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会社分割とは?会社分割の方法やそのメリット・デメリットについて解説

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会社の「合併」についてわかりやすく解説!

 

はじめに

会社分割とは、株式譲渡や事業譲渡などと共にM&Aにおいても用いられる手法の一つです。会社分割の種類や方法、メリット・デメリット、手続き、税務などについて、税理士法人山田&パートナーズの税理士・宇田川隆氏に聞きました。
 


税理士法人山田&パートナーズ コンサルタント 宇田川隆

話者紹介

税理士法人山田&パートナーズ
アドバイザリー本部 本部長
宇田川 隆(うだがわ たかし)

税理士法人山田&パートナーズ アドバイザリー本部長、税理士。2000年明治大学商学部卒。2002年税理士法人山田&パートナーズ入所。全国各地の中小企業におけるM&A・組織再編・事業承継など各種コンサルティングを行い、一連のアドバイザリー業務からデューディリジェンス、バリュエーション業務も含めてサポートを行う。

 

 

1.会社分割とは何か、会社分割の目的

会社分割とは、会社が事業に関して有する権利義務の一部もしくは全部を分割して、他の会社に承継させる手法のことを言います。ここでは、分割の特徴や分割を行う目的について紹介します。

【会社分割の特徴】

中小企業のM&Aで最も多く利用されている「株式譲渡」が、法人格を丸ごと譲渡するのに対し、「会社分割」では会社から事業を切り離して他社に移転させることができます。さらに、会社分割は「吸収分割」と「新設分割」の2種類に分けられ、切り出した事業を既存の会社に承継させる手法を「吸収分割」、一方で、切り出した事業を新しく設立する法人に承継させる手法を「新設分割」と言います。

吸収分割であっても、新設分割であっても、会社分割は事業を構成する資産と負債を包括的に承継する手法のため、分割契約で定めた権利・義務はすべて承継・新設会社に移転することになります。事業の一部もしくは全部を売買できるという点で「事業譲渡」と同一視されますが、会社分割は組織再編の手法としての意味合いが強く、また、譲渡する事業の権利・義務を包括的に承継できるため、取引先との各種契約、債権や債務などの移転手続きが不要という特徴を持っています。

【会社分割の目的】

会社分割は、成長事業を子会社として分社化させたり、不採算事業を切り離して会社の経営を安定させたりと、企業グループの再編や経営統合を行う場合に利用されます。一方、分割承継会社にとっては、既存事業とのシナジー効果を早期に獲得する手段として利用されています。

中小企業の多くが後継者不在に悩んでおり、後継者がいたとしても事業を引き継げないケースも見受けられます。また、闇雲に事業を拡大し続けた結果、グループ内において事業が重複し経営効率が落ちているというケースもあります。好調な事業があっても、会社全体で見れば、他の不採算事業の業績に埋もれてしまい、会社の評価が低くなるということも珍しくありません。その場合、株式譲渡などで会社を丸ごと売却するよりも、分割した方が高く売却できることもあります。


2.会社分割の種類や方法を説明

会社分割の種類や方法を説明

会社分割は、切り離した事業を移転させる対象によって、吸収分割と新設分割に分けられることは説明しました。ここでは会社分割の種類について説明します。

会社分割で切り出した事業を既存会社が承継する手法を「吸収分割」、新設会社が承継する手法を「新設分割」と言います。吸収分割は既存の二社間で実施されるのに対し、新設分割は新たに会社を作ることで実施されます。会社分割によって事業を承継する場合には、対価として株式または現金が支払われますが、その対価を誰が受け取るかによっても分類されます。

吸収分割により分割会社が承継会社の株式・現金などを受け取る場合を「分社型分割」、分割会社の株主が承継会社の株式・現金などを受け取る場合を「分割型分割」と呼びます。つまり、会社分割は新設分割・吸収分割との組み合わせによって4パターンの選択肢があります。一般的に、親会社と子会社間など、分割会社と承継会社が上下関係にある場合は分社型分割、子会社間など、分割会社と承継会社が対等な関係にある場合は分割型分割を選ぶケースが多いようです。

■吸収分割とは

A社とB社の事業を入れ替える図

■新設分割とは

新設分割の図


3.会社分割のメリット・デメリットを解説

会社分割のメリット・デメリットを、分割会社と承継会社または新設会社に分けてより詳細に見てみると、以下のようになります。

【分割会社のメリット・デメリット】

会社分割では、契約の巻き直しが発生しません。「官報広告」を出すことで、事業を承継会社または新設会社にそのまま引き継ぐことができる点は大きなメリットでしょう。また、従業員の個別同意を得る必要がないことも大きなメリットです。会社分割は包括的に承継が行われるため、雇用契約についても従業員から個別に同意を得る必要がなく実行可能です。つまり、事業譲渡とは異なり、優秀な人材が流出するリスクを軽減できます。一方、デメリットとしては、株主総会の特別決議(3分の2以上の賛成)が原則必要になるため、株主の多い企業や株主が身内以外に分散している場合は同意が集めるのに苦労します。また、債権者保護手続きが原則必要になることも注意しましょう。債権者に対して異議申し立ての機会を与えることはもちろん、申し立てがあった場合には弁済が必要になります。

【承継会社または新設会社のメリット・デメリット】

最大のメリットとして挙げられるのが、分割会社を買収する現金がなくても対価として新株を発行すれば会社分割を実施できることです。ただし、中小企業の会社分割では、売手が買手の株式を受け取ることは少なく、対価として現金を受け取ることがほとんどです。この点は、原則現金が必要な株式譲渡・事業譲渡と比べると柔軟性が高いと言えます。さらに、契約関係をそのまま引き継げる包括承継のため、事業譲渡と比べて事務コストも比較的小さいこともメリットでしょう。

事業譲渡などと比べて、税金の負担が軽い点も会社分割のメリットでしょう。会社分割によって事業を包括的に承継した会社には、消費税は課税されません。また、法人税・所得税も一定の条件を満たせば、課税される譲渡損益をないものとすることができ、課税されないことなどが挙げられます。一方、デメリットとして挙げられるのが、会社分割が包括承継であるがゆえに、不要な資産を引き継ぐリスクがあることです。仮に分割した会社に簿外債務があれば、承継会社・新設会社は債務も一緒に引き継ぐことになるため、注意が必要です。

なお、会社分割を活用する場合、許認可をそのまま引き継げる業種と、引き継げない業種があるので、注意しましょう。例えば、旅行業や理容業は承継することができますが、ホテル・旅館営業・貸金業などは許認可を承継できません。その場合は再度許認可を取得する必要があります。


4.会社分割の手続きや流れ

会社分割の手続きや流れ

ここからは会社分割の主要な手続き、流れについて見ていきましょう。

【吸収分割の手続きや流れ】

吸収分割では、まずは分割契約内容の確認を行い、分割会社・分割承継会社共に取締役会議での承認を経て、分割契約を締結します。そして債権者保護手続を行い、分割実施日(効力発生日)の前日までに株主総会の特別決議による承認を得て、会社分割を実施します。さらに分割実施日(効力発生日)から2周間以内に分割会社と承継会社の変更登記を同時に行います。登記までの一連の流れは、通常、2カ月程度を要します。

【新設分割の手続きや流れ】

新設分割も基本的な手続きや流れは吸収分割と同じです。ただし、新設分割では相手企業が存在しないため、ほとんどの手続きは分割会社で行います。また、新設会社が登記を行った日が効力発生日となります。

以下では、特に重要な手続きとして、分割契約の承認、債権者保護手続、反対株主に対する買取機会の確保、登記をそれぞれ取り上げて説明します。

【分割契約の承認】

吸収分割の場合、分割会社と承継会社は、分割の効力発生日の前日までに、それぞれ株主総会の特別決議による承認を得なければなりません。一方、新設分割の場合、分割会社は分割の効力発生日の前日までに株主総会の特別決議による承認を得なければなりません。

ただし、簡易分割の要件を満たす場合、株主総会決議を省略することができます。具体的には、分割する資産の帳簿価額が分割会社の総資産の5分の1以下であれば、分割会社における株主総会決議を省略することができます。また、分割会社の株主への割当財産等の合計金額が純資産の5分の1以下等の条件を満たせば、承継会社における株主総会決議を省略することができます。

また、親会社と子会社の間の会社分割で、親会社が子会社の90%以上の議決権を保有している場合、略式分割の要件を満たすため、株主総会決議を省略することができます。

【債権者保護手続】

会社分割では、債権者保護手続きが原則必須となっています。具体的には、官報による公告、会社分割により債務者が変更になる債権者への個別催告、債権者から異議を申し立てられた場合の対応などです。会社分割を実施する前に、最低1ヶ月の異議申し立て期間を設定する必要があります。

債権者の中でも、特に金融機関の事前の了承を得ておくことが大切です。というのも、会社分割によって当該金融機関との付き合い方が変わり、最悪の場合融資が止められる可能性があるからです。金融機関が会社分割を認めないケースもありますので、事前に話し合いましょう。

【反対株主に対する買取機会の確保】

分割に反対する株主を保護するための手続きとして、分割会社の株主は、自己の保有する株式を公正な価格で買い取ることを分割会社に請求することができます。ただし、簡易分割(分割する資産の帳簿価額が分割会社の総資産の5分の1以下)の場合は認めらません。

【登記】

吸収分割の場合、分割契約で定めている分割実施日(効力発生日)から2週間以内に、分割会社と承継会社が変更登記を同時に行います。一方、新設分割の場合、新設会社は設立登記を、分割会社は変更登記を、同時に行います。この場合、新設会社の登記日が効力発生日になります。なお、登記の費用については、登録免許税、官報告示費用、司法書士費用がかかります。


5.会社分割と事業譲渡の違い

5. 会社分割と事業譲渡の違い
会社分割も事業譲渡も、事業の一部を選択的に売買できる点は同じです。しかし、包括承継か個別承継かという点で大きな違いがあります。ここでは特に重要な違いについて紹介します。

会社分割の場合、包括承継であるため、債務や資産の移転に関しては、契約を新たに取り交わす必要はありません。また、雇用の移転に関しても、前述したように個別同意は不要です。事業譲渡の場合、債務や移転に関しては所有者から個別の同意を得る必要があり、また、雇用の移転に関しても従業員から個別に同意を得る必要があります。特に従業員の移転に関しては、契約更新を拒否される場合があり、優秀な人材が流出してしまうという可能性もあるため、慎重に行う必要があるでしょう。

一方で、簿外債務の引き継ぎという点を取り上げると、事業譲渡は債務や資産を契約により指定することができるため、簿外債務を引き継ぐリスクをゼロにすることができます。一方で会社分割は包括承継であるため、事業が抱えるデリバティブ取引の債務、債務保証、訴訟による賠償義務などを承継するリスクがあります。

また、会社分割の場合、債権者保護手続が原則必要です。会社分割では債権者が不利益を被る可能性が考えられるためであり、官報による告示、会社分割の影響で債務者に変わる債権者への個別勧告、債権者から異議を申し立てられた場合の対応などを行う必要があります。結果として、債権者から異議を申し立てられる場合もあります。一方、事業譲渡の場合、会社そのものは存続するため、基本的に債権に影響しません。従って、債権者保護手続が原則不要で、債権の移転が発生する場合にのみ債権者からの個別同意、あるいは官報公告への通知が必要となります。

会社分割の簿外債務の承継リスクや債権者保護手続を懸念する場合は事業譲渡を選択し、移転手続きを避けたい場合は会社分割を選ぶケースが多いとみられます。

■会社分割と事業譲渡の違い

  事業譲渡 会社分割
対象 事業 事業
対価 原則現金
(株式の場合には現物出資に該当)
株式・現金など
契約関係などの承継形式 特定承継 包括承継
許認可 原則再取得 原則再取得
従業員の取り扱い 従業員の同意が必要
(転籍する場合は個別に労働契約を締結または従前の契約を承継)
承継事業に主として従事している従業員については同意は不要
債権者保護手続き 不要 必要
負債を承継しない場合、重量的債務引受の場合など、分割会社は不要

6.会社分割にかかる税金

会社分割では、原則として、分割会社が資産や負債を時価で譲渡したものとして取り扱います。従って、分割会社に譲渡益が発生する場合、分割会社は、当該期の年度末決算において他の損益と合算して法人税が課されます。また、分割会社の個人株主にも課税が生じます。

ただし、グループ内分割や他社との共同事業のための分割など、経済的に変動がないと認められる分割の場合、資産や負債の移転は帳簿価額で引き継がれるため、分割会社に対する法人税、分割会社の個人株主に対する所得税のいずれも課されません。なお、会社分割は包括承継であり、課税資産の売買は発生しないため、消費税は不課税です。


7.会社分割前に準備すべきこと

まずは、どの事業を切り分けるかを見極め、資産や負債を特定しておくことが大切です。さらに、分割後のそれぞれの収益性・資産性を評価し、事業損益と資産状況の推移を複数年スパンでシミュレーションすることをお勧めします。特に吸収分割の場合、切り分けた事業のアピールポイントを明確にしておくことが大切です。

とはいえ、会社分割のプロセスは非常に複雑で、専門家からのアドバイス無しに行うのは困難です。株式譲渡や事業譲渡とは異なり、M&A仲介会社よりも税理士、会計士、経営コンサルタントなど、会計や税務に詳しい専門家にアドバイザーとして入ってもらうほうが賢明でしょう。

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