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自社株とは?自社株売却を活用した事業承継についても紹介

2020/03/27
更新日:2021/04/15

はじめに

自社株とは、株式会社が自社で保有する株式のことをいいます。一般的に、株主対策や税金対策を目的に持たれることが多く、それぞれの目的によって、買い戻しや売却を行います。
自社株を活用することで、事業承継をよりスムーズに行うことができるので、事業継承を検討中の経営者は、その仕組みを知っておいて損はないでしょう。

そこで今回の記事では、Liens税理士事務所の税理士である齋藤幸生さんにお話を伺いながら、自社株の概要や取得方法、売却方法やそのメリット・デメリットについてご紹介していきます。


1.自社株とは?その概要を詳しく解説

自社株売却による事業承継について解説する前に、まずは自社株とは何なのかについて、その概要を紹介します。

自社株とは?

自社株とは、自社が発行した株式を、会社として保有しているもののことを言い、賃借対象表上では、純資産の部に計上されます。

企業自身が自社株を保有する目的は、主に株主対策や税金対策であることがほとんどです。株式の譲渡制限がかかっていると、上場企業のように簡単に自社株を保有したり、売却したりができにくくなってしまうので、会社の登記簿を取得し、株式の譲渡制限の有無を確認しておきましょう。

自社株の取得・保有に関するルールについて

自社株の取得・保有は、今でこそ企業の株主や税金の対策として保有されることが一般化していますが、平成13年の旧商法改正以前は、原則禁止とされていました。その理由は、自社株の取得方法によって債権者に不利益が発生する可能性や、相場操作行為やインサイダー取引などに繋がるリスクが発生した場合、投資家が不利益を受ける可能性があったからとされています。
しかし、自社株の取得・保有は、買収防止に役立てたり、従業員にとっての利益としても扱えたりすることから、平成13年の商法改正で規制緩和されました。
それに伴い、現在は、上場企業から中小企業まで、株主総会決議があることを条件に、全ての企業で自社株の取得や保有が認められています。

加えて、以下3つの措置が施されることにもなりました。

  • ①当該決議で承認された自社株の取得の期間を1年以内で自由に定めることが可能
  • ②自社株を対価に事業買収に応じた株主に対して、株式の譲渡損益への課税に対する繰延措置
  • ③自社株式を対価とした株式取得に対する事業再編手続きの簡略化・円滑化措置

②については、自社株を売却する側にかかる税金の負担を少しでも軽減し、売却に対する懸念を少しでも払拭することで、M&Aを活性化させることを目的に施行されました。ただし、この措置は平成32年度末までの時限措置となります。

③についても、目的は②と同等になります。手続きの簡略化を行うことで、着手時のハードルが下がりました。また、買収資金の流出が行われないため、買収資金が潤沢にないような中小企業であっても、M&Aを実施しやすくなりました。

2.自社株の取得方法やその目的について

2.自社株の取得方法やその目的について

自社株は、保有する以外に「取得(買い戻し)」や「売却」をするものでもあります。ここでは、自社株の取得方法と、取得する目的について紹介します。

自社株の取得方法は?

自社株を取得する方法は、実施する企業が上場企業なのか、それとも中小企業なのかによって変わります。一般的には、それぞれ以下の様なスキームで取得します。

  • ・上場企業:株式市場で購入して取得
  • ・中小企業:オーナー(株主)が会社に売却して取得

上場企業の場合、株式市場で自社株が販売されているため、そちらから購入して取得するという方法を取ることができます。ただし、短期間で大量に購入する場合は、自社の株価に影響を与えることになるため、取得金額や期間の把握をしづらいというデメリットがあります。
また、上場企業の場合は、あらかじめ株主に自社株の取得価格と期間を通告した上で購入する「公開買い付け」という方法でも、自社株を取得することができます。

それに対し、中小企業の場合は、非上場企業となるので、上場企業のように公開株式市場で購入することはできません。そのため、自社株を持つオーナー(株主)に売却してもらい、それを購入するという形で取得します。
その場合、臨時取締役会での決議を経る必要があるため、上場企業と比較しても、手続きの工数が多くなってしまいます。

自社株を取得する目的とは?

企業による自社株の取得については、主に以下4つの目的で実施されます。

①株価を引き上げ自社の価値を高める

自社株の株価は、その企業の価値として評価されます。そのため、自社株の株価を上げることは、自社の価値を上げることにも繋がるのです。
また、自社株の価値を引き上げることにより、他社からの買収防止に貢献することができます。

②ストックオプションとして扱い従業員に配当する

ストックオプションとは、自社で働く従業員が、あらかじめ定められた価格で自社株を購入する権利のことをいいます。この権利を介して自社株を付与することで、従業員は自社株の株価が上がれば確実に儲けられるため、モチベーションアップに貢献することができます。

③資本提携企業に対する経営権の強化

お互いの自社株を持つことで、資本提携している企業(子会社など)から自社株を購入することで、より強い経営権を持つことが可能です。その際、提携先企業が持つ自社の株式については、買い付けを反対されることなく購入することができます。

④株主の権限の変動

自社株の保有率により、自社や株主の権限は大きく変わります。株主の意見を伺うことなく、通常の経営上での意思決定をスムーズに行える基準に達するためには、自社株率が50%以上のあることが条件となります。また、保有率が2/3以上になった場合、株主総会での特別決議を単独で成立させられるという強みがあります。

3.自社株を売却する目的や事業承継への活用法を解説

3.自社株を売却する目的や事業承継への活用法を解説

冒頭でもお伝えした通り、自社株の売却は、事業継承にも活用することができます。ここでは、その方法の他にもある自社株を売却する目的などについて紹介します。

自社株を売却する目的と注意点

自社株の売却は、基本的に「資金調達」を目的に実施されます。
株式を売却することで、その譲渡対価を得ることができます。その際、元々の購入金額よりも株価が上がっている場合は、差額の売却益を手に入れることができます。反対に、下がっている場合は、譲渡対価は手に入るものの、購入時よりも低い金額しか受け取ることができません。
そのため、売却する場合は、売却時期を検討する必要があります。

ただし、中小企業の株式の場合は、上場企業の株式とは異なり、公開市場がないために換金しづらくなっています。
中小企業による企業側からの売却の場合、株式上場を前提とした売却(=投資)が一般的なため、投資家などの株式売却先を探す必要があります。しかし、非上場期間は買い取った企業以外に売却できない上に、その売却が企業から承認されていない場合、株式を持っていたとしても株主として認められません。売却できるかどうかもわからず、また株主としても認められない可能性もあるため、売却先はそう簡単に見つかるものでもないのです。
しかし、自社株は相続財産になるため、売らざるを得ない中小企業は後を絶えません。

後継者に対する自社株の譲渡方法は?

自社株を後継者へ譲渡する方法は、「売買」「贈与」「相続」の3つが主となります。

親族内で株式譲渡を行う場合は、どの方法でも譲渡可能ではあります。
しかし、もし譲渡方法が「売買」の場合は、注意が必要です。万が一、売買価格が時価よりも低いと認定が下った場合は、買主に譲与税がかかることになるからです。しかし、だからといって、親族間で時価よりも高い価格で売買するというのも、あまりない話でしょう。
親族に対する売買の場合は、価格の妥当性について疑問が尽きかねないため、基本的には「贈与」もしくは「相続」によって譲渡するのがいいとされています。

ちなみに、親族以外に譲渡する場合は、「売買」が一般的とされています。親族ではないため「相続」という手段はなく、「贈与」も選択することは可能ですが、よっぽどの背景やメリットがない限り、親族以外に贈与する理由はないでしょう。

自社株売却を活用した事業承継について

事業承継をする上では、株式を後継者に対して「相続・遺贈」「売却」「生前贈与」などの方法があります。このうち、「売却」を活用することにより、事業継承をスムーズかつ一番負担なく行うことが可能となります。

よくある手法は、後継者が設立した持分会社に対し、オーナー(株主)が既存企業の株式を売却するというスキームです。
このスキームを活用することで、持分会社から見て、既存企業は子会社となります。これにより、民法上の相続においてハードルとなる「遺留分」の問題をクリアすることができます。

4.自社株売却のメリットとデメリット

4.自社株売却のメリットとデメリット

M&A・事業承継を検討している方へ

当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。

自社株売却には、それぞれ以下のようなメリット・デメリットがあります。これらを考慮しながら、売却自体の意向や時期を現経営者・後継者で検討する必要があります。

メリット①資金調達ができる

企業にとって、自社株を売却する一番のメリットは、スムーズな資金調達でしょう。
その時点での株価や、売却する株式枚数によって得られる金額は左右されるものの、企業は自社株を売却することにより、その対価として利益を受け取ることができます。またその際、新たに株式を発行して売却するのではなく、すでに発行された自社株を売却する場合は、発行済み株式枚数に変化は生じないため、より早く資金を手に入れることができます。

メリット②企業再編がスムーズになる

企業再編がスムーズに行えるという点も、自社株売却のメリットと言えます。
通常、企業が再編を試みる際、その方法は「合併」「分割」「株式交換」などが用いられることが一般的です。その際、自社株がない場合は新規発行や投機内容の変更などの手間がかかりますが、すでに自社株を持っている際は、企業再編を目的に代用交付することが可能となります。
つまり、余計な手間が削減されるので、スムーズに企業再編を実施できるということです。

また、株主の保有対象者を大きく変更できるという点でも、グループ化や再編・統合ができるということもメリットとなります。

メリット③後継者や従業員にかかる負担や不安を軽減できる

自社株の売却による事業承継は、後継者や残された従業員たちにとってもメリットが大きいことも魅力です。
自社株の売却は、現経営者が生前に行うことができます。これにより、複雑な相続問題や引継ぎの不足などが発生するリスクをなくすことができるため、後継者に対する余計な負担がかからず、事業に集中することができます。

また、従業員にとっては、事業承継など会社の内部事情に変更がある場合、「自分の雇用状況に何か影響はないか?」という不安を与える可能性もあります。
しかし、自社株売却による事業承継の場合、従業員の雇用状況は事業承継前同様に確保されるため、従業員の精神的負担の軽減に繋がるのです。

デメリット①株式が下落する可能性がある

自社株を売却するということは、株式市場において自社株の流通量が増えることを意味します。それにより、需要と供給のバランスが崩れてしまう恐れがあり、そうなると株価が下落する可能性があります。
事業承継後に速やかな業績アップなどを叶えることができれば、株価は上昇しますが、功績がないままでは下落するため、投資家より批判を受けるリスクも考えられます。

デメリット②売却益に税金がかかり負担が重くなる

自社株を売却することで得られる譲渡益などの利益には、税金がかかります。そしてその比率は、自社株を社外に売却するか、社内で売却するかによって変動します。
それぞれの比率については、以下となります。

・社外に売却する場合
20%(15%の所得税と5%の住民税)
※令和19年までは復興特別所得税が課され、20.315%で計算・課税

・社内で売却する場合
総合課税方式形式が採用されているため、売却益によって変動

社外で売却の取引が行われる場合は、「譲渡所得」として扱われるため、上記の比率で計算されます。つまり、自社株の売却額から、20.315%の金額を差し引いた金額が、手取り金額となります。
この計算式は、売却額が変わった場合であっても、変動することはありません。

一方で、社内で自社株を売却する場合、それによって出た利益は「配当所得」として扱われます。配当所得の場合、総合課税方式形式で計算されるため、売却額によって比率が変動します。売却額次第では、莫大な税金がかかる可能性があるので、現経営者には大きな負担となるでしょう。

上記の仕組みから、自社株売却による事業継承は、社外で取引を行った方が税率を抑えられるので、経営者にとっては負担が少なくなるということになります。

デメリット③後継者が買取資金を準備する必要がある

親族に対する事業承継の場合は、贈与や相続として引き渡すことが可能ですが、社外に対して自社株を売却する場合、後継者は買取資金を準備する必要があります。後継者に資金力がある場合は問題ありませんが、ほとんどの場合、融資により買取資金を準備することが一般的です。

もし融資で賄う場合、事業承継後に株価が下落すると、後継者にとって大きな損失になることが懸念点として挙げられます。
そのため、相続税のために借入をするのか、株式取得のために借入するのかなど、ファイナンス面についても検討が必要となります。

5.まとめ

自社株売却を活用するのであれば、売却で得た資金の使い道についても、しっかり検討をしておくべきでしょう。今回、取材協力をいただいた税理士の齋藤幸生さんからは、自社株式しか相続財産がない会社にスキームを活用することが最善だと伺いました。
また、事業承継に関しては、後継者が買い取った方がいいのか、もしくは持分会社を設立した方がいいのか、その方法についても検討が必要となります。いずれにせよ、借入金は必要となりますので、個人のファイナンスを含めて、総合的に考えるべきでしょう。


話者紹介

齋藤 幸生さん

Liens税理士事務所
代表 齋藤幸生
東洋大学経済学部卒。平成28年に税理士兼合格し、都内税理士事務所にて国際税務に従事。
平成29年5月 Liens税理士事務所を開業と同時に経営革新等支援機関となる。

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