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自己株式に関わる必要な知識とは?

2020/10/05
更新日:2021/02/09

はじめに

近年、特に中小企業において、株式会社が自社の株式、すなわち「自己株式」を自ら取得するという傾向が顕著にみられるようになってきています。かつては、法的規制もあって株式会社が自己株式を取得する行為はほとんど見られませんでした。
もともと、日本の旧商法などでは、株式の取得については株主の公平性を保つために株価操作の可能性がある自己株式の所有については法律で厳しく制限されていました。

自己株式の取得はなぜ「原則禁止」から「原則自由化」されのか?
自己株式と普通の株式の違いはどこにあるのか?
実際に自己株式を取得する場合の注意点や方法は?

このような疑問を抱く会社経営者や経営幹部も少なくないことでしょう。そこで、自己株式の仕組みと取得方法について、業界事情と会社法や税制に詳しい、税理士法人新宿総合会計事務所の清水さんに詳細を解説していただきました。


自己株式とは

自己株式とは「株式会社が自社で持っている株式」のことです。いうまでもなく、全ての株式会社は複数の人物が株主として会社の株を所有しています。端的にいえば「自己株式は、その会社自体が所有する自社の株式」であり、それ以外の株主が所有する株式が「普通の株式」ということになります。

そして、自己株式と、普通の株式との大きな違いは「自己株式には株主総会での議決権がない」ということです。自己株式に議決権を認めないのは、一般の株主にとって不利益となる会社運営を経営者の独断で決められてしまうという事態を防ぐためです。

自己株式を取得する目的

今までにも、自己株式を取得する株式会社は少なからず存在していました。その目的の一つに「敵対的買収からの防衛」が挙げられます。部外者から敵対的買収を仕掛けられ、株式の過半数を取得された場合、会社経営者を含む経営幹部が総退陣させられ会社を乗っ取られたという事態は枚挙にいとまがなく過去に起きています。株式総会での議決権はなくとも、自己株式を一定数所有しておくことで、敵対的買収から会社を守るという防衛策が奏功するという理屈です。また、株価対策も自己株式取得の大きな目的の一つです。

法改正で自己株式の取得が可能に

株式会社による自己株式の取得は、一般の株主に不利益をもたらし、社会的に正常な企業運営のさまたげになるとの理由で、旧商法によって規制され「原則禁止」となっていました。

しかしながら、経済界からの強い要望に応える形で2000年代より順次法改正を実施し、自己株式の取得が「原則自由化」となったのです。

原則自由化の第一の目的は株価の上昇でしたが、この時期の日本社会は大企業の組織改編や統廃合が数多くみられるようになっていた時代背景も追い風となりました。すなわち、会社が自己株式を取得することで、より機動的に会社同士の合併やM&Aが進むというメリットがあったからなのです。近頃のM&A隆盛の要因のひとつに、自己株式の取得が容易になったことが挙げられるでしょう。

自己株式取得のメリット

かつてはご法度とされていた自己株式の取得ですが、今では上場企業を中心に自己株式の取得はごく普通に行われており、半ば常識化しているほどです。時代の後押しがあったとはいえ、あえて少なくない資金を調達してまで自己株式の取得を実行するには、それなりのメリットがなければなりません。

株式会社が自己株式を取得するメリットを挙げてみましょう。

・M&Aの対価として利用する

M&Aを実行するには多額の経費が必要となります。しかしながら、全ての会社がいつも潤沢な現金を保有しているとは限りません。むしろ、資金不足でM&Aを断念した企業も少なくありません。

そこで、いざというときのために、所要していた自己株式を金銭の代わりに売主に譲渡するわけです。

・株価の需要・供給を安定させる

自己株式を取得することで株式の供給が減り逆に需要が増えることになります。これによって株価の需要・供給の安定につながります。また、自己株式を取得して一定数の株式を消滅させると、一株当たりの価格が上昇します。これは、株主対策としても有効な手段といえます。

・敵対的買収を防ぐ

株式の敵対的買収が成立することは、会社経営者にとってはなんとしても回避したい事態です。敵対的買収を防ぐためには、敵対者が買収に必要な株数を取得できないようにすることが重要です。そのためには自己株式を取得することで、株式の絶対数を減少させるという手法をとれば、必然的に株式単価が上昇に転じます。すなわち、自己株式の取得によって、敵対者が株式に手出しできないようにする効果があるというわけです。

・事業承継対策として利用

主に中小企業の場合によく用いられているのが、事業承継対策を目的に自己株式を取得するというケースです。たとえば、会社の初代会社経営者が引退し、二代目が会社を承継する場合には多額の相続税や贈与税が課税されます。この場合、現金不足で相続税や贈与税が払えないという事態に陥る後継者が少なくありません。

その対策として、会社に自己株式を取得してもらい納税資金を確保するというケースも増えてきています。特に、今の時代は団塊の世代から団塊ジュニアに事業承継されるケースが多いことも、この傾向に拍車をかけています。

・管理コストの削減

中小企業では、少数株主が多ければ多いほど管理コストが膨らむので、この経費も決して無視できる金額ではありません。そこで、絶対数を減らし株式の総数を削減し整理する目的で自己株式の取得をする企業も増えてきています。

自己株式を取得するうえでの注意点

自己株式の取得において最大にして唯一の問題が、収支計画を立てずに安易に自己株式の取得に動いたことで「資金繰りの悪化」という憂慮すべき事態に陥る可能性があることです。

また、会社の企業価値が高まっていると、高額な自己株式の取得資金が必要になるケースもあるので、収支計画を綿密に立てた上で実行しないと後悔する結果ともなりかねません。

また、中小企業の経営者にとっては、自己株式の取得は決して簡単ではなく、株主総会や取締役会などを開催や公告などの必要があり、手続も結構煩雑なので、税理士など専門家とよく相談して進めることが賢明です。

自己株式を取得するパターン

自己株式を取得するには、企業の規模や状況によっていくつかの方法があります。

市場取引・公開買い付け・相対取引など、それぞれの特徴と注意点を把握し、後悔することのない自己株式の取得を実現することがなにより重要です。

・上場会社の場合

上場企業における株式の市場取引は、場合によってはオークション市場のように株価が吊り上がっていくケースがあります。これによって当初の予算よりも株価が大きく動いてしまうリスクも否定できません。

しかし「公開買付け」ならば、予算を円滑に進められるので、市場取引のデメリットが解消されスムーズに自己株式の取得が進むというメリットがあります。

・中小企業(非上場企業)

非上場の中小企業は公開市場がないので株主から直接買い取るしかありません。これが「相対取引」で、すべての株主から買う場合と、特定の株主から買う場合があります。

なお、すべての株主から買う場合は、株主総会の普通決議が必要となります。普通決議は株主総会での多数決で可決されます。

特定の株主から買う場合は、株主総会での特別決議が必要となり、これは株主総会での3分の2の賛成が必要です。

参考URL:https://www.bizup.jp/solution_h/stockholders/01/01_05.html

自己株式取得の注意点

かつては法律で制限されていた自己株式の取得ですが、時代は変わり今では多様な目的で実行されています。しかしながら、法的な規制が完全に撤廃されたわけではありません。企業が社会の公器としての役割を果たすために、一部の利益追及により多くの株主が不利益を被ることのないよう、最低限の法律の網がかけられています。

以下に挙げる法的な注意点をよく理解し、自己株式は公明正大に取得したいものです。

・株主への通知の義務

株主間の公平性を保つために、他にも株を売りたい株主がいないかどうかの追加請求を全株主に通知しなければならないことが会社法の156条、106条、160条の一項、309条で規定されており、その際、法律的な根拠があれば通知に記載することが義務付けられています。

・配当課税と譲渡課税

自己株式を取得すると「みなし配当課税」が生じる可能性があります。すなわち、自己株式の取得には普通の取引とは違う税金がかかる、ということを念頭に置く必要があります。

まとめ

日本のビジネス社会では、旧来は「ご法度」とされていた行為が時代の流れとともに「常識化」されることが少なからず起きています。かつてはマイナス面ばかりが強調されていたM&Aが今では企業再建の切札ともいわれるようになったことも一例です。

これと同じように「自己株式の取得」も「禁じ手」から「有効な手段」として注目を浴びるようになってきています。中小企業にとってもメリットの多い自己株式の取得ではありますが、現実に実行するとなると、いくつかのハードルを越えなければなりません。専門家に相談し、慎重に事を運ぶことがなにより重要なのは言うまでもありません。

〈話者紹介〉

税理士法人新宿総合会計事務所

税理士、M&Aシニアエキスパート

清水様

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当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。

システムエンジニアを経て2001年新宿総合会計事務所に入職。

事業承継やM&Aの支援業務に従事している。

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