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人材総合サービス/広告代理店業
譲渡事例
2017.12.22
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吉田学さん(現・株式会社人財企画 顧問)は、早稲田大学を卒業後、リクルートに8年勤務。1989年、30歳のときに名古屋でリクルートの代理店アドステージを設立しました。その経緯と思いについて語っていただきました。
株式会社 アドステージ
※M&A実行当時
株式会社 人財企画
※M&A実行当時
実は、会社を設立した当時から、「50歳くらいで次の社長に受け渡そう」とぼんやりと考えていました。というのも、10代のころから執筆活動をすることが夢だったからです。
本格的に考えだしたのは、今から8年前の50歳のとき。そこから準備を始め、55歳に事業承継すると決めました。
名古屋では息子やお孫さんなど血縁者に受け継ぐことが多いように思います。しかし、私の息子は当時まだ20代で経験が浅い。これまで一緒にがんばってきてくれた社員に次期社長のバトンを受け渡すことが、社員と会社のためなるだろう、息子はその先の話だと考えました。
ところが、まだ社員が幹部になる準備が整っていなかった。もっと早くから本気で育てて準備をすべきでした。自分が悪かったのですが、「育たたないほうが悪いんだ」と逃げていて、本気で育てようとしてこなかった。
M&A締結までに必要なのはお互いの信頼関係
いざ事業承継しようと考えても、どう進めていいかわからない、誰に相談すればいいかもわからなくて困るという声を聞きます。それで、60、70歳になっても後継者に恵まれず、黒字にも関わらず廃業という会社も年々増えているとか。
私には相談する人は3人いました。ひとりは結果的にM&Aすることになった人財企画の平井善明社長。もうひとりは息子、そして、パートナーシップを結んでいたリクルートです。
平井社長とは「一緒に組めば、互いにもっと伸ばせるね」という話はかねてよりしていました。ただし、人財企画とM&Aを行えば規模の小さい弊社は吸収されることになります。
息子は大手企業の子会社に勤めており、父親としては安定したその会社にずっといてほしいという思いもありましたが、社員とともにアドステージを盛り立てていってくれないか、という話をしました。息子もしばらく悩んだようですが、結局結論つかず。
だれのために事業継承するのか?自分に問い直すことの大切さ
リクルートには、平井社長と組めば今後もパートナーシップは変わらないけれど、他の選択をすれば、リクルート以外の仕事も取り込んで事業を大きくしていかなくてはならないことを相談しました。
さて、どうするか。結論を決めかねていたときに、当時リクルートの経営渉外部門に在籍し、7年ほど弊社の経営についてアドバイスしてくれていた大治(元:アドステージ社長)がこう言ったんです。
「誰のために事業承継するのか、もう一度考えてみたらどうだろう」誰のために? 大切な前提が抜けていたことに改めて気付かされました。私が事業承継するのは、一つは自分が執筆活動を行うため。そしてもう一つは、これまでがんばってくれた社員のため。その社員の視点が抜けていたんです。
そこで、長年勤めている営業の男性、経理の女性、制作の女性の3人と話し合いの場を作りました。間には大治が入ってくれました。
3回会合を重ね、3人とも「M&A」を選択しました。「自分たちでアドステージを盛り上げていこう」と言ってくれなかったことは正直苦しかったのですが、これで気持ちに整理がつきました。
不安はありました。平井社長とはお互い信頼関係はあったけれども、実際にやってみないとわからないことがたくさんありますから。2度ほど暗礁に乗り上げ、1度は「もうやめよう」というところまで行きました。契約書も3、4回書き直しましたし。結局、まとまるまでに1年。
最終的には、私がアドステージの会長に退き、大治が社長になるという条件で、2015年から3年間人財企画のそばで人事交流をしながら、2018年1月から合併することで合意。合併後は、大治は人財企画の役員に、私は顧問になる契約です。
いちばん大切なことは信頼関係。それでも途中いろいろなことがあります。でもそれは当然だという前提で臨んだほうがいい。
それから、大治の存在も大きかった。大治は私の経営方針をよく知っていますし、人財企画の渉外担当でもあったので平井社長のこともよくわかっていました。だから間に立てた。
「大治がいたからここまできた」と両者とも思っています。形だけのM&Aは彼がいなくてもできたかもしれないけれど、これほど社員も私もみんなが納得して将来に希望を感じることができるM&Aにはならなかったでしょう。
今、事業承継がままならない中小企業が5割以上、愛知県内で6割あると聞きます。利害関係がない中立の立場で企業と企業の間に立ち、社員を第一に考えてM&Aを進めてくれる人はなかなかいません。逆にそういう存在がいればM&Aはきっとうまくいくのではないでしょうか。
M&Aは社員を軸に考えることが第一
3年前にM&Aが決まってから、社員ひとりひとりと面談しました。「売ってしまったら後は知らない」という経営者もいるようですが、私にとっては社員を軸に考えることが第一。3年間は会長として社員の側にいて、大治社長をフォローすることに決め、実際にそれを実行しました。
主要な取引先へは人財企画と同じグループとなり、スケールメリットを生かしてサービス充実させる所存であることを対面で説明しました。
この2年半は、会長として1日3~4時間の勤務で、日経、中日、中部経済の3紙を読み、社員にも読んでほしい記事をチェックして配信。私の経験上、営業も制作も新聞を読めば差がつく。最初はアドステージ内だけでしたが、今は人財企画のメンバーにも配信しています。
その後、自宅か事務所で執筆活動。今後は、顧問として会社に関わっていこうと考えています。
2017年10月に出版した「40歳で『人生の経営者』になろう。」(アイコーポレーション)は、もともと50~60代をターゲットに書いていたのですが、アドステージと人財企画の社員に向けて書こうと考え20~30代向けにすべて書き直しました。これが私のアドステージ設立者としての集大成となっています。
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