コストや運送費の削減も期待しているとみられます。

【業界大手のトーモクが神奈川の段ボール・紙器メーカーを買収】

業界大手の株式会社トーモク(東京都千代田区)は、2019年1月、段ボール・紙器メーカーのタイヨー株式会社(神奈川県厚木市)の発行済株式の全株式を取得し、完全子会社化しました。タイヨー㈱は、神奈川県厚木市で段ボール事業を中心に展開しており、化粧品、 製菓、事務機器メーカーなど多数の優良顧客を抱えています。この買収によりグループ内連携を強化し、南関東地域における段ボール・紙器事業の拡大を目指していると考えられます。同社はこれ以前にも、遠州紙工業株式会社(静岡県浜松市)、大一コンテナー株式会社(静岡県島田市)、仙台紙器工業株式会社(宮城県岩沼市)の子会社化などを通じて、国内の段ボール・紙器事業を強化しています。


3.買手側・売手側双方のメリット

買手側・売手側双方のメリット

M&A・事業承継を検討している方へ

当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。


ここでは、ダンボール業界のM&Aを行うにあたって、買手と売手が得られるメリットについて説明します。

【買手側のメリット】

国内におけるM&Aの場合、シートメーカーが買手に、ボックスメーカーが売手になるケースがほとんどです。その場合、シートメーカーのメリットは、やはり販路の拡大です。ボックスメーカーは、通常、特定のエリアに根差した事業を展開しています。M&Aによってそのエリアの顧客基盤を獲得することで、シンプルに売上増が期待できます。成長が期待できるエリアであれば、営業力を強化したり追加資本を投入したりすることで、更なる顧客の獲得と売上増が期待できます。

海外におけるM&Aの場合、大手メーカー(原紙メーカーや規模が大きいシートメーカー)がアジアを中心とした海外の関連企業を買収することで、販路の拡大、製造拠点の獲得、人件費・運送費の削減等による利益率の向上などが期待できます。

【売手側のメリット】

国内のM&Aの場合、後継者不在や業績不振によりボックスメーカーが売手になることが多いですが、その場合、ボックスメーカーのメリットは仕入れの安定です。ボックスメーカーは、シートの仕入れ価格に業績が大きく左右されます。特定のシートメーカーの傘下に入ることで比較的安価かつ安定的にシートを仕入れることが可能になり、業績の改善や収益の安定化が図られます。また、後継者問題の解決や従業員の雇用確保にも当然つながります。

また、ダンボールメーカーは運送費が非常に高いため、グループとして規模が大きくなればなるほど配送効率が良くなり、運送費を抑えることが可能になります。


4.売手が抑えておくべき成功ポイント・注意点

売手が抑えておくべき成功ポイント・注意点
ダンボール業界は、他の業界同様に経営者や従業員の高齢化が進んでいます。特に地方に行けば行くほど、その傾向は顕著です。高齢の従業員が退職したあとに、若い人材を採用できれば良いですが、それほど簡単なことではありません。その意味で、従業員の年齢構成は買手が確認する重要なポイントの一つとなります。比較的バランスの良い年齢構成であれば、買手が付きやすいと言えます。

また、仕入先との関係がしっかり構築できているかどうかも重要なポイントです。ボックスメーカーを買収したからといって、翌日から仕入先を全面的に変更するというわけではなく、それまでお付き合いしていたシートメーカーからの仕入れも当面は継続する場合がほとんどです。その意味でも、仕入先との関係性は重要な評価ポイントの一つとなります。

事業承継を目的にしたM&Aでは、経営者が退任しても、組織として事業が回る体制が出来ているかどうかが重要な評価ポイントになります。「業績が悪いと買手がつかないのではないか」という質問を受けることがありますが、業績が良ければ買手が付きやすいというのは確かですが、たとえ赤字でも、その原因次第ではM&Aが成立する可能性は十分考えられます。大幅な債務超過に陥っている場合は難しいですが、赤字の原因を特定して、黒字転換できる可能性があれば買手が付く場合もあります。


話者紹介

青木 将人
名南M&A株式会社
取締役 経営管理部長 中小企業診断士
青木 将人(あおき まさと)
メガバンクを経て2005年に株式会社名南経営(現:名南M&A株式会社)に入社。東海エリアでトップクラスのM&A専門会社である同社にて、10年以上にわたり多数の事業承継M&A案件に携わる。現在は経営管理部長として、内部管理体制の構築を進めている。

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