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住宅設備機器卸業界で事業承継やM&Aを行うメリットは?業界の特徴やM&Aのフローを解説

2020/04/19
更新日:2020/10/05

はじめに

住宅業界の中でメーカーと工務店やハウスメーカーをつなぐ位置にあるのが住宅設備機器卸の業界です。
仕入先や取引先が多く存在するこの業界では、M&Aによってスムーズに事業承継を行うことが可能です。
この住宅設備機器卸の業界でM&Aを行うためには、どのような点に注意して進めていくと良いのでしょうか。
今回は、中小企業の事業承継を数多く手がけてきた株式会社M&Aベストパートナーズ代表取締役の齋藤達雄さんに住宅設備機器卸業界のM&Aについて教えていただきました。


1.住宅設備機器卸業界の概要と業界動向について

(1)住宅設備機器卸とは

住宅を建築する場合には必要な資材を工務店やハウスメーカーが直接メーカーから資材を購入する訳ではなく、分野ごとに存在する専門商社を介して購入します。

住宅設備機器とは、家を建てる時に必要になる資材を指しています。イメージしやすい設備でいえばキッチン、トイレ、浴室などの水回りの設備や換気設備や空調、電気設備などが挙げられます。これらの設備を「住宅設備機器」と総称し、住宅設備機器をメーカーから買い付けて工務店などに卸す業界を住宅設備機器卸と呼んでいます。

専門商社ごとに扱う商品の分野は分かれていますが、厳密には建築資材(建材)と呼ばれる窓、サッシ・ドア・フローリングなどの内装に関する資材も一緒に卸すこともあるので、住宅設備卸業と建材卸業は併せて語られます。

基本的にはメーカーが作った製品を全国規模の大手商社が買い付け、そこから地方や都道府県単位で存在する各エリアの二次問屋に卸します。実際に住宅の建築を行う地場工務店や住宅メーカー、リフォーム会社などは、二次問屋から製品を買って住宅に取り付けの工事を行うのが業界の慣例となっています。

 

(2)業界の動向は住宅業界の需要に左右される

住宅業界は受注産業なので需要に大きく左右されます。多くの家が建つ時期やリフォームの需要が多い時期であれば好況ですが、不況の場合にはその影響を大きく受ける業界です。住宅設備機器業界もこれに関連する業界なので、住宅需要に関連して業界の動向が決まります。

動向を知るための指標の1つが年間の「新築住宅着工件数」ですが、以前は安定して年間100万戸〜120万戸の新築住宅の建築が行われていました。しかし、2008年に発生したリーマンショックの影響で70万戸台にまで落ち込み、10年かけてようやく100万戸台まで回復してきました。この点から業界全体としては緩やかな回復基調にあるといえるでしょう。

ただ、地域に密着している二次問屋や工務店はまだ苦戦しています。規模の小さな会社は仕入れの量が少ないので、交渉力や営業力が弱くなります。その結果、仕入れる製品1つあたりの利益率も大手に比べると低くなります。

昔に比べると会社が独自に技術を持っている場合が少なく、付加価値が付けにくい業界です。その結果、特に中小商社は利幅が取りづらいのが現実です。売上10億円以下の会社は粗利で3割程度、営業利益は2〜3%という場合が多く、下手をすると営業利益がマイナスの場合もあります。

業界動向は悪くありません。しかし利益を上げるには規模が大きな要素を占める業界なので、中小商社の場合は苦戦している企業も多いのです。

今後は人口が減少していくので、長期的に見ると住宅需要は低下していくと見込まれています。特に新築住宅着工件数は10年後の2030年には63万戸まで需要が低下すると予想されています。競争力が低い商社にとっては今後さらに厳しい環境になるといえるでしょう。

2.住宅設備機器卸業界M&Aの現状


住宅設備機器卸業界でM&Aを行うにあたり、業界が抱える悩みや特徴をご紹介していきます。

 

(1)住宅設備機器卸業界の事業承継問題

住宅設備機器卸の業界は高齢化が進んでおり、60~70代の社長が多いです。人口減少で長期的には需要が減少する業界なので、子どもや従業員が跡を継いでくれない場合も多く、後継者探しに苦労しています。

後継者問題に関しては、日本政策金融公庫の調査によると60代の4割は後継者への事業承継の準備をしています。しかし残りの6割は事業承継の準備をしておらず、3割がこれから準備をする、2割が現時点では全く準備をしておらず、1割がそもそも事業承継を考えていないと回答しています。

事業承継を考えていない会社の中には黒字の会社もありますが、多くの経営者は辞めたくても辞められないというのが実情です。特に利益率が低いので借金があるとなかなか返済できず、生涯にわたって事業を続ける経営者も少なくありません。

 

(2)M&Aにおける住宅設備機器卸業界の特徴

M&Aにおける業界の特徴は、メーカーから製品を仕入れて販売する卸売業なので設備投資がない点です。従って長期的に事業を行っている商社であれば、金融機関からの借入額は少ないでしょう。一方で、仕入れた製品を保管するための倉庫や土地、在庫を保有している場合が多いので会社としてのアセット(資産)は多いといえるでしょう。

 

(3)住宅設備機器卸業界で多いM&Aのパターンとは

住宅設備機器卸の業界を買収するニーズは、同業大手にあります。冒頭にご紹介した通り住宅設備機器業界は大手商社の下に地域ごとに二次問屋が存在し、地域の工務店やハウスメーカーに卸しています。

仮に同業が別のエリアで販路を拡大しようとしても、事業所を構えて人員を集めるのに時間と費用がかかります。営業面でもゼロから販路を開拓することは厳しいのがこの業界の特徴なので、投資効果を考えるとM&Aによって新たな商圏を手に入れることが最も効率的な事業規模拡大の手法といえるでしょう。

従って、同業の大手商社が事業規模の拡大を目的としてM&Aを行うケースが目立ちます。M&Aによって規模を大きくして購買時の交渉力を高め、収益構造を良くしたい大手商社と、後継者問題をM&Aによって解決したい中小商社の経営者のニーズが一致して成立するのが最もよく見られるケースです。

他にも、商社がメーカーや施工会社を買収するというケースが増えています。卸売業だけでは利益率が低いので、自分たちのオリジナルブランドを作って付加価値を付けて販売したり、消費者に安心感を提供するために資材の仕入れから施工まで手がけたりします。実際に、エリアごとにオリジナルのブランドを立ち上げる商社が増えており、自社ブランド化の流れの中で住宅設備機器卸の会社も買収されるというケースも増えつつあります。

3.住宅設備機器卸業界でM&Aを行うメリット

M&A・事業承継を検討している方へ

当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。


住宅設備機器卸業界でM&Aによって事業承継を行うメリットとは何でしょうか。売手側と買手側それぞれのメリットをご紹介していきます。

 

(1)売手側のメリット

売手側からすると、経営者としては事業承継問題の解決や、借り入れがある場合は個人保証から外れることが挙げられます。また株を売ることになるのであれば株式対価が手に入ります。
売手としては、大手商社の傘下に入ると購買力が高まり仕入れ値を下げることができます。結果として収益構造が改善することが大きなメリットです。また、自分たちの取り扱っていない商品を扱っている場合があるので、これを取り扱うことで商品力を高めることも可能です。

 

(2)買手側のメリット

買手側のメリットは商圏の拡大と利益率の上昇です。先ほどご紹介した通り、自社で独自に新たな商圏を拡大することが難しい業界なので、M&Aによって容易に商圏を拡大できることがメリットです。

商圏が拡大することで買手側はメーカーに発注する注文量が増えるので、仕入れ交渉の場面で有利に交渉を進めることができます。結果として仕入れ値を下げることができ、利益率を高めることができます。

商圏の拡大による卸売量の増加と、卸売量の増加によって交渉力を高めることは商社の成長にとって欠かせない要素です。従って住宅設備機器卸のM&Aは双方にメリットがあるといえるでしょう。

4.住宅設備機器卸業界でM&Aを行う場合のフロー


M&Aはどのような流れで進めていくのでしょうか。この章では売却側と買収側それぞれの流れをご紹介していきましょう。

 

(1)売手側の売却フロー

まずはM&A仲介会社に相談して、M&Aを行うメリットの有無を検討します。M&Aを実施すると判断した場合にはM&A仲介会社と契約し、実務をスタートします。

その後、買手側のリストを選定して買収候補者と面談を行います。ここでM&Aの合意に至れば「基本合意」を取り付けます。基本合意は仮の条件で今後の作業を進めていくための手続きで、基本合意が取れたら買収監査(デューデリジェンス:DD)を行います。買収監査は買手がM&Aを行うか否かを最終的に判断するために会社の実態を把握するための監査です。公認会計士や監査法人によって監査が行われ、買収検討の前提となっている財務諸表や契約書の正確性や資産の確認を行います。

主な監査資料は決算書、総勘定元帳や商業登記簿謄本、組織図や役員・従業員名簿、就業規則、社内規定、雇用契約書や通帳、許認可や顧客との契約書など企業活動全般の資料です。売手の規模によって変わりますが、通常は1〜2日かけて実施します。M&Aで売却することを従業員に知らせたくない場合には、休日に行うこともあります。

買収監査が問題なく終わると株式譲渡契約に進みます。株式譲渡契約書には譲渡を合意する旨、代金の支払い方法や株式の名義交換、表明保証や契約解除の場合の条件が記載されています。
内容に双方が合意して株式譲渡契約を締結すると、資金の決済を経て会社の譲渡を行います。
実際に引き継ぎは3カ月〜6カ月の期間を要するので、売却の相談をしてから1年程度の期間を見越しておくと良いでしょう。

 

(2)買手側の買収フロー

買手側は、そもそもどんな分野の会社を買収したいのかを検討します。メーカーなのか、商社なのか、施工会社なのか。またどんな商品を取り扱っており、どんな強みを持っている会社を買収したいのかといった買収戦略を決定します。
買収戦略がまとまったら仲介会社に相談し、買収候補が見つかったら契約を結んで実務をスタートします。売手側と面談を行ってからの流れは売手側と同じで、基本合意の締結から行います。

基本合意には取引形態や譲渡価格、今後のスケジュールや買収監査への協力義務、独占交渉権の付与など、M&Aをスムーズに進めるための諸条件が記載されています。

基本合意の締結後に買収監査を行い、株式譲渡契約を経て資金の決済を行います。決済が完了すると双方が合意した期間で引き継ぎを行い、買手側が経営を進めていきます。

引き継ぎにあたっては取引先へのあいさつ状の送付や懇親会の手配など儀礼的な業務と、実務の引き継ぎが発生します。実務においては社内体制や運営方針の見直し、社名やメールアドレスを変更する場合は従業員に付与しているアドレスの更新や名刺の刷り直しなどの実務が発生します。

通常、半年から数年かけて売手側が買手側の経営者をサポートしながら新体制で事業を進めていけるように支援していきます。

5.住宅設備機器卸業界におけるM&Aの事例紹介


住宅設備機器卸の業界では実際にどのようなM&Aの事例があるのでしょうか。この章で具体的な事例を紹介していきます。

関東圏にある地域商社の買収事例
ある関東圏の地域商社の事例をご紹介していきましょう。売上規模は20億円程度でエリアではナンバー2に位置しています。施工部門を持っているので利益率が10%と高く、業界の中では優良企業とされています。このように事業は順調で財務内容も良いのですが、後継者に恵まれていませんでした。

このような案件なので買手もすぐに見つかりました。買手は別の地方を拠点としている同業の大手商社で、関東圏での商圏拡大を目指していました。また、買手に不足している施工部門を持っている会社を探しており、後継者を求める売手と買手のニーズとが完全に合致しました。

後継者不足に悩む売手とエリアの拡大と工事業のノウハウ取得を目指していた買手のM&Aはスムーズに進み、結果として売却企業を子会社化することで決着しました。73歳と高齢であった売手の経営者は子会社の会長として会社に残り、親会社から派遣された社長が実務を進めていくことになりました。

一方で買手がなかなか見つからないものとして、債務超過や利益規模の小さい会社、また住宅需要の増加が見込めない地域での案件があります。基本的に都市圏を形成しているエリアでないと大手商社が買収に乗り出すケースは少ないでしょう。

ただ、地方でもエリア内の業界再編が進んでいます。住宅設備機器卸の業界は規模が収益性に直結することから、エリア内で売上高上位を誇る会社がエリア内にある小さな会社を買収して事業規模を拡大するケースは増えており、M&A市場としては拡大を続けています。

6.住宅設備機器卸のM&Aを成功させるポイント


住宅設備機器卸業界でM&Aを成功させるためにはどんな点に気をつけておくと良いのでしょうか。この章ではM&Aを成功させるポイントをご紹介していきます。

 

(1)M&Aに向けて社内体制を整理する

まずは、経営ノウハウや営業・仕入れノウハウを部長や課長などの幹部社員に引き継いでいき、M&A後にスムーズに事業が回るように社内体制を更新していきます。
また、財務体制の整理も重要です。買収監査で指摘されないように、借入金の返済や不良在庫の整理、株式の集約などは早めに手をつけておくと良いでしょう。

 

(2)M&Aを実施するタイミングを考慮する

M&Aはタイミングが重要です。同じ条件でも景気や業界動向によってM&Aが成立するかどうかは変わってきます。景気が良い時や、業界が活況な時期であれば買手も見つかりやすくなり、業界全体の景気が良ければ自社の業績が良いタイミングで売却できるので、売却価格を高くできる可能性もあります。

住宅設備機器卸業界は、長期的に見ると人口減少によって需要も減少すると考えられています。時間的に余裕があれば選択肢が広がるので、基本的には早めに動く方が良いでしょう。

また、社内のタイミングも重要です。昨年は業績が良かったのに今年は赤字という状況は、良いタイミングとはいえません。黒字になった年や事業を回す後継者が育ったタイミングで売却するのも重要です。

 

(3)株式譲渡によってM&Aを進める

M&Aの場合は大きく3つのスキームがあります。株式譲渡・事業譲渡・株式分割のいずれかの方法で売却するのが一般的ですが、住宅設備機器卸業界では株式譲渡でM&Aを行うのが一般的です。

株式譲渡とは、売却企業のオーナーなどが保有している株式を買収企業に譲与して経営権を譲る手法です。非上場企業の場合は、株式譲渡契約書を締結して株式を譲渡するのに必要な金額を支払い、株主名簿の書き換えを行えば譲渡は完了します。

会社が持つ債権債務や契約関係を全て引き継ぐので、財務内容が健全でオーナーが株の半数以上を保有している場合には株式譲渡によってM&Aを成立させるのが望ましいとされています。

M&Aにおいて買手側は仕入先、販売先、商品や従業員をそのまま受け継ぎたいと考えます。事業譲渡の場合は仕入先や販売先との契約を新たに結ぶ必要が出てきます。卸の場合は仕入先や販売先を合わせて1000社以上と契約を結び直す必要が出てくるので、事業譲渡にしてしまうと買手側のメリットがなくなってしまいます。株式譲渡であれば丸ごと譲り受けることができるので、株式譲渡を選択すると良いでしょう。

7.住宅設備機器卸のM&Aを行う際の注意点は?

住宅設備機器卸の業界でM&Aを進めていく場合、どのようなことに注意する必要があるのでしょうか。最も重要な点をご紹介します。

売却する相手を見極める
M&A全体の注意点は数多くありますが、住宅設備機器卸業界のM&Aで最も重要なのは相手を見極めることです。

住宅設備機器卸はその性質上、非常に多くの仕入先や取引先を抱えており、信用の上で成り立っている商売といえます。M&Aによって仕入先や取引先に迷惑がかからないよう、相手を見極めることが重要です。仕入先や取引先を大切にし、従業員を守ってくれるかどうかを見極めることに最も注意を払うようにしましょう。

相手については基本的には大手企業の方が安心できます。信用を失うリスクは大手企業の方が大きくなるため、M&A後に極端に仕入先や取引先、従業員を粗略に扱う可能性が低いからです。
また、トップの人柄が合うかどうかも重要です。売手側の経営者が築き上げてきた社風に買手側の社風が合うかは経営者同士の相性が良いかどうかで決まります。

そして、契約を締結することも重要です。特に知り合い同士でM&Aを行う場合などは口頭で案件を進めてしまって後からトラブルに発展するリスクがあります。仲が良い間柄こそ基本合意契約や買収監査を行うようにしましょう。

8.まとめ

住宅設備機器卸の業界は卸売業という性格上、他の業界と比べて特徴のある業界なので、M&Aにあたっては専門家に相談して適切な相手先を見つけることをおすすめします。

特に売却する場合はM&Aに向けた準備がどのようなものなのか分からない場合も多いので、専門家に相談しながら進めていくことでトラブルなくスムーズにM&Aを行うことができます。M&Aによる事業承継を考えている場合は、一度専門家に相談してから実施の可否を検討してみても良いでしょう。

話者紹介


株式会社M&Aベストパートナーズ
代表取締役社長 齋藤 達雄

大学卒業後、大手証券会社にて中堅中小企業向けに資産運用コンサルティングに従事。その後、大手M&A仲介会社のM&Aキャピタルパートナーズ株式会社に入社、金属加工業、建築資材製造などの製造業の成約に関与。その他食品、リース業界、工事業界、介護業界などのM&A仲介を担当。2018年、中堅中小企業の事業承継問題解決のため株式会社M&Aベストパートナーズを設立。

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