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個人事業主の事業承継はどう手続きする?新しい税制や節税のポイントも解説!

2020/03/28
更新日:2021/02/26

はじめに

税務署に開業届けを提出し、個人で事業を営む「個人事業主」(税制上の所得区分で法人を設立していない者)において、親から子へ、あるいは親族などに、自分の事業を承継したいと考えていらっしゃる方も多くいらっしゃいます。個人事業主は、後継者に対して具体的にどのように事業を引き継いでいけばよいのでしょうか。円満相続税理士法人の桑田悠子さんに解説していただきました。


1. 個人事業主の事業承継の方法とは?

個人事業主の事業承継の方法には、大別して「売買」「贈与」「相続」という3つの方法があります。

(1)対価として金銭を受け取る「売買」(M&A)

売買は、事業を他人に譲渡し、その対価として金銭を受け取る方法です。今までは、その売買先を見つけることが、とても難しい状況でした。

ところが、最近は事業承継を専門とするコンサルタントや仲介業者、Webマッチングサイトも登場しているので、そういったところから譲渡先を見つけることができます。

売却対象にはさまざまなものがありますが、最近ではリアル事業のみならず、YouTubeのチャンネルのようなバーチャル事業も出てきています。

売却金額が高くなることは大変喜ばしいことですが、経営者さんの中には、その全額が手元に入ると考えていらっしゃる方もいます。しかし、売却金額に対する税金がかかりますので、その税金を引いた残金が手元に残る金額と考えてください。

(2)最も安心感があるとされる「贈与」

贈与は、先代の経営者が、親族など(もちろん、第三者も可)に対して、事業用資産などを生前に無償で渡す方法です。

贈与を行う場合には、親族へ承継する「親族内事業承継」と、親族以外へ承継する「親族外事業承継」の2パターンがありますが、たとえば父から子へというような親族内の承継が非常に多いですね。いずれにしても一定額以上の場合には贈与税がかかるので、事業承継税制を使って無税で移転させるか、他の対策で税金を鑑みたうえで事業承継計画を練ることがポイントです。

(3)遺言がない場合は注意が必要な「相続」

相続は、先代の経営者が亡くなった場合の事業承継方法です。後継者である子どもなどが事業用資産等を取得し、引継ぎを行います。

なお、相続による事業承継において、遺言がない場合には注意が必要です。遺言がない場合には、遺産分割協議による相続人同士の話し合いで決めることになり、必ずしも後継の経営者の希望に添わない事業承継になることもあります。そのため、生前贈与ではなく、相続での事業承継をお考えの経営者さんは、必ず遺言を書くことをおすすめします。なお、その際には兄弟以外の相続人に保障されている最低限の相続分である「遺留分」を鑑みたうえでの遺言であることも、死後トラブルを防ぐうえで非常に重要です。

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2. 事業承継の手続きで必要な書類

積み重ねた書類

個人事業主が事業承継を行う際には、下記のような手続きが必要です。

・先代の経営者による後継者選び
・後継者への引継ぎ
・先代の経営者の廃業手続き
・後継者の開業手続き
・後継者による屋号の引継ぎ処理
・後継者による取引先への連絡

経営者側と後継者側で必要な書類がそれぞれあるので、見ていきましょう。

(1)先代の経営者が提出する書類

事業承継に先立ち、先代の経営者が事業を廃止するときには、所轄税務署長に「個人事業の廃業届書」を提出します。また青色申告をしている場合には「所得税の青色申告の取りやめ届出書」、消費税の課税事業者の場合には「事業廃止届出書」、個人事業主で従業員を雇用していた場合には「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」の提出が必要です。

(2)後継者が提出する書類

後継者が提出する書類は、基本的に新規開業の手続きとほぼ同じです。事業開始からから1か月以内に「個人事業の開業届出書」(個人事業の廃業届書と同じ)を提出します。この際に先代の経営者が使っていた屋号を開業届出書に記載しておけば、そのまま使用できます。ほかに「所得税の青色申告承認申請書」など、必要に応じて提出しましょう。

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3. 事業承継にかかる税金は全部で4種類

個人事業主の事業承継において発生する税金は、以下の通りとなります。

(1)贈与税

たとえば親から子へと事業承継を行う場合は、事業を無償で譲り受けることになるため、贈与税が発生します。贈与税は基本的には、事業用の資産(預貯金、売掛金、機械類、社用車、不動産など)と債務(借入金や買掛金、未払金など)の差で決まります。

この差額が110万円以下なら贈与税は発生しません。逆に110万円を超えた場合、この差額から基礎控除の110万円を引いた額が「課税価格」になり、この価格で定められた累進税率と控除額によって贈与税が算出されます。詳細は国税局のWebサイトを参照してください。

(2) 所得税

事業承継を売買(M&A)で行った場合は「譲渡所得」として所得税や住民税がかかります。

(3)消費税

前提として、消費税は、2年前の年間売上高が1000万円以上の場合に課税されます。しかし事業承継の場合、消費税が課税されるかどうかの判定は、生前贈与か相続かにより、対象となる2年前の売上高の考え方が変わります。

生前贈与で後継者が事業を引き継ぐ場合、1年目に1000万円以上の売上があると、3年目から消費税の課税事業者になります。一方、相続の場合には、先代の経営者から課税売上高を引き継ぐ形となるため、相続人自らが事業をしていない期間の売上であっても、消費税の納税義務者判定の対象となります。

(4)相続税

相続による事業承継の場合には、相続が発生した時点の相続税上の評価額に対し、一定額以上の場合には相続税が課税されます。後継者への負担が大きくなる場合もあるため注意しましょう。

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4. かしこい節税対策とは?新制度による納税猶予も見逃せない!

桑田悠子のインタビューシーン

前述した4種類の税金に対する節税対策も頭に入れておきましょう。新制度による納税制度も知っておくことで、かなりの節税対策が見込めます。

(1)贈与税の対策

後述する個人版事業承継税制による納税猶予を使うかどうかが大きなポイントになります。この制度を利用し、一定の条件を満たす場合には、最終的に贈与税が「免除」になります。 ただ、この納税猶予を行うには、税理士や認定支援機関が必要になるため、まずは専門家に相談が必要です。

財産の金額が小さい場合や、毎年分割で財産を贈与出来る場合には、基礎控除分の110万円までは非課税ですので、コツコツ贈与することで、税金負担や制度手続き負担なく、事業承継を行うことも可能です。また、今後値上がりが想定される財産については、相続時精算課税制度で贈与時の価格を固定する方法もありますので、適切な方法を選びましょう。

(2)所得税の対策

先代の経営者が子どもなどに事業を譲渡した年や翌年は、先代の所得がそれぞれの前年に比べて極端に少なくなることも考えられます。その場合において、先代が予定納税義務であると、税の予定納税額が高くなってしまうことも。

そこで「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請」を提出すると減額が可能になります。これは事業承継だけでなく、業績不振で所得が低くなると想定される場合にも適用できます。

(3)消費税の対策

消費税の課税には、厳密に仕入れを計算する「原則課税方式」と、簡易的に仕入れを計算する「簡易課税方式」があります。

このうち簡易課税方式は、課税売上高が5000万円以下の中小事業者の事務負担を軽減することを目的とし、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した事業者に対して、簡単な仕入控除税額の計算を認める制度です。簡易課税制度を使うと、事業内容によっては消費税の負担を抑える効果があります。

(4)相続税の対策

事業のための土地について、一定条件をクリアすると、評価額を減額できる「小規模宅等の特例」を適用できます。

たとえば相続税の評価額が1000万円のとき、宅地面積などによっては、最大で200万円まで減額でるため、後継者の負担がかなり少なくなります。注意したい点は、事前に贈与や売買で後継者へ所有者を変更してしまうと、この小規模宅等の特例が使えなくなることです。

(5)見逃せない個人版事業承継税制による納税猶予!

2019年1月1日から始まった個人版事業承継税制による納税猶予は、「一定要件を満たすと、最終的にその事業財産の贈与税や相続税が免除される」という制度です。

ただし2028年末に終了する予定の時限立法です。8年間の適用ということになり、2024年3月までに認定支援機関のアドバイスを受けて作成した計画書を提出する必要があります。そのため、ここ2,3年で手を打っておく必要があるでしょう。詳細は国税局のサイトをご覧ください。

本制度は十分に試す価値がある制度だと思います。たとえば医師が数千万円の資産を移す場合には多くの贈与税がかかってしまいます。それが無税になる可能性があります。知らないと損をするので、ぜひ積極的に活用しましょう。

注意したい点は、相続税における「小規模宅等の特例」との併用はできない点です。また書類には認定指定機関の証明書を付ける必要があるので、個人で処理を完結することは難しいです。弊社も認定機関になっておりますので、ご支援が必要な場合には、いつでもご相談くださいね。

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5. 事業承継前後は要チェック。債務について

最後に、事業承継前後に気をつけたいことです。

借入金の承継は事前に確認を
事業承継時には、借入金などのマイナスの資産も引き継ぐ必要があります。借入金の名義を変える場合には、金融機関とのやり取りが発生するのを覚えておきましょう。

おわりに

事業承継における節税対策については、ケースバイケースで有利になることも不利になることもあります。個人で判断が難しいと感じたきは、「街の係り医」のような形で税理士に相談してみるとよいでしょう。

話者紹介(プロフィール)

桑田悠子のプロフィール写真

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代表社員税理士 桑田悠子 (くわた ゆうこ)

経営者や一般個人の方の、資産に関する税金のお悩みを解決できる税理士になるため、相続税申告件数が日本一であった「税理士法人山田&パートナーズ」へ入社。4年半にわたり相続税申告・生前対策・税務調査対応・法人コンサル・組織再編などの実務経験を積み、相続税のみならず全税目を鑑みた提案をする力を養成した。その後、円満相続税理士法人に参画し、現在は同法人・役員を務めている。

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