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ネイル・まつエクサロン業界のM&Aの現状とは?M&Aを行う際のポイントを紹介

2020/05/27
更新日:2024/05/13

はじめに

ネイルサロンやまつエクサロンは、大きな駅前に必ずといっていいほど店舗を見かけるようになりました。しかしながら、ネイルサロンやまつエクサロンは入れ替わりも激しく、次に訪れたら違う店舗になっていたということも珍しくありません。

実際のところ、ネイル・まつエクサロン業界はどのような現状にあるのでしょうか。そこで今回は、ネイル・まつエクサロン業界のM&Aに詳しいライトインターナショナルLLCの代表である田中圭吾さんに詳しくお話を伺いました。


1.ネイルサロンとは

ネイルサロンとは、爪のお手入れサービスや付け爪、ジェルネイルなどの施術サービスを受けられるお店のことをいいます。

1970年代に、ネイル文化がアメリカから入ってきて、1990年代に本格的に流行し始めました。ネイルが流行するにつれて「ネイリスト」という職業が注目され始め、そのことがネイル市場をさらに拡大させていきました。

ネイリストは美容師のような国家資格は必要ありませんが、民間のネイリスト技能検定試験があり、ネイリストとして働く人々は、このような技能検定試験を受けながら技術を磨く必要があります。

ネイルサロンは、広い場所や高価な機器も必要なく、開業資金が少なくてすむため、個人でサロンを開業している人も少なくありません。美容室などが併設してサービスを行っていたり、まつエクサロンが一緒になっていたりと、さまざまなパターンがあります。開業にあたって必要な届出も一切なく、その参入のしやすさから異業種からの新規参入が多いのが特徴です。

2.まつエクサロンとは

まつエクサロンの「まつエク」とは「まつげエクステンション」の略語で、「エクステ」ともいわれます。まつエクは、すでに生えているまつげに人口毛を専用の接着剤で付ける施術サービスのことです。日本では2007年ごろから少しずつ流行し始め、今では日本全国に専門店があります。

まつエクの施術サービスを行う人を「アイリスト」と呼び、美容師としての国家資格が必要です。そのため、美容室のなかでまつエクを施術する店舗も少なくありません。顧客の年齢層は10〜70代までと幅広く、髪を切るのと同じような感覚で気軽に利用されています。

まつエクはネイルとは異なり、施術するには国家資格が必要となるため、アイリストは人手不足の状況が続いています。専門学校を卒業した美容師の取り合いは珍しくなく、専門学校からどれくらいの人材を集められるかが、この業界においては非常に重要です。

3.ネイル・まつエクサロン業界の現状

ネイルをしている人

(1)拡大するネイル・まつエクサロン業界

ネイル・まつエクサロン業界の市場は、拡大し続けています。1店舗経営の個人事業主が多い業界ですが、多店舗展開をしているチェーン店が店舗数を増やし続けているのがその要因でしょう。

この業界では人手不足が続いており、特に個人事業主の場合は必要な人材を確保することが難しくなっています。その点、多店舗展開しているチェーン店は、必要なところに柔軟に人材を動かすことができるので、ビジネスとしては多店舗展開しているほうが有利な状況です。こういった理由から、大手チェーン店が個人事業主の店舗を買収するケースが増えています。

(2)ネイル・まつエクサロン業界のM&Aの実情

ネイル・まつエクサロンは、どこに店舗を構えるのか、そのランディングが重要です。東京都内であれば、若者に人気のある渋谷や表参道、ブランド力の高い銀座であれば顧客もスタッフも集まりやすいといった特徴があります。

店舗を構えて人を集めるには、駅から近いという条件は必須です。渋谷や新宿などの都会の駅から近い店舗のほうが人は集まりやすいのですが、 保証金や家賃に費用がかかるため、少し離れた郊外のほうが効率良く収益を上げることが可能です。しかしながら、M&Aという観点からすると、やはり人気のある街中の店舗のほうが、買手が付きやすいのが現状です。

ネイル・まつエクサロン業界においては、居抜き物件での売却も盛んです。居抜き物件での売却とは、内装の造作は残したままの状態で、店舗施設の権利のみ売却することをいいます。この売却のほうが、より自分の好きなように経営できるといったメリットがありますが、人材確保から集客までゼロから始めなければなりません。

一方、M&Aでは、会社や事業の所有者が変わるだけで、事業をそのまま引き継いでいくことができます。人材確保のための時間や労力をかける必要がなく、顧客もすでについているため、初期費用を抑えることが可能でしょう。

ネイルサロンもまつエクサロンも主に女性を対象としたビジネスですが、男性の経営者のほうが多いです。また、もともと美容師だったという現場あがりの経営者ではなく、全く別の事業を手がけている経営者が、新規参入するケースは珍しくありません。意外ですが、IT系やマーケティング系の経営者が新規参入するケースが少なくないのです。

この業界はどのようにリピート率を上げるかが重要であり、逆に言えば、リピート率を上げることができればビジネスとして上手くいきます。IT系やマーケティング系であれば、アプリやSNSには詳しく、効率よくリピート率を上げられることが新規参入の一つの要因でしょう。ネットでのM&Aのマッチングアプリでは、異業種からの買手が数多く、今後もこのような流れが続くことが予想されます。

4.ネイル・まつエクサロン業界でのM&Aのメリット

装飾されたネイル

ネイル・まつエクサロン業界のM&Aには、どのようなメリットがあるのかを売手と買手のそれぞれの立場から説明します。

(1)売手側のメリットとは

まずは、売手のメリットから説明していきましょう。

①有力グループの傘下に入ることでブランド力が高まる

サロンの経営が上手くいっていない場合、有力グループの傘下に入ることで、ブランド力を高めることができます。経営権を売却することで自分のスタイルでの経営はできなくなりますが、テレビCMや目立つ大型看板により集客力が高まります。

②後継者問題が解決する

ネイル・まつエクサロンの経営者は比較的若い年齢層の経営者が多いため、年齢を理由としたM&Aは少ないでしょう。どちらかといえば、女性が一人で経営しているサロンにおいて、出産や子育てといった理由で売却したいというケースが目立ちます。

女性経営者には、経営権を譲渡した後、そのままプレイヤーとして現場に残るという人も非常に多いです。これは男性経営者には全くといっていいほどないケースで、女性経営者特有といえるのではないでしょうか。

③スタッフの雇用を維持できる

廃業や居抜きでの売却であれば、スタッフを解雇せざるを得ません。しかしM&Aを行えば、スタッフの雇用はそのまま引き継がれます。

ネイル・まつエクサロン業界は、「人材が財産」であり、経営者とスタッフの距離が近い場合がほとんどです。それまで頑張って働いてくれたスタッフの雇用をできるだけ守ることは、経営者として当然といえます。

④顧客に迷惑をかけなくてすむ

長い間、通ってくれていた顧客もいることでしょう。M&Aを行うことで、このような馴染みの顧客に迷惑をかけずにすみます。

この業界において技術はもちろんですが、スタッフの人柄を気に入りリピートしてくれるケースが多く、この関係をそのまま引き継げることは大きなメリットの一つです。

⑤個人保証や借入金の返済から解放される

個人事業主の場合、事業主本人が借入をしていることがほとんどです。会社の場合であっても、代表者が個人保証をしているケースが多いのではないでしょうか。M&Aで事業や会社を売却すれば、通常であれば借入や保証まで引き継いでもらえます。長い間、借入の返済に悩んでいたのであれば、こういった負担から解放されることは大きなメリットといえます。

⑥新規事業を始めることができる

事業や会社を売却することで、売却益を得ることができます。この業界は優秀な経営者が多く、新規事業へのチャレンジ精神が旺盛です。M&Aによる売却益をもとに、新たなステージで活躍することができるでしょう。

⑦原状回復費用が必要ない

M&Aや居抜きでの売却ではなく、閉店であれば原状回復する必要があります。スケルトン状態に戻すには、数十万円〜100万円ほどの費用がかかります。M&Aで内装や設備をそのまま引き継いでもらえれば、この原状回復費用を削減することが可能です。

(2)買手側のメリットとは

それでは、買手にはどのようなメリットがあるのでしょうか。次に詳しく説明します。

①人材確保できる

上述しましたが、この業界は人手不足であり、ゼロから新しく店舗を作りスタッフを募集しようとしても難しいのが実情です。

ネイルサロンのほうは、開業するのもハードルが低いため、人の流動が高い傾向にあります。一方、美容室やまつエクサロンのスタッフは、M&Aで経営者が変わっても待遇や給与に違いがなければ、継続して働いてくれることがほとんどです。

顧客と良い関係を保っている優秀なスタッフが揃っていれば、会社や事業を引き継いだ後もスムーズに経営していくことが可能です。また、ある程度教育されたスタッフを引き継げることで、スタッフ教育にかける時間と費用を削減できます。

②新たなノウハウを獲得することができる

ネイル・まつエクサロン業界の競争は厳しくなってきていますが、生き残るために最新の技術を取り入れることは必要不可欠です。優れたノウハウを持っている同業者を買収できれば、最新技術や情報、また商品までも手に入れることも可能でしょう。

③初期費用を軽減できる

新店舗を作る場合、通常は初期費用がかなりかかります。とくに新しいエリアでの店舗であれば、市場調査から不動産探し、内装工事、設備購入、スタッフの採用、公告宣伝といったあらゆるプロセスを踏まなければなりません。

居抜き物件の場合も設備投資はかなり抑えられますが、M&Aであれば、人材確保やマーケティングの費用まで軽減できます。ただし、事業や会社を買収する買取費用がかかるので、どちらがより費用を抑えることができるのかを慎重に判断する必要があります。

④新規顧客や継続顧客を獲得することができる

ネイルサロンやまつエクサロンにおけるM&Aでは、買収により多くの新規顧客を獲得するというスタイルではなく、すでに長く通っている顧客を継続して引き継ぐことが目的となるでしょう。ただし、地方のサロンが大都市のサロンを買収することで、知名度が上がり新規獲得につながるということはあり得ます。

⑤グループの成長が期待できる

多店舗展開をしているチェーン店は、店舗数を増やすことでブランド力が高まります。街中の看板や店舗が増えるにつれ、人の目に触れる機会が多くなるからです。しかしながら、買収した店舗とグループの経営方針が異なる場合、すり合わせていくことが大事になってきます。買収した店舗のスタッフの気持ちに寄り添いながら、時間をかけて方針のズレを修正していきましょう。

5.ネイル・まつエクサロンのM&Aを行う際の注意点

それでは、実際にネイル・まつエクサロン業界のM&Aを行う際には、どのようなことに注意するべきでしょうか。

(1)スタッフの心情を汲み取る

ネイル・まつエクサロンのM&Aで一番に注意すべき点は、その店舗で働くスタッフにいかに寄り添っていけるかということです。どれほどお金をかけ豪華な店舗を作ったとしても、そこで働くスタッフからの信用が得られなければ、新経営者への不満が募り経営は上手くいきません。買収した店舗のマネージャーに任せっきりにするのではなく、経営者自らが積極的に事業に参加することが必要です。マネージャーやスタッフと食事会をするなど、距離を縮めるように心がけましょう。

可能であれば、 買収する前にマネージャークラスのスタッフと面談しておくことも良い方法です。現場で働くスタッフと新しい経営者との相性は非常に大事です。売手のほうも、新しい経営者とスタッフが良い関係を築けるように力を尽くしましょう。

そこで働くスタッフが快く働けるような職場作りが、気持ちのいい接客になり、ひいては売上の向上に繋がります。ネイル・まつエクサロンのM&Aが成功するかどうかは、そこで働くスタッフ次第です。

(2)SNSやインフルエンサーを上手く活用する

今や、SNSでの宣伝は当たり前といえます。SNSが苦手という経営者もいるかもしれませんが、ほぼ無料でできる宣伝であり、活用しない手はありません。新しく店舗を買収したのであれば、キャンペーンなどを打ち、既存の顧客にSNSでお知らせして足を運んでもらいましょう。

(3)売却価格を高すぎないように設定する

ネイル・まつエクサロンは、場所が良ければほとんどの場合買手がつきます。しかし、高く売りたいからと高すぎる価格設定だと長い間売れ残ってしまうので、やはり相場に合った値段設定をおすすめします。

6.まとめ

ネイリスト

M&A・事業承継を検討している方へ

当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。

ネイル・まつエクサロンのM&Aは、「人材が財産」ということを理解して進めることが最も大事です。場所の良い駅近の店舗であれば買手は多いのですが、上手くお店が回っていくかどうかはそこで働くスタッフ次第です。新しい経営者は既存のマネージャーに任せっきりにするのではなく、しっかりと経営に取り組みましょう。

異業種から参入しやすいため、今後も同業種同士だけでなく異業種からのM&Aも増えていくことが予想されます。人手不足なため、人材の奪い合いはさらに激しくなることでしょう。

この業界は、マッチングアプリでのM&Aも多いですが、ネイル・まつエクサロン業界に詳しい仲介アドバイザーに相談することをおすすめします。プロの力を借りることで、より良い結果に繋がることが期待できます。

話者紹介


ライトインターナショナルLLC 代表
田中圭吾(たなかけいご)

■代表者資格
行政書士資格1989年度合格
■行政書士事務所開業
2001年8月 オフィスライト行政書士田中法務事務所開業
前職:三洋電機株式会社 半導体事業本部 営業主任
■会社設立
2008年6月 ライトインターナショナルLLC設立
■アメリカ ハワイ法人設立
2019年10月 RIGHT INTERNATIONAL USA, INC.

 

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