後継者探しのご相談はこちら
受付時間:平日10:00〜17:30
広告業
譲渡事例
2019.10.17
02
目指したのは、「自社・相手・従業員が喜ぶ」M&A
デジタル技術を用いたインタラクティブ広告を中心に制作を手がけ、これまでに「カンヌライオンズ」など、国内外にて約400のアワードを受賞した築地 ROY 良氏。2019年9月、自身が設立し、日本を代表するクリエイティブ会社BIRDMANのM&Aを決断しました。事業承継を検討したきっかけから、相手を選ぶ上で重要視したポイント、M&A成功の秘訣、従業員に対する思いまで、語っていただきました。
◆プロフィール
BIRDMAN代表/Creative Director。Sydney出身。Installing Crazy Ideas Everywhereというミッションを掲げ、少しでも社会や世界を面白くしていきたいと思っている。最近ではメーカー企業やスタートアップとコラボレーションし、新たなプロダクトやサービス、体験や価値を生み出すコンサルティングも行っている。国内外にて400を超えるアワードを受賞。
株式会社BIRDMAN
※M&A実行当時
広告、宣伝、セールスプロモーション、各種イベント、デザインの企画、立案、制作。近年では、プロダクトやサービスの開発、クリエイティブコンサルティングなど、上流工程から手がける
株式会社エードット/東証マザーズ(7063)
※M&A実行当時
マーケティング視点でブランディングを中心に事業を支援するプロデュースカンパニー。2012年の創業以後、ブランディングやクリエイティブ、情報の話題拡散など、「企業の夢への挑戦」を支援する。
2004年にBIRDMANを創業して以来、15年間「広告」を制作し続けてきました。その中でいくつものターニングポイントを経験し、グラフィックからFlashでのウェブ制作、イベント制作や体験インスタレーションの制作など、時代に合わせて制作するものを変えてきました。近年は、単に広告を制作するのではなく、プロダクト開発やサービスの企画、実装を行うなど、上流工程から手がける機会も増えています。 自分のイメージやアイディアを詰め込んだ広告を世間に発信し、大きな反響を得られることはクリエイター冥利に尽きますが、広告は記憶に残らないことがほとんど。その一方で、まったく広告を打たずにその価値が認められている製品も数多く存在します。創立15周年を迎えるにあたって、広告しなくても買いたくなるようなものをデザインする企業でありたい。そして、自分の家族や友達、周りの人たちに楽しいと思ってもらえる、便利と思ってもらえる価値あるプロダクトやサービスを届けたいと考えるようになりました。
しかし、プロダクトやサービスを1から創り上げるには、最低でも1〜2年かかります。また、事業を軌道に乗せるには運転資金も必要になります。広告制作業からの脱却を目指したものの、40人弱のリソースで戦っていくのは難しいと考えていたのも事実です。新分野進出・事業転換に挑戦するために、また事業成長の時間短縮のために、M&Aを検討するようになりました。
「初めてのM&A」ということもあり、まずは広告制作会社を営む経営者仲間から話を聞くことにしました。近年、広告業界にもM&Aの波が進み、大手企業による中堅中小企業のM&Aが活発に行われています。身の回りに大手企業の傘下に入った企業や、大手企業に出資してもらった企業も多く、経営者から直接M&Aの話を聞けたのは幸運でした。
また、弊社は海外の企業から高く評価されることも多かったので、海外のM&A専門会社にも話を聞きました。ただ、クロスボーダーM&Aでは、海外の法律をもとに契約を締結するため、なんらかの問題が発生した場合に対応が困難になるため、断念しました。
M&A経験のない私にとって、相手を探すこと以上に苦労したのが、M&A仲介会社選びです。一部では「着手金を支払ったのに買手を紹介されない、買手リストが少ない」といったトラブルも発生しているため、慎重にならざるを得ませんでした。そんなときに出会ったのが「事業承継総合センター」です。リクルートが手がける事業承継支援サービスという安心感もさることながら、M&A仲介会社と契約を結んだあとも定期的にフォローしてくれる心強さがありました。M&A仲介会社に支払う手数料のことやM&Aプロセスのことなど、直接M&A仲介会社に聞きにくいことも、事業承継総合センターが親身に相談にのってくれて安心しました。中立的な立場からアドバイスをもらえるので、成約に至るまで納得のいく選択ができたと思います。M&A仲介会社とは別の専門家から「セカンドオピニオン」をもらえるのは事業承継総合センターを活用する最大のメリットではないでしょうか。
事業承継総合センターからは、M&A仲介会社を2〜3社紹介していただきましたが、仲介会社を選ぶ上で重視したのは担当者との相性です。M&Aは一生に一度の大きな取引。信頼できる担当者かどうか、対応の早さや柔軟性の観点から確かめました。担当者の対応が早ければ、限られた時間でも良い案件に出会う可能性も高まりますし、それだけチャンスも増えます。また、自社で譲受け企業を見つけた場合の手数料の扱いなど、臨機応変に対応できるかも重要なポイント。実際、M&A仲介会社経由で会った企業は2社で、残りの企業は自分たちのネットワーク経由です。M&A仲介会社を選ぶ場合は、こうしたポイントを事前に確認しておくと良いでしょう。
譲受け企業として選んだのは、マーケティング視点でブランディングを中心に事業を支援する株式会社エードット(以下、エードット)。エードットの営業力やマーケティング力と、弊社のクリエイティブをかけ合わせることで得られるシナジー効果を期待してM&Aを決断しましたが、決してそれだけではありません。エードットを選んだ一番大きな理由はカルチャー(組織文化)が一緒だったことです。カルチャーは曖昧で実態のないもののように捉えられますが、仕事の進め方や環境、従業員同士のコミュニケーションの取り方、従業員の福利厚生に企業のカルチャーが現れると思います。例えば、弊社はオフィスでプロダクトのプロトタイプを動かしたり、従業員間で定期的に食事に行ったりする機会も多々ありますが、そういったカルチャーが認められるかどうかは譲受け企業を選ぶ上で重要です。
実際、エードット以外にも名乗りを上げた企業はたくさんあり、中には従業員1000人規模の企業も。しかし、1000人規模の会社に40人で入っていくことが想像できなかったし、新分野への進出や事業転換ができそうになかった。その点、エードットは100人規模の会社ですし、弊社が掲げる「デザインとテクノロジーの力で社会が未来に飛び立つための翼になる。」というミッションを実現するために、営業面やマーケティング面で力になってくれると確信しました。
M&Aを検討する上で意識したのは「従業員が喜ぶM&A」です。弊社のような広告制作会社の持つ資産は何よりも「人」。譲受け企業側から見れば、独自のアルゴリズムやシステムを持っている企業、特許を持っている企業は買収しやすいでしょう。しかし、弊社にはこうした「目に見える」資産はなく、従業員一人ひとりに価値があります。新しいステップに進むためにも、「この企業と一緒になったら従業員が喜ぶどうか」という視点を大切にしました。
弊社は、どちらかというと従業員がステップアップのために入社する会社でした。従業員からしてみれば、売上規模や従業員数も一定で、弊社で働くことに対して限界を感じるケースも多かったのかもしれません。ところが、エードットと一緒になったことで従業員数が150人になり、自分自身もさらに成長できる、会社としてできることも増えるという手応えを感じる従業員も多かったように思います。M&Aを行ったことで、従業員たちに新しい夢を持たせてやれたことが最大の収穫でした。
M&Aは、結婚に例えられることがあります。結婚である以上、自社だけでなく相手にもメリットをもたらし、同じ夢を描く必要があります。M&Aでは、譲渡企業を「売手」、譲受け企業を「買手」と表現しますが、その関係性は上下関係であってはいけません。双方にメリットがあり、双方が同じ夢を描けるM&Aでなければ成功とは言えません。自分たちにないものを相手が持っていて、相手にないものを自分たちが持っている、その思いが合致してこそシナジー効果が得られます。譲受け企業を選ぶ上では、同じ夢を描けるかどうかで見極めてほしいと思います。
ご相談・着手金は無料です
第三者承継のお手伝いをいたします。