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廃業と倒産の違いとは? 廃業を決断する前にM&Aの可能性を探ることが重要

はじめに

廃業と倒産を同じようなニュアンスでとらえている方もいらっしゃいますが、実際には異なります。

一般的に倒産とは、経営者の意志にかかわらず業績不振などによってもたらされるものですが、廃業は経営者の意志によって決断・選択されるものであり、それに至る理由は多様です。

また、廃業以外の選択肢も残されていた、というケースが少なくありません。

事業承継の案件に数多く関わっていらっしゃる専門家である株式会社 事業承継通信社の若村 雄介氏に、廃業と倒産の違いについて、さらには廃業以外の選択肢のひとつである事業承継についてうかがいました。


1.廃業とはどういうことなのか?

1982年以降、廃業者の数は毎年20万件以上で推移しており、2013年度の休業・廃業・解散件数は約29万件でした。小規模事業者の数が約330万件なので、その一割弱ということになり、これはかなり大きな数字といえます。少子高齢化の進行に連動し、中小企業の経営者の高齢化が進んでいるため、この数は今後さらに増えることが予測されます。

当然、廃業は何度も経験するものではなく、初めての方がほとんどでしょう。そのため廃業についての知識・経験を持っていらっしゃる経営者は多くはないと思われます。

ここでは廃業とはどういうことなのか、そして廃業以外の選択肢として考えられるのはどういうものなのかを見ていきましょう。

(1) 廃業という言葉の定義

廃業について簡単に説明をすると、会社の経営者が自主的に会社をたたむことです。会社を解散して、精算の作業を完了することによって、廃業となります。具体的な手続きとしては、法務局に登録してある法人登記を抹消する必要があります。

廃業する理由としては、会社の後継者がいない、経営者の経営意欲がなくなった、健康上の理由で継続できなくなった、静かな老後を送りたい、将来的な見通しが立たない、新規事業がやりたくなったなど、様々なものがあります。

例えば、有名シェフがいることで人気を集めていた料理店があったとして、そのシェフがなんらかの理由で店を辞めることになり、オーナー側としては店をたたまざるを得なくなった、といったケースも廃業の扱いになります。

廃業の理由としてもっとも多いのは、後継者がいないということです。特に近年は少子高齢化が進んでいることもあり、中小企業の経営者にとって後継者不足は切実な問題となってきています。ここではそうした悩みに直面した時に、どう対処すべきなのか、説明していきます。

その前にまず、廃業と混同されがちな倒産という言葉の定義も確認しておきましょう。

(2) 倒産という言葉の定義

倒産という言葉は法律用語ではないので、明確な定義はありません。一般的には業績不振、赤字拡大などによって、企業の経営が行き詰まり、債務がかさんで返済できなくなり、事業の継続が困難になった状態を表す言葉です。つまり経営破綻した状態が倒産ということになります。

倒産した場合の法的な手続きは会社の規模や形態、状況などによって様々です。例えば、銀行取引停止処分を受ける、裁判所に会社更生手続きを申請する、裁判所に民事再生手続開始を申請する、裁判所に破産手続き開始を申請する、裁判所に特別清算開始を申請するなどの手続きが必要になります。これらをトータルで倒産手続と総称することが多いです。

(3) 破産という言葉の定義

倒産と似た言葉で破産がありますが、破産は法律用語で定義されていて、法的整理手段のひとつとなります。破産は会社だけなく、個人にも使われていて、自己破産、準自己破産、第三者破産という三つに分けられます。

会社の場合は、取引先への支払いができない、従業員への給与の支払いができないなど、すべての資産を投げうっても支払うことが不可能になった状態を破産と呼びます。

会社の倒産イコール破産とは限りません。倒産した場合の選択肢が必ずしも破産だけではないからです。会社が倒産しても、民事再生、会社更生を行うなどの可能性が残されています。

(4) 廃業と休業の違い

休業は文字どおり会社を休むことで、廃業よりも軽い状態を指しています。届け出が必要になる点は同じですが、条件が揃ったら再開する余地を残しているのが休業です。

健康上の理由で休業したけれど、回復したら再開するなどのケースなどが休業に該当します。

(5) 廃業と倒産の違い

廃業と倒産とのもっとも大きな違いは、倒産が業績不振・債務増大・マイナスの状況の蓄積など、外的な状況によってやむなくもたらされるものであるのに対し、廃業は外的要因ではなく、経営者が自分の意志によって決断するものであるということです。

倒産という言葉と混同し、廃業という言葉に対してマイナスの印象を持っている方もいらっしゃるかもしれませんが、廃業は実際に会社が黒字であるケース、業績が好調であるケースでも決断される場合が多々あります。

実施中小企業委託「中小企業者・小規模企業者の廃業に関するアンケート調査」(2013年12月、(株)帝国バンク)によると、廃業した企業の44.1パーセントが黒字でした。また資産と負債の状況を見た場合にも、資産超過が41.1パーセントとなっていて、必ずしも経営状態が悪いわけではない場合もあるのです。

2.廃業の現状

若村雄介さんのインタビュー風景

実際に廃業の現状がどうなっているのかを見ていきましょう。

(1)後継者不足

2014年の中小企業白書によると、経営者が廃業を選択する理由でもっとも多いのは後継者がいないということで、その数は57パーセントを占めています。この数は突出していますが、廃業を決断する場合はひとつだけの理由ではなく、いくつかの要因が重なって決断に至ることが多いようです。

後継者候補がいないわけではないけれど、将来的な事業の展望が決して明るいものではないと予測されることから、経営者が子どもや親族を後継者にすることをためらい、自分の代で終わりにする決断を下すケースも目立っています。大型店舗の進出、ネット通販の浸透などによって、小売業界を始めとする中小企業にとって厳しい時代が続いていることも、廃業の決断の要因となっているようです。

ちなみに「中小企業者・小規模企業者の廃業に関するアンケート調査」(2013年12月、(株)帝国バンク)によると、廃業時における経営者の年齢は70歳代がもっとも多く、38.1パーセント、続いて60歳代が33.3パーセント、80歳以上が14.9パーセントとなっています。今後、さらに高齢化は進んでいくと予想されるため、廃業の割合も増えていくでしょう。

(2)廃業しかないと思い込むケースが多い

廃業を考えている中小企業の経営者の多くは、最初から他の選択肢がないと思い込んでいるというのが現状です。

実際に相談に来られてお会いした経営者の方々の中には、後継者候補がいながらも、自分以外には自分の会社は経営できないはずだ、わからないはずだと考えている方がたくさんいらっしゃいました。

また業態にもよりますが、ほとんどの企業はお金を借りて、その資金を回転させて運営していくため、事業承継をするための準備資金が不足している、後継者に資金力がなくて事業承継が難しいなど、経済面から廃業を決断するケースも目立っています。

資金が不足していても、廃業以外にも道が残されている場合があるため、経営者が誰にも相談せず独断で廃業を決めてしまうのはもったいないことです。

廃業以外の選択肢として事業承継、特に第三者承継(M&A)を今一度考えてもらいたいですね。

(3)親族承継以外を想定していない

廃業以外の選択肢として考えられるのは親族承継、従業員承継、第三者承継の三つがありますが、私が相談を受けた中では、都市よりも地方にいくほど、親族承継以外の選択肢を想定していない印象があります。

“親の家業は子が継ぐもの”という意識が強く、それが叶わない場合は廃業、と考えていらっしゃる方が多かったです。

お子さんがいらっしゃらない場合、もしくはお子さんに継ぐ意思がない場合、じゃあ、甥っ子はどうだろうかと、親族へと候補者を広げて検討していく場合もあります。

自分の子ども、もしくは親族に継がせたいと考えるのは、心情としては自然な流れでありますが、親族承継の場合は、後継者として育成するための時間を見ておかなければなりません。スムーズに経営を譲渡していこうとするならば、十年単位のロングスパンで計画的に進める必要があります。

(4)廃業の具体的な手順

廃業を決断したら、いつまでという期限と段取りのスケジュールを設定して、まずは取引先へ説明をし、従業員へ説明をし、さらに金融機関に報告しなければなりません。この作業は確実にやるべきことです。

廃業はその企業の経営者だけのことではなく、従業員やその家族、顧客や販売・受注元などの取引先にも大きく関わってくることなので、準備期間と説明期間をしっかり設けて、その影響を最小限にする努力をはらい、丁寧に行わなければなりません。

廃業と比較すると、事業承継を選択した場合は、外部への影響は少なく抑えられることが多いです。

(5)業種別による廃業の特徴

実施中小企業委託「中小企業者・小規模企業者の廃業に関するアンケート調査」(2013年12月、(株)帝国バンク)によると、廃業した組織の形態としてもっとも多いのは個人事業者で、全体の87.8パーセントを占めています。その次に多いのが株式・有限会社で10.5パーセントとなっています。

業種別に見ていくと、もっとも多いのが小売業で25.2パーセント、ついで建設業が22.9パーセント、三番目が製造業で14.2パーセント、以下、卸売業が7.2パーセント、専門・技術サービス業が5.0パーセント、不動産業が3.7パーセントとなっています。つまり小売業、建設業、製造業の三つで62.3パーセントを占めているのです。

こうした業種の企業の特徴としては、個人が一代で築いた、もしくは親の代から継いだなど、個人経営的な要素が顕著なため、「一代限り」と考えてしまう傾向が強いということが挙げられます。しかし実際には廃業ではなく、事業承継の道もあったのではないかと考えられるケースもたくさんあります。

3.事業承継という選択肢

事業承継という選択肢

廃業を考えている方にぜひお勧めしたいのは、本当に廃業以外に選択肢はないのか、事業承継の可能性を検討することです。経営赤字を抱えている企業であっても、事業承継が成立するケースはたくさんあります。

ここでは事業承継についてくわしく見ていきましょう。

(1)事業承継の三つの形態

事業承継の形態は三つに分けられます。親族承継、従業員承継、第三者承継、いわゆるM&Aの三つです。M&AのMはMergers(合併)、AはAcquisitions(買収)の略で、企業による企業の合併および買収を指し、それぞれにメリットとデメリットがあります。

(2)親族承継

一代で会社を興した創業者であり、オーナーである経営者の中には親族承継の選択を希望している方がたくさんいらっしゃると思われます。親族承継だと、家族であるという信頼感、安心感はありますが、後継者として育成するまで多くの時間を要することになります。外部から自分の子どもや親戚を連れてきた場合、他の従業員の反発を招く危険性もあるので、それなりの配慮と準備が必要です。

(3)従業員承継

従業員承継を選択した場合、つまり会社の役員など、優秀な部下を後継者として指名した場合は権限の委譲もスムーズに進行し、従業員や取引先との関係も円滑な状態を維持することが期待できます。実際に近年、従業員承継の割合が増えています。

ただし、問題点がまったくないわけではありません。社風をよく知っているがゆえに、大きく変革の舵が切れないということもあります。また経営者がオーナーであり会社の株式の多くを所有している場合、事業承継に伴う株式の譲渡に際して、資金が必要となってくるのですが、後継者にその資金力がないというケースも多いです。リスクを取る覚悟と共に資金調達手段も検討しておく必要があります。

(4)第三者承継(M&A)

一般的に、親族承継と従業員承継が無理だと判断して、廃業を選ぶケースが多いようですが、第三者承継、つまりM&Aの可能性を探らないまま、廃業を決断してしまうのは実にもったいないことです。第三者承継には親族承継、従業員承継にはないメリットがたくさんあるからです。

4.第三者承継の具体的な例

第三者承継

M&A・事業承継を検討している方へ

当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。

具体的な例を出して、説明していきましょう。以前、私どもが事業承継をお手伝いしたケースで、美容系の会社がありました。

(1)赤字が増大して廃業を意識

従業員数は約20名で、毎月赤字が月150万以上出ている状況で、なおかつその赤字は今後さらに増えていきそうでした。

経営者の方は他にもいくつかの事業を抱えていることもあり、この事業を建て直していこうという気力、意欲が減退してきた中、継続するか廃業するかで悩んでいらっしゃいました。

もしそのまま廃業するとなったら、不動産の精算、撤去費用など、かなりの費用がかかることが予測されました。20名の従業員をどうするのか、という問題もあります。

もし仮にこのまま継続したとしても、約150万円の赤字を黒字に変えるのはきわめて難しい状況でした。

(2)事業承継を提案

そこで、事業譲渡の可能性を探ることを提案いたしました。買手を探し、条件をしっかり詰めて、成約することこそが最良の解決法だと判断したからです。その際にもっとも優先したのはスピードでした。このまま方向性が出ないまま三ヵ月継続すると、400〜500万円分、資金が溶けていくことになります。

とにかくスピード優先で私どもが探したところ、950万円で買ってくれるという会社が見つかりました。しかも従業員もそのまま雇用し続けたいとの意向を示してくれました。

譲渡元のオーナーももともと従業員の雇用を守りたいという気持ちを強く持たれていましたので、事業譲渡という選択肢によって、従業員の雇用を守れることになりました。売手側はもちろんですが、買手側にとっては、実力のあるエステティシャンを一気に採用も出来、集客リソースも手に入る、時間を考えるとメリットの多い案件となりました。

(3)売手側にとっての事業承継のメリット

このエステの会社の場合は、売手側が廃業を選んでいたら、金融機関への借入金の返済、不動産の整理、従業員の解雇など、経済的な負担はもちろんのこと、物理的・精神的な負担もたくさん抱えることになっていたのは間違いありません。

950万円で事業を譲渡することによって、借入金のカバーもできて、月々の赤字も止まり、現状以上の資産の欠損をまぬがれました。また従業員の雇用も引き受けてもらうことができて、精神的負担もなくなりました。

この会社のオーナーは毎月150万以上の赤字が出ていたので、廃業するしかないと思い込んでいたのですが、事業譲渡という選択肢を選んだことによって、企業の資産が予想以上に評価されることにもつながったのです。

(4)こんなにも違う廃業と事業承継の評価額

例に出したのはエステの会社ですが、例えば小売店の場合でも、廃業を前提とした場合と事業を継続する場合とでは、在庫や設備の評価額が大幅に変わってきます。

事業を継続する場合はそのままの評価となり、その資産評価に対して、企業を継続した場合の年間の営業利益の二倍から三倍の金額が営業権の価格としてプラスされていきます。

今回のこの会社の場合は、ホームページもしっかり作り込まれていて、インターネットでの集客方法が確立されていたので、それもそのまま引き継ぐことになり、その実績も資産として評価されて、トータルで950万円という金額が算出されました。もし廃業していれば、ホームページの価値を換金できることもありません。

(5)買手側の事業承継のメリット

契約が成立したのですから、当然、このエステ会社の事業譲渡には買手側にとってもたくさんのメリットのあるものです。

買手側は美容系の業界でシェアを伸ばすために、アクセルを踏んでいる状況だったことも双方にとって、プラスに働きました。ゼロから新たにサロンを開業するとなったら、場所の確保、人材の確保、設備投資など、開業するための費用と時間がかかります。20人のエステティシャンを採用するとなったら、育成する時間やその労力も考慮しなければなりません。経験のあるエステティシャン20名をそのまま引き継げることは買手側にとっても大きなメリットとなりました。つまり買手側は会社とその営業権、資産、設備だけでなく、時間を買ったことになるのです。

顧客情報もそのまま譲渡されることになるわけで、これも大きなメリットとなります。例えば、買手側が他の場所でも同じような会社を運営していた場合には、その顧客情報を共有することも可能になるでしょうし、備品を数多く仕入れることによって価格が安くなるなど、規模が大きくなることのメリットも享受できます。

5.視点によって会社の価値は変わる

視点によって会社の価値は変わる

相談に来られたオーナーの方々と話していると、自分の会社にはこんな価値があったのかと驚かれることがよくあります。オーナーが考えている企業の価値と売手側が考えている価値とは必ずしも一致しないのです。

例えば、店舗のオーナーが自分の店は設備が充実している、内装が凝っていると自己評価していたとして、買手側はその点ではまったく評価せずに、従業員がほしいと思っていてそこの人材だけを評価しているというケースもあります。どこを評価するかによって、企業の価値は大きく変わってくるのです。

(1)廃業を決断する前に相談を

オーナーの方が想定している価値とは違った価値を、買手側の企業が見出してくれることもあります。

廃業のコストを考えたら、ゼロ円でも事業承継したほうがいい場合もありえます。例えば、2,000万円の借入金があるとして、それごと引き継いでもらえるならば、売手側にとっても好条件といえます。廃業となったら、大きな負債を背負ってしまう場合でも、事業承継によって、借金もゼロ、維持しなければならないものもない、という状態から再出発することも可能となります。

多くの経営者の方が誰にも相談しない、もしくは家族・親族だけに相談して、廃業を決断しているという現状があります。が、外部からの客観的な視点かがあるかどうかによって、将来の展望がまったく変わる可能性もあるのです。

事業承継するか廃業するか、まよった時にはひとりだけで判断せずに、まず相談してください。そして正しい情報をたくさん収集して、プロのアドバイスに耳を傾けて、決断してください。

話者紹介

若村雄介さん

株式会社 事業承継通信社

代表取締役CEO 若村 雄介

1973年埼玉県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。週刊住宅情報(現SUUMO)、キーマンズネットにて広告企画営業及びマネジャー、結婚情報誌事業ゼクシィのマネジャー等を経て2014年6月退社。2014年12月 株式会社セブ社会人留学を設立し代表取締役就任。2017年7月 株式会社QQEnglish 取締役副社長就任(2018年8月退任後は同社顧問に)。会社員時代からオーナー経営者の後継問題を間近に見て来た経験から当社(株式会社事業承継通信社)設立を決意。

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