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水産加工業界のM&A 変わりゆく環境の現状と課題を詳しく解説

2020/04/20
更新日:2021/02/09

はじめに

日本の水産加工業は高度経済成長の波に乗って、隆盛を極めた時期もあります。しかし200海里水域の普及による漁獲制限や原料を含む海外からの水産物輸入の拡大で、大半が中小企業といわれる約1万3,000社の水産加工会社は厳しい状況に直面しているのです。

そんな中でオーナーのリタイアによる事業承継が行われ、後継者がいない会社にはM&Aも行われつつあります。今回は水産加工業界のM&A事情に詳しい西村あさひ法律事務所の弁護士、柴原さんにお話を伺いました。


1.水産加工業界の状況

港市場

水産加工業とは魚介類を中心とした水産物を加工して、冷凍食品や調理食品、練製品や缶詰その他の食品あるいは畜産・工業原料として生産する産業を指します。約1万3,000社あるといわれている水産加工会社のほとんどが高度成長期に設立し、業績を伸ばした中小企業です。

近年では200海里水域による漁獲制限等が原因で、原料になる低価格の魚を確保することが重要課題となっています。

2.水産加工業界の景況感

オイルサーディンの缶詰

消費者が食品の安全性に対して、非常に敏感になっていることも業況に影響しています。また、材料の価格が乱高下する等して不安定な面も存在します。水産加工は魚を仕入れてきて加工を施しますが、温暖化の影響もあって魚が急に獲れなくなったりすることも多々あります。

海流が変わって魚が来ないというケースもあり、例えばサンマが去年の半分しか獲れず、ひどい時には特定の魚が1/10しか獲れないこともあるといいます。

また、魚を好んで食べない人も多くなってきています。昔のように、食卓にブリの照り焼きや鮭の塩焼きが頻繁に出されることが減ってきました。そういったことも手伝って、水産加工業者は大変厳しい状況に陥っています。

水産加工業者は中小企業が多いので、お互いに過当競争になりがちです。また、スーパーマーケットは価格競争力が強く、いくら販売しても利益が生まれにくいといえるでしょう。

水産加工は労働環境も大変な業種です。上がってきた魚をさばいて加工するという作業を来る日も来る日も続ける厳しい労働環境です。このため、なかなか労働力も集まりにくいのです。

3.水産加工会社の企業価値は?

例えばアパレルなどの店舗であれば自分で店舗を持っているケースよりも、テナントに入っている場合が多いです。この場合、土地や設備を所有するコストがかからず、家賃を支払うだけで済みます。一方、水産加工は当然工場や機械などの生産設備が必要となります。

水産加工会社はこれらを金融機関からの借入で投資していることが多く、また工場や設備が担保に設定されている場合が少なくありません。そのため、M&Aを行うに際しては担保の評価をめぐっても争いが生じることもあります。金融機関は工場や機械が稼働する前提で、時には貸付金額に見合った億単位の高い評価で担保設定をしている反面、買い手としては機械の稼働収益に基づき評価を行うことが多いため、対立が生じます。

景気がいい時であれば、次から次へと稼働して億単位でも返済できることもあるでしょう。しかし過当競争や不安定な魚の仕入れ状況や人材不足といった問題がある中で、設備をフル稼働させることは難しい場合が多いといえます。

本来100%の稼働率であれば3億円の価値がある工場が、半分の稼働率であれば単純計算で1.5億円の価値となるので1億円以上価値が下がります。また、デューデリジェンス(資産査定)を実施すると、昔の工場は安全性に不備があると評価されることが多いのです。そうなると価格が下がるか、売り手において安全性を確保してから話を進めることにしようということになります。

しかしながら、そもそも、オーナーも手元資金が乏しいからM&Aをしたいのにお金をかけて安全性を確保することができないことが多いです。その場合、価格を下げるしかなくなります。

4.水産加工業界はM&Aを行いにくい?

秋刀魚、鯵の干物

M&A・事業承継を検討している方へ

当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。

現在の市況感から、今後水産加工業界はどんどん厳しくなっていくと考えられるので、経営が苦しいと考える水産加工業者は早めにM&Aを検討した方が良い場合も多いといえます。経営者も高齢になっているので、辞めたくてもなかなか辞められないということもあります。他方で地元の功労者として、多くの従業員を雇ってきたプライドもあるので、決心がつかない場合もあります。

あるいは、行政等から補助金をもらっていることがネックになることもあります。事業譲渡や会社分割を行い経営者が交代すると、補助金の返済を迫られる場合もあるのです。この結果、苦境を脱出したいからM&Aをしたいけれども、それすらできないという困った状態に直面することもあります。

5.水産加工業 M&Aの手法は?

売上高や利益率の低下、原材料の確保の困難、価格や品質の競争の激化、生産経費の上昇、販路開拓の困難さなどから、残念ながら廃業を選ぶこともあります。そういう状況の中で、M&Aを選ぶという経営者も増えています。

M&Aの大枠のストーリーはどの業界でも共通(株式譲渡、事業譲渡あるいは会社分割等)していますが、細かい部分は業界によって様々に変わってきます。水産加工業においては先ほど述べたように工場の稼働率がどうなっているか、借金がいくら残っているかが大事です。それによって、M&Aを行うとしてもどのような手法が望ましいかが異なってきます。例えば、借金が事業価値に比して大きい場合は、株式譲渡ではなく、事業譲渡や会社分割が選択されることが多いですが、その場合、譲渡後に旧会社をどうするかという問題もあります。

6.まとめ

港市場

様々な要因から経営環境が厳しい水産加工会社は、資産価値も上がりにくく、M&Aで大きい売却益を得られる望みも厳しいといわざるをえません。オーナーは現状に真摯に向き合い、M&Aを視野に入れ、少しでも好条件が得られるような方向を目指すことが賢明ではないでしょうか。

話者紹介

柴原さん
西村あさひ法律事務所
弁護士 柴原 多(しばはらまさる)
1996年、慶應義塾大学法学部卒業。1999年に弁護士登録(東京弁護士会)。
長年にわたり、M&A案件、事業承継・事業再生案件等を担当。M&A案件は大型案件から中小企業案件まで幅広く対応し、企業の資金繰り対応・経営者保証の相談にも従事している。また訴訟案件も、企業の紛争案件を中心に広く関与している。
最近の執筆としては、「相続法制改正のポイントと銀行実務論文」(共著、銀行実務2018年7月号)、「事業承継を考える際には、後継者及び従業員への配慮も大事」(日経MOOK「よくわかる事業承継&経営者の相続」)、等。

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