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M&Aにおけるプロラタ方式とは?採用するメリットを詳しく解説

2020/08/25
更新日:2024/05/13

はじめに

事業承継に悩む中小企業の間で、従来からの親族内承継ではなくM&Aによって事業を引き継ぐケースが増えてきています。一方、新しい分野への新規参入や事業規模の拡大、また海外進出を検討する場合、M&Aにより他企業の事業や企業そのものを買収するといったM&Aが考えられるでしょう。

事業を売りたいという売手と買収したいという買手が増えたことにより、M&Aはもはや大企業のみならず中小企業の間でも経営手段のひとつとして用いられています。

M&Aでは、企業がほかの事業や企業を買収する際に多額の資金を必要としますが、プロラタという方法を活用することで資金調達の幅が広がります。本記事では、プロラタについて、中小企業のM&Aに詳しい税理士法人中山会計の小嶋さんにお話を伺いました。


1.プロラタとは

表

プロラタとは、企業が複数の金融機関から借入れをしている場合に、借入金額に比例して返済額を決めることです。「比例して」や「按分して」という意味のラテン語「pro rata」に由来しています。

M&Aの買収資金を複数の金融機関から借入れる場合や、業績不振の企業が各金融機関からの借入金をリスケジュールする際に、金融機関の間で不公平が生じないようにこの方式が採用されます。

2.プロラタを採用するメリットとは

プロラタを採用するメリットは、取引実績のない金融機関から融資を受けやすいことです。金融機関側からすると1行だとリスクは大きいですが、プロラタであれば複数の金融機関でリスクを分散することができます。借入金額に比例して返済額が決まることも、安心材料のひとつでしょう。

通常であれば、メインバンクからの借入れが大きいのですが、返済もまたメインバンクのほうが優先されがちです。プロラタでは、そのようなメインバンク優先といったことはありません。

このような理由から迅速な資金調達が可能となり、多額の資金を必要とするM&Aや事業承継といった目的を達成することができます。M&Aによる買収の場合は、プロラタを上手く活用することが資金調達のコツといえるでしょう。

3.残高プロラタと信用プロラタの違い

お金

プロラタによる返済方法は、「残高プロラタ」と「信用プロラタ」の2つにわけられます。

融資した金融機関としては、出来るだけ多く返済してもらいたいというのが本音ですが、複数の金融機関からの融資残高がある場合は、その融資が保全されているかどうかが問題となってきます。

ちなみに、ここでいう保全されている融資(担保あり融資)とは、信用保証協会保証付債権や不動産担保付債権のことです。

残高プロラタとは、その融資が保全されているかどうか(担保が付いているかどうか)に関わらず、金融機関の借入残高に比例して返済額を決める方式です。つまり、最も多く融資している金融機関への返済額が、一番大きくなります。

一方、信用プロラタとは、融資残高から保全されている額を差し引いた金額に比例して返済額を決める方式のことです。信用プロラタのほうが理論的ですが、実際は、信用プロラタより残高プロラタを採用することが多いでしょう。

その理由としては、信用プロラタには次のような問題が生じるからです。

・信用保証協会は代位弁済されると債権者である
・担保設定されている不動産の評価をどうするのか
・自宅が担保不動産となっている場合はどうするのか
・第三者の担保がついている場合はどうするのか

信用プロラタの場合、融資金額が最も多いメインバンクへの返済額が、ほかの金融機関より低くなる可能性があります。なぜなら、多額の融資を行う代わりに多くの担保を提供されているからです。

4.返済スケジュールの決定について

プロラタによる返済へのスケジュール変更は、リスケジュールと呼ばれます。リスケジュールとは返済条件の変更を指し、全ての金融機関の借入れに対して同じ条件で返済することを目的としています。

プロラタでの返済については、金融機関の同意を得たうえで、企業の返済能力に応じてその返済スケジュールや返済額が決定します。これらの決定には専門的知識が必須であるため、M&Aに精通した専門家への相談は欠かせないでしょう。

5.プロラタの計算方法とは

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次に、プロラタを採用する場合にいくらの返済金額になるのか、その計算方法について説明しましょう。

まずプロラタを採用する場合、金融機関の借入残高を全て洗い出します。プロラタでの返済に全ての金融機関が同意した後に、残高プロラタか信用プロラタかを決めていきます。

プロラタによる返済であれば、全行一致が原則です。なぜなら、全ての金融機関を平等に扱うことが目的なため、開始時期や採用方式は同じでなければ意味がありません。

2億円をメインバンクとA銀行、B銀行から借入れしたと仮定し返済合計額を500万円とすると、それぞれの金融機関への返済額は次のようになります。もちろん信用プロラタの場合、無担保部分の融資額によって、返済比率や返済額は異なるということが前提です。

下表からも、残高プロラタと信用プロラタでは、それぞれの金融機関への返済額が異なることがわかるでしょう。

 

返済先 借入残高 残高プロラタ返済額 信用プロラタ返済額
メインバンク 1億円

(無担保3000万円)

250万円(50%) 150万円(30%)
A銀行 5000万円

(無担保2000万円)

125万円(25%) 100万円(20%)
B銀行 5000万円

(すべて無担保)

125万円(25%) 250万円(50%)
合計 2億円 500万円 500万円

 

6.まとめ

M&Aにおいて、他企業の事業や企業そのものを買収する場合は多額の資金が必要です。しかしながらメインバンクから十分な融資を受けられないときは、ほかの金融機関からも借入れをしなければなりません。

取引実績のない金融機関から借入れすることは難しいのですが、プロラタを採用することで、取引実績のない金融機関からも融資を受けやすくなるでしょう。またプロラタでは、全ての金融機関へ平等に返済することになるため、金融機関からの信用も失わずにすみます。

プロラタには、残高プロラタと信用プロラタの2種類がありますが、いずれにしても金融機関との細かな調整が必要となるため、自社のみで話を進めることは難しいでしょう。

M&Aへ向けて資金調達を検討しているなら、経験豊富なM&A仲介会社や税理士、弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。

話者紹介

小嶋 純一

税理士法人中山会計 常務社員税理士
小嶋 純一

横浜国立大学卒業。現在税理士法人中山会計にて常務社員税理士を務める。相談し
やすさNo.1を体現する税理士として、自社の経営の実践並びにお客様の経営のサポー
トを兼務。M&Aスペシャリスト及びM&Aシニアエキスパートの資格を有し、事業承継の出
口をサポートするコンサルティングを15年来推進。
保険会社・銀行・商工会議所・各士業等とのタイアップによるセミナーなどで講演を全国にて多数行い、身近な相談窓口として活動中。

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