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融資で困った時の2つの可能性、プロラタ方式と経営承継円滑化法

2020/03/28
更新日:2021/02/09

はじめに

緊迫した財政状況に直面している経営者にとって、最後の手段となり得るのがプロラタ方式です。一般的にはあまりなじみのない言葉ですが、融資への道を切り開く方法として、近年注目を集めています。
プロラタ方式について、さらにはその前段階で活用を検討すべき経営承継円滑化法の金融支援について、事業承継の専門家である円満相続税理士法人の税理士、桑田 悠子さんに解説していただきました。


1.プロラタ方式の定義

プロラタ方式
資金調達に行き詰まったときの最後の手段がプロラタ方式です。
“プロラタ”は英語の“Proratable”の略語で、“比例配分できる”という意味があります。
事業主が複数の金融機関から融資を受けている場合、借入金の返済にあたって借りている金額の大きさに応じ、比例配分して返却することをプロラタ方式と呼びます。

(1)プロラタ方式はどんな場合に使われるのか?

万策尽きたときに使用する手段なので、通常の事業承継の現場でプロラタ方式が絡んでくるケースはほとんどありません。事業承継を考えている企業の業績がそこまで悪化しているケースはまれなので、プロラタ方式を使うまでもなく、融資を受けることができるからです。

メインバンクに融資を断られ、ほかの金融機関からも融資を断られ、資金調達の道が閉ざされてしまったときに使われるのがプロラタ方式です。
場合によってはメインバンクから「単独での追加融資は難しいが、複数の金融機関とのプロラタ方式ならば融資可能」といった提案がなされる場合もあるようです。
事業承継よりも事業再生において使われるケースが多くなります。プロラタ方式は残高プロラタと信用プロラタの2つに分けられます。

(2)残高プロラタとは何か?

プロラタ方式の中でもっともわかりやすいのが残高プロラタと呼ばれるものです。事業主が複数の金融機関から融資を受けて返済する際に、残債の金額の比率に応じて返済するのが残高プロラタです。

例えば、ある事業主がA銀行から5,000万円、B銀行から3,000万円、C銀行から2,000万円融資を受けていたとして、毎月100万円返済する場合には、A銀行に50万円、B銀行に30万円、C銀行に20万円ずつ金額に比例して返済し、完済のタイミングも同時になるというものです。

(3)信用プロラタとは何か?

債務額の大小のみによって返済割合を決める残高プロラタに対して、融資を受けている金融機関に対して担保や保証がある場合は、保全されている金額を差し引いた無担保部分の残高割合に応じて返済する方法を信用プロラタと呼びます。

担保や保証がない場合は残高プロラタの一択となりますが、担保や保証がある場合は、残高プロラタと信用プロラタでどちらを選択するのか、融資先の金融機関も交えて検討する必要があります。金融機関によって担保の評価額が違う場合もあり得るので、入念なすりあわせが不可欠です。

(4)経営者と金融機関、双方にメリットのあるプロラタ方式

プロラタ方式を使うメリットは経営者と金融機関、双方にあります。経営者にとっては融資の可能性が広がることです。金融機関としてもリスクを均等に分散できるので、単独の場合よりも融資基準のハードルを下げる余地が生まれます。

また、プロラタ方式を使うことによって、経営者と複数の金融機関とが情報を共有することになるので、それぞれが現実に即した対応をしやすくなるメリットもあります。

(5)プロラタ方式のデメリットとは

融資が受けやすくなるという観点ではメリットしかないように思えるプロラタ方式ですが、あえてデメリットを挙げるとするならば、返済額がかさんでしまうことでしょう。

最後の手段であるプロラタ方式を使うからには、企業の業績は優良ではなく、すでに融資もかなり受けている状況にあると推測されます。プロラタ方式を使ったとしても、事業再生することができなかった場合は、傷口を広げただけだったということになりかねません。
プロラタ方式を使ってまでして融資を受けるべきなのか、事業再生は可能なのかどうか、冷静かつ慎重に判断することが求められます。

2.プロラタ方式を使う上でのポイント

桑田悠子さん

プロラタ方式は万策つきたときの最後の手段なので、具体的な導入の手順はあまり知られていません。使用にあたって注意すべきポイントは2つあります。

(1)公平性を保つことが重要

プロラタ方式を使うことになったときに留意すべきなのは、公平性を維持することです。もともとこのシステム自体が、金融機関の間で不公平が生じないようにするために生まれたものでもあります。
一般的には複数の金融機関から融資を受けている場合、メインバンクとそうではない金融機関との間で様々な条件の差が生じて、メインバンクが有利になる傾向があったのですが、プロラタ方式は不平等を払拭することが重要なポイントです。

メインバンクが主導してプロラタ方式を推奨するケースもありますが、融資を受ける金融機関それぞれの意向を調整するのは簡単な作業ではありません。

プロラタ方式を金融機関に持ちかける場合に個別に交渉するのではなく、複数の金融機関と同時に交渉するほうが様々な点でスムーズになり、成立の可能性が高くなります。
個別に交渉するとその時点で順番がつき、公平性が保てなくなってしまう危険性があります。複数の金融機関と同時にミーティングすることによって、公平性と透明性を保つことができるメリットもあります。

(2)無理のない返済計画を

プロラタ方式の交渉を複数の金融機関とする際には、私たちのような税理士、経営コンサルタントなどの専門家を交えることをお勧めします。いかに融資を引き出すかを考えるだけでなく、返済可能な金額を見極めて、業績に沿った無理のない返済計画を立てていくことが重要だからです。

3.経営承継円滑化法の金融支援を活用

経営承継円滑化法,金融支援


事業承継において追加で資金調達が必要な場合、プロラタ方式を使用する前に活用することを推奨したいのが経営承継円滑化法の金融支援です。事業承継をする際に必要となる資金調達を支援する措置で、「債務保証枠の拡大」と「低金利での融資」があります。
この法律を知っているのと知っていないのでは大きな差が出てくるので、経営者の方にはぜひ覚えておいていただきたい法律です。
そもそも経営承継円滑化法とは何なのかを解説していきましょう。

(1)経営承継円滑化法が制定された背景

経営承継円滑化法の正式名称は「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」で、2008年5月に施行されました。その後、2018年の税制改正に伴い、経営承継円滑化法の条文が大きく改正され、中小企業の経営者にとって、さらに使い勝手の良いものになりました。
この法律は、その名前のとおり中小企業の事業承継をより円滑に行えるように後押しする目的で施行されました。この法律が制定された背景には多くの中小企業で事業承継がうまくいっていないという危惧すべき状況がありました。

国内の中小企業の数は企業総数の約99%を占めていて、従業員数でも約70%にのぼっています。つまり中小企業は日本経済の根幹をなす存在です。しかしながら、中小企業における次世代への引き継ぎは、決して順調に行われているとはいえない現状があります。日本政策金融公庫総合研究所が実施した約4,000社を対象とした調査によると、60歳以上の経営者の約半数が廃業を予定していると回答しています。これは日本経済にとって憂慮すべき事態です。
雇用の確保、地方経済の活力の維持、中小企業の持っている貴重な技術やノウハウの継承などの観点からも、中小企業の円滑な事業承継はきわめて重要です。
この現状への危機感から経営承継円滑化法が制定されたのです。

(2)経営承継円滑化法の改正

最初に施行された時点での経営承継円滑化法は、事業承継全般に対応したものではなく、親族内承継を想定して作られていたため、対応できないケースが多々ありました。親族外承継が増加している実際の傾向に即していない部分があったのです。問題点を改善して、より広範囲の事業承継の支援を強化すべく、2018年に条文が大きく改正されました。
この法律には「事業承継税制」、「民法の特例」、「金融支援」という3つの柱があります。どれも経営者の方には知っておいてほしいものなのですが、ここではプロラタ方式を説明した流れで、融資に絞って「金融支援」について解説していきます。

(3)法改正で金融支援はどう変わったのか?

そもそも経営承継円滑化法の中になぜ金融支援が盛り込まれているのでしょうか。
それは事業承継をする際に株式の買取、贈与税や相続税を納付するために新たに資金調達する必要が出てくるケースが多いからです。また、経営者が次世代に交代することによって、信用が低下して資金調達が厳しくなるケースも想定されます。そうした状況の中小企業を支援することを目的として、経営承継円滑化法の中に盛り込まれたのが金融支援です。この支援措置を受けるためには都道府県知事の認定が必要になります。

4.中小企業信用保険法と低金利での融資

中小企業信用保険法,低金利での融資
経営承継円滑化法の金融支援には「中小企業信用保険法」と「低金利での融資」の2つがあります。2018年の条文の改正によって特例がつき、適応される範囲が広がって利用しやすくなりました。この2つについて説明しましょう。

(1)中小企業信用保険法の特例とは?

中小企業の経営者が事業を継続するのに必要な資金及び事業承継するために必要な資金に限って、中小企業信用保険法の特例が認められます。中小企業信用保険法で規定されている普通保険(限度額 2 億円)、無担保保険(限度額8,000 万円)、特別小口保険(限度額2,000 万円)が別枠化されたのです。同時に信用保証協会の債務保証も実質的に別枠化されるため、金融機関からの融資が受けやすくなりました。

(2)低金利での融資

事業承継の際にかかる資金及び事業活動を継続するために必要となる資金に関して、日本政策金融公庫法と沖縄振興開発金融公庫法の特例によって、事業の後継者が通常の金利よりも特別に低い金利で融資を受けることができるようになりました。
金利は時期によって変動する可能性があるります。ちなみに 2018年4月の時点では融資の期間を5年とした場合に、通常金利として 1.21%が適用されるところが、この特例によって0.81%の特別利率が適用されています。
会社の規模、借手が経営者か後継者であること、融資の目的が事業承継であることなど、いくつかの条件がありますが、現時点で条件をクリアできていなくても、手続きを踏んでいくことでクリアできる場合もあります。

5.資金調達の前に会社の健康診断を

会社の健康診断
現時点でプロラタ方式が事業承継の現場で使われるケースはきわめてまれです。プロラタ方式はあくまで最後の手段なので、使わずに済むのであれば、それに越したことはありません。
そのためには定期的に会社の業務状況をチェックして、計画を立てて、事業承継の準備に入ることが大切です。

中小企業の経営者、もしくは後継候補者のみなさまにお願いしたいのは、まずは専門家に相談していただきたいということです。医療でいうところの健康診断をすることが大事です。
問題点をしっかり洗い出すことで、どう解消していくか、その道筋も明らかになってきます。
特に事業承継は、親子間で行う場合でもセンシティブなところがあります。私たちのような第三者の専門家が間に入ることによって、冷静に現状を分析していくことが可能になります。
まず専門家に相談することが円滑な事業承継に向けての第一歩になると考えています。

〈話者紹介〉
桑田悠子さん

円満相続税理士法人
代表社員税理士 桑田 悠子(くわた ゆうこ)

大学在学中にアパレル関連事業を起業し、ビジネスのおもしろさに気が付く。また、プライベートでは親族の相続を経験し、相続や事業承継に関する悩みをなくしたいという想いにより税理士になることを決意。資産税をマスターすべく税理士法人山田&パートナーズに入所。現在は円満相続税理士法人の代表社員・資産税分野専門の税理士として、相続税のみならず全税目を鑑みた顧客提案、各地においての専門家向けセミナー・勉強会を展開中。

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