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税金対策も忘れずに!事業承継の心得を専門の税理士が詳しく解説

2020/03/17
更新日:2021/02/09

はじめに

高度経済成長の時代に起業された数多くの中小企業は、オーナーのリタイアという理由を中心とした事業承継の時期が迫っています。事業承継の主要な承継手段である親族内承継では、会社の株式を後継者に贈与・相続しますが、贈与・相続時の税金は高額になるケースがあります。
親族内承継時の税負担の大きさが、円滑な事業承継を妨げる要因となるケースがあります。そこで今回は、事業承継に関わる税金対策の専門家であるSKIP税理士法人の曾我さんにお話を伺いました。


1.中小企業オーナーの事業承継のポイント

曾我さん

中小企業のオーナーが事業承継で注意すべきポイント詳しく見ていきましょう。

(1)事業承継の方針を立てる

事業承継には一般的な親族内承継、親族外承継、M&A、そして廃業という選択肢があります。中小企業のオーナーが事業承継をするにあたっては、方針をしっかり立てることが大切です。

自分の会社が置かれている状況や社会情勢、業界のトレンドなどを見極めて、事業承継の方針を立てる必要があります。総合的にどういう方向かをまず決めるのです。しっかりと計画を立てないと、急ぐことはない、自分はまだ元気だからと考えてしまいがちでなかなか進みません。

遺産相続の対策と同様に、事業承継も差し迫らないと、いつまでにこれをするという具体的なことを決められないのでしょう。貯金も明確な目的がないとなかなか貯まりませんが、目標があれば少しずつ貯めていけるものです。それと同じで、事業承継もまずは明確な方針を立てることが非常に重要なのです。

事業承継の話は、周囲の人間から進めていくのは難しいものがあります。後継者からのアピールがある場合もありますが、一般的には非常にセンシティブな問題なので、オーナー本人を前にして引退後や亡くなった後の話はしづらいものでしょう。

オーナーが事業承継をどう考えているのか不安に感じている後継者も多いです。だからこそ、オーナーが状況を理解して、計画を持って進めることが最も重要なポイントになるのです。

(2)事業承継の準備を始めるのに早過ぎることはない

まだまだ早いと思っていても、月日が過ぎるのは早いものです。目の前のことに追われている間に5年、10年と経過し、やがて体力や精神力に衰えを感じて、そろそろ事業承継を始めようと思った時点では、「時すでに遅し」となっていることが多いのです。

事業承継をする時間が限られるということは、それだけ選択肢が少なくなってしまうということでもあります。後継者を育成するにしても、短期間で簡単にできるものではありません。

後継者を決めてから、いろいろと教育をしたり取引先に紹介したりして下準備を整えるのには時間がかかります。一般的に5年から10年ぐらいはかかるのではないでしょうか。

M&Aによって事業継承を行う場合にも充分な準備期間は必要です。オーナーが自社を売却する意志を固めてからM&A仲介会社などを通じて譲渡先の候補を募り、その中から信頼できる企業との交渉が始まることを考えれば、1年以上はかかります。前準備も含めると、こちらも5年ぐらいはかかるのです。

また、差し迫ってからの売却では価格をたたかれることになりかねません。急げば急ぐほど細かいところに目が届かなくなり、満足がいく承継にならない恐れがあります。

(3)外部の力を上手に使う

事業承継を行うにあたっては、外部の力を上手に使うことが大切です。内部にいる人間でわからなかった客観的な視点からの斬新なアドバイスや的確な助言がもらえることも多いです。

また、コンサルタントなど外部からのアドバイスの方が社員に納得してもらいやすいというケースもあります。外部への相談は、社内での承継の準備を進めやすくする効果があるので、ぜひ利用したいところです。

いずれにしても、最初のフレームワークの部分である方針を立てることが、事業承継においての最重要項目と考えられます。人間の寿命は80歳ぐらいであり、いくら頑張って生きても100歳です。その人生の中で仕事においてトップの立場でできるのは70歳ぐらいまででしょう。

会長職に退けば80歳でも可能かもしれませんが、ビジネスの最前線でやれるのは中小企業といえども70歳ぐらいまででしょう。年齢のことを考慮しても、遅くとも60代にはもう考え始めなくてはなりません。50代でも早過ぎることはないのです。

2.中小企業オーナーの事業承継の悩みとは?

考える中高年男性

中小企業のオーナーが、事業承継をする際の悩みとして以下のような内容がよく挙げられます。一つずつ解説していきましょう。

(1)銀行が提案する事業承継対策は本当に正しいのか?
(2)顧問税理士が事業承継のアドバイスをしてくれない
(3)株式の贈与に課せられる税金が高い

(1)銀行が提案する事業承継対策は本当に正しいのか?

銀行が助言する事業承継対策は、もちろん正しい部分が多いと思われますが、銀行は銀行のビジネス上のロジックがあります。

取引先企業には業績を上げてもらいお金を融資したいので、融資を含めた助言になりがちです。
そのため、銀行からの助言は、オーナーの本意に沿っている場合もあれば、銀行に有利な内容になっている場合もあります。また、銀行は2〜3年で融資の担当者が変わります。担当者によってさまざまなことが変わり、やりにくくなることもあります。
ただし、資金調達が大きく必要な事業承継の対策を銀行が提案してくれるのであれば、よい話ともいえるでしょう。

(2)顧問税理士が事業承継のアドバイスをしてくれない

税理士は多忙で、期限が定められている法人の確定申告などはどんどんこなしますが、いつになるか分からない先の相談は後回しになりがちです。実際の税務はベテラン税理士ではなく若い社員が見ている場合も多く、税務面以外のところまでは行き届かないこともあります。

また、税理士には得意分野・不得意分野があり、顧問税理士が法人税のエキスパートではあっても、相続や事業承継、M&Aは専門ではないので適切なアドバイスができないケースもあるでしょう。

知識としてM&Aの概要は理解していても、深い実務の部分は分からないこともあります。そのうえ、M&Aは税理士にとっては相談に乗ったところで報酬がとりにくい案件なのです。

税務申告書のようにペーパーが仕上がって対価が払われるものではなく、親身に助言したとしても単なる「親切な人」で終わってしまい、大きな報酬が得られないケースが多いので、積極的にはなれないという事情もあるでしょう。

対価が支払われる相続や贈与が専門の税理士であれば相談に乗ってくれる可能性が高いです。顧問税理士に相談したうえで、最適な税理士やコンサルタントを紹介してもらうのが最も現実的といえるでしょう。

(3)株式の贈与に課せられる税金が高い

親族内の承継で株式を贈与する場合、株式の評価額に対して税金がかかりますが、株式の評価額が上がり過ぎていて税金が途方もない額になることがしばしばあります。

贈与時の税金に関しては、対策を講じるか否かで大きく税金の額が変わってきます。ケースバイケースですが、きちんと対策を立てておけば数千万~数億も減る場合もあります。

2018年に時限立法で施行された特例事業承継税制は非常にメリットが大きいので、ぜひ事業承継を考えている中小企業オーナーは利用するべきです。次の章で詳しく取り上げます。

3.特例事業承継税制の適用を検討しよう

曾我さん

M&A・事業承継を検討している方へ

当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。

高度成長期に創業された会社は数がとても多く、またそれらの会社が事業承継の時期にきています。身内に事業承継するために株式を贈与すると、多額の税金を支払わなければなりません。そういう場合の助けとなるのが事業承継税制です。

以前は制約が多過ぎて使いづらい制度であった事業承継税制ですが、平成30年度の税制改正では、これまでの業承継税制に加え、時限立法的に10年間の措置として緩和されることになり、利用者が10倍に増えています。

ただし、これは非上場株式の贈与および相続に限定された制度です。これを利用するためには、令和5年3月31日までに「特例承継計画」を都道府県に提出して、令和9年12月31日までに事業承継を実行する必要があります。

具体的には株式の生前贈与の時点で譲り受ける人がその会社の代表権を有していなくてはなりません。計画的に進めることが必要ですが、この制度が適用されれば株式の贈与の税金が猶予されます。

贈与を受けた人がその株式を売却した場合等はその時点で税金がかかりますが、所定の要件に該当したまま事業を続ける限り税金はかかりません。

この時限立法が施行された背景には、株式の贈与税がネックとなり中小企業の事業承継がなかなか進まない企業が多いという実情があります。適用される要件を満たしていれば、譲渡が円滑に進みます。猶予される税金の大きさを考えれば、できるだけ利用すべき制度です。

事業承継を考える中小企業のオーナーは、事情の許す限り早めに「特例承継計画」を提出した方がよいでしょう。資金面での心配がなくなれば、オーナーは腰をすえて後継者の育成などの事業承継の準備を進めることができます。

特例事業承継税制の適用のための細かいプロセスについては、顧問税理士など認定支援機関に相談して進めることが望ましいでしょう。

4.自社株式の評価額が下がるタイミングに承継する

税の相談を受け、計算をする税理士(真顔)

特例事業承継税制が適用されない場合は、株式評価額が低いときに事業承継をするといいでしょう。
株式を生前贈与して承継するとき、評価額の低い方が税金の負担が下がるからです。では、どのようなタイミングに株価が下がるのでしょうか。

株式評価額とひとくちにいっても、M&Aのときに出す株式評価額と相続や贈与のときの株式評価額は、実は全然違います。

M&Aで将来性のある企業として譲渡される場合は、いわゆる「割引キャッシュフロー法」といわれるDCF法で計算されます。これは将来その事業が生み出すと予想されるキャッシュフローを、現在価値の合計をもとに評価して算出する方法です。

相続や贈与の場合は、国からの財産評価通達に準じて計算されます。これは会社の規模によって評価が何種類かあり、有利な方を選択できるのです。

上場している類似の企業と比較して評価をしてよいとか、あるいは純資産として評価するなど、会社によって適用方法は様々です。議決権のない株にすると配当還元といって、とても安く評価されます。

ほかにも、株価が下がるのは多額の退職金を支払ったときです。たとえば会社のオーナーが代表取締役を退任し、顧問や代表権のない会長職に退くと、退職金として数千万円から数億円ほどの金額が会社からオーナーに支払われます。これほど大きな金額が動くと、会社の資産価値が変化し株式評価額は下がります。

あるいは、借り入れをして土地を購入し建物を建てると、贈与や相続上の評価は時価評価額よりも億単位で低い評価額になるので株価が下げられます。そういうタイミングで贈与すれば、税金対策としては有効です。

金融商品の扱いによって株式評価額を下げることもできます。社員の退職金のための積立として生命保険が利用されることがあります。2019年あたりから厳しめにはなりましたが、90%ほど戻ってくる積立の40〜50%は損金として計上できるので、その分評価を下げることができるのです。

対策が講じられるのであれば、少しでも贈与税の負担を減らすことが可能なので、専門家に相談しながら進めるとよいでしょう。

5.まとめ

事業承継を考える企業オーナーにとって大切なポイントや、株式の贈与においての税負担への対策などを税理士の観点から紹介しました。事業承継を成功させるには早めに方針を立て、ロードマップを策定し、円滑な承継のための準備をする必要があります。

また、株式の贈与における思わぬ税負担が原因で事業承継を頓挫させないためには、特例税制の適用や株式評価額の調整などの対策も有効です。税理士やコンサルタントの助言を受けることも大事ですが、なによりもオーナー自身の覚悟を決めた行動が必要だといえるでしょう。

〈話者紹介〉

曾我さん

SKIP税理士法人
曾我 隆二
一橋大学商学部卒業。野村證券株式会社(3年間)、株式会社リクルート(4年半)を経て、公認会計士の世界へ。中央クーパース・アンド・ライブランド・アドバイザーズ株式会社(中央監査法人グループ)勤務を経て、平成15年6月公認会計士曾我事務所として独立開業。平成24年1月SKIP税理士法人に組織変更し、代表社員に就任。平成31年4月SKIP監査法人 代表社員に就任。

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