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訪問介護業界のM&Aとは?その現状と課題を掘り下げて解説!

2020/03/27
更新日:2024/05/13

はじめに

日本では、団塊の世代が後期高齢者になり、5人に1人が75歳以上になると予測されている2025年。高齢者が増えるにつれて介護事業者の必要性も高まっています。

しかし、成長産業に見える介護業界においても、介護報酬見直しのあおりを受けたためか、2019年度は倒産件数が過去最高になりました。そのため、介護業界においてもM&Aが進行しています。今回は、介護業界のM&Aに詳しいひびき地所の山口さんにお話を伺いました。


1.訪問介護業界の動向を解説

在宅介護リハビリ運動

(1)訪問介護業界とは

訪問介護とは、訪問介護員、つまりホームヘルパーが利用者宅を直接訪問して行なう介護サービスです。具体的には、以下の3種類のサービスで構成されています。

① 身体介護
利用者の食事や衣服の着替え、入浴や排泄などをサポートすること、またそれらに伴う準備および後始末などの仕事です。

治療食や流動食を作ることや、利用者をサポートしながら一緒に家事を行うことなど、法令で規定された条件下での医療的な処置が含まれます。

② 生活援助
掃除や洗濯、あるいは食事を作るなどの家事の援助、病院での薬の受け取りなどのサポートです。

③ 乗車・降車の介助
訪問介護員が運転する車で病院などへ通院する際の乗降や移動の介助、受診手続きの代行です。

訪問介護員は、介護福祉士の国家資格を保有している、介護職員の実務研修を450時間修了している、または介護職員初任者研修を130時間修了している、左記のいずれかの条件を満たす必要があります。生活援助については、生活援助従事者研修を59時間修了していれば携わることができます。

訪問介護員の中には、介護福祉士などの資格を持つサービス提供責任者の配置が1人以上必要です。サービス提供責任者は、訪問介護計画書の作成や関係者との連絡、または利用者との相談といった業務を担います。ほかにも、担当者会議に参加して訪問介護員の指導をします。

(2)訪問介護業界の現状

要介護高齢者は増加の一途をたどっており、日本の高齢化は他国では見られないほどのスピードで進んでいます。2025年には3人に1人が65歳以上で、5人に1人が75歳以上になるとも予想されています。

介護保険の対象者である要介護高齢者の人数も、2005年に介護保険制度がスタートした時点の218万人から、2016年には約3倍の630万人まで増えました。人口が多い団塊世代が後期高齢者となる2025年には、要介護者が800万人を超えるといわれています。

このような要介護高齢者数が増えていくにつれ、2000年の介護保険制度の開始時には3.6兆円だった介護給付費が、2016年には実に9.6兆円まで増えました。さらに2025年には21兆円まで膨れ上がると予想されています。

このような状況の中、年金と医療を含めた社会保障制度を持続できるかどうかが問われています。そうでなくてもシビアな国家の財政状況からも、介護給付費を抑えることが深刻な課題となっています。

(3)訪問介護業界の見通し

今後も、介護業界では厳しい経営環境が続くと考えられます。新規参入の会社や従業員が5人未満の小規模事業者での倒産が多いようです。

介護報酬の改定や競争激化で満足に差別化ができないまま、介護のクオリティも高められず、利用者からの評価が得られない事業者は、ますます淘汰されていくことが予想されます。

少子高齢化のあおりを受けて人材不足が叫ばれる労働市場ですが、介護関連の業界は賃金の水準が低いうえに、労働環境は過酷です。肉体労働や夜間勤務などもあるため、人材の確保が基本的に困難な業界といえるでしょう。

ほかにも、事業者の間で介護資格保有者の取り合いも激しくなっています。採用してもほどなく転職してしまう高い離職率と、何度も募集をすることに伴う広告料も経営を圧迫する原因のひとつです。人材不足が事業所運営にも、深刻な影響を与えているのです。

2.訪問介護業界M&Aのメリット&デメリット

車椅子

訪問介護業界のM&Aでは、事業譲渡のスキームが多く見られます。訪問介護業界のM&Aにおけるメリットとデメリットを解説しましょう。

売手側のメリット
売手側のメリットは「不採算事業を売却できる」「売却の対価を得る」の2項目です。それぞれを詳しく見ていきましょう。

① 不採算事業を売却できる
事業譲渡を行う場合、まずは不採算事業の売却ができるというメリットがあります。事業を推進する中で採算が取れないことは少なくありません。しかしながら、不採算事業を持つ状態は決して健全な経営とはいえません。不採算事業を黒字に転換できる可能性があれば別ですが、希望が見えてこない場合もあります。

不採算事業を売却すれば、より健全な経営ができるようになります。そして分散していた経営資源である資金および人材を、採算の見込める事業に集中させることができるので、不採算事業を事業譲渡で売却するメリットは大きいといえるのです。

また、事業譲渡により別会社に渡った不採算事業も、買手のノウハウによって事業価値が蘇る可能性もあります。

さらには、売手が持っていなかったノウハウを買手の企業が持っている場合も同じく、総合的に事業価値を高める可能性があるのです。

② 売却の対価を得る
事業譲渡を行って事業を売却すれば、対価として利益を得ることができます。売却した利益はオーナーのものになります。事業譲渡による利益のレベルは、その会社の資産価値やノウハウによって異なります。

(2)売手側のデメリット

ここからは、売手側のデメリットを解説します。

① 従業員の移動や引き継ぎ
事業譲渡が行なわれると、本来譲渡される事業に関わっていた社員を別の事業へ移動しなければなりません。これには少なからず費用がかかります。さらには、取引先に報告する必要があります。事業の譲渡自体が取引先の不信感を生むおそれも考えられるので、説明が必要です。

② 契約の手続きや登記変更
既存契約の手続きや不動産等の登記を変更する必要性が生まれます。譲渡した事業に関わる契約や登記などは買手の企業に変更しなければなりません。これに結構なコストと時間を要するのがデメリットです。

③ 同一事業再開の禁止
会社法では、営業権譲渡から20年間、同一エリアや近隣などで同様の事業を禁じています。

④ 譲渡益への課税
事業を売却して得た利益は法人税の課税対象となるのです。

3.訪問介護業界におけるM&Aの事例を紹介

介護・車椅子

M&A・事業承継を検討している方へ

当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。

訪問介護業界では大手企業からのM&Aも見られます。いくつかの事例を紹介します。

(1)SOMPOホールディングスのメッセージ子会社化

SOMPOホールディングスは、2016年にメッセージを連結子会社にしました。メッセージは有料老人ホームのアミ―ユやサービス付き高齢者向け住宅、そして在宅介護事業所を手がけていた会社です。

SOMPOホールディングスは、広範なネットワークや経営資源、蓄積されたノウハウを持っています。それらの色々な取り組みをメッセージの子会社化によって活かし、事業の成長を狙う戦略なのでしょう。

(2)ソニーライフ・ケアのゆうあいホールディングス子会社化

ソニーフィナンシャルホールディングスの子会社であるソニーライフ・ケアは、2017年にゆうあいホールディングスを子会社化しました。ソニーフィナンシャルホールディングスは、介護事業を統括する持株会社としてソニーライフ・ケアを2014年に設立しました。

ゆうあいホールディングスは、関東と北陸に約30の拠点を持って介護事業を推進しています。2015年にはソニーライフ・ケアと業務提携を結びました。子会社化によって両社は経営資源のシナジー効果を生み出し、グループの躍進を視野に入れているのでしょう。

(3)ALSOKのケアプラス子会社化

ALSOKは、2018年にケアプラスの全株式を取得し子会社化しました。ALSOKはセキュリティ事業が有名ですが、ほかにも複数の事業を手がけている企業です。

ALSOKは、2012年に介護事業に新規参入しています。高齢者向けサービスを最も重要な領域として、商品とサービスの開発に取り組んできました。

まごころベルサービスというブランドで訪問医療マッサージを提供していたケアプラス。在宅療養者に向けて、このケアプラスを子会社化し、介護事業を含むグループ全体の企業価値向上を狙った戦略が行われているのでしょう。

4.まとめ

介護士

先行きが不安な訪問介護業界の現状やM&Aについて解説しました。業界としては今後ますます重要になる産業であるにも関わらず、現状は厳しく将来においても明るいとはいえません。

しかしその中で、介護企業のオーナーは地域密着型の事業承継ができる可能性も残されているといえるでしょう。情報と業界トレンドを認識しつつ、将来性があるM&Aを検討してほしいものです。

〈話者紹介〉

山口さん
ひびき地所
山口 利通  やまぐち としみち

宅地建物取引士
不動産コンサルティングマスター
ファイナンシャルプランナー(AFP)

1971年 福岡県八女市生まれ
某大手電機メーカー退職後、平成16年に株式会社ひびき地所を設立
事業用不動産売買仲介業務を中心に、事業用不動産組成コンサルティングおよび不動産再生事業を手掛ける。
近年は、不動産を中心とした事業承継・事業再生型M&A案件等のアドバイザリー周辺業務にも取り組んでいる。

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