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飲食店の後継者探しにはM&Aが有効!? 売買と買収におけるメリットや相場感とは

2019/09/13
更新日:2021/02/26

はじめに

夢を抱いて開店しても、利益を上げ続けていくのが難しい飲食店。新規参入者が多い分、後継者不足や収益の悪化などにより、廃業となる店も多いのが現状です。しかし適切なM&Aを行えば、大切な店をより良い状態で存続させたり、資産として別の価値に変換したりすることが可能になります。

今まで築き上げてきた大切な飲食店を守る、あるいは資産化するための方法について、飲食店のM&A事情に詳しい、株式会社ウィット代表の三宅宏通さんに教えていただきました。


1.飲食店業界の現状

実は現在、日に日に厳しくなりつつある飲食業界を取り巻く環境。それには、以下のような理由があります。

(1)巨額の初期投資と原材料費・賃料の高騰

飲食店が新たにオープンする際に設備投資をゼロから始めると、安くても1,000万円ほどの資金が必要になります。そのため新規でオープンした店は、巨額の負債を背負って事業をスタートすることに。初期投資の高さは経営のプレッシャーとなります。

また、近年では原材料の高騰が原価率を引き上げ利益を圧迫。初期投資を回収することすら難しい店が増えています。

(2)物件探しが難航

飲食店に適した物件に限りがあるうえ、人通りが多い駅前の物件などの賃料は軒並み高騰。条件がいい物件はサブリースが抑えているなど、飲食店の物件探しは困難な状況にあります。また、賃料の値上がりも飲食店の利益を圧迫しています。

(3)飲食業界全体が人手不足

飲食業界は、慢性的な人手不足の状態にあります。新卒はもちろん中途入社であっても採用が難しく、そのうえ定着率が低いことも人手不足に拍車をかけています。しかも飲食店は従業員の態度が悪ければ客離れが起きてしまうため、採用は慎重に行わなければなりません。

(4)店主が高齢化・後継者不足

中小企業庁の発表によると中小企業の経営者の高齢化は進んでおり、経営者を年齢別に分けると2015年では66歳が最も多いということになっています。20年前は47歳が最も多かったことを考えると、中小企業全体が高齢化してきていることがわかります。この傾向は飲食店も例外ではないでしょう。

(5)成功のセオリーがない

たとえ経営手腕に優れた経営者がいたとしても新店舗をオープンしたことがあだとなり、経営不振に陥ってしまうこともあるのが飲食店の経営です。店舗は二つとして全く同じ条件のものがないため、何が経営の不振を引き起こすのか完全に予想することはできません。

2.飲食店業界におけるM&A動向

三宅宏通さんのインタビューシーン2

飲食業界におけるM&Aは、近年増加傾向にあります。売り手は廃業する際にかかる費用などを減らせ、買い手は安く新規出店ができるという、売り手と買い手の双方にメリットがあるためです。

(1)小規模な飲食店でもM&A利用は増加

近年は仲介業者の充実やM&A自体の認知度の向上などにより、地方の小さな飲食店がより良い条件で店舗を売却する例が増えてきています。

(2)異なる業態を対象にした事例が増加

参入障壁の低い飲食業界には、ライフスタイルの多様化や主力事業強化のために、不動産などまったく異なる業態を営んでいた企業が参入することも。その際の場所や設備、スキルや人材確保のため、M&Aにより既存の店舗を獲得する事例が増えています。

(3)店舗の立地や周辺環境の確保が目的の案件も増加

飲食店の経営は、立地や周辺環境の影響を非常に強く受けます。そのため、大手の飲食店企業が好立地を確保する目的で既存の店舗を買収することがあります。この場合の多くは、店舗は買収先のブランドに生まれ変わり再オープンすることに。

そういった買収の対象となるのは、立地や建物に魅力があるにも関わらず、経営は不振に陥っている赤字の飲食店などです。

3.飲食店を売却する側のメリット

三宅宏通さんのインタビューシーン3

1.後継者不足の解消

継承者がいないことが理由で店を維持することが難しい場合、M&Aによって解決を図ることも。伝統ある料理店が後継者不足でその歴史に幕を降ろさなければならない場合などに、M&Aが用いられることもあります。

2.廃業・撤退のコストを削減

テナントを借りている飲食店が廃業・撤退する場合は、契約満了までの残りの賃料や違約金、退去時の原状復帰費用などを負担しなければなりません。手続きなどに対する代行費用やリースの解約金、在庫や設備の処分のための費用などもかかり、通常のその額は100万円から300万円ほどに上ります。

しかしM&Aにより売却する場合、買い手が納得してこれらを引き継げば撤退のコストはかかりません。そのため、たとえ売却額が1円だったとしても、売却側にはメリットがあります。

3.利益を獲得することも

飲食店をM&Aで売却すると、売却時の利益を受け取ることができます。得た利益はより大きな売上を獲得できそうな他の店舗の設備投資に使ったり、新規事業の開店資金にしたりすることができます。もちろん大きな利益を得られれば経営者は一線を退くことも可能でしょう。

店舗の売却に対して後ろめたい気持ちを抱く飲食店経営者は少なくありませんが、客観的な評価に基づいて利益を確定させていくことは恥ずべきことではありません。

4.従業員の雇用継続や待遇の改善

買収先と従業員への合意が取れれば雇用をそのまま引き継いでもらえるため、経営者が変わっても従業員を路頭に迷わせる心配はありません。大企業や大手のグループ会社に買収される場合は、資本の強化により従業員の休日数を増やしたり給料を上げたりといった待遇を改善できることもあります。

5.個人保証や担保解除の可能性

オーナーの交代により、個人の保証を外すことができるケースもあります。飲食店の個人保証はときに億単位の金額に上ることがあり、経営者個人に大きなプレッシャーになっています。しかし契約時に個人保証を外すことを条件とし、双方の合意のもとで契約が成立すれば、売り手はこのプレッシャーから逃れることができます。

4.飲食店を買収する側のメリット

M&Aの流れの資料

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1.人材の確保

新たに飲食店をオープンする際、新たにスタッフを集めて教育を行うのにはコストや時間がかかります。しかし、M&Aにより売却先から人材を受け継げばそのようなコストや時間を省略することができます。

ただし、労働者には職業選択の自由があるため、経営者や労働環境、労働の形態が変わることに対して同意を得てから再雇用契約を結んだり、継続して働くことへの意思を確認したりする必要があります。

2.飲食店経営のノウハウを獲得

異なる業種から飲食業界に参入する場合やノウハウのない事業を新たに始める場合は、既存の店を買収することによって、スキルを持った人材やレシピ、必要な設備などをより容易に確保することができます。

3.低コストでの新規出店

M&Aによって経営店舗を引き継げば、設備や備品を含めて店舗を確保することができるため、新規開業より出店費用が少なくて済む場合があります。とくに赤字店舗を買収する場合は、このケースが当てはまります。一方、現状で利益が出ている店舗を買収する場合は、ゼロから開業するより高額になることもあります。

4.好条件の物件を確保

飲食店にとって立地の良さは売上に直結する重要なポイントであり、業態によっては集客できる立地条件が限られていることがあります。M&Aでは既存の店舗を立地ごと得ることができるため、自社の業態にぴったりの立地条件を確保することができます。

5.事業拡大を図りやすい

M&Aで買収した店舗は、既存顧客やノウハウ、経験のある従業員などを抱えた状態で経営を引き継げるので、経験の浅い人にも運営を任せやすく、人材教育の手間をかけずに事業を拡大することができる場合があります。チェーン店舗等の複数店舗を同時に買収した場合には、一気に事業の拡大を図ることが可能です。

5.M&Aを利用して飲食店を売却するまでの流れ

図:M&Aの流れ
M&Aの流れの図

(1)アドバイザー探し

売却先の選定や交渉・成約などを、個人や自社の力だけ実行するのは困難です。M&Aの知識や業界への見識が深いアドバイザーを探して相談しましょう。アドバイザーを選ぶ際には、情報が漏洩しないよう適切な管理をしながら話を進めてくれそうな相手を選ぶこと、売り手の希望を聞きつつも適切なアドバイスを交えながら相談に乗ってくれる相手を選ぶことが大切です。

基本的に、アドバイザーとは専任契約を結ぶことになります。途中で相談先を変更することはできませんので、アドバイザー選びは慎重に行う必要があります。相談先には、主にM&A仲介会社や飲食店専門の売買マッチングサイト、地元の金融機関などが該当します。

(2)買収先とのマッチング

買収側は「ノンネームシート」と呼ばれる社名の伏せられた書類を使って、買収先の候補を選定します。魅力的な買収先だと判断した場合、さらに詳しく調査・検討をし、問題がなければ売り手と買い手の面談が行われます。面談は繰り返し行われることがあり、売り手の経営状況などが詳しく確認されるほか、経営者の人柄などもチェックされます。

売買にかかる最終的な金額は経営者の人柄によって左右されることがあるので、売り手は買い手により良い印象を持ってもらうことが大切です。また、残る従業員の雇用や待遇などの条件についても、この時点で確認・交渉しておく必要があります。

(3)基本合意の締結

買収側と価格や時期などの条件交渉を行い、契約内容を確認するために売り手と買い手の両者が基本合意契約書を取り交わします。ここまでに、売り手と買い手はそれぞれの考え方をしっかりと相手に伝えておくと、後のトラブル発生を防ぐことができます。売り手はネガティブな局面は早く買い手に伝えた方が、より良い条件での売却が可能になります。

(4)デューデリジェンス(買収監査)の実施

買い手は、弁護士や会計士に依頼して売り手の債務チェックやリスクの洗い出しをします。従業員への未払いの残業代がないか、設備に故障はないか、売り手側と買い手側の従業員の給与体系に差はあるかなど、細かな項目まで確認します。飲食店の売買においてよくあるトラブルに、古い設備をめぐる認識の違いがあります。売り手にとっては充分使える設備であったとしても、買い手には資産とみなせないような古い設備などがある場合は注意が必要です。

また、従業員が異様な低賃金で雇われていた場合、新しい賃金体系を適用したとたんに人件費が高騰する可能性があります。それが利益を圧迫するケースもあるので、買い手はそういった点にも注意する必要があります。

(5)売買契約の締結

条件交渉やデューデリジェンスの結果を踏まえて、最終譲渡契約書が締結されます。店舗が借家の場合はこの段階で賃貸主に承諾を得ることになりますが、万が一賃貸主がそれに合意しなかった場合には契約が無効になってしまうため注意が必要です。

(6)事業の引き継ぎ・クロージング

あらかじめ定めた譲渡実行日までに、売り手から買い手に業務の引き継ぎを行い、経営権の引渡しと代金決済を行います。これをクロージングと言い、これでM&Aが完了します。

6.飲食店のM&Aと居抜き、どっちがお得?

三宅宏通さんのインタビューシーン4

(1)飲食店の居抜きとは

居抜きとは、設備や什器備品、家具などが付いたままで、売買または賃貸借されることを言います。居抜きで物件を購入または賃借すると、既存設備を利用することで初期費用を抑えたり、営業の開始時期を早めたりすることができます。

(2)M&Aと居抜きの違いはこの3点

1.M&Aは事業と資産を売買するもの、居抜きは資産のみ

M&Aは事業そのものを引き継ぐことになるので、経営を継続できないことが決まっている場合には成立しません。また、M&Aの場合、売却時の価格は事業の成績や組織を評価して決定するので、資産や収支などの利益が分かっている場合でないと実行できません。一方、居抜きとは、売り手の事業は残らないものです。

2.M&Aは雇用や取引先との契約を引き継ぐ

従業員や取引先との合意が必要にはなりますが、M&Aは設備や資産だけでなく、雇用や取引先との契約なども引き継ぐことができます。居抜きの場合、これはありません。

3.譲渡金額が異なる

居抜きの場合、譲渡時に支払われる金額は0円〜300万円が相場と言われています。価値がつかないことがほとんどですが、立地条件などが良いと代金が支払われることも。一方、M&Aの場合は、買い手にとって魅力的な要素があればもう少しまとまった金額が支払われます。赤字経営の店を引き継いでもらえるケースもあるでしょう。

4.仲介業者が異なる

居抜きの場合は不動産のみの賃貸や売買の仲介になるため、基本的に依頼先は不動産仲介業者になります。一方、M&Aの場合はビジネスそのものを売買することになるため、M&Aアドバイザーなどが仲介を担います。

7.飲食店のM&A相場はどのくらい?

三宅宏通さんのインタビューシーン5

調整後EBITDAの約3倍が相場

年間の償却前利益に引き継がれないコストを差し引いた金額(調整後EBITDA)の約3倍が、飲食店におけるM&Aの相場価格です。会社の規模が大きく安定している場合には、将来収益における確実性が高まり、4〜5倍になることも。株式譲渡によってM&Aをする場合は、さらにBS(貸借対照表)の純資産を加算した価格が相場となります。

売り手にとっては、少しでも高額で店を売却したいもの。そのためには売却を考えるときまでに、コストを抑えることが必要なのか、売上を上げることが必要なのかをよく考えておく必要があります。

経理上の数字のほか、創業してからの年数が長かったり、役員が優秀であったり、買い手にとってシナジーが生まれる要素があれば、相場より高額で買収されることも。売却を検討している飲食店のオーナーは、自分の店の強みが何かを明確にしておくといいでしょう。

M&Aを使って飲食店を売却することは、何も恥ずべきことではありません。歴史ある味や従業員の雇用維持、労働環境の向上など、売却を行うことで飲食店にとって多くのメリットもあります。今まで一生懸命店を守ってきたからこそ、後継者不足等で店舗の存続を悩んでいる方は、M&Aも手段の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。


話者紹介

三宅宏通さん
株式会社ウィット
代表取締役
三宅 宏通(みやけ ひろみち)

2005年に立命館大学文学部を卒業、同年UFJ銀行に入行(現・ 三菱UFJ銀行)。上場企業を中心に融資等を担当する。2007年に飲食業界に特化したM&A仲介業、人材紹介業を手がける株式会社ウィットを設立。あらゆる規模のM&A案件を成約させる。
2018年には株式会社シンクロ・フードにウィット株式を100%譲渡し、子会社として引き続き飲食業界に特化したM&A仲介業を行っている。

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