リクルートが提供するM&A・事業承継総合センターロゴ

後継者探しのご相談はこちら フリーコール 0120-15-7207 受付時間:平日10:00〜17:30 無料相談

不動産業界の動向とM&A需要 M&Aによる事業承継のメリットと注意点も詳しく解説

2020/05/21
更新日:2024/05/13

はじめに

景気の影響を大きく受けやすい不動産業界。不動産会社を経営するオーナーの中には、「景気が良い今のうちに会社を手放したい」という方や、「会社を売却して現金を手に入れたい」と考える方も多いのではないでしょうか。会社を適正なタイミングと価格で売却するには、不動産業界の動向とM&Aのニーズ・メリット・注意点を把握しておかなければなりません。

不動産業界のM&Aに詳しく、不動産会社のM&Aを数多く手掛けてきた実績を持つ株式会社M&Aパートナーズの松尾直樹さんに不動産業界の現状とM&A需要を中心に詳しく解説していただきました。


1.不動産業界の動向

景気動向イメージ
日々刻々と動向が変化する不動産業界。一般消費財とは異なり、不動産の売買契約は多額の金銭で取引されるだけに「売りどき」「買いどき」見極めが難しいと言われています。大規模小売店の進出や近隣の開発計画などなど土地周辺の状況変化によって不動産の価値は刻々と推移しています。それだけにまずは、会社を適切なタイミング・価格で売却するためには、不動産業界の現状を知ることが重要です。

(1)不動産業界は波がある業界

2000年代後半に日本の不動産業界は、業界全体の景気動向に関係なく倒産が相次ぎました。これは、業界全体がリーマンショックをきっかけに大きく落ち込んだのが原因です。
不動産業界自体の現時点での景気は悪くなくとも、リーマンショックのような経済全体に大規模なマイナス要因が発生すると、先行きの不安感が広がり「買い控え」減少が蔓延しこれが不動産業界の景気後退に繋がるのです。
2012年以降、景気回復に伴う建築需要や金融緩和などにより成長に転じていますが、今後は、新型コロナウイルス感染症の影響も出ることが想定され、中長期スパンでは、新規建設物件が減少し市場規模の拡大が止まっていることから、業界全体が縮小傾向にあるといえます。だたし、コロナ禍が収束し延期されていた東京オリンピックが開催され経済全体が上向きに転じることにより、不動産業界にも明るい兆しが見えてくることも十分に予測されます。

(2)不動産業者数は右肩上がりに増えている

2020年10月に国土交通省および各自治体が公表した調査によれば、2020年3月末現在で全国の宅地建物取引士登録者数は、125,638業者で6年連続の増加となっています。不動産業界の景気は低調なのに、業者数が増えている理由として、不動産を探す媒体が紙からネット検索に移行していることが挙げられます。チラシなどを印刷することなく不動産情報をネットに掲載できるようになったので、社員数名という規模の会社でも運営可能な時代となったことから、小規模の不動産会社が急増したというのが実態です。

このように、不動産業界は、業者数が増えたことで業界内の競争は以前よりも激しくなり、今では淘汰が多い業界とになったといえるでしょう。業者乱立により、より消費者ニーズに寄り添いきめ細かなサービスが提供できる良心的な業者が規模の大小に関わらず生き残る時代にとなると思われます。

(3)賃貸は資産価値が上がっている

不動産業界は大きく分けて、賃貸・仲介・管理・売買の4つの業態がありますが、賃貸・管理は、ストックビジネスという事もあり比較的堅調に推移しております。家賃収入を目的とする賃貸・管理分野は、不動産業界の中でも比較的安定性が高いといわれています。人が生活する上で住居は欠かせないものであり、いくらデフレ不況の時代でも家賃が半減することはないからです。そして、賃貸に関しては、都市部を中心に家賃も上昇傾向であり、資産価値が上がっている物件も多くあるのです。

低調傾向にあるのが、売買・仲介です。経済産業省が公表したデータによれば、2019年後半から売買・仲介業の業績が低下してきていることが分かります。しかし、これは全体として見た傾向という意味なので、知名度と信用度が高い業者は、ネット媒体などをうまく活用しながら堅調さを維持しており、儲かっている会社は儲かっています。売買・仲介の分野では、儲かっている会社と、ネット媒体の活用に遅れをとっている儲かっていない会社との二極化がより鮮明になってきたといえるでしょう。

現状を鑑みると、不動産業界の今後は、ネット媒体をうまく活用し、顧客ニーズを的確に把握した上で効率的な宣伝戦略をとった業者が生き残る時代になるといえるでしょう。

2.不動産業界におけるM&Aの動向

M&Aイメージ
次に不動産業界におけるM&Aの動向や、M&Aの需要をお話します。不動産業界のM&A件数は、2008年のリーマンショック前の半分程度までは回復していますが、他の業界に比べると回復は出遅れています。それは、不動産物件の取引が、景気が良くなればすぐに市場が活性化する一般消費財の取引とは異なり、高額な金銭が必要だからです。つまり貯えているものがあればすぐに高額な取引が可能ですが、貯えがないところに高額な取引は実現しないということです。景気が良くなり、ある程度の貯えをもつことができて初めて市場が活性化し出すというわけです。

(1)利益確定のために一定数のM&A需要はある

先ほどもお話したように、不動産業界は水物で淘汰されることの多い業界です。儲かっている会社の社長の中には「M&Aで会社を売却して利益確定をしたい、良いタイミングで売りたい」と考えている方は多くいます。また、業界全体としては縮小傾向にある不動産業界ですが、不動産業者の数は右肩上がりに増えています。そのような中で、厳しい競争に競り勝ち、または、生き残りをかけてM&Aによるサービスの拡張や事業エリアの拡大に活路を見出す会社もあります。そのため、不動産業界のM&A需要は底堅く、一定数あります。

(2)不動産M&Aの件数はどのように推移しているのか

日本国内のM&A件数は、2019年には初めて4,000件を突破しました。これに比例して不動産M&Aも順調な伸びを見せていましたが、2020年初頭からのコロナ禍により、現在は増加に歯止めがかかっている状況です。
しかしながら、現在歯止めがかかっている状況を打破する企業が出てきました。それは数年前から活性化してきたITを導入した「不動産テック」を活用して不動産業に新規参入する企業が業界に新風を巻き起こしているからなのです。昔から閉鎖的との風評が多かった不動産業ですが、コロナ禍が収束さえすれば、不動産テックによってM&Aの件数もまた増加に転じると予想されます。

(3)不動産M&Aに関する展望

特に中小規模の不動産会社は、他の業種と同様に経営者の高齢化と後継者不足という深刻な問題を抱えています。そのような企業のなかには、事業は継続したいが後継者不在で廃業を余儀なくされるというケースも決して少なくありません。
かつて不動産事業は、顧客獲得のために多額の広告宣伝費が必要とされていました。しかし、最近では今までにない新しいアプローチとしてネット媒体を活用した「不動産テック」のノウハウを有する企業が不動産業界への参入を図っています。これと同時に業界再編も進むと予想されることから、今後も不動産M&Aはさらに活発に行われるとみてよいでしょう。

(4)業態によってM&A需要が異なる

不動産業界のM&Aと一口に言っても、業態によってM&A需要は異なります。賃貸・仲介・管理・売買の4つの業態のうち、M&Aの需要が最も大きいのは管理で、その次に賃貸、仲介です。土地・建物などの不動産物件は、売買契約が成立・不成立に関わらず、物件の管理の管理業務が必須なので、必然的にM&Aでの需要も大きくなるという図式です。一方で、売買の領域でM&Aはあまり行われません。
イメージとしては、賃貸や仲介に関しては交通の便や周辺環境などの立地条件次第ではM&Aで売却できる可能性があり、管理に関してはM&Aの需要が高いので比較的、良い条件で売却出来る事が多いです。売買においては、特に不動産のリノベーション等の加工を伴わない不動産売買のM&Aの需要はほとんどないと思っていた方が良いでしょう。
売買においてM&Aが行われにくいのは、組織になっていない会社が多いからです。たとえば、不動産の売買を中心に行っているような会社の中には、社長のネットワークで仕入れをしており、不動産仕入の目利きは、社長のみで行っているケースが多々あります。こういった会社の場合、買収しても元の社長がいなくなってしまえば仕入れができませんし売上は立ちません。そのため、売買においてはM&Aは起こりにくいのです。

(5)売手企業がM&Aを成功させるためのポイント

他業種と同様に不動産業界においても、売手企業がとしてM&Aで買手企業を探す場合として買手がつきやすい企業と、探してもなかなか見つからない(買手が決まらない)企業があります。
買手企業は、不動産M&Aで買収する相手先企業に、どのような企業を望んでいるのでしょうか?以下にそのポイントを挙げてみましょう。

①どういう会社が買手の需要があるか

買手側企業がM&Aしたいと思うような理想的売手企業の条件は次のような項目に集約されます。
・地域密着型企業であるか
・周辺環境がよく立地条件の良い不動産物件を持っているか
・独自の営業体制が確立されているか
・買手側企業が有していないノウハウを持っているか
・従業員の能力が一定水準以上あるか
・経営陣と従業員との関係性
・取引先との良好な関係
上記の項目で分かるように、不動産M&Aでは、買手企業がM&Aによって事業拡大もしくは新事業や販路の拡大を意図して実行されることが多い傾向があります。さらに、自社ではまだ弱い分野の事業において、すでにノウハウを持つ企業を傘下に収めて弱点を克服し業績を向上させる狙いもあります。これらの目的に叶う特性を有する企業であれば、M&Aの売手企業として買手側には魅力的に映ることでしょう。

②買手需要のある会社にするために売手企業の経営者は何をすべきか

M&Aを単純に「会社の売り買い」ではなく不動産業界の業界再編と事業の再構築というプラス面で考えると「買手需要のある企業はどのような会社であるべきか」という問いに対する答えが見えてきます。

地域に根差し、他にはない独自の営業スキルを有してさえあれば、他に弱点はあっても買手がつきやすい売手企業といえるでしょう。

M&Aを望む売手企業の経営者がやるべきことは「買手企業にとって自社が魅力ある会社かどうか」をまず検証することが第一歩です。そのためには、不動産M&Aでの実績が豊富なM&A仲介業者などの意見やアドバイスを参考にして、自社のよいところを積極的にアピールすることが大切です。「自社を買収することで得られるメリット」が明確になりさえすれば、M&Aは意外にスムーズに成約できることでしょう。

3.不動産業界のM&A事例

近年話題となった不動産業界のM&A案件の実例を紹介し、その内容について解説しましょう。

(1)ナックがエースホームを子会社化

東証一部上場企業の株式会社ナックが、2020年2月にヤマダホームズが保有していた中堅工務店、エースホーム株式会社の株式を86%取得しエースホームを子会社化しました。

今回のM&Aによって、全国に約7,000社の会員会社を有する強みを生かし、今後も地方の地場工務店を積極的に傘下に収め、大規模な建築コンサルティング事業を展開するとみられています。

(2)長谷工コーポレーションによる総合地所の買収

2015年に株式会社長谷工コーポレーションが株式会社総合地所を子会社化しました。長谷工コーポレーションは不動産分譲・ソリューション・マンション管理などを手広く展開する大手不動産企業であり、不動産デベロッパーとしての実績を持つ総合地所をM&Aにて傘下に置くことで、主に顧客に対する同社の経験値を今後の事業に生かすという目論見があったと予想されます。

(3)APAMANがプレストサービスをM&Aにて新事業展開

アパマングループの総合不動産サービス企業であるAPAMAN株式会社は、2018年5月に株式会社プレストサービスからの「株式譲渡」を受けて同社を完全子会社化にしました。福岡を中心とした賃貸・マンション管理事業で実績のあるプレストサービスだけに、全国規模の総合不動産事業を展開するアパマングループとしては、地域の不動産管理業務に加えて民泊やシェアサービスなどの新分野もさらに発展させる事業計画に基づくM&Aと判断できます。
以上のように、不動産M&Aでは売手企業の持つノウハウを自社に組み込むことで事業の拡大を図るという目的で株式譲渡という形式をとり子会社化する手法がよく用いられています。
なお、不動産M&Aでは、不動産部門を本体の事業から切り離す目的で実行される「MBO方式」のM&Aもよくみられます。MBO方式による不動産M&Aは、非上場企業のオーナーが相続税負担を軽減する目的で行われることが多いようです。

4.不動産業界におけるM&Aの買手の注意点

契約合意のイメージ

M&A・事業承継を検討している方へ

当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。


買手に注意点やチェックしなければならないポイントが多いのが不動産業界のM&Aの特徴です。ここではM&Aにおける買手側が確認すべきポイントをお伝えします。

(1)社長の事業依存度

売手企業のオーナー社長の事業依存度を確認しておくことは最重要ポイントです。

社長が独自のルートで仕入れていたり、社長自身がトップセールスマンで売上の大半を稼ぎ出していていたりする会社も珍しくありません。すなわち、社長自身が営業業務の主導権を握っており、取引先との信頼関係なども社長個人のパーソナリティーに依存し過ぎているため、社長がいなくなった場合に会社の運営が困難に陥るケースがあるのです。買収後に現在の社長が退任しても事業が継続できるかどうか、どの程度収益が下がる可能性があるのかを、緻密にシミュレーションしておく必要があります。

(2)不動産の有資格者がどれだけいるか

不動産鑑定士や土地家屋調査士、宅地建物取引士、ビル経営管理士など、不動産に関わる資格は数多くあります。有資格者が社内にどれだけ在籍しているかは必ず確認してください。有資格者が多ければ手がけることができる領域が広がります。特に宅地建物取引士は事業所への設置が法律で義務付けられているので、できる限り多く確保する必要があります。

また、不動産売買の分野では担当者の力量が肝になります。市場状況や売主の意向を踏まえて不動産の売却額を設定する必要があるため、経験豊富で実績のある担当者がいると売上に直結します。担当者の経験や実績を確認しておきましょう。

(3)特定地域に強みがあるか

中小企業の不動産の強みは、特定の地域に独自のネットワークや強いコネクションを持っていることが挙げられます。不動産仕入れのネットワークやエリアの地域性、地域の人口推移も確認したいポイントです。

地価の上昇予想を踏まえ、不動産需要が高い地域に強みを持つ不動産会社をM&Aで買収することができれば、短期間のうちに売上を伴った事業エリアの拡大が可能です。

5.まとめ

M&Aは好況時に増え、不況時に減ると言われています。実際に、全産業のM&A成立件数は、2006年から2011年で半減し、2011年から2018年で3倍に増えています。扱う商品が高額なだけに、景気の動向が売り上げに直結しやすい不動産業界でも同様で、2009年から2011年の間にM&A成立件数は半減しました。現在は、リーマンショック前の半数程度まで回復しています。

業界全体の規模は縮小傾向にある不動産業界ですが、不動産業者数は右肩上がりに増え、全産業に対する不動産業者の割合は、11%を超えています。つまり、少ないパイを数多くの業者が奪い合う、かつてないほど熾烈な競争にさらされているわけです。

このような中、利益確定をするため、あるいは買収によって事業を拡大するため、今後も不動産M&Aに対する需要は一定数あり続けると考えられます。
M&Aで会社を売却したいオーナーは、売りに出す時の業界動向や市況、買手側の欲しがるタイミングを見極めることが重要です。1つ1つの商品が高額ですので、タイミングを間違えると何億円も損をしてしまうことも十分考えられます。適切なタイミングで売りに出し、会社の強みを買手側に的確に伝えるためにも、不動産業界の動向やニーズを常にチェックしておく必要があります。

話者紹介

松尾直樹さん
株式会社M&Aベストパートナーズ
代表取締役副社長 松尾直樹(まつお なおき)

大学在学時、箱根駅伝に2度出場。卒業後、大手証券会社にて富裕層向けのリテール営業を経験した後、大手M&A仲介会社のM&Aキャピタルパートナーズに転職。主に、不動産・建設業界を担当して、事業承継及びM&Aアドバイザリー業務に従事。不動産仲介、管理、ゼネコン、住宅メーカー、設備工事会社等における成約実績を多数有する。2018年、株式会社M&Aベストパートナーズに参画。

ご相談・着手金は無料です

後継者探し事業承継総合センターご相談ください!

第三者承継のお手伝いをいたします

事業承継総合センターの特徴

  • 1万社以上の中から買手企業を比較検討可能
  • M&A品質の担保
  • 着手金なし成果報酬

第三者承継のお手伝いをいたします

まずは相談する無料
お電話でのご相談 0120-15-7207 (FAX:03-5539-3514)
受付時間:平日10:00~17:30
お問い合わせにあたり、プライバシーポリシーに同意したとみなされます。

その他にもご相談ください

M&Aの譲渡価格はどう決まる? 無料ダウンロード