成長が期待される化粧品会社のM&Aの動向は?企業価値の算出方法も紹介!
はじめに
化粧品業界は、他業種と比べて国内外でのM&Aが活発に行われています。国内では消費者ニーズが多様化しており、競合他社の動向も激しく、M&Aによる企業の買収や合併が多いようです。一方、アウトバウンドやインバウンド需要を期待し、海外企業へのM&Aも積極的に実施されています。ここでは化粧品業界におけるM&Aの動向と目的、M&A時の企業価値の算出方法、成功事例などについて、株式会社すばるのマネージャーで、株式会社保険のすばる代表取締役社長も務める尾関一憲さんに解説していただきました。
目次
1.海外企業からオファーも!?化粧品業界の現状と動向
化粧品業界の景気動向は堅調に推移しています。資生堂やコーセーといった「メイドインジャパン・ブランド」に人気があり、アジア観光客による爆買いが行われているからです。海外企業が、国内企業と手を組みたいという声も多く聞かれています。
一方で、いま流動化が激しいのは、それらの流通を担うEC企業のほうでしょう。Amazonや楽天といったプラットフォーマーの出店手数料が上がるなかで、必ずしも出店社は売り上げを伸ばせておらず、Webサイトの譲渡や買収が行われています。
また異業種からの参入も増えています。逆にECで強みのある企業が化粧品業界に参入し、OEM(受託製造)製品を取り込んでしまうこともあります。化粧品の需要が高まるなかで、生産能力を向上するには、どうしても上流のメーカーが欲しいという事情があるのです。
2.化粧品業界におけるM&Aの動向とは
そんな化粧品業界では、いまM&Aが盛んに行われています。業界内の動きを、以下の4つに分類してみていきましょう。
(1)国内企業による海外企業のM&A
以前までは、国内企業による海外企業のM&Aというと、欧米企業が中心でした。しかし、メイドインジャパンの人気の高まりにより、最近は中国や東南アジアなどの買収や提携が目立っています。
(2)国内外での有名企業によるM&A
大手の化粧品メーカーによるM&Aの場合、そのほとんどがブランド買いです。国内企業は、海外顧客を狙って、その国の販路を拡大する目的でM&Aを実施しています。また海外企業では、日本の生産設備を自社で持ち、現地で製品を売りたいという思惑があります。
(3)研究施設や製造工場が目的のM&A
より高機能で安全な化粧品を手に入れるために、研究施設や製造工場を他社に求めるケースです。前述のようにOEM企業に対しM&Aを行い、自社の子会社にすることもあります。
(4)ベンチャーを対象としたM&A
とがった技術を持つベンチャーのノウハウを、自社ブランドに取り込みたい場合に実施されるM&Aです。販売チャネルの拡大や、デジタルマーケティングへの対応などを目的に、影響力を持つWebメディアを有するベンチャーを買収することもあります。
3.「安定した経営」や「海外進出」…。化粧品会社がM&Aを行う目的
M&Aを行う主な目的は、売手と買手によって、以下のように大別できるでしょう。
(売手側1)譲渡・売却益を獲得できる
他社に事業を譲渡・売却し、対価を得る目的でM&Aが行われます。撤退だと従業員の雇用先の確保や、処理コストが発生するため、資産がほとんど残らないこともあります。しかし、M&Aならば多少の負債があっても、それなりの売却益を手元に残せるでしょう。
(売手側2)後継者問題を解決できる
老舗ブランドでも、中小規模の化粧品メーカーでは、後継者不足に悩んでいます。別事業から化粧品へ転換したOEM企業などは、M&Aで事業承継を進めるケースもあります。
(売手側3)安定した経営を実現したい
トレンドが激しく変化する化粧品業界で生き残るために、あえて中小企業が大手企業の傘下に入るケースです。資金やブランド、販路などを確保して、安定経営が可能になります。
(買手側1)施設や設備への投資負担の影響
競争激化で利益が低下し、開発・製造の施設や設備への持続的な投資が厳しい場合に、すでに体制が整備された会社や工場を買収して、投資の負担を軽くする目的で実施されます。異業種からの新規参入を目的とし、戦略的にM&Aが行われることもあります。
(買手側2)海外進出や展開の強化
化粧品業界は、インバウンドだけでなく、アウトバウンドも期待されています。国外での製造や販売を展開するために、海外企業を傘下に入れるM&Aが積極的に行われています。
4.化粧品会社の企業価値を算出する3つの方法
M&Aを実施する際の企業価値評価法には、以下の3つがあります。どれか1つの方法ではなく、複数の評価法を折衷させて企業価値を算出し、総合的に判断することが重要です。
(1)コストアプローチ
企業の純資産をベースに企業価値を評価する最も簡単で明確な方法です。帳簿上の数字をもとに算出するため客観性があります。
(2)マーケットアプローチ
株式市場の株価をベースに、類似の業種や会社を比べて、企業価値を評価する方法です。市場への期待や予想によって、バイアスがかかって算出されることがあります。
(2)インカムアプローチ
これから期待される収益に対し、予想リスクなどを割り引いて企業価値を算出する方法です。将来のキャッシュフローを現在価値に割り引く「DCF法」と、平均収益を資本還元率で割って求める「収益還元法」があります。
5.流通の拡大、製造力の強化も。化粧品会社のM&A成功事例
M&A・事業承継を検討している方へ
当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。
化粧品業界では、市場の環境変化に合わせて、製品ラインナップ拡充や販路拡大、ブランド力の強化、技術力獲得のために、さまざまM&Aが行われています。以下3つのパターンから、代表的な事例を紹介します。
(1)国内企業同士のM&A
化粧品や下着を販売するマルコによる、健康コーポレーションとの資本業務提携や、化粧品・健康食品通販ナックの子会社が、化粧品卸業のインフィニティービューティーの株式を譲り受けた例などがあります。ナックの事例では、化粧品の流通力を高めて、美容事業全体を強化することができました。
(2)国内企業による海外企業へのM&A
資生堂がインドネシアのPT Sinar Mas Tunggal社と合弁会社を設立し、成長市場へ参入したり、大手商社の住友商事がフランスの化粧品素材卸売のSACI-CFPAを子会社化したりした事例などがあります。
日本コルマーが中国の高絲化粧品有限公司(コーセーの中国生産子会社)を買収した例では、海外で生産能力を増強して、コーセーの中国販売会社である高絲化粧品銷售有限公司を通じて、中国市場への流通に成功しました。
(3)異業種によるM&A
企業PRや販促を行うトレンダーズが、化粧品メーカーのH&BCを売却・譲渡した例や、ミドリムシを活用した健康食品や化粧品などで有名なユーグレナが、同社のOEMメーカーのエポラを完全子会社化した例などが挙げられます。
ユーグレナは、エポラの買収によって製造力を強化し、エポラもユーグレナのブランド力により販売力を伸ばしました。
6.化粧品会社がM&Aを失敗させないために
M&Aを失敗させないために、最後に重要なポイントを挙げます。
(1)自社の強みを知り、目的や希望、条件は明確に
買手側が買収後のビジョンを明確に描けるように、事前に自社の強みなどは把握しましょう。
また、相手企業との交渉や、専門家への相談をスムーズに行うためには、しっかりとM&Aの目的を明確にして、自社の希望や絶対条件を決めておく必要があります。特に異業種からのM&Aでは、さまざまな交渉方法や条件を提示される可能性があります。希望や条件が通るように、粘り強い交渉が求められます。
(2)選定を慎重に行い、準備を計画的に行う
M&Aは、規模によらず時間と手間がかかります。「売却益が十分に得られない」「買収後にシナジー効果を発揮できない」など、売手・買手の双方でM&Aがうまくいかないこともあります。そのような事態を避けるために、譲渡相手や買収相手の選定を慎重に行ったうえで、計画的に準備を進めましょう。
現在、化粧品市場は堅調に推移しており、これからも成長が期待される分野です。自社ブランドを保有する大手化粧品メーカーがOEM事業を展開したり、異業種からの参入も増加傾向にあったりと、業界の競争は激化していくものと予想されます。M&Aはさかんに行われていますが、特に化粧品業界に不慣れな他業種からの参入の場合は、専門の仲介業者やサービスを活用してみるのも一つの手でしょう。
話者紹介
株式会社 すばる マネージャー/牧田公認会計士事務所 マネージャー/株式会社保険のすばる 代表取締役社長
尾関一憲(おぜき かずのり)
外資系大手保険会社にて、個人保険・法人保険のコンサルティング業務に従事。個人および法人のファイナンシャルプランニングを通して、相続対策や事業承継対策の保険設計および提案に携わる。 2018年、株式会社すばるに入社。2019年、お客様のあらゆるニーズやリスクに対して最適な保険を提案すべく、保険のすばるを設立し、現在に至る。
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