M&A・事業承継なら事業承継総合センター専門家コラム > M&A > IT企業のM&Aとは?通常のM&Aとの違いやトレンドを解説

IT企業のM&Aとは?通常のM&Aとの違いやトレンドを解説

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly
IT業界(AI)イメージ

 

はじめに

M&Aは業界を問わずに行われている経営戦略ですが、業界によってM&Aが行われる状況は異なります。年々市場規模が拡大するIT業界において、M&AはIT人材を確保するための欠かせない戦略として注目されています。今回は、IT業界におけるM&Aトレンドと成功事例をもとに、M&Aの流れやM&Aを成功させるポイントをM&Aアドバイザーの岩永敦司氏に解説していただきました。
 


岩永 敦司(一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会認定 M&Aアドバイザー)

話者紹介

一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会認定 M&Aアドバイザー
株式会社エクステンド M&A事業部
岩永 敦司 Iwanaga Atsushi

一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)認定 M&Aアドバイザー(CMA)。金融機関・不動産・M&A仲介会社での経験を活かし、中小企業の資金調達(融資、リース)から、経営戦略の立案、M&Aによる事業拡大、M&Aによる財務リストラ、経営承継など企業のステージに合った提案を行う。

 

 
 

1. IT業界におけるM&Aトレンドと現状

ITとはInformation Technologyの略称であり、ソフトウェア、アプリ、システム、情報処理など、インターネットに関連する情報技術のことを指します。近年はクラウドサービス、ビッグデータ、IoT、VRなど様々な技術に注目が集まり、そのビジネス領域も拡大し続けています。IT業界の市場規模は12兆5,050億円に達すると予測され、今後ますます重要性を増してくると考えられています。こうした市場規模の拡大を背景に、IT業界におけるM&Aの件数も増加傾向にあり、2018年には1,070件と国内で初めて1業種1,000件を超えました。

 

■IT業界のM&A件数 推移(単位:件)

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018
223 180 195 206 321 395 421 501 748 1,070

※統計データは株式会社レコフデータの集計結果(2018)より抜粋

 

好調に見えるIT業界ですが、実は慢性的に抱えている課題があります。それは人材不足。経済産業省によると、IT企業とユーザー企業の情報システム部門に所属するIT人材は、現在17.1万人が不足していると推計し、2030年には不足数は78.9万人に上ると予測しています。

人材不足の理由はいくつか考えられますが、IT業界では技術の変化・進化が著しく、技術を身につけても、その技術がすぐに古くなっていくため、新しい技術に人材が追いつかないという状況が生まれているのです。ITが発展し続ける限り、IT業界の人材不足は続くと考えられています。また、アプリやゲームを開発する優良IT企業や上場企業に人材が集まり、そうでない中小企業・小規模企業に集まらないというように、人材の二極化が加速しているのもIT業界ならではの特徴と言えます。

人材確保を目的としたM&Aは、今後さらに活発化していくと考えられます。新たな技術やプログラミング言語に精通した人材や、他業態のナレッジを持った人材、内製化を推進できる人材など、企業が強化したい業態によりM&Aのターゲットは異なりますが、IT業界で起きているのは、競争力に直結する人材確保のためのM&Aなのです。

これまで買手目線のM&A案件が多かったのですが、売手の方からM&Aを検討するケースも増えています。IT業界の構造としては、発注者のシステム開発依頼を受ける一次請けは大手企業、さらに開発・運営業務を担う二次請け、三次請けが中小企業というようなピラミッド構造になっています。下流工程になるほど利益率は下がる傾向にあり、利益を上げるためには人材を増やす必要がありますが、人材を確保することが難しく、負のスパイラルに陥っている中小企業も少なくありません。そうしたIT企業はどこに活路を見出すかというと、売手市場の波に乗るということ。あらゆる業種においてデジタルシフトが叫ばれ、これまでIT企業の顧客であった大手ユーザー企業やメーカーの間でも、異業種であるIT企業をM&Aで買収し、内製化を実現しようとする事例も見受けられます。経営が安定した大企業のグループに入って安定成長を目指したり、大企業からのM&Aを目的に起業したりする経営者も増えています。

 


2.IT 業界のM&A成功事例

IT 業界のM&A成功事例

IT業界の重要性が高まるにつれ、M&Aが活発化していることは紹介しましたが、どんな企業が買収されているのでしょうか。M&Aに成功した企業の事例を参考に、株式譲渡・事業譲渡を行う際のヒントを見つけましょう。

売手は、東京都内でソフトウェアの受託開発を行っていたA社。創業から10年が経ち、業績も順調でした。従業員も20名を超えるなど安定した業績を残してきましたが、人材不足に陥ることを懸念した経営者は、資金繰りが悪化する前にIT事業を売却し、コア事業に集中したいと考えていました。

A社の経営者が希望したのは、A社で働くエンジニアの雇用維持。すでに従業員の高齢化が進んでいたこともあり、従業員の不安を取り除いた上でM&Aを行いたいという経営者の想いがあったからです。複数の買手の中からA社が選んだのは、同業種のB社でした。B社は業績規模でA社の8倍ほど大きい中小企業で、M&Aを活用することで人材不足を解消し、売上拡大を図っていました。

B社がA社を高く評価したポイントは、人材の量と質の高さです。B社も慢性的な人材不足に陥っており、通常の採用活動では追いついていない状況でした。質の高いエンジニアやIT人材を一度に複数確保したいと考えていたB社にとって、A社は最良の会社。A社にとっても、経営が安定したB社に譲渡することで、従業員の雇用が守られ、労働環境を維持することもできます。M&Aを行うことで、双方が抱えていた問題を解決できることがわかり、無事成約に至りました。この事例のポイントは、お互いのメリットがマッチしてこそ理想的なM&Aが実現できるということです。A社は経験豊富なエンジニアを抱えているものの、人材の採用に課題を抱えており、展望は決して明るくありませんでした。B社にはA社のエンジニアを安定的に雇用できる経営基盤があります。A社のエンジニアが活躍する土台をB社が持っていたというのが、売却を決定する要因になったと言えるでしょう。

 


3.IT業界におけるM&Aの流れと起こりやすいトラブル

IT業界におけるM&Aの流れは、他業界における流れと大きく異なるわけではありません。ただし、IT業界のM&Aでは、人材の見極めに力を入れている点に注意を払う必要があります。

通常デューディリジェンスは、事業・財務・税務・法務・人事の視点から売手のリスクや財務状況、収益力などを把握するための監査です。優秀な人材を確保することが企業の競争力に直結するIT業界では、そのエンジニアが習得しているプログラミング言語、技術的なスキルに焦点を当てて調査することが一般的です。

例えば、エンジニアが取得している資格や、これまでの開発実績・経験、職務経歴書の開示は最低限求められるでしょう。それらを盛り込んだ企業価値評価を行いますが、エンジニア一人あたりの価格設定を行い、人数分をかけて売却価額として算定することもあります。買手が求めるエンジニアの能力に達していなければ、それだけで成約が難しくなってしまうため、日々のITエンジニア育成は重要なポイント。売手と買手の間に大きな価格差がなければ、トップ面談からクロージングまで3ヶ月ほどで完了するケースも多く、スピード感はIT業界ならではと言えます。そのため、買手にとっては買収を迷っているうちに他の買手企業に先を越されるというケースも少なくありません。

また、企業買収後に大きな問題となるのが従業員のモチベーション低下です。M&Aスキームが事業譲渡の場合、新たに買手企業と従業員との間で雇用契約を結び直す必要があります。従来の給与や退職金から大きく下がることも考えられ、ここで重要なキーパーソンとなる社員を逃してしまうようでは、M&Aの意味合いも半減してしまいます。キーパーソンの退職は他の従業員に連鎖することもあるため、細心の注意が必要です。重要なキーパーソンとはコミュニケーションの量を増やし、最終合意の前段階から買収後の報酬体系や運営体制について議論を重ねた方がよいでしょう。また、特定の人物の継続雇用をクロージングの前提条件として設定する買手もいるため、個別に面談するなどして引き留めを行うこともM&A成功のポイントの一つです。

業種を問わず、従業員への告知タイミングは重要なポイントです。かつては、譲渡を反対された場合にM&Aが成立しなくなってしまうため、最終契約書を締結するまでは従業員に告知しないというのが一般的でした。告知するタイミングに正解はありません。ただし、IT業界は人材の価値が会社の価値だからこそ、いつ、どのように伝えるか慎重に検討することをおすすめします。

 


4.買い手が注目するポイントとM&Aを成功させるために準備すること

握手(IT業界のM&A締結)

準備不足のまま会社売却を進めてしまうと、買手が見つからないということもあり得ます。M&Aを成功させるために必要な事前準備を紹介します。

まずは社会保険など労務面の整理を行います。基本的に社会保険、未払いの会社については売却することが難しいと考えておきましょう。また、合意したあとに未払いの残業代があったというのも買手企業へ迷惑をかけてしまうことになるため、事前に労務面を整理しておくことが重要です。

M&Aを進めていくためには、社内の体制づくりも欠かせないポイント。特に、会社の所在地が売手と買手で離れていると、遠隔で管理できない、自社から人材を派遣できないといった理由で買収を見送る買手もいらっしゃいます。そのため、早期から信頼できるキーパーソンへの権限移譲を始めて管理者として育成することが重要です。また、会社や事業を売却したあとに、キーパーソンが継続して仕事をしてくれるのかという意思確認も済ませておきたいところ。キーパーソンが仕事を続けられない場合には、早めに代わりとなる人材を確保し、経営者がいなくても会社を運営できる体制を作れるかどうかがIT業界でのM&A成功の鍵と言えます。

意外に見落としがちなのが、従業員のスキルシートの整理です。先ほど紹介したように、IT業界におけるM&Aでは、従業員の評価が会社の評価につながります。買手から開示の依頼があった場合には、速やかに書類を提出できるよう、日頃からスキルシートを準備しておきましょう。自社のホームページを活用して、開発実績やメンバーのスキルなどを更新し、常に開示できる環境を作っておくこともいいかもしれません。

 


5.IT業界に強い仲介会社の探し方

IT業界におけるM&Aの件数は増加トレンドにありますが、IT業界に精通したM&A仲介会社は多くありません。M&A仲介会社はすべてのプロセスに関わるため、IT業界の知見がある仲介会社に依頼することで、交渉はスムーズに進みます。M&A仲介会社によって得意とする業種や規模は異なりますが、過去にIT業界の案件を経験しているM&Aアドバイザー(M&A仲介会社)を選ぶことが大切です。

M&Aを行う上で、負担になるのが仲介手数料。手数料の種類・相場は様々で、支払う額や支払うタイミングもM&A仲介会社によって異なります。M&Aで会社や事業を売却する前に、手数料は必ず確認しましょう。特に着手金が必要なM&A仲介会社の場合、M&Aが成立しなくても着手金として50〜200万円もの手数料を支払う必要があるため、手数料を抑えたい場合は注意しましょう。

経営者の中には、地方にいるからM&Aできないと誤解される人もいますが、決してそんなことはありません。インターネットの普及に伴い、いつ、どこにいても仕事をすることができる環境が整備されつつあり、テレビ会議やチャットアプリでコミュニケーションを取りながら、クラウド環境で開発することも可能です。他業界と異なりオンライン上で仕事を完結することができるため、地方でも全く問題ありません。買手が重視するのは、あくまでエンジニアの技術。エリアを気にするよりも、むしろ新しい技術の開発経験を増やしたり、ニーズのあるプログラミング言語を身につけることが重要でしょう。

IT業界は多様化が進み、今後はWebメディアやスマートフォンアプリ、AIなどさらに業態の多様化が進むと考えられています。最近はインターネット上でM&Aの相手を探せるマッチングサイトも台頭しており、エンジニアを求める買手と企業・事業を売却する売手とのマッチングが成立しやすくなっています。M&Aマッチングサイトの魅力は、M&A仲介会社がマンツーマンで買手を探す通常のM&Aと比べて、一瞬で買手にアクセスすることができ、幅広い会社にアピールできるということ。また、比較的小規模なM&Aを取り扱っているため、これまでM&Aをあきらめていた方でもM&Aを実現できる可能性は高いと言うことができます。

ただし、M&Aマッチングサイトは自分から買手を探せるという反面、質の高いM&A仲介会社を自分で用意しなければならないという側面もあります。最適なM&A仲介会社を選ぶことが、M&Aの成功を左右するため、M&A仲介会社選びは慎重に行うことをおすすめします。最近では一度に複数のM&A仲介会社を比較し、売手の要望に合ったM&A仲介会社・買手企業を選べるサービスもあるため、M&A仲介会社に依頼する前の選択肢の一つとして利用を検討しましょう。

ご相談・着手金は無料です 後継者探しは事業継承総合センターにご相談ください。第三者継承のお手伝いをたします。 まずは相談する (無料) お電話でのご相談 0120-15-7207 FAX: 03-5539-3514 受付時間: 平日10:00〜19:00

お問い合わせに当たり、プライバシーポリシー
同意したとみなされます。

ご相談・着手金は無料です 後継者探しは事業継承総合センターにご相談ください。第三者継承のお手伝いをたします。 まずは相談する (無料) FAX: 03-5539-3514 受付時間: 平日10:00〜19:00 お電話でのご相談

お問い合わせに当たり、プライバシーポリシーに同意したとみなされます。

本サービは、新規事業提案制度から生まれたサービスで、継続は一定の期間をもって判断されます。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

ピックアップ記事

  1. 高橋 昌也_トップページ3

    2019.7.26

    後継者探し・後継者選びに大切なことは?事業承継のプロ・税理士が解説!

    はじめに「そろそろ後継者探しを始めなければ」と考えている経営者は多いかもしれませ...
  2. IT業界(AI)イメージ

    2019.7.4

    IT企業のM&Aとは?通常のM&Aとの違いやトレンドを解説

    はじめにM&Aは業界を問わずに行われている経営戦略ですが、業界によってM&Aが行...
  3. 握手(M&A契約締結)

    2019.5.15

    【M&Aとは?】中小企業オーナー社長必見!事業承継を成功させるポイント

    はじめに新聞やテレビなどのメディアで、連日大企業のM&Aのニュースが取り上げられ...
  4. 税理士法人タクトコンサルティング 玉越賢治氏バストアップ

    2019.5.15

    【廃業とは?】廃業と倒産の違い、廃業の方法を事業承継のプロ・税理士が解説!

    はじめに廃業とは、個人事業主・企業の経営者が理由を問わず自主的に事業を辞めること...

※本サービスは、新規事業提案制度から生まれたサービスで、継続は一定の期間をもって判断されます。