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倉庫業界のM&Aにおけるポイントは?メリット・デメリットを詳しく解説!

2020/03/23
更新日:2021/02/26

はじめに

倉庫業界は、グローバル企業のインターネット販売拡大により新たな局面を迎えています。倉庫業界のマーケット自体は縮小傾向が懸念されていますが、国内の物流を担う重要な業界のひとつです。
倉庫業界の今後の課題はどのようなものでしょうか。そしてこの業界でのM&A現場では何が起こっているのでしょうか。今回は倉庫業界のM&Aに詳しいひびき地所の山口さんにお話を伺いました。


1.倉庫業界の業界動向を解説

倉庫

(1)そもそも倉庫業界とは?

倉庫業界とは、基本的にはクライアント企業の商品や物品を倉庫で保管する受託事業を行う業界です。業種的には「倉庫業」や「倉庫営業」などと呼ばれています。「運送業」と密接な関係を持ち、物流におけるメインとなる業種です。

実際に規模が大きくなると、倉庫会社が関連事業として運送や配送の業務も自社の領域に含めて運営している場合も多数見られます。営業に関しては「倉庫業法」によって規制されていて、以前は国土交通省の認可を必要とする許可制でした。
2002年以降は登録制へ変更されて以前よりも参入しやすくなっています。
「倉庫業法」上の倉庫というものは物品を安全に保管することが可能で、なおかつ荷役の機能がある施設あるいは設備を指します。これには一般的な倉庫とトランクルーム、ほかにもストックヤードなどが含まれます。
倉庫の種類は多種多様です。自社で配送まで行う企業の中には、冷凍倉庫を備えたところもあります。特に、水産関係や食肉関係などに多くみられ、大型トラックを20〜30台所有している企業も見られます。
大規模な倉庫はたいていファンドが所有しています。5年や10年の契約が終われば別のファンドに売却しますが、その場合、借主企業は変わらず、所有者のファンドのみ変わることがほとんどです。

(2)倉庫業界の現状と将来性

市場規模が約4兆円といわれる非常にマーケットの規模が大きい倉庫業界では、上位5社だけで業界全体の総売上高に対して3割以上を占めているのです。とはいえ占有率は他業種と比較すれば低めであり、寡占ではありません。
初期投資に莫大なコストを要するのが倉庫業です。しかし、現場のサービスにかかるコストは比較的低く、収益効率が悪くないビジネスともいえます。

前述のように2002年に許可制から登録制に緩和されたこともあり、新規参入する企業が多いのが現状です。2020年現在では、約2,500社もの倉庫会社が競合しています。その約9割が中小規模であり、さまざまな個性を出して差別化を図っています。

現状では倉庫業界のマーケットの縮小傾向が指摘されています。人口減少による物流量の減少と、物流業者がコストカットのために自社内で倉庫を持つようになったことなどが要因だと考えられます。
つまり倉庫業界自体の将来性はさほど明るくはありません。中小企業である倉庫会社オーナーは差別化によって商圏を拡大するか、M&Aによって事業承継を図るかという選択に迫られているのです。

このように、倉庫業界では良くも悪くも将来を見据えたうえでのM&Aを視野に入れるオーナーが増えています。それが倉庫業界でのM&Aが進行している理由のひとつでもあると考えてよいでしょう。

2.倉庫業界M&Aの現場で何が起こっているのか

倉庫管理者

マーケットの縮小が懸念される倉庫業界で、徐々に進行するM&Aの現場ではどのようなことが起こっているのでしょうか。M&Aのスキームを含めた倉庫業界の特徴を解説します。

(1)倉庫会社のM&Aにおける企業価値の算定方法は?

倉庫業界の中でよくあるM&Aのパターンとして、ある異業種企業が物流、配送に関しても自社でやりたいと考えたときに、倉庫会社を買収することがあります。

その場合、倉庫会社の企業価値の評価は、一般的な企業のM&Aの場合とは少し違いがあります。当期利益がいくらとかいう観点ではなく、不動産や保有しているトラックの時価評価で計算されます。最近では、運送業界の大手である佐川急便やヤマト運輸が、街中の至るところで小規模の倉庫を借りてエリアの配送拠点としています。しかし、それはM&Aではなく通常の賃貸契約として借りているにすぎません。

(2)倉庫業界M&Aの特徴とは?

倉庫業界のM&Aに関しての特徴について解説しましょう。まず大きい特徴は、大手の物流会社へのM&Aが進んでいることです。背景としては、倉庫会社に保管業務を委託する物流会社において、物流の絶対量の減少から業界再編が進んでいます。

一方、自社のコスト削減を目的として倉庫会社を買収するケースが見受けられます。また、倉庫業界内の再編の一環として、大きい倉庫会社が中小の倉庫会社を吸収して、事業規模の拡大を図るM&Aも行われています。中小の会社は将来性の暗さからか売り案件が増加しています。

ほかにも、倉庫業界では海外進出が増えています。海外に現地法人を設立し、倉庫を提供して部品等の物流量の減少をカバーするために、海外でマーケットを拡大しようとする倉庫会社が出てくるのは当然の流れです。

とりわけ東南アジアやインドは物価が非常に安く、倉庫の管理コストや人件費を低く抑えることができるメリットがあるため、海外に進出する戦略には価値があるのです。

3.倉庫業界M&Aのスキームを詳しく解説

倉庫会社のM&Aは、ほとんどが株式譲渡です。その倉庫会社が他の事業を存続させる場合には吸収分割となります。

(1)倉庫会社のM&Aにおける株式譲渡とは?

株式譲渡とはM&Aの手法の代表的なものです。企業の一部あるいはすべての事業を第三者に譲渡する手法です。譲渡対象は有形無形の多岐に渡り、設備、不動産、債務、債権、人材、のれんやノウハウなどが挙げられます。要注意事項として、競業避止義務という会社法で定められた規定によって、売手側の会社は、ある一定の期間や地域内において、譲渡した事業と同様の事業はできなくなります。倉庫業界のM&Aは株式譲渡がほとんどです。

(2)倉庫会社のM&Aにおける会社分割・吸収分割とは?

会社分割とは、株式会社等が手がけている特定の事業について、権利義務の一部あるいはすべてを異なる会社が受け継ぐことを指します。その中でも異なる既存の会社に事業を引き継ぐ手法が「吸収分割」です。倉庫業界ではこちらの手法も見られます。

4.倉庫業界M&Aのメリットとデメリット

物流

M&A・事業承継を検討している方へ

当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。

倉庫業界のM&Aを行う場合のメリットとデメリットについて解説します。

(1)売手のメリット

まず、売手のメリットは以下のような項目が考えられます。

● 譲渡益の獲得
● 後継者問題の解決
● 経営資源の集中
● 個人保証からの解放

近年では中小企業オーナーの悩みのひとつとして、後継者不足という深刻な問題があります。しかしM&Aを行えば、自らが手塩にかけてきた事業を第三者に承継してもらうことができます。これによって後継者問題の解決と認識することが可能です。

これらの悩みをすべて解決したうえでハッピーリタイアをし、セカンドライフの充実に励むというのが売手側のオーナーのメリットといえるでしょう。
ここからは倉庫業界のスキームとして多くみられる「株式譲渡」と「吸収分割」それぞれのメリットやデメリットを見てみましょう。

(2)株式譲渡のメリット・デメリット

株式譲渡における、売手のメリットは売却することによって対価を得られることと従業員の雇用を継続できることでしょう。自社にとってはお荷物となっている事業でも、他社にとっては必要な事業である可能性があります。

別の会社がその会社を譲り受けることで新しい販売チャネルを獲得したり、スケールメリットが生まれたりするシナジー効果が得られることもあるのです。一方、デメリットは売却益が課税対象となる点です。事前に専門家に相談しておきましょう。

(3)吸収分割のメリット・デメリット

吸収分割における売手のメリットとしては、まず権利義務を包括的に受け継ぐものなので、個々の契約などをそのまま買手に承継できるという点です。権利義務には債務および契約上の地位などが含まれます。債権者との手続きを個別にする必要がないのは大きいメリットです。

さらに、買手が受け継ぐ権利義務の中に、売手の社員の雇用契約も含まれます。社員全員から個別に同意を得なければならないとしたら、手間と時間と根気の必要な作業になります。しかし、それが必要ないので売手・買手双方とってメリットです。しかしキーマンとなる社員が残るかどうかの保障はありませんので、注意しておきましょう。

5.倉庫業界におけるM&Aの注意すべきポイント

倉庫内の光景

倉庫業界のM&Aで、買手が最も気をつけなくてはならないのが売手の粉飾です。資金繰りが破綻しかかっていて売りに出すところも多いのです。そういう理由で売り急いでいる場合は、売上高や取引先関係などを実際よりよく見せようとする傾向があります。

(1)粉飾を見破る目利きが必要

異業種の買手が、自社関連事業の配送に関して自社内で完結したいという動機のM&Aは別ですが、同業他社の買手がシナジー効果を期待して行われる場合のM&Aは要注意です。

いざフタを開けたらシナジーなど到底期待できない、聞いていた状況とは全く違うということが起こる可能性もあるため、中堅どころの企業価値2〜3億円以上の案件になると、そういうリスクを考えて行う必要があります。

(2)詐欺まがいの確信犯に注意

それでもなお粉飾は起こります。弁護士を入れてそういう確信犯のようなことをする「地面師」まがいの悪質な行為も中にはあるので、気をつけなければなりません。きちんと決算書を上げ、公認会計士を立てて進めた場合でも「解釈の違い」などで揉めることもあります。

公認会計士といえども、それぞれの業界の現場でのさまざまな相場などを理解しているわけではありませんので、企業価値の適正な評価というのは困難なのです。たとえば売手企業の商品在庫が、現行の商品か旧品なのかで価値は全く変わります。

真摯に取り組むM&A仲介会社は、在庫ひとつとっても本当にその評価が現状の市場価値を反映しているのかまで調べるものです。

表面に出てこないリスクを顕在化させるのが、M&A仲介会社やコンサルタントの本来の役割なので、そういう向き合い方をしてくれる会社かどうかを見定めるのもM&Aを検討する際には重要な部分です。

6.まとめ

世の中のシステムが目まぐるしく変化していく時代の中で、生き残る道を模索している企業が多数存在する倉庫業界の現状やM&A事情を解説しました。

中小規模の倉庫会社のオーナーが事業を承継するためには、業界のトレンドを見据えて、Win-Winの関係を構築できる譲渡先を探すことが肝要です。また買手は、売手の会計情報が適正なものかをシビアに見極める必要がありそうです。

〈話者紹介〉

山口さん
ひびき地所
山口 利通  やまぐち としみち

宅地建物取引士
不動産コンサルティングマスター
ファイナンシャルプランナー(AFP)

1971年 福岡県八女市生まれ
某大手電機メーカー退職後、平成16年 株式会社ひびき地所を設立。事業用不動産売買仲介業務を中心に、事業用不動産組成コンサルティング及び、不動産再生事業を手掛ける。近年は、不動産を中心とした事業承継・事業再生型M&A案件等のアドバイザリー周辺業務にも取り組んでいる。

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