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業務提携とはどんなものか?メリットと注意点、M&Aとの相違点も解説

2020/09/18
更新日:2021/02/09

はじめに

業務提携とは独立した複数の企業が協力しあい、経営資源を共有することによって、競争力の強化、経営の向上を目指すものです。大きなメリットが生まれる可能性があり、さまざまなシチュエーションで活用されてきました。業務提携とはどんなものなのか、メリットと注意すべき点はなんなのか、さらには資本提携やM&Aとの違いなど、M&Aや事業承継の専門家である株式会社BizMatch(コンパッソグループ)の代表取締役、依知川 功一さんに解説していただきました。


1.業務提携とはどんなものなのか?

アイコンを指し示して会話する2名の作業員
まずは業務提携という言葉の定義から説明しましょう。

(1)業務提携とはなにか?

業務提携とは複数の企業が共同で業務を行い、お互いが持っている資金、技術、ノウハウ、人材、販売網、施設、設備などの経営資源を提供しあうことでシナジー(相乗効果)を得て、それぞれが企業としての競争力強化を目指すものです。新規事業への進出、技術の共同開発、生産過程や販売網の共有など、さまざまなタイミング、シチュエーションでの提携が考えられます。

広い意味での業務提携として、合併や吸収を伴うM&Aもその範疇に入れることは可能です。業務提携がM&Aと大きく違うのは資本の移動がないということでしょう。そのために大きな決断、多額の資金、多大な労力を伴うM&Aと違って、業務提携は比較的軽いフットワークで柔軟に行うことができるという利点があるのです。

(2)業務提携の法律的な位置づけ

業務提携契約に関する法律は存在しません。ただし実際に業務提携をする場合にはさまざまな法律が関係してくることが考えられます。例えば、特許取得済みの技術に関して提携先企業での使用を許可した場合、知的財産法が適用されるでしょうし、人材を共有する場合には労働基準法も検討するでしょう。提携の仕方によって、ケース・バイ・ケースでさまざまな法律が絡むことを想定する必要があるのです。

(3)下請代金支払遅延等防止法とは?

業務提携に関連する法律の中で特に留意しておくべきなのは、公正取引委員会が定めている下請代金支払遅延等防止法(下請法)です。業務提携する企業同士が必ずしも対等であるとは限りません。親事業者と下請け事業者という関係である場合を想定して作られたのがこの法律なのです。親事業者が下請け事業者に対して難癖を付けたり、支払うべき料金を支払わないという事態の防止を目的として作られています。ただし、親事業者、下請け事業者それぞれの資本金の金額によって下請代金支払遅延等防止法が適用される範囲が定められており、適用外となるケースも考えられるのです。法律があるからといって気を緩めることなく、トラブルを未然に防げるようにしっかりとした契約書を作成することが求められます。

(4)業務提携と事業提携の違い

業務提携と事業提携という言葉を混同して使っているケースも目に留まるので、この機会にこの二つの言葉の違いについても説明しておきましょう。業務提携と事業提携とでは企業同士が協力しあう範囲が異なるのです。業務提携は事業の中の限定された業務という狭い範囲になります。事業提携は範囲が事業全般となり、広くなるのです。たとえば、業務提携がIT事業の中のアプリ開発、ソウト開発など、特定の業務に限られるものだとすると、事業提携はIT事業全般を網羅したものと考えればいいでしょう。

2.業務提携の4つの形態

発射台から打ち上げられたロケット

業務提携は協力の仕方やその内容によって、技術提携、生産提携、販売提携、その他の提携と4つに分けることができます。それぞれくわしく見ていきましょう。

(1)技術提携

複数の企業がお互いの技術や人材を持ち寄って、共同開発していくのが技術提携です。この技術提携にはさまざまなパターンが考えられます。知的財産権を持っている企業と提携して、特許権を使わせてもらうライセンス契約という形態も考えられるでしょう。製薬会社同士が薬の共同開発をして、一緒に特許を取るという共同研究開発契約もあります。

(2)生産提携

生産の一部分、もしくは製造工程の一部分を委託することによって、生産能力を補充することを目的として行われるのが生産提携です。一般的には製造委託契約を結んで行われます。よく似ているものに生産委託があって、まぎらわしいので、混同しないように注意する必要があるでしょう。自社の製品を作りたいけれど製造が追いつかない際に、他社に委託して、他社の工場で作るのが生産委託です。

生産委託と生産提携との違いは、言われたことをそのまま言われたとおりにやるかどうかという点にあります。言われたとおりにやるのが生産委託です。生産委託の場合は委託者と受託者がいて、生産を委託された他社の工場が受託者ということになります。

一方、「この製品を作るなら、こういう工程で、こういうやり方でやれば効率がいいですよ」「この材料を使えば製品の精度が上がりますよ」「こういう製品を作ると、売れると思いますよ」など、製造に関するさまざまな提案をして、製造に関わっていくのが生産提携です。この場合、製品に改良を加えたり、新商品を開発したりというケースもあり得ます。

数年前に放送された『下町ロケット』というテレビドラマでは、ロケットの部品を開発する町工場が舞台となっていました。その町工場は特殊な技術を持っており、大企業から依頼されて、ロケットの部品に改良を加えていくというのがストーリーの一部として描かれていました。あのようなケースは生産委託ではなく、生産提携ということになります。

(3)販売提携

他社の販売人材を活用し、販売代理店として自社製品を売ってもらうのが販売提携です。ブランドやノウハウを提供して運営するフランチャイズ、他社のブランドを活用するOEMでの販売なども販売提携といっていいでしょう。

(4)その他の提携

業務提携には、上記3つ以外の提携もあります。材料の仕入れ提携、原材料の調達提携は、さまざまな業種の企業で広く活用されているものと言っていいでしょう。規模のメリットを甘受できるのが仕入れ提携、調達提携です。たとえば海外からある材料を輸入する際、1社だけで仕入れる場合には1トンあれば十分であるところを、10社が提携して10トン仕入れたとします。10トンという大口の顧客になることで、材料の単価が下がるのはよくあるケースです。

3.業務提携のメリットとデメリット

円グラフが表示されたパソコンとタブレット

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業務提携が行われるのはそれぞれの企業にとってメリットがあるからです。しかしデメリットも考えられます。それぞれ説明しましょう。

(1)業務提携のメリット

業務提携の最大のメリットは新たなコストがかからない、もしくはコストの節約になるということです。それぞれの企業の持っている技術や人材、販売網などの経営資源を提供しあう場合には、新規のコストがかかりません。

販売提携の場合もコストをかけずに販路の拡大が期待できます。A社は東北・北陸・中部地方に強くて、B社は関西・山陰・山陽地方に強いとすると、互いに提携することで、本州全域を網羅できるわけです。

また2社が技術提携して共同開発をする場合には、単純計算すると、開発のコストが半分で済みます。開発が大きなプロジェクトであればあるほど、開発のリスクを分散できることは大きなメリットとなるでしょう。

(2)業務提携のデメリット

業務提携にもデメリットがないわけではありません。技術提携をしたことによって、自社技術の盗用、ノウハウや情報の流出という危険性も出てきます。自社内ではしっかり管理できていたものが他社と提携して共同作業を行うことで、その管理体制にほころびが生じることも考えられるからです。

販売提携においても、自社生産を自社の販売網で販売する場合とは違います。他社の販売網を使ったがゆえにカスタマー対応などで行き届かない部分が出てしまい、顧客満足度が下がるというケースも考えられるでしょう。

提携がうまくいかず、問題になってしまったというケースは少なくありません。なかには訴訟にまで発展して、トラブルの解決に膨大な時間と労力がかかってしまう場合もあります。業務提携そのものを縛る法律が存在しないからこそ、どんな契約を結んでいるかがより重要になってくるのです。契約書を作成する際には細部までしっかり詰めること、そして弁護士にリーガルチェックしてもらうことが必須となります。

4.業務提携と資本提携と経営統合の違いはどこにあるか?

高層ビルの中のオフィスの灯り
業務提携と似た言葉に資本提携という言葉があります。さらに資本提携の発展形ともいうべきものとして使われているのが経営統合という言葉です。資本提携や経営統合はM&Aの一つの形態といっていいでしょう。業務提携、資本提携、経営統合の違いや注意点について、説明していきます。

(1)業務提携よりも強い関係にある資本提携

業務提携が資本の移動が伴わないものであるのに対して、資本提携は互いの株を持ち合いするため、企業同士の関係がより強いものになります。ただし問題が生じた時に関係を解消するのは簡単ではありません。それぞれが資金を投じていることもあり、うまくいかなかった場合のリスクも大きくなるのです。業務提携をさらに一歩推し進めたものが資本提携と言ってもいいでしょう。

(2)資本提携をする上での注意点

資本提携をする上で注意しなければならないのは持ち株の割合です。過半数の株を取得されなければ買収が成立しないから、問題ないという認識を持っている人もいるかもしれません。しかし少数株主権という権利があって、発行されている株式の3%以上を持っていると、役員を解任する訴えの提起が可能になる他、会計帳簿の閲覧請求権、株主総会を招集する請求権などが与えられるのです。もちろん役員の解任を提起したとしても、他の株主が否決すれば、通らないのですが、時間や労力が費やされることになります。資本提携がうまくいかなかった時に、嫌がらせの行動として、この権利を行使することも可能なのです。

持ち株割合に関しては細心の注意をはらうべきでしょう。大きな会社同士ならば、株式の3%は大きな金額になりますが、中小企業の場合、資本金が1億円だとしても、3%は300万円なので、すぐに超えてしまう可能性があります。資本提携には大きなリスクがつきまとうので、弁護士、会計士などの専門家に入ってもらって相談しながら進める必要があります。

(3)資本提携をさらに推し進めたものが経営統合

経営統合はその言葉どおり経営を統合するために使われている手法の一つです。経営統合を行う企業同士が共同で持ち株会社を設立して、その持ち株会社の傘下に入ることによって統合が実現します。新設された持ち株会社はホールディングスという名称で呼ばれることが多く、統合される前の企業の全株式を保有・管理するのです。仮にA社とB社とで経営統合したとすると、ホールディングスはA社とB社から役員を選出して運営されることになります。新設されたホールディングスの子会社となったA社とB社とはグループ会社という関係になるのです。

(4)経営統合とM&Aと合併の違い

買手が売手を子会社化するのがM&Aであるのに対して、経営統合はそれぞれの会社が存続したままグループ化されるという違いがあります。合併の場合は二つ以上の企業が一つの企業になることです。関係の強さがもっとも強いのが合併、その次が経営統合、そして資本提携、もっとも緩やかなのが事業提携ということになります。

5.業務提携の実例と展望

デスクの上でタッチする4つのこぶし

業務提携は経営の効率化や強化を目的として、さまざまな業種、さまざまなシチュエーションで使われている手法です。日々のニュースでも業務提携という言葉をよく聞きます。その実例をいくつかあげていきましょう。

(1)通信技術の発達による業務提携

身近な例でいうと、コンビニと通信会社との業務提携はかなり活発に行われています。ファミリーマートに行くと、ファミポートが設置されていますが、もともとあのサービスはコンビニと通信会社との業務提携によって実現したものでした。

2019年12月に発表されたKDDIとローソンとによる業務提携も記憶に新しいものです。約14,600のリアルな店舗と強固な会員基盤のもと、5Gなどの先端テクノロジーを活用することで、次世代型のコンビニサービスの展開を目的としたものとのこと。テクノロジーの進化によって、異業種が提携することで、さまざまな販売サービスの可能性が広がるのです。

(2)経営を強化するための業務提携

経営を強化するための業務提携は以前からたくさんありましたが、近年も活発に行われています。最近の例では大塚家具とヤマダ電機の業務提携もその一つ。家具・インテリアと家電という隣接する業態のノウハウを持ち寄ることでの相乗効果を期待してのものです。大戸屋HDとオイシックス・ラ・大地の業務提携はそれぞれの顧客の親和性の高さに着目したもの。大戸屋の定食のレシピや調理ノウハウを活かした冷凍惣菜や弁当作りと、オイシックス・ラ・大地のネットの販売網を活かした販売戦略など、双方の強みを活かしたもので、数多くの相乗効果を期待できる提携となりました。

(3)業務提携の展望

経済全体が厳しい状況にある中、業務提携が今後さらに増えていくだろうという予測を立てています。なぜならば、低リスクの割に大きなメリットを期待できる提携だからです。M&Aも広い意味では業務提携の一つの形態ですが、M&Aの場合は資本の移動があり、資金を投入して企業を買うため、当然リスクも高くなります。好景気であればまた違いますが、現状では企業はそうそう積極的に動くことはできません。業務提携は契約を結ぶのも解除するのも、M&Aと比較すると容易であり、柔軟な対応が可能です。発想を変えて工夫することで、活路を見出す可能性の広がる業務提携は時代が求めるものでもあるでしょう。

6.まとめ

紙に文字を書き込むビジネスマン

今後、業務提携はさらにさまざまなシチュエーションで活用されることが見込まれます。円滑な業務提携を行ううえで、業務提携契約書の重要性はとても大きいと言っていいでしょう。ネットで公開されている業務提携契約書のひな型を流用して、名前だけ入れて安易に使うと、あとあとトラブルのものになりかねません。問題が発生しないように、弁護士、税理士、会計士などの専門家を交えて、契約書をしっかり作成することが必要です。プロフェッショナルの意見に耳を傾けて綿密な契約書を作成して、有意義な業務提携を行ってください。

話者紹介

依知川 功一さん

コンパッソ税理士法人 コンサルティングチーム 執行役員
株式会社BizMatch(コンパッソグループ) 代表取締役
法学修士 依知川 功一(いちかわ こういち)

大手税理士予備校にて講師を務め、公認会計士事務所で税務・監査業務の補助に携わる。内川会計士事務所(コンパッソ税理士法人の前身)にて、医療関係を中心に税務・コンサルティングに携わり、現在のコンパッソ税理士法人ではメディカル事業部部長として、主として医療関係のクライアントの税務・コンサルティングに携わる。
平成30年3月31日株式会社BizMatch代表取締役就任、M&Aを中心とした外部事業承継コンサルティングを行う。同時にコンパッソ税理士法人コンサルティングチームの執行役員を兼任する。

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