IT・ソフトウェア企業におけるM&Aの動向は?メリットや事例も解説!
はじめに
スタートアップ企業やベンチャー企業はもちろんのこと、誰もが知るような大企業もM&Aで規模の拡大や事業の効率化を図っている、IT・ソフトウェア業界。この業界では、なぜこれほどM&Aが活発なのでしょうか。IT・ソフトウェア企業をはじめ、さまざまな企業のM&Aのサポートを行っている株式会社ストライクのシニアアドバイザー、永岡清秀さんにうかがいました。
目次
1.IT・ソフトウェア企業の動向。M&Aが増えている理由は?
M&Aが増えてきているIT・ソフトウェア業界。その背景には下記のような事情があります。
(1)IT・ソフトウェア企業の活躍の場が広がっている
現在、IT・ソフトウェア業界では次々と新しい技術や仕事が生まれています。一昔前は業務システム開発や機械・機器への組み込み開発などが業務の主流でしたが、「AI」や「IoT」などが広く活用されるようになった現在では技術者たちの活躍の場が広がっています。
(2)特に増えているのは「人材不足解消のためのM&A」
今や多くの業界で人材不足が叫ばれていますが、エンジニアの数が足りないIT・ソフトウェア業界はどこにもまして深刻です。最先端の技術を持つエンジニアの雇用となるとさらにハードルは上がり、多くの企業が採用に苦戦しています。
IT・ソフトウェア業界の中に仕事はあるのに、人材がいないために受注ができない−−。そのような企業が出てきており、その解決のためにM&Aが使われることがあります。
(3)M&Aによって成長を早めたいと考える企業も
IT・ソフトウェア業界は、スタートアップやベンチャー企業が数多く活躍している業界です。これらの企業は以前IPOのみを目指すことが多かったのですが、2020年現在ではM&Aをすることで成長スピードを早めることを目指す企業が少なくありません。
またM&Aでの会社売却を目的として起業している企業もあります。このため、他の業界に比べてIT・ソフトウェア業界ではM&Aが増えているのです。
2. IT・ソフトウェア企業のM&Aにおける、買い手・売り手側のメリット
IT・ソフトウェア企業がM&Aを行うメリットにはどのようなものがあるのでしょう。買い手と売り手それぞれの観点から見てみましょう。
(1)買い手の場合:優秀な人材の採用と、サービスなどの拡大を図れる
買い手の第一のメリットはなんといっても「人材不足を解消できる」こと。M&Aによってエンジニアが多数在籍する企業を取り込むことで、経験豊富な人材を一括で採用することができます。
人材獲得を目的にM&Aを行う企業の特徴は、「買収先の人材の質を重視する」こと。通常のM&Aでは、買い手は売り手の業績や資産、商圏に着目することが多いですが、将来を支える人材を求めている企業はこの点が異なります。
また、もう一つのメリットは「顧客のネットワークや売り手が持つサービスを手に入れられる」こと。とくに売り手が持つサービスを既存のサービスにクロスセルすることによって得られる利益は、新しい事業の展開を考える企業にとって魅力的です。
(2)売り手の場合:事業承継ができ、自社のサービスを拡大するチャンスも
売り手にとっての第一のメリットは、「事業承継が図れる」ことです。意外に思われるかもしれませんが、IT・ソフトウェア企業の中には創業者がすでに高齢化してきている企業が少なくありません。他の業界と同様に後継者探しに悩んでいるケースがあります。そのような企業はM&Aをすることによって事業を存続でき、従業員の雇用を守ることができます。
また経営が不安定になりがちなベンチャー企業の場合は、より安定した企業の傘下に入ることで従業員が安心感し、資金について過大な心配をすることなく事業運営ができるようになるメリットがあります。
さらに、ベンチャー企業の中には優れたサービスを保有していても営業ができる人材がいない、というケースがよく見られます。そのため営業に強い企業とM&Aをすることで、自分たちで作ったサービスをより迅速に広めていくことができるのです。
3.IT・ソフトウェア企業がM&Aを失敗しないために
IT・ソフトウェア企業がM&Aをするときにはどのような点に気をつけるといいのでしょう。
(1)買い手の場合:優秀な人材を定着させる環境づくりを
IT・ソフトウェア業界の中には長時間労働が常態化しており、未払い残業代が溜まっているケースがあります。ときに高額な支払いになることがあるため、必ずデューデリジェンスの段階でよく確認しておくようにしましょう。
また、買収をした後にも注意が必要です。もともとIT・ソフトウェア業界は人材の流動性が激しい世界。従業員が転職してしまうことは珍しくありません。したがって人材獲得のためにM&Aをしても買収先の従業員が企業風土などに馴染めないとすぐに辞めてしまうことがあります。
優秀な人材をそのまま雇用するためには、福利厚生を充実させるだけでなく企業文化の違いにも目を向けることが大切です。新しい環境に慣れない従業員がいる場合は面談などで話し合いを重ね、意思疎通を図っていく必要があるでしょう。
実際に大手ソフトウェア企業の中には、買収先の従業員をM&A後に積極的に要職に引き揚げたことで士気を上げ、人材の定着に成功した例があります。
(2)売り手の場合:譲渡先を探すときは条件を比較しよう
ITベンチャー企業の経営者はメガベンチャーや大手企業の担当者と知り合ったときに、1対1の関係でM&Aを進めてしまうことがあります。会って直接話せる機会を設けられると、つい目の前のチャンスに飛びつきたくなりますがこれには要注意です。
1社とのやりとりでは、自社の相場はわかりません。複数の売却候補先に接触し、条件を比較してみることをおすすめします。
売却に当たっては、譲渡金額や相手先のブランド力など優先すべき事項をよく確認しましょう。また、メガベンチャーや大手企業ほど高額で買収するとは一概には言えず、IT化が遅れている中堅中小企業の方が価値を見出してくれることもあるかもしれません。
4.IT業界におけるM&Aの成功事例
M&Aによって事業拡大に成功した例として、以下のようなものがあります。
買い手は印刷会社、売り手はWebデザインのIT企業でした。印刷会社は近年クライアントから「Webのデザインも請け負ってほしい」と要望を出されていましたが、社内にそれができる人材はおらず、採用もできませんでした。そこでM&Aによって、Webデザインができる企業を取り入れることにしたのです。
すでにチームワークができている既存の集団を入れたため、M&A直後からスムーズな事業連携ができ、印刷会社はそれまで受注できなかった仕事にも手を広げられるようになり、事業の拡大に成功したのです。
人材不足を中心に、多角的な経営課題を抱えるIT・ソフトウェア企業ですが、それぞれの強みを生かすM&Aをすれば、それらをスピーディに解決することができます。大切なのは「企業の魅力を最大限に引き出せる相手を選ぶ」こと。必ず比較検討をしたうえでM&Aを進めましょう。
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株式会社ストライク 企業情報部 シニアアドバイザー 永岡清秀(ながおか・きよひで)
株式会社ストライク企業情報部シニアアドバイザー。弁理士。ベンチャーキャピタルにて国内外のベンチャー投資業務に従事した後、2015年に株式会社ストライクに入社。ベンチャー企業を中心にM&Aのサポートに携わる。
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