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廃業回避のために利用できる「事業承継補助金制度」~専門家が5分で詳細解説

2020/08/01
更新日:2021/02/09

はじめに

自身で采配を振ることが困難となった経営者にとって、自社を存続させるかあるいは廃業するかという選択肢は、決断を躊躇せざるを得ない重大な問題です。自分の分身ともいえる会社を閉じることになかなか踏み切れずに二の足を踏んでいる、というのが現実でしょう。

そんな中、中小企業の事業継承の必要性を訴える産業界からの声が日増しに高まったことと、専門家・有識者による進言の効果もあって、2019年から「事業承継補助金制度」が新たにスタートいたしました。
同制度によって、後継者不足でやむなく廃業せざるを得なかった多くの中小企業が、補助金の活用によりM&Aでの事業承継がスムーズに進むことが予想されます。マイナスイメージが少なからずあったM&Aですが、事業承継補助金制度によってプラスイメージに変わる日も近いことでしょう。

そこで今回は、同制度の特徴や利用方法その効果などについて、税理士法人中山会計の常務社員税理士である小嶋純一さんに詳しくお話を伺いました。


1.事業承継補助金制度とは

事業承継補助金制度の主務官庁は中小企業庁で、中小企業の継続的事業運営を目的とした資金援助制度が事業承継補助金制度です。中小企業の廃業を回避するために、企業が事業承継や事業再編または事業統合などいわゆるM&Aでの事業転換を図る際にかかる経費の一部が助成金として国の予算から支給されます。
すなわち、中小企業に対する事業再編・事業統合支援型の補助金制度というわけです。国は2017年度からの5カ年計画での公募を謳っており、中小企業庁の計画では、予算上限額は20億円で、約450社にのぼる中小企業の事業承継に取組みの後押しになると想定しています。
同制度の概要は以下のようになっています。

(1)補助金対象者

事業承継補助金の対象となるのは、国が規定する補助事業期間(2017年4月1日~2020年12月31日)内に事業承継を行う中小企業などとなっています。また、事業承継によって経営革新や事業転換など企業としての新たな取組みを実施することが条件とされています。

すなわち、単に会社を存続させるためというだけでは対象とならず、事業承継によってそれまでとは異なる事業の刷新が求められているのです。また「取引先や雇用によって地域に貢献する中小企業など」という条件が付与されており、国家予算からの支援だけに反社会的な事業や雇用を生み出さない企業については、地域社会への貢献度がないとみなされ対象となりません。

(2)受付期間

事業承継補助金の申請は、受付期間が短く限定されているので要注意です。2019年は3月に募集要項が公表されました。一次募集が4月12日から5月31日まで、二次募集が7月5日から7月26日まででした。2020年は4月10日に受付が始まり締切が5月29日(コロナ禍の影響で6月5日までに延長)で、前年と同じく二次募集も予定されています。

(3)交付対象期間

受付期間は公募から締切まで2ヶ月足らずと短いのですが、そのかわりに交付対象期間は長いのが特徴です。これは、事業承継またはM&Aにおいては全行程に数ヶ月あるいは年単位で実行されるケースが多いことを考慮されているからです。
2020年に申請手続した案件の補助金交付対象となるのは、2017年4月から2020年12月31日までとなっており、約3年8ヶ月の期間内に事業承継またはM&Aが実行されれば補助金を受給できるのです。3年以上もの期間があることで、経営者にとっては利用しやすい制度といってよいでしょう。

(4)注意点

交付対象期間が長いとはいっても、期間中にかかった経費の全額が支給対象となるわけではありません。同制度は、あくまでも交付決定日から年末までに使った費用が対象となると規定されているので注意が必要です。

2.事業承継補助金制度の内容

少子高齢化が大きな問題となっている日本社会において、中小企業も例外ではありません。日本の経済成長を支え続けた中小企業の多くは現在経営者が高齢化しており、後継者に経営の実権を譲り事業承継を実行する時期が訪れています。
しかしながら、さまざまな事由によって経営のバトンタッチが遅れている中小企業が多く、事業承継の実施母数は少ないのが実情です。
そこで、事業承継もしくはM&Aが円滑に実行できるように、国が中小企業経営者の背中を押すためにできたのが事業承継補助金制度です。それでは、同制度の内容について以下に述べてみましょう。

(1)2つのタイプ

事業承継補助金制度には、利用内容に応じて2つの形式(タイプ)があります。
以下の表を参照してください。

タイプ 申請内容 補助率 補助金額の範囲 上乗せ額
【Ⅰ型】
後継者承継支援型
・小規模事業者
・従業員数が小規模事業者と同規模の個人事業主   

小規模事業者以外

2/3以内

1/2以内

100万円~200万円

100万円~150万円

+300万円以内
(補助上限額合計は500万円)   

+225万円以内
(補助上限額合計は375万円)

【Ⅱ型】
事業再編・事業統合支援型
審査結果上位

審査結果上位以外

2/3以内

1/2以内

100万円~600万円

100万円~450万円

+600万円以内
(補助上限額合計は1,200万円)   

+450万円以内
(補助上限額合計は900万円)

※2019年度第二次補正事業承継補助金(中小企業庁による公募要領より抜粋) 

表でわかるように、Ⅰ型は親から子など親族内での承継で利用されるタイプで、Ⅱ型は第三者への承継すなわちM&Aを前提としたタイプです。
現状ではⅠ型の申請がⅡ型を上回っています。

(2)補助金交付の要件

事業承継補助金制度の利用にあたっては、以下のような要件が定められています。

  • ①事業承継の期日が明確であること。
  • ②補助金受給後に実行する事業内容が明確に示されていること。

特に②が重要で「補助金を受給して実行する事業」について、その具体的な計画を行政側に示し、経営者として新規事業に取り組む姿勢を見せる必要があります。すなわち「いつまでに何をどうやって実行するのか」という新事業への熱い思いを述べ、担当の審査官を納得させることが求められるのです。

(3)事業承継補助金制度の採択に向けて

事業承継補助金を申請すると行政側の審査が行われます。審査をパスするには要件をクリアせねばなりません。
補助金受給後に取り組む事業については、審査官を納得させるだけの濃い内容にして提出する必要があり「何をどう実行するのか」というストーリー構成を練り上げるには、やはり専門家のサポートが不可欠です。実際の採択率は50%程度なので、補助金申請に実績のある専門家に相談することで、採択漏れを防ぐことができるのです。

(4)重要視される事業内容の中身

補助金を採択する審査官が「採択」の判を押すには、行政側が欲するキーワードを申請文書にちりばめておくことがポイントとなります。とはいっても、一般の経営者が「いざ申請」となっても「書面のよい書き方」というマニュアルがあるわけでもなく、よいキーワードなどは公募要領にも掲載されていません。
そのため、日頃から行政側とやり取りしている専門家の知見を借りることが必要となります。

(5)仲介業者の手数料が補助対象に

以前は、補助金を仲介業者への報酬に充てることは禁止されていました。しかし、今回の改正でⅡ型においては仲介手数料の3分の2を補助金でまかなうことができるようになりました。
たとえば、仲介手数料が300万円の場合、200万円分が補助されるので、実質負担額は100万円で済むということになります。
これまで、第三者へ事業承継をする際にネックとなっていた仲介手数料の負担が一気に3分の1に軽減されることとなったので、M&Aの推進のための行政側からの大きな後押しとなることでしょう。

3.その他の支援制度と今後の展望

M&A・事業承継を検討している方へ

当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。

現在、あまり活用されてはいませんが、事業承継補助金制度の他にも以下のような補助金的支援制度があります。今後の支援制度の展望と共に参考にしておいてください。

(1)小規模企業共済制度(廃業支援ローン)

これは、企業の廃業を回避する際に活用できる制度で、次のような特徴があります。

・制度的特徴

個人事業者自身が退職金の積み立てをできる制度です。たとえば、月3万円を支払えば、会社を整理したときにまとまって退職金として入ってくるという「廃業支援ローン」とも呼ばれる仕組みとなっています。

・制度の目的

同制度は、廃業を回避する目的があります。
一般的に、廃業の際には設備の廃棄などで多額の出費が発生することが多いので、同制度を利用すれば負担が軽減できます。
廃業支援ローンを活用し、積み立てた費用の一部を経費に充てれば事業承継がスムーズに実行され廃業という最悪の事態を回避できるというわけです。
「それなら共済を解約しては」という意見もあるでしょうが、廃業していないのに共済を解約すると、貯めていた金銭は目減りしてしまうことになります。言い換えれば、この廃業支援ローンは、一般サラリーマンにおける「退職金の前借り」的な性質を持っているのです。

(2)今後の制度活用における展望

以上、改正された事業承継補助金制度の概要と活用の実際について述べましたが、今後、同制度を活用する中小企業が増加することにより、日本社会はどのように変容していくのでしょうか。近未来の予測は大変難しいのですが、少なくとも「やむなく廃業」を選択し涙を呑む中小企業経営者の数が減るといえるでしょう。
2020年後半以降に向けた事業承継補助金制度活用の展望を解説します。

・コロナ禍によって制度は変わる?

2020年前半期における「コロナ禍」によって、制度をめぐる状況にどんな変化が生じるのか、事業承継を考えている経営者は気になるところです。制度の枠組みが大きく変容することはまず考えにくいのですが、コロナ禍による社会的な影響に鑑みて、たとえば3分の2の補助率が5分の4に引き上げられるといった制度変更は十分に考えられることでしょう。そうなれば、今後も事業承継の件数は増加してくると思われます。

・国の制度活用に関する仲介業者の役割

プロとして事業承継を支援するのが仲介業者の役割であり、仲介業者は事業譲渡の意思決定を促進する専門家としての役割を担っています。
経営者側に対する仲介手数料の負担軽減により、今後は専門家への依頼が増加するものと思われます。しかし、仲介業者はこれを単なるビジネスチャンスととらえるだけでなく、相談してきた顧客のトータルコスト負担を見ながら支援しサポートすることが求められます。

(3)まとめ

近年の景気変動や自然災害、そしてコロナ禍に代表される突発的な疫病の蔓延など不測の事態によって経営を揺さぶられがちなのが中小企業の宿命です。経営者には廃業を選択する前に、事業承継という選択肢があることを念頭に置いていただきたいと強く願います。

事業承継については、2018年度に自社株式の承継に対する支援策として、納税猶予を行うことが決まるなど、段階的に国の制度は拡充されてきた経緯があります。
そのような一連の中小企業支援策の流れの一環として、2020年で3年目となる事業承継補助金があります。
今回の制度改革の大きな目玉は、前述したように仲介手数料が補助対象になったことです。これによって、同制度は格段に利用しやすくなりました。経営者の方々は、事業承継を実行するタイミングをうまくはかり、仲介業者のサポートを得ながら、円滑に事業承継を進めてください。


話者紹介

税理士法人中山会計
常務社員税理士 小嶋 純一(こじま じゅんいち )

横浜国立大学卒業後、税理士法人中山会計にて常務社員税理士を務める。相談しやすさNo.1を体現する税理士として自社の経営の実践並びにお客様の経営のサポートを兼務。M&Aスペシャリスト及びM&Aシニアエキスパートの資格を有し、事業承継の出口をサポートするコンサルティングを15年来推進。保険会社・銀行・商工会議所・各士業等とのタイアップによるセミナーなどで講演を全国にて多数行い、身近な相談窓口として活動中。

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