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製造業におけるM&Aの特徴は?事例や注意点、ポイントを解説

はじめに

M&Aは事業承継の手段の一つとして定着しつつあります。製造業においてもM&Aによって事業承継を行うパターンが増えていますが、実際に検討するにあたっては製造業界のM&A事情を把握しておく必要があります。

そこで今回の記事は、M&A・資金調達支援や事業再生を行うU&FASの代表で公認会計士・中小企業診断士の氏家 洋輔さんに製造業のM&Aやメリット注意点を教えていただきます。


1.製造業の業界動向

工場内の製造風景
まずは製造業の業界動向について知っておきましょう。

(1)製造業の概要について

製造業は、大まかにいえば製品をつくっている業界です。人を雇用し、工場・設備も保有して材料や部品を加工し、組み立てて市場に流通させます。日常で使用するありとあらゆる物は製造業が作り出していると言っても過言ではなく、自動車業界や電気機器業界などでは世界的に見ても大きなシェアを誇る日本企業が多数存在しています。

業界の特徴としては、工場建設や設備投資、原材料の仕入れなど先行投資に相当額の資金が必要なところです。また、他の業界と違い設計・開発・製造とキャッシュポイントに到達するまでに長い期間を要します。

それだけの多額の初期投資が必要なのが業界の特徴であり、事業規模に応じたキャッシュフローや運転資金がないと継続が難しい業界であるといえます。

(2)これまでの製造業の流れ

製造業は日本を代表する分野の一つであり、特に第二次世界大戦後の高度経済成長は世界的にも経済成長のロールモデルとして知られ、低価格で高品質であることから「メイド・イン・ジャパン」は世界中の人々にとって憧れのブランドとなりました。

経済成長に伴い、世界的にもトップシェアを誇る企業が数多く生まれ、松下電器(現:パナソニック)やソニーなどの電機メーカー、トヨタ、ホンダ、日産などの自動車メーカーが海外シェアを席巻。現在につながる「ものづくり(工業)立国」としての地位を確たるものとしました。

自動車は現在でも高い国際競争力を誇っているものの、電機業界は中国、韓国や台湾などの国々にシェアを奪われて国際競争力が低下しています。従って、日本の製造業が世界に見て高いシェアとブランドを誇っていたのは2000年代前半までといえるでしょう。

電機業界の盛衰が最もよくわかるのが大手電機メーカーであったのシャープの事例です。

1912年に早川徳次が創業し、シャープペンシルや鉱石ラジオなど独自の発明で注目を集め、国内初の電子レンジ製造、世界初の液晶電卓の開発など高い技術力を持つ総合電機メーカーとして成長。特に「白物家電」と呼ばれるテレビ、電子レンジ、冷蔵庫や洗濯機などはシャープの代名詞として世界中でヒットしました。

しかし2000年代に入ると中国や韓国、台湾で数多くの電機メーカーが勃興。サムスンやLGなどが特に低価格帯での商品でシェアを奪うようになり、スマホ時代の到来とともに本格的に国際競争力が低下していきました。

そして2016年には日本の大手電機メーカーとして初めて外資系企業の傘下に入ることとなりました。現在は台湾の新興電機メーカー鴻海(ホンハイ)の子会社としてスマートフォン向けの液晶画面の生産に注力。かつてのシャープの代名詞であった白物家電の工場は閉鎖してしまいました。

この栄故盛衰も製造業の特徴で、「失われた20年」と呼ばれた1990年代〜2000年代に国内市場の縮小や為替問題などを背景に海外移転を加速。かつては国内の下請けを使い国内で技術を継承していましたが、人件費の安い海外の下請け工場に頼ることにより技術力が流出。自ら海外に強力なライバルを育ててしまったのも特徴といえるでしょう。

製造業は設備投資を伴う産業なので、資金力がものをいう産業です。2010年代に入ると新興国の電機メーカーは日本企業よりも多額の設備投資を行い、日本の電機メーカーでは不可能な高待遇で技術者を雇用すると技術も流出していくようになり、現在では新興国の電機メーカーの製品は質・量ともに日本の電機メーカーに勝るとも劣らない品質にまで成長しました。

例えば、かつては中国の電機メーカーの製品は「安かろう悪かろう」と言われていました。しかし、今では中国産製品の品質が高い事例も出てくるようになっており、今後さらに高品質な製品を数多く生み出すことが予想されます。

日本の製造業はこれからが真価を問われる時期だといっても過言ではないでしょう。

2.製造業におけるM&A市場の現状とメリット

製造業の製造風景

現在の製造業のM&A市場はどのような状況なのでしょうか。この章では製造業におけるM&Aの動向をご紹介していきます。

(1)製造業におけるM&A市場の現状

製造業で目立つのは、技術力を持つ中小企業が大企業の傘下に入るパターンです。中小企業同士でM&Aを行う例はほぼ聞かず、中小企業の多くが売手としてM&A市場に参入しています。

売手の多くは収益構造が悪化しており、事業整理やコスト削減、資金繰りに窮していることから事業や会社の売却を考えているケースが多いです。また、後継者問題によって事業だけでも継続させたいと考える経営者もM&Aによる事業承継を模索しています。

製造業のM&A市場には異業種からの参入がほぼありません。基本的には同業に売却するかファンドに売却するかのいずれかの方法でM&Aを実施します。傾向として、事業整理や経営者が引退を考えて事業承継としてM&Aを行う場合には同業に、資金繰りに窮している場合や事業会社への売却先が見つからない場合にはファンドに対してM&Aを行います。

一方、買手である大手企業は人手不足の解消を目指してM&Aを行うケースが昨今では増加しています。生産年齢人口の減少が進むことは確実なので、M&Aによって人手不足の解消を期待する企業が一定数いる以上、買手はこれからも増えていくと見込んでいます。

また買手の一つであるファンドは、成長又は再生が見込める場合には積極的にM&Aを行います。代表的なファンドがプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)や企業再生ファンドです。株を取得して企業価値を高めた後で株を売却。差額によって利益を得るファンドにとっては、技術があっても資本力が不足している企業は格好のターゲットです。

M&Aは「企業同士の結婚」といわれますが、ニーズが合えばすぐに成立します。人手不足や業界の再編など、これからも企業を取り巻く課題がなくならない以上、買手が多いM&A市場は活況を維持していくことでしょう。

(2)製造業がM&Aを行うメリット<売手側>

売手にとって最も大きなメリットは、やはり売却益を得ることです。M&Aによって手に入れた資金で第二の創業に踏み切ることも、そのままリタイアもできます。特に引退を考えている場合には自社の製品を引き継いでくれる事業承継先を見つけることができるので、後継者に悩む経営者にとっては大きなメリットです。

また、多くの場合は自社よりも大規模な企業に買収されるので、大手企業の持つ資金力やブランドを背景に事業を拡大できることが期待できます。特に製造業の社長は自社製品に愛着やプライドを持っています。自分が子会社の社長として残り、大手企業の資金力を活用すれば自社製品がより広められると考える社長はM&Aという選択肢を前向きに考えています。

(3)製造業がM&Aを行うメリット<買手側>

買手のメリットの一つ目は「時間を買うことができる」ことです。ゼロから設備投資を行い、人を雇って設計・試作の段階で試行錯誤を繰り返していると、それだけで3年〜5年の期間を要します。それでは時代に流れや会社の状況・ニーズを鑑みて経営スピードとして遅いと判断される場合があります。そこで出来上がっている会社を買うことで製造したい製品のノウハウや設備を手に入れることができます。その分だけ量産に至るスピードが早くなるので、時間を買うことに対してメリットを感じる買手は増えています。

また、冒頭にご紹介した通り人手不足の状況なので「人材を買う」という買手も存在します。特に技術力のある企業を買収する場合は現場の従業員を「会社を買う」という体裁で手に入れることで技術力の高い人材をすぐに獲得できます。

従業員の採用・教育コストや即戦力までの時間を考えると、新規採用よりもM&Aで人材を獲得する方が効率的だと考える買手も一定数存在しています。

3.製造業の買収事例とファンドについて

製造業で生産している風景


実際に製造業ではどんな買収事例があるのでしょうか。また、増加傾向にあるファンドが行うM&Aとはどのようなものでしょうか。この章でご紹介していきます。

(1)買収事例

特殊な工作機械の部品を製造する金属加工メーカーが売手となった事例があります。この企業はピーク時には年間20億円の売上がありましたが、売却時には7億円程度まで落ち込んでいました。後継者も見つからず、事業承継のためにM&Aを検討していました。

この企業は独自技術を持っていたので、経営改革によって売上改善の余地があるとしてプライベートエクイ

ティーファンド(PEファンド)に売却されました。

PEファンドは複数の投資家から資金調達を行い、M&Aで未上場企業の株式の過半数を買収。経営権を取得して中長期的に事業に参画。企業価値を向上させます。最終的には株式公開や自社株買いなどで保有株式を売却します。

特に企業再生の専門家を経営陣として派遣し、資金調達の見直しや不採算部門の売却、営業や収益構造を改善して企業価値向上を図るファンドを「企業再生ファンド」といいます。企業再生ファンドは優れた技術を持つものの、収益体制が芳しくない企業を中心にM&Aを行っていることから、製造業を買収するファンドの多くは企業再生ファンドといえるでしょう。

(2)ファンドが製造業を買収する理由

上記のメーカーがPEファンドに買収されたように、製造業のM&Aで存在感を高めているのがファンドです。ファンドは一定の期間、会社の経営権を保有して経営体制を整備。収益を上げやすいように企業を再編して買収価格より高値で売り抜けます。この買収価格と売却価格の差額で利益を得るのがファンドのビジネスモデルです。

従ってM&Aによってシナジーを発揮して事業価値を高めようと考える場合にはあまり向いていません。買手が事業会社の場合は、お互いにシナジーを模索してM&Aを進めていくため、売却後の成長を期待できます。

また、ファンドは「ものづくり」のプロではないので財務諸表を元に企業価値を算出する傾向にあります。すると他業種に比べると利益率の低い製造業は買収価格を低めに設定されてしまいます。この点でも製造業などの事業会社は企業独自性の価値や買収後のシナジーを見込んで買収価格を算定する分、買収価格が高くなると理論的に考えられています。

4.製造業におけるM&A成功のポイントと注意点

解説をする氏家 洋輔さん

製造業のM&Aにおいては成功するためのポイントと、失敗しないための注意点が存在しています。そこで、それぞれ何が重要かをご紹介していきます。

(1)デューデリジェンスを行う

最も重要なのは、買収先や業界についてよく調査することです。M&Aにおいて買手が当該企業を調査することを「デューデリジェンス」といいます。売手の企業価値や成長性を見極め、M&A成立後に想定されるリスクなどが細かく調査していきます。デューデリジェンスが最終的な売却価格に影響を及ぼすため、基本的に専門機関に依頼して進めていきます。

特に財務・税務の調査は重要です。特に粉飾決算については注意しなければなりませんが、決算書の確認については業界特有のお金の流れがあります。それを見極めることができるのは業界に詳しい税理士や公認会計士などの専門家です。

専門家に相談しながら買収先について調査をしておかないと、M&Aが失敗するリスクが大きくなってしまいます。

法務デューデリジェンス上でよくある問題として、株主が多岐にわたり連絡が取れず、株券を紛失していることがあります。M&A成立後に、想定外の株主が現れて株式の買い取りを請求される場合があります。基本的に買手はM&A後に売手や株主と経営方針について対立することを避けるために株を100%取得するのが一般的です。しかし、M&Aに反対している株主がいると、株の100%取得が不可能となりM&Aが成立しない場合があります。

また、従業員に対する労務問題が発生していないかも確認しなければなりません。例えば簿外債務として未払い賃金が発覚するケースや労働訴訟を抱えていると、M&A後にその案件を引き継ぐリスクも発生します。

粉飾は多くが意図的に行われており、残りは親の代から知らないうちに引き継がれてきたものです。

粉飾決算は、業績がよくない企業が対金融機関向けに粉飾を行っているケースが大半です。赤字決算では借入先の金融機関からの審査が厳しくなり、利率を引き上げられ、借り換えができなくなってしまうリスクがあります。

そうなると経営環境がより一層厳しくなってしまうので、やむなしに粉飾決算に手を染めてしまうのです。

しかしコンプライアンスが重視される昨今では、粉飾決算を知りながらM&Aを行うと買収側の責任問題にも発展しかねません。

このように財務・法務双方の観点から買収先を調査しないと、M&A成立後に思わぬトラブルが発覚するリスクを抱えてしまいます。専門家に依頼して十分に調査を行うようにしましょう。

(2)適正な買収価格を検討する

買収価格の算定は買手の企業価値の評価方法によって異なりますが、一般的にはDCF法を用いて評価額を算定します。

DCF法とは、ディスカウンテッド・キャッシュフロー法とも呼ばれます。おおむね5年分の収益予測を立て、純現金収益を一定の割引率で割引し、余剰資産と有利子負債を差し引きして株式価値を算定する方法です。企業の将来的な価値を評価する手法として多くのM&Aで用いられています。

他にも、中小企業同士のM&Aでよく用いられているのが、純資産とEBITDAによって企業価値を算定する方法です。EBITDAは簡単に言うと営業利益+減価償却費です。例えば純資産の金額にEBITDAの金額3~5年分を買収価格として決定するような方法があります。DCF法と比較して、中小企業の社長にとっては理解がしやすく、中小企業同士のM&Aでは広く一般的に利用されています。ただし、理論適な価値評価の方法でないため、DCF法等の理論的な価値評価を検討した上で、交渉では純資産とEBITDAで行う等も検討した方がよいでしょう。

(3)M&A後の関わり方を想定しておく

売手側の問題ですが、企業を売却した後で売却後の企業とどう関わっていくかを想定しておくことも重要です。売却が成立して引き継ぎ期間が終了したら事業から離れるのであれば、関わり方を考える必要性は高くありません。しかし売却後も事業に関わっていくのであれば、どのようなシナジーを生み出せるかを考えておきましょう。

製造業の場合、M&Aによって事業所や生産ラインの再編成を行う可能性があります。その場合に自社工場のキャパシティで対応できるのか。買手の持っている設備やノウハウで生産ラインや工程の改善が可能となるのか。人員配置や内部の管理体制を今後どうするのかなど、検討すべき課題は山積しています。

M&A交渉の中で売手自身がどのように関わっていくかも話し合い、何らかの形で関わっていくのであれば、どの立ち位置で、どんな役割を期待されているのかをヒアリングして、自分でも関わり方を想定しておきましょう。

5.まとめ

製造業の工場設備

企業活動で長年にわたって培ってきた技術や人はM&Aを実施しても消えるものではありません。M&Aによって企業が成長し、販路が拡大してより多くの人々に製品が行き渡るチャンスも広がります。

事業承継の方法を模索している場合には、M&Aによって事業承継と企業の成長を検討していくことも選択肢に入れておくと良いでしょう。

M&Aの実施にあたっては、売手側は決算の見直しや事業計画の作成を行い、M&A後はどのように関わっていくかを検討しておきましょう。買手側はデューデリジェンスによって精緻な企業調査を行い、M&A後にトラブルが発覚することを防ぎましょう。

どちらの側であっても、M&Aによって企業価値が向上するように協力しながらM&Aを進めていくことを心がけ、良い形での事業承継を実現させてください。

〈話者紹介〉
氏家 洋輔さん
U&FAS
代表
氏家 洋輔(公認会計士・中小企業診断士)

建築学科卒業後、会計専門職大学院を首席で卒業。大学院在学中に公認会計士試験に合格し有限責任 あずさ監査法人大阪事務所に入所。一部上場企業をメインとした、製薬業界、医療業界等の製造業、金融機関、卸売業、建設業等の監査業務に従事。M&A、事業再生、事業計画策定、経営改善、IPO支援、IFRS対応支援、不正対応等に従事したのち、2019年にU&FASを創業し代表に就任。

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