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金属加工業界のM&A・事業承継を徹底解決!業界のM&A動向や成功のポイントをご紹介

2020/03/17
更新日:2021/02/09

はじめに

全体の7割が自動車産業に依存しているといわれる金属加工業界。自動車産業の構造が激変するとともに、金属加工業界自体の価値も低下するなど、厳しい状況に晒されています。加えて最新設備を備えた中国に対しても、価格競争で勝てないといった問題も挙げられます。このような厳しい状況を乗り切るためのひとつの方策としてM&Aが考えられます。

そこで、池田ビジネスコンサルティング・代表コンサルタントの池田輝之さんに金属加工業界のM&Aについて話をお伺いしました。


1.金属加工業界とは

金属加工業界はものづくりの重要な産業です。大量生産が必要な部門から職人がいないと回らない部門まで多種多様な産業構造をなしています。経営者や職人自体の高齢化により事業が継続できない場合には、M&Aがひとつの手段として考えられます。

(1)ものづくりの根幹である金属加工

金属を直接加工することで自動車部品を作ったり、金属を加工してできた金型でプラスチックなどの素材を成形するなど、金属加工は製品や部品を作るうえで欠かせません。

金属加工は大きく3つに分けられます。

1.プレス加工

大量生産に一番向いているのがプレス加工です。プレス設備と金型の設計の技術力で強みが変わってきます。

2.切削加工

名前の通り、切って削るというのが切削加工です。パラボラアンテナのように曲げるのが切削加工に近いです。職人技に近い世界です。

3.鋳造加工

鋳造加工はもっと簡単で、溶けたものを鋳型に流して形にしていき、複雑な形のものを大量に作ります。

(2)各加工法の違い

プレス加工は小さいものをたくさん作ったり、大きいものを安く作ることが可能なので、精密部品系でも使います。他方鋳型加工では、溶かして流し込む型がきちんと作られるロストワックスという製法もありますが、砂型になるとそんなに精密なものはなかなかできないので、精密部品系ではあまり使われません。一番精密なのが切削加工です。

2.金属加工業界の強み

池田輝之氏のインタビューシーン1

M&Aを実施するうえで、金属加工業界の強みはどこにあるのでしょうか。

(1)算定しにくい企業価値

切削加工に関しては、精密業界は非常に職人的で、小さい会社でやっていることが多いです。そのため企業価値をどう考えればいいのかが非常に難しいです。製造ノウハウをもつ職人が辞めてしまえば終わりです。結局のところ職人を買えばいいので、高い報酬で就職させればいいというのが金属加工業界です。そのため、職人の価値なのか、それとも会社の価値なのかどうかも判断が難しいです。

企業価値としては安定した取引先をもっているかどうかにかかっています。ただし職人のノウハウが買収した企業に承継できないと全然価値はありません。また企業を買ったところで職人が辞めてしまえばアウトです。職人はいつか辞めてしまうので、それまでに技術をどう承継するか、それが可能なのかという問題もあります。

(2)金属加工業界におけるM&Aの実情

金属業界のM&Aについては、あまりないというのが実情です。買手からみれば、お金を払ってまでもらいたい技術ではないからかもしれません。売手も同様です。足立区の金属加工屋さんが一子相伝みたいな感じで経営されていますが、M&Aの話はたくさんあるけど、結局人の技術だから売らないと話しています。

流通ルートのある企業がM&Aする例はあまりなく、同業の場合は多少あります。自ら取り込もうという風に、買い叩くというイメージです。M&Aするほどの価値はあまりありませんが、自社で持つより複数社で方々に買い叩いたほうがメリットがあるだろうと買手は判断しているようです。ただ製品を買えなくなる現実に対し、製造側が確保するためにM&Aを実施することはあるかもしれません。

(3)金属加工業界の規模

金属加工業界の母数はそれほど大きくはありません。ただし板金も入ってきますので、金属加工業界のほうが精密部品と比べて会社数が多いという程度です。

会社は地方にも都会にもありますが、工場なので地方になりがちです。もともと会社は多摩川や江戸川、足立エリアにありましたが、密集してきたので周辺に移り、騒音へのクレームからなるべく静かな方に移っているのが現状です。

(4)金属加工業界の強み

あえていえば、既存の取引先があるかどうかが強みです。切削部門はたしかに技術力があります。岡野工業のように痛くない針など特殊な製品を作っている会社もありますが、レア中のレアなケースです。とくに医療だから成功したというのもあります。一品もので使い捨てだと、ずっと仕事が続きます。そういう意味ではいいところに目をつけてうまくやったなあという印象ですけど、社員数も少なくそこまでのボリュームはありません。

金属加工業界はほとんどが自動車産業用です。ボディやエンジンブロック、液体パネルも金属です。7割くらいは車関連でしょう。だから痛くない針のケースはレアで、そのなかでも医療は市場規模が小さいです。残りの3割は、建築系でパイプとパイプをつなげる鉄線を手掛けたり、コピー機やファックス内部の台座が少し、エアコンのパネルや内部にたくさん入った金属線などです。あとカメラ関係や、ステンレスのキッチンなどの厨房系で板金が作られています。

そのため、自動車産業の規模が縮小し部品が減ったら、金属加工業界の規模が下がっていきます。そうすると金属加工業界の人材は別業界の会社に移ったりするなど、金属加工業界の価値はさらに下がっていくと予想されます。

3.M&Aについて

池田輝之氏のインタビューシーン2
金属加工業界におけるM&Aに入るまえに、M&Aの概要を簡潔に述べます。

(1)M&Aとは

M&A(エムアンドエー)は『Mergers(合併)とAcquisitions(買収)』の略です。つまり、ある企業の経営権が別の企業に譲渡されることです。また経営権の移転はなくても、業務提携や資本提携もM&Aに含まれます。

少子高齢化で市場規模が縮小する昨今、後継者の不在や将来の成長戦略が描けない中小企業が、M&Aにより企業のノウハウを絶やすことなく事業を継続することが可能になります。

(2)事業承継との違い

事業承継は、事業を親族、あるいは従業員やほかの企業など第三者に引き継ぐことです。近年は、事業承継のほとんどが親族外の第三者によって行われています。企業が合併することがM&Aですので、ほかの企業が事業を引き継ぐ事業承継は一種のM&Aだともいえます。

(3)M&Aのメリット

適切な企業間のM&Aは、買手・売手双方に大きなメリットをもたらします。売手のメリットとしては、後継者問題の解決や企業の存続や発展などが挙げられます。他方買手のメリットは、事業領域の拡大や業界再編に向けた経営基盤の強化、時間をかけずに必要な経営資源を手に入れ事業を開始できる点です。

4.金属加工業界のM&A動向

市場規模が縮小することを見越して、会社を買いたい経営者よりも売りたいと考える経営者のほうが金属加工業界では多いのではないでしょうか。活路としては、お金をもっている企業でしたら、買手として自社と違う製品を作る企業を買い、その企業に自社の製品を卸すという方法もあります。またそのような企業と資本関係を作って自分たちの製品を使ってもらうなど、経営戦略として使うということです。規模の小さい会社同士が集まるというのもあるかもしれません。

(1)売手に求められる戦略

金属加工業界が激変し、次の戦略としてM&Aを築いていこうという方向性が考えられます。金属加工業界自体は縮小傾向にあるなかで、どのように生き残っていくのか、今までと同じことを続けては駄目なので、部品メーカーや金属加工業界から少し足を延ばして、「新規で取引先企業を見つけるのは大変だから弊社を買ってはどうでしょうか?」とほかの業界に買ってもらうようアプローチするなど、新たな時代を生き残るためのM&A戦略を検討していくことが考えられます。

(2)廃業する例も増加

これまで下請けでやってきた人たちが戦略を立てるという発想ができなく、そのまま廃業していきます。金属加工業界は厳しいので、ほかに目を向けるきっかけとして、M&Aが手段となるでしょう。

ただしスマートフォンやパソコン、IT系の入る精密系を別として、金属加工業界はM&Aの対象にもなりにくいほど危機感のある状況です。部品メーカーの買手自体がダンピングされて、部品業界が衰退してしまうという道を辿るでしょう。最終的には少しは生き残りますが、ガソリンを使う車がゼロになれば部品メーカーは全滅状態に陥ります。ボディの材料が従来の鉄板からCFRT(炭素繊維強化プラスチック)製に移行すれば、金属加工業界の規模は縮小します。どんどん売れなくなれば値段が下げられるので、より一層厳しくなります。ただ今の仕事がなくならないと金属加工業界の人は思っているのが実情です。

5.M&Aの流れ

商談成立のイメージ

M&A・事業承継を検討している方へ

当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。


売手や買手の状況によってプロセスが変わることがありますが、3つの流れに大きく分かれます。

(1)仲介会社決定

M&Aを実施する理由や目的を明確化するなど戦略を策定したのち、相手企業を探すために信頼できるM&A仲介会社を選びます。これにより、別業種など幅広いネットワークの活用が可能になるなど、M&Aの選択肢が増えます。

(2)案件の抽出

売手と買手のシナジー効果を最大限に引き出すことが、M&Aの最大の目的です。そのためにはM&Aの候補となる企業の強みや弱みを理解することや、提携している企業の業界のメリットやデメリットを調査する必要があります。

(3)契約締結

トップ同士の面談ののち、条件面での交渉へと移ります。譲り受ける意思表示を示すために譲受企業は買取の方法や価格などが書かれた意向表明書を譲渡企業に提出し、両企業の合意条件が書かれた基本合意契約書を締結することになります。締結後、相手先とのM&Aの独占交渉権が発生します。

6.金属加工業界のM&Aの成功ポイント

金属加工業界でM&Aに成功するポイントは2つあります。

(1)技術力の有無

外注しているため、金型技術がなかったりする会社も多いです。プレス加工や金型など、生産のみしていれば儲かる時代にやめている会社も多いです。生産というのは人がいれば売上があがるので、時間もかかりません。そのため金型を外注に任せればいいという流れになります。しかし金属加工部門がものづくりにおいて技術の根幹部分になっているので、買手がM&Aを検討する際に買う価値のある会社なのかという部分に効いてきます。

ただし技術力は唯一の部分でもあるため、高い技術力をもつ会社が経済的にお金をかければ良い完成品を作れます。そうするとコストもかかってしまいます。例えばプレス加工の場合、金型を作る量自体が減っているので、大量生産をすることができず余計にコストが跳ね上がってしまいます。

(2)製作コストの安さ

安い製作コストで完成品を作れることも大事です。中国の人件費も最近は上がってはいますが、現状では完成品の値段を中国並みに下げられていません中国では農村から人材を引っ張ってくるなど人材自体のレベルは低いけれども、金型を作るようなハイクラスな技術は日本・中国双方とも変わりません。生産設備は中国のほうが新しいので負けますが、日本でも安く作れるはずだけど安く作ろうとする努力が企業に足りていません。昔から100万で売っているから今も同じというのでは、製品は売れません。金型の設計能力はあっても、作るのは結局機械なのですね。

7.まとめ

バブル崩壊後30年、新しい技術に投資することなく既存の技術を食いつぶしてきたため、日本のものづくりは陰りをみせ始めています。自動車産業への依存度の高い金属加工業界もそのひとつで、金属加工自体が従来の産業構造では必要とされなくなる危機を迎えています。売手の立場からは戦略的に自社の技術をほかの業界に売り込み、相手企業に買ってもらうなど、経営戦略が必要になります。

情報に敏感な経営者ならいざしらず、下請けを続けてきた企業にとって戦略を描くこと自体が難しいと池田さんは話しています。本当に知らなければいけない金属加工業界の経営者にここでお話しされた内容が届き、ほかに目を向けそのきっかけがM&Aになってくれることを望むと述べておられました。

〈話者紹介〉


池田ビジネスコンサルティング
代表コンサルタント 池田 輝之(いけだ てるゆき)

成蹊大学卒業後、一部上場大手化学メーカーに入社し、住宅事業部で営業職に従事する。
退職後、法律事務所、会計事務所系コンサルティングファーム、大手通信会社会計子会社でキャリアを積み、中小企業専門の再生コンサルティング会社へ転職。複雑な企業再生案件を主に扱い、関与した案件数は100件以上にのぼる。退職後は投資ファイナンス会社の取締役に就任し、新規プロジェクトの立ち上げに参画した後独立。現在、中小企業の再生、財務・事業戦略支援を行う池田ビジネスコンサルティングの代表を務める。また弁護士を中心にしたNPO法人、中小企業再生サポート協会の設立に参画、副理事長を務めた経験もある。

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