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レーマン方式を徹底解説~M&A仲介業者の成功報酬と手数料について

2020/03/27
更新日:2021/02/26

はじめに

M&Aの仲介事業を専門とするM&A仲介会社は、売手企業から依頼を受け、M&Aを成立させるために企業間の折衝を業務としています。M&Aは高額の取引となるだけに失敗した場合の損失も大きく、大きなリスクを伴うビッグプロジェクトです。売手企業とM&A仲介会社で詳細事項を盛り込んだ契約書を締結する際に最も重要な項目が、M&A仲介会社へ支払う報酬体系です。


M&Aにおいてスタンダードになっている成功報酬体系が「レーマン方式」です。「レーマン方式」の意味や内容、計算方法、メリット・デメリットなどについて、M&Aの実態に詳しい事業承継通信社の柳さんに解説していただきました。


1.レーマン方式とは?

オフィスで文書に署名する実業家

「レーマン方式=Lehmann plan」とは、M&Aにおける「成功報酬」を設定する際によく用いられている算出方式の呼称を指します(まれに「リーマン方式[a]」と発音されることもあります)[b][c][d]。

日本においても、レーマン方式はM&Aを遂行するM&A会社に対する成功報酬の計算式として広く用いられています。M&Aに関わるビジネスパーソンであれば、今や世界的なスタンダードになったレーマン方式を熟知しておくことが必要と言えるでしょう。

M&Aにおいて売買される資産価値によって、M&A仲介会社への支払い対価も変化します。レーマン方式では、まずその資産を算出した上で取引額を決定し、その取引額にあらかじめ設定した報酬料率を乗じて報酬金額を決定します。すなわち、M&Aを実行しようとする売手企業は、レーマン方式を知っておくことでM&Aに必要な経費を把握することができるというわけです。

M&Aの成功報酬は、取引する企業同士が納得できる内容であることが大切なので、M&Aを依頼する売手・買手企業がレーマン方式の意味を熟知した上でM&A仲介契約を締結し、実行に移すことが肝心です。

2.レーマン方式での報酬料率と算出法

レーマン方式では独自の報酬料率が設定されており、取引額と料率が反比例しています。また、計算式がほかの事業の報酬形態とは大きく異なることから、金額の算出には十分な注意が必要です。

取引額に対する報酬料率

テーブル 取引額 料率
5億円以下のパート 5%
5億円超~10億円以下のパート 4%
10億円超~50億円以下のパート 3%
50億円超~100億円以下のパート 2%
100億円超のパート 1%

上記の表が示すように、テーブルごとに金額の一部を区分し、それぞれの料率が変化するのがレーマン方式の大きな特徴です。

すなわち、「取引額に料率をかけるだけで算出できるという単純な算出方法ではない」ことを、あらかじめ認識しておく必要があります。

報酬額算出法

M&Aの取引金額が15億円だと仮定します。

2で示した表を見て「③に該当するから、15億円✕3%で報酬額4,500万円」と思いがちですが、それは誤りです。

レーマン方式では、取引額が5億円を超えた案件については、金額を表記のテーブルごとに計算していく必要があります。

取引金額15億円のケースにおけるレーマン方式での算出方法は以下のとおりです。

テーブル 計算式 算出金額
5億円✕5% 2,500万円
(10億円-5億円=5億円)✕4%ト 2,000万円
(15億円-10億円=5億円)✕3% 1,500万円
合計 ①+②+③ 6,000万円

上記の表が示すように、取引額が15億の案件の報酬額は、レーマン方式の計算式にのっとると、①②③の3つのテーブルに分けて算出された合計金額の6,000万円となるわけです。

まず総額を5億円で区切り、最初に①のテーブルで算出したあとに、②③のテーブル順に算出していき、最後に各テーブル算出額を合計するという方法です。

一見、複雑な計算方法のように感じられるかもしれません。

しかしながら、億単位で企業の資産を移動するという大きなビジネスでは、取引額と手数料率が比例する方式よりも、レーマン方式の方がM&Aを実行しようとする売手企業には負担が少なくなるので、売手企業にとってはメリットのある的算出方法と言えます。

3.M&A仲介会社によって異なる部分は?

柳隆之のインタビューシーン

M&Aの業界においては、ほとんどの会社が成功報酬にはレーマン方式を採用しています。ただ、M&A仲介会社によって全体的な報酬体系にいくつかの相違点がみられるので注意が必要です。

(1)独自の料率設定

成功報酬の料率は、M&A仲介会社によってはレーマン方式をもとにしながら独自の料率を設定していることもあります。また、成功報酬にレーマン方式を設定しているM&A仲介会社でも、着手金や中間金など、ほかの費用が必要になるケースもあるので、最終的には全体の費用を把握しておく必要があります。

(2)取引額の算出基準の違い

レーマン方式の料率は取引額を元にしますが、M&A仲介会社によっては取引額の捉え方が異なるケースがあります。たとえば取引額の基準を純資産のみと捉えるか、負債も含めた総資産と捉えるかだけでも大きな隔たりがあり、取引額が増減するので注意が必要です。

レーマン方式を採用していても、全てのM&A仲介会社が全く同様の基準値を用いているわけではありません。会社によって異なる部分をしっかり把握することが大切です。

4.取引額のベースとなる基準は?

オフィス、コンサルタント弁護士概念で働くビジネスマン

M&A・事業承継を検討している方へ

当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。

M&Aの取引額のベースとなる売手企業の資産価値をどう算出するのかも重要なポイントです。レーマン方式の「取引額」のベースは以下3種類があります。

(1)株式譲渡金額ベース

売手企業が株式譲渡実施した時の価格です。たとえば、企業価値が5億円のケースでは、5億円に料率をかけることになります。

※株値の算定にも仕方がいくつかあるので別途確認が必要

(2)移動総資産ベース

(1)に負債をプラスした金額を「移動総資産」といいます。

たとえば、(1)のケースと同じ会社で、株の価値が5億円だったとします。銀行借入れなどの負債総額(会社役員の借入額も含む)が2億円とすると合計額の7億円がベースとなり、これが金額で評価した企業価値です。この場合は、7億円を取引額として料率を掛け合わせます。

(3)企業価値ベース

(1)に有利子負債のみをプラスする場合を「企業価値」といいます。有利子負債とは、銀行からの借入や社債など、利子をつけて返済しなければならない負債のことです。

このように、会社によって取引額の概念が異なるので必ず確認するようにしましょう。

5.成功報酬以外のM&A手数料

M&Aのプロジェクトにおいては、成功報酬以外にも発生する費用があります。取引金額が高額になると、これらの手数料も無視できない金額なので事前の確認が必要です。

そこで、成功報酬以外にM&A仲介会社に支払う可能性のある各種手数料の規定と金額感について以下に列挙してみましょう。

(1) 相談料

税務や法務について専門家に相談するときと同様に、M&A仲介会社に事前相談する際に、相談料を支払うケースもあります。一般的に、数十万円が相場とされています。

(2) 着手金

正式にM&A仲介会社に依頼してM&Aに取り掛かる時点で、あらかじめ着手金を設定しているM&A仲介会社も少なくありません。着手金の額には業務内容の規模や難易度によってかなりの幅があり、数十万円から、場合によっては百万円単位に及ぶこともあります。

M&Aにおいては実行計画の精度が重要であり、M&A仲介会社は企業概要書の作成など事前段階での人件費が少なからず発生するため、着手金を払った方がよりスピーディーかつ適正に実行されるというケースもあります。ただし、着手金を支払ったからといって絶対に成功するという保証はないので、慎重に検討する必要があるでしょう。

近年はM&Aの活性化に伴ってM&A仲介会社同士の競争も激化しつつあるという状況もあり、着手金は無料としているM&A仲介会社が増加傾向にあります。

(3) 中間金

M&Aが基本合意できた時点で支払う報酬として「中間金」が発生するケースがあります。呼称は「中間」ですが、M&Aプロジェクトの中間というよりも、むしろ最終工程に近い段階で発生する報酬です。すなわち、M&Aの独占交渉権が確定した段階で、成功報酬の前払いとしての意味合いで発生するのが中間金なのです。中間金の金額は、成功報酬の10%〜20%程度が一般的です。

(4)リテイナーフィー

成果報酬ではなく、一定期間月額でM&A仲介会社へ支払いする方法がリテイナーフィーは、着手から成約までの期間、毎月支払われる報酬体系です。たとえば、M&A仲介会社が調整などの準備のために必要な期間の経費として3カ月間定額で支払うケースもあり、M&A仲介業務そのものではなく、M&A以外のコンサル業務などがある場合に多く発生しているのが現状です。

(5)デューデリジェンス費用

対象企業がM&Aを実行するのに問題がないかどうか、財務・法務・労務などの面について審査が行われるのが通例です。特にM&Aにおいて頻繁に使われる用語でもあり、クライアント企業が相手企業の資産価値を知ることで万一のリスクを回避するための調査の意味で用いられており、それにかかる費用をデューデリジェンス費用と呼んでいます。

デューデリジェンスは弁護士や会計士などの専門職が行うことが多く、M&A仲介会社が買手側の顧問の弁護士・会計士に依頼します[e][f]。案件によって、デューデリジェンス費用は数十万円から数百万円とかなり幅があります。

(6) その他実費

本来弁護士など法律の専門家が行う書類や契約書のチェックなどをM&A仲介会社の法務・財務担当者が行う場合、その分の費用がかかることもあります。

これらに加えて、外国籍企業が相手の場合、当然ながら通訳や翻訳などの作業が必要となり、外国を含めた遠隔地への出張が必要な場合は交通費なども考慮せねばなりません。

これらの費用に関して、どの内容の費用をどのタイミングで支払うのかは、一般的にはクライアントとM&A仲介会社が締結するM&A仲介契約書に記載されます。

気になる最低報酬額ですが、300万円〜2,000万円と案件によってかなりの幅があります。2,000万円〜2,500万円を基準とする大手M&A仲介会社も存在しますが、最近では成功報酬以外の費用を500万円程度としているM&A仲介会社も多いようです。

6.レーマン方式のメリット・デメリット

ビジネスマン考える

M&Aをおこなう売手企業にメリットが多いレーマン方式ですが、メリットを知ると同時にデメリットも認識しておく必要があることはいうまでもありません。レーマン方式のメリットとデメリットについて知っておきましょう。

(1)メリット

レーマン方式は、M&Aをおこなう売手企業がM&A仲介会社に支払う成功報酬金額の算出方法だけに、メリットの大半は売手企業側にあります。

①必要経費の事前予測が可能

レーマン方式の第1のメリットは、算出のための基準がはじめから決まっているので、「必要経費を予測できる」ことです。M&Aにかかる費用が事前に予想可能であると収支計画が立てやすく、M&Aに踏み切ることを考慮している売手企業にとっては大きな後押しともなるでしょう。

②取引が高額なほど報酬料率が下がる

レーマン方式の第2のメリットとして挙げられるのは、「取引額と報酬料率が反比例する」という点です。M&A以外の一般的な取引では、報酬料率が固定されていることがほとんどです。

しかしながら、M&Aの場合はこれが正反対になっているのです。取引が高額になると報酬料率が下がることとなり、支出する金額を抑えることができます。これは、売手企業にとっては大変ありがたいシステムだといえます。

(2)デメリット

売手企業にとってメリットのあるレーマン方式ですが、取引状況によってはマイナスに作用する場合もあるので要注意です。

①少額取引では報酬額が負担に

レーマン方式では「5億円以下の取引は一律5%の報酬料率」となっています。実際に5億円未満の取引となった案件によっては、報酬料率が実質固定されるため、5億以下の案件では取引金額の大きさで得られるメリットはなくなります。また、最低報酬が決まっているため、取引によっては5%を結果的に超えてしまうケースも存在します。

②想定外の出費が発生するケースもある

リーガルチェックや交通費などの実費を別途設定しているM&A仲介会社も多く、この場合はレーマン方式で算出した成功報酬とは別会計で予算に組み込む必要が出てきます。

また、最低報酬などを含め専属専任でないと依頼を受けないM&A仲介会社も多いので、最終的にかかる費用をM&A仲介会社に必ず確認する必要があります。

7.M&A仲介会社選びのポイント

M&Aを実施するにあたって重要なのが「M&A仲介会社の選択」です。

M&A仲介会社も年々増加しており、M&Aの品質が高く信頼できるM&A仲介会社に任せるには、数多くの会社の中から自社の要求に適切に応えてくれるM&A仲介会社と仲介契約を結ぶ必要があります。特に社運をかけたM&Aプロジェクトとなると失敗は許されないのでなおさらです。

そこで、M&A仲介会社を選定する際のポイントを以下に挙げてみましょう。

(1)手数料の総額を把握

手数料の算定基準が分かりにくいM&A仲介会社もあるので、最初に相手企業の資産価値がいくら以上であれば手数料総額がいくらになるのかを事前に把握しておく必要があります。

取引額算定の考え方や最低報酬の規定などをどういう仕組みで決定しているのかが判明すれば、M&A仲介会社の業務に対する姿勢が見えてきます。

(2)過去の実績を検証

M&A仲介会社がおこなった過去の実績を検証することは、これまでどのような案件を担当し、それをどのような手法で成功に導いたのかが判断できるので、大きな参考材料です。

業種別の実例が多い会社や、特に自社と同様の案件をこなしてきた会社であれば、信頼度がより高まるプラスポイントといえるでしょう。

(3)知識量や情報量の内容と質

高額の不動産を扱う業者と同様に、会社の規模よりも担当者のスキルや仕事に対する情熱の高さなども、会社選びの重要な要素となります。

中小の規模であっても、大企業を上回るスキルを備えた社員がいるM&A仲介会社は少なくありません。M&Aに関する人的ネットワークと情報量の多さ、また経験豊富かどうか見極める必要があります。

8.まとめ

ビジネスマン握手

M&Aを実行するにあたって、いかに優秀なM&A仲介会社に依頼するかを熟考すると同時に、依頼する側である売手企業も、レーマン方式を含むM&Aにかかる料金体系を正確かつ的確に把握しておかねばなりません。「レーマン方式」の計算方法と算出方式を熟知した上でM&A仲介会社と折衝し、全体の手数料金額を事前に把握しておくことが重要です。

〈話者紹介〉

柳隆之のプロフィール写真

株式会社事業承継通信社

取締役CEO 柳 隆之(やなぎ たかゆき)

1977年群馬県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、株式会社リクルート入社。

民間スクール・大学情報媒体での営業および結婚情報事業にて広告営業及びマネージャーを経て、2015年3月退社。

美容系事業会社の商品企画担当役員、人材派遣会社の経営戦略、営業担当役員を経て現職。

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