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東京における事業承継とは?国内最大のマーケットを活かすためのポイントを紹介!

はじめに

今や後継者不足は、高齢化に悩む日本全国の問題といえるでしょう。それは、国内最大のマーケットである東京も同様であり、事業承継のために譲渡先を探す中小企業は後を絶ちません。

同じ事業承継とはいえ、地方と東京では、目指す企業のあり方や経営者の考え方も違います。東京という地の利を活かし、より良い形でM&Aを成功させるためには、東京ならではのM&Aに精通した仲介会社やアドバイザーが欠かせません。

そこでここでは、東京での事業承継について、日本の経営コンサルタント業界のパイオニアである株式会社タナベ経営から、東京M&Aアライアンスコンサルティング本部のチーフコンサルタント、文岩繁紀さんに詳しくお話を聞きました。

今、東京の事業承継はどのような状況にあるのか、具体的な問題点やM&Aを進めるにあたって注意すべきポイントに焦点をあてて紹介します。


1.そもそも事業承継とは

事業承継とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことをいいます。会社を後継者へ渡すだけで終了ではなく、誰に自社株を引き継ぐか、後継者をどのように育てていくかという過程も含まれます。

従来の事業承継では、親族内の誰かが後を継ぐスタイルが大半を占めましたが、現在はM&Aや事業承継ファンドの活用など、事業承継のあり方自体も大きく変わってきています。

あえてほかの企業へ事業承継し、自社の発展拡大を目指すというスタイルも受け入れられつつあります。

(1)事業承継とM&Aの違いとは

企業買収というと、最初にM&Aを連想する人が多いのではないでしょうか。

M&Aとは、企業の合併と買収を意味します。合併とは、2つの企業が統合して1つの企業になることをいいます。一方で買収とは、ある企業がほかの企業の株式を購入し、経営権を握ることです。
なお、経営権の移転は含まれない業務提携や資本提携もM&Aに含まれます。

このように、複数の企業が様々な手法で1つの企業になることをM&Aというのです。ほかの企業に事業を引き継ぐ事業承継は、まさにM&Aの1つといえるでしょう。

(2)事業承継の種類

事業承継には、いくつかの方法があります。ここでは、事業承継によく使われる「株式譲渡」と「事業譲渡」の2つについて説明します。

①株式譲渡

株式譲渡とは、個人や法人が有する株式を譲渡することで、経営権を後継者に譲ることをいいます。事業承継のなかでは、最も一般的な方法といえるでしょう。株式譲渡により、売手企業は買手企業の子会社となり、企業の組織や事業はそのまま引き継がれ、社員の雇用もそのまま維持されます。

株式譲渡におけるデメリットは、先々、買手企業が予想外の簿外債務まで引き継ぐ可能性があることです。そのため買手企業は、入念な事前調査(デューデリジェンス)を行う必要があります。

②事業譲渡

株式譲渡が企業の全てを引き継ぐことに対して、事業譲渡は事業の一部のみを引き継ぐことをいいます。企業のある部分のみを引き継ぐため、手続きは煩雑ですが、買手企業は必要な部分のみを手に入れられるというメリットがあります。

(3)事業承継における問題点

現在、大半の中小企業はオーナー企業であり、オーナー社長の経営手腕により存続しているといえます。オーナー社長のカリスマ性やリーダーシップによるところが大きく、素早い経営判断ができるなどのメリットがあるものの、反面、後継者が育ちにくく経営者自身も危機感が薄いことがデメリットとして挙げられます。

理想をいえば、10年ほどの期間をかけて事業承継をすべきですが、早くから準備をしている経営者は少ないです。

自身が健康で頑張っている限り、会社は大丈夫という過信が多くの経営者に窺えます。健康を害してから、慌てて準備をし始めるのでは遅すぎます。理想をいえば、バリバリと仕事をこなしている求心力が高い状態のときに、事業承継を進めるべきです。

本業で忙しい経営者は、事業承継を軽く考えていますが、経営に寿命はつきものです。どこかの時点で誰かに引き継がなければ、企業は存続していくことができません。事実、統計的にも事業承継にしっかり取り組む企業ほど、長く続いているという結果が出ています。

昨今の日本における後継者問題は、このような経営者達の考え方に起因しているといえるのではないでしょうか。皮肉ですが、だからこそM&Aやアドバイザーとしての仕事がビジネスとして成り立っているのでしょう。

事業承継には、おおよそ10年ほどの期間がかかること、念入りに準備しなければならないことをあらためて経営者は肝に銘じるべきです。
それは、M&Aであれ廃業であれ、どのような形で帰着するにしてもです。

事業承継ができて、はじめて一人前の経営者です。事業承継のタイミングが遅ければ、企業が倒産してしまうこともあり、タイミングは非常に大事ということがわかるでしょう。

経営者と企業、共に元気なうちに少しでも早く事業承継に取り組むことが、より良い結果へと繋がります。

2.事業承継を行うメリットとは

文岩繁紀さん
それでは、事業承継を行うメリットとはどのようなものでしょうか。売手側と買手側、双方の立場からみていきましょう。

(1)売手側のメリットとは

まず、売手側のメリットから詳しく説明します。

①社員の雇用を守る

事業承継をすることの一番のメリットは、社員の雇用を守れることです。長らく働いてきた社員は、家族同様に大事な存在です。優良な企業の傘下に入れば雇用の安定につながり、社員自身も能力を発揮する新たな場を得ることができます。

なかには後継者問題と経営危機、両方の問題を抱えている企業も少なくありません。先の見えない状態で経営を続けるのではなく、譲渡先を探して社員の雇用を守るために事業承継を行うことは、立派な経営判断といえるでしょう。

②企業の存続

経営者にとって、創業した会社はまるで自分の子どものように可愛いものです。事業承継するということは、その子どもを残すことになります。他人の手には渡りますが、産みの親と育ての親は違ってもいいのではないでしょうか。

自分の代で終わりにせず、事業承継することで企業は大きく成長する可能性を得ることができます。事業承継によって、企業そのものを未来へ繋いでいけるという点は大きいメリットといえるでしょう。

③戦略的M&Aによる企業発展

経営者のなかには、戦略的M&Aを進める人もいます。通常、20年〜30年先を見て事業承継を行いますが、このような経営者は100年先を見据えて決断します。

たとえば、自身の優れた技術で企業を成長させてきたものの、実際のところ経営自体は得意ではなく、研究に専念したいという職人気質の経営者もなかにはいます。そうであれば、充実した経営ノウハウを持っている大企業に引き継いでもらうことで、自身の企業もより速く、より大きく成長することができます。

自身が開発した技術で人々の生活を変える何かを作り出すことができれば、たとえ大企業に買収されたとしても満足できるのではないでしょうか。これまでも、たった1つの技術が大企業の資本やノウハウを背景に、世界を変えてきた例は数えきれないでしょう。

企業の名前を残すのか、卓越した技術を次世代に渡すのか、または優秀な人材を育てるのか、どのポイントを重視して事業承継するのかは経営者の判断によるといえるでしょう。

④創業者が利益を得る

これは個人的なメリットになりますが、優れたアイデアやサービスを事業化して大企業へ売却することで、大きな利益を得ることができます。

長い間、地域経済を支え社会的な責任を全うしたのであれば、企業を去るときに充分な老後資金を手にする権利はあるのではないでしょうか。

(2)買手側のメリットとは

買収する側には、大きく4つのメリットが考えられるでしょう。

①市場シェアが拡大する

同業同士の事業承継であれば、シナジー効果で市場拡大を期待できます。東京では人口が大きいため、狭いエリア内での顧客の奪い合いは日常茶飯事です。大企業から中小企業まで多くの企業がしのぎを削るなか、競合同士で顧客を奪い合うよりも、一緒に手を組んだほうが上手くいくことも多いのです。

②人材を確保できる

今や人材不足は、中小企業のみならず大企業にとっても深刻な問題です。事業承継で悩む企業には優秀な人材がいることも多く、人材確保のために事業承継を行う企業もあります。経営難にある企業からすれば、社員の雇用を引き継いでくれる買手企業は望むところでしょう。

③事業の多角化を図れる

急速なグローバル化が進むなか、熾烈な競争を勝ち抜くために、時代に合わせた事業の多角化は欠かせません。新規参入を目指す企業は多いのですが、企業内にノウハウがないことがほとんどです。

そのため、既にある程度のノウハウを有している企業を傘下に入れることで、リスクを最小限に抑えながら新規参入することができます。

また、優れた技術を保有している企業を買収できれば、新しい技術を活用することで今までの技術をさらなる高みへと引き上げることも可能です。技術のみならず優秀な人材同士が揃えば、シナジー効果も高まるでしょう。

3.東京における事業承継の特徴とは

文岩繁紀さん
地域経済を支えてきた企業を存続させるために、国や地方自治体は事業承継をサポートする政策に力を入れています。公的機関だけでなく、多くの民間企業も事業承継やM&A事業に参入しており、全国規模で活発に事業承継が行われています。

当然ながら、国内で一番大きな市場である東京では、様々な理由から事業承継が行われています。そこでここでは、東京における事業承継の特徴を説明します。

(1)東京では買手企業の方が圧倒的に多い

東京のマーケットは非常に大きく活発なため、東京でビジネスを始めたいという企業や、大きくしたいという企業は非常に多いです。仕事をしている感覚では、売手企業対買手企業は1対9くらいでしょう。

買手企業には、東京に拠点を構える企業だけでなく、多くの地方企業も手を挙げます。地方から東京へ進出したい企業にとって、既にある程度の取引先や実績のある企業は魅力的です。

地方の企業が東京を選ぶのは、経営者自身が会社を去ったとしても、東京での事業承継であれば箔がついてプライドも満たせるということも理由の1つでしょう。後継者がおらず、地元で企業を譲渡したくても、家族の反対でなかなか話が進まないという事例は珍しくありません。

(2)人手不足解消のための事業承継

買収先としては、好調な経営状態の企業だけでなく、経営難に陥っている企業も対象となります。あえてこのような企業を選んで事業承継する企業もあります。なぜなら、通常よりも買収金額が少なくて済み、企業を丸ごと買収することで一度に人材も確保でき、求人などの経費を削減できるからです。

昨今の人手不足は深刻であり、優秀な人材がいる企業はそれだけで買収する価値があるのでしょう。

(3)東京の企業が地方の企業を事業承継する場合

一方、東京の企業が地方の企業を買収する場合は、マーケットを狙ってというよりも単に拠点が欲しい場合がほとんどです。地方に工場などの建設を望む企業は、地方企業の買収に積極的です。ゼロから作る必要がなく、ある程度の箱ができていれば、資金も時間も大幅に節約できます。

(4)譲渡先を見つけるのは難しい

このように買手企業は多くあるものの、売手企業の準備不足で実際に譲渡先が見つかるのは半分くらいでしょう。もう少し早めに準備にとりかかり、相手先企業を見つける時間が充分あれば、違った結果になるのではないでしょうか。

準備不足であっても、シナジー効果を期待する企業や特許が欲しい企業もあるので、事業承継に悩んでいる場合はとりあえず早めに専門家に相談することをおすすめします。

4.事業承継を成功させるためのポイントとは

人のこぶし

M&A・事業承継を検討している方へ

当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。


ここでは、事業承継をするときの注意点を説明します。

(1)適切なアドバイザーを選ぶ

東京で事業承継を進める場合、アドバイザーや仲介会社を介して進めるほうが良いでしょう。自社のみで買手企業を探すには限界があります。その点、アドバイザーや仲介会社は幅広いネットワークを持っているため、多くの買手企業のなかからより良い条件の企業を見つけることができます。

(2)事業承継について学ぶ

アドバイザーを決めて仲介会社を選択する過程でも、事業承継というものをしっかりと理解しておかなければ、どのような基準でアドバイザーや仲介会社を選べばいいのかわからないでしょう。

どれほど優秀なアドバイザーでも、企業のことを真剣に考えているという点において、経営者にはかないません。事業承継について学び、その流れを知り、どのようなポイントを押さえて進めればいいのかを経営者自らが把握することは非常に大事です。

(3)少しでも早めに準備する

理想的な事業承継は、10年ほどかかるといわれています。後継者が決まったら終わりではなく、そこからが事業承継の本番です。

候補者がいない場合は、社外に引き継いでくれる後継者や企業を求めることになりますが、納得のいく相手を探すのは時間がかかります。自分が健康で働いているうちに着手することがとても大事です。

(4)税金対策をする

事業承継は、自社株や様々な資産を引き継ぐので、税金対策は必須です。相続問題も絡んでくるので、弁護士や税理士などに相談しながら進めましょう。
実際問題として、後継者が納税できずに倒産してしまうこともあります。現経営者が支払うべき所得税、後継者の負担である贈与税や相続税など、それぞれしっかりとした対策が必要です。

ただし、国も事業承継をサポートする制度を設けており、事業承継にかかる税金を猶予してもらえます。雇用を維持するなどのいくつかの条件があるので、このような制度を活用しながら進めましょう。

(5)資金を集める

事業承継の際には、資金を集めることも必要です。代替わりの時期に合わせて新商品の販売などを考えていれば、なおさらそれなりの資金が必要でしょう。そういった場合には次のような制度が活用できるのではないでしょうか。

①事業承継補助金

事業承継の際に、経営革新や事業転換、事業再編に取り組む中小企業を対象とした補助金です。補助対象者は、いくつかの条件を満たすことが必要です。

補助金額は、経営交代タイプが上限500万円まで、事業再編・事業統合タイプが上限1,200万円までです。(平成30年度分)

②中小企業信用保険法の特例

この特例は、認定を受ければ、必要な資金について一定の保険を別枠化してもらえる制度です。保険を別枠化することで、信用保証協会の債務保証も別枠化され、金融機関から資金を借りやすくなります。

③日本政策金融公庫法・沖縄振興開発金融公庫法の特例

この特例では、認定を受ければ、事業の継続に必要な資金を日本政策金融公庫や沖縄振興開発金融公庫などから融資してもらえます。通常に比べて金利が低いので利用しやすいでしょう。

5.事業承継の流れについて

紙とペン
事業承継について、大まかな流れを説明します。事業承継の内容によっては、あるプロセスを省く等の柔軟な対応が必要ですが、まずは基本的な流れを把握しましょう。

(1)会社の経営状態の把握

はじめに、「会社の資産状況」「株式保有状況」「株式評価額」の観点から、企業の状況を把握します。資産状況を知るためには、財務諸表を確認しましょう。しかし、株式についてはよくわからないという経営者もいるのではないでしょうか。このようなときこそ、アドバイザーの力を借りましょう。

(2)後継者のリストアップ

会社の状況が把握できたら、後継者候補を選びます。後継者としての資質はあるのか、重責を果たせるほどの人間なのかなど適性を見極めましょう。

候補者がいれば、役員にして経営の一部を任せることも良い方法でしょう。実際に後継者としての能力を測ることができます。

この時点で、親族内や社外の第三者に心当たりの候補者がいなければ、アドバイザーに相談しながら社外への事業承継を考えるべきでしょう。

アドバイザーは、現在の経営状況や強みを把握しながら、企業に最適な候補を見つけてくれるはずです。

(3)事業計画書の作成

事業計画書を作成する場合は、候補者といっしょに作成しましょう。現経営者と候補者が同じ方向を向いて動くことが、事業承継を成功させるためには必要です。

事業計画書を作成するときもアドバイザーに相談します。主観が入りやすいですが、より客観的に作成することで、無理なく計画を実行することができます。

(4)取引先や金融機関、社員に説明する

事業承継が確実になった段階で、関係者に説明しましょう。特に、取引先や社員は不安に陥りがちなので、充分な時間をかけて丁寧に行うことが大事です。企業の将来の姿が見えれば、取引先も安心し、社員も集中して仕事に取り組めます。

(5)経営改善に努める

後継者により良い状況で引き継いでもらうために、経営改善も必要です。経営改善とは、財政状態を改善するほか、社員のスキルアップを図ることです。

また、ワンマン体制で企業を引っ張ってきたのであれば、暗黙のルールも多いことでしょう。後継者に引き継ぐ際には、このような暗黙のルールをなくして明文化することが大切です。

(6)具体的に事業承継を進める

すべての手続きが完了したら、計画書に基づいて事業承継を進めます。後継者に経営権を譲り、数年は後継者と並走しましょう。

どのタイミングですべて譲るのか、その判断も大切です。一般的に、事業承継をすると経営は良くなる傾向にありますが、反対に上手くいかず、事業承継がきっかけで倒産する場合もあります。

理想的な事業承継期間が10年ほどであれば、10年もの間に社会情勢も企業のあり方も変わってくるでしょう。その度に、事業計画書のブラッシュアップが必要となります。

昨今の社会変化のスピードを考えれば、どれだけ早く準備すべきか納得がいくのではないでしょうか。時間的余裕があれば、どのような変化があっても、予想外のことが起こっても対応していくことができます。

6.まとめ

東京の事業承継には、東京ならではのメリットがあります。現在は、親族内の事業承継ではなく、社外に後継者を求める経営者が増えつつあります。東京であれば、買手企業も多く、さまざまな選択を視野に入れて考えるべきでしょう。

事業承継をする際には、自社のみでそれを進めるのではなく、アドバイザーや仲介会社を活用することをおすすめします。彼らのネットワークや知恵を借りることで、より良い結果を手に入れることができます。

事業承継をきっかけに、海外進出などの事業拡大も現実的なものとなります。数十年先ではなく、100年後も残っている企業を目指して、しっかりとした事業承継を行いましょう。

<話者紹介>

文岩繁紀さん

株式会社タナベ経営
経営コンサルティング本部
東京M&Aアライアンスコンサルティング本部
チーフコンサルタント 文岩 繁紀(ふみいわ しげき)

企業の良きパートナーとして、常にお客様の立場に立ったコンサルティングを展開。特に「クライアントの課題を共有化し、共に改善実行し、成果を挙げる」ことを大事にしている。スピード感ある連携ときめ細かなフォローで、M&Aコンサルティングを中心に企業の成長を支援している。

 

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