M&A・事業承継なら事業承継総合センター専門家コラム > 後継者 > 親の会社を継ぐことになったら?親族間承継に関するノウハウやポイントを解説

親の会社を継ぐことになったら?親族間承継に関するノウハウやポイントを解説

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly
家業を継ぐ際の注意点と必要な心構え

 

はじめに

家業とは、一般的には親の会社を子どもが引き継ぐ形態の事業のことを指します。家業を子どもなどに引き継ぐ親族内承継では、特に財産権の承継に注意が必要です。親族内承継の現状、家業のメリット・デメリット、家業を承継する際の注意点やタイミング、手順や税金などについて、株式会社みどり財産コンサルタンツの代表取締役・川原大典氏に聞きました。
 


株式会社みどり財産コンサルタンツ 代表取締役 川原 大典 (かわはら だいすけ)

話者紹介

株式会社みどり財産コンサルタンツ
代表取締役
川原 大典 (かわはら だいすけ)

みどり合同税理士法人グループの中で相続・事業承継、税金対策、資産保全に特化した、みどり財産コンサルタンツ代表取締役社長。非上場中堅・中小企業の経営者と資産家のための資産保全・財産承継コンサルティング業務を担当し、税務面に関連する課題解決に集中特化。クライアントの「希望を実現する」「経済的利益を得る機会を提供する」をミッションとし、これまでに取引先数1607社、税財務面での支援数3994回を誇る。

 

 

1.家業とは何か?近年の親族内承継の状況、家業と自営業の違い

「家業」に明確な定義はありませんが、一般的には「特定の家族が主体となって経営し、世襲的に継承していく事業」のことを言います。家族経営やファミリービジネスなどと称されることもあります。規模の大小や法人個人に関わらず、日本の企業のほとんどが非上場の中小企業でオーナー経営の会社です。

「家業」と似た意味の言葉として「自営業」がありますが、自営業は個人事業も含めたより小規模な事業を指すことが多いようです。個人事業を承継する場合は、資産や負債の引き継ぎを行う必要がありますが、法人化された事業(家業)を承継する場合は、株式などの持分の引き継ぎが必要になる点が大きな違いです。この家業を子どもや親族に承継することを「親族内承継」と言います。まずは親族内承継の現状について説明します。

全体的に、親族内継承は減少傾向にあります。これは、社会が成熟し、価値観が多様化し職業の選択肢が増えてきたことや、環境の変化が激しいことなどが背景にあると考えられます。親族に後継者候補がいたとしても、子どもは自分のやりたい仕事に就くことを求め、親自身もその選択を容認する傾向が強くなってきています。また、たとえ経営がうまくいっていたとしても、時代の変化が激しい現代において、子どもに家業を継がせることに不安を感じる経営者も少なからずいます。昔であれば「子どもは親の会社を継ぐもの」と小さい頃から子どもに言い聞かせていた経営者も多かったと思いますが、今はそういう育て方をしない人が圧倒的に多くなっていると思います。そのため、従業員への承継を検討する方も増えていますが、最近では第三者に事業を承継するM&Aが注目されています。

ただ、従業員への承継に比べると、親族への承継の方が圧倒的に多いのも事実です。そもそも、従業員に承継する場合は、マインド、スキル、経済力のあらゆる面で引き継ぎできる人材が限られてしまいますし、会社や事業を承継する際には莫大な資金が必要で、一従業員が調達することは簡単ではありません。

このように、親族内承継は減少傾向にあるものの、従業員への承継に比べるとまだ圧倒的に多いと言えます。その際に問題になるのが自社株式の承継です。事業承継には、経営の承継と自社株式の承継といった2つの承継があるのですが、自社株式の承継には税コストが発生します。税金対策を考えながら自社株式の移動を計画的に進めていく必要があります。


2.家業を継ぐメリットとデメリット

家業を継ぐメリットとデメリット

ここでは家業を継ぐメリット・デメリットについて説明します。

①メリット1:インフラが整っている環境でビジネスに取り組むことができる

事業を行う環境が整った状況で、経営に携わることができるのは大きなメリットでしょう。赤字の会社の場合、マイナスからのスタートとなるので厳しいかもしれませんが、事業がそれなりにうまく回っている会社であれば、人材、事業資金、取引先、顧客、設備などのビジネスに必要なインフラが一通りそろっている状態でビジネスを引き継ぎ、新しいビジネスにも取り組むことができます。

②メリット2:社内外の関係者から受け入れられやすい

日本には「家制度」の感覚がまだまだ根強く残っていますので、親族に承継していくと従業員や取引先などの社内外の関係者からも受け入れられやすいというメリットがあります。もちろん経営者から見ても、親族への承継は安心感があります。

③メリット3:経営者に長い期間にわたって身近に接することができる

子どもが承継する場合、親である経営者と長い期間にわたって身近に接することができるため、知らず知らずのうちに親である経営者としての考え方を学ぶことができるというメリットがあります。経営者の普段の行動や言動を身近に見たり感じたりすることは他人ではなかなかできません。帝王学と言うと少し言い過ぎかもしれませんが、経営者としての考え方や立ち居振る舞いなどを意識せずして身につけられる可能性があります。

④デメリット:リスクや大変さはあってもデメリットはない

家業を継ぐリスクや大変さはありますが、デメリットは基本的にないと思います。例えば、子どもが経営者に向いていないのに経営を任せてしまい、結果的にビジネスが立ちいかなくなるリスクは考えられます。また、先代の社長が経営にあれこれ口出しをしたり、古株の従業員から反発されるといった苦労もあるでしょう。しかし、それらはデメリットではなく、あくまでリスク。このようなリスクは、コミュニケーションをしっかり取ることで、解決できる部分が大きいもの。家業を引き継ぐデメリットとは言えないと思います。


3.家業を継ぐ際の注意点と必要な心構え

家業を継ぐ際の注意点と必要な心構え

家業を引き継ぐ際には、親は経営者としての実務能力、考え方や身の振る舞い方、社内外の関係者との付き合い方などを子どもに引き継ぎ、子ども自身も経営のノウハウやスキルを身につける必要があります。ここでは、その中でも特に重要な3点について説明します。

①(経営者)後継者候補としっかりコミュニケーションを取る

親族に後継者候補はいるものの、本人にいまだ明確に意思を伝えていない経営者も多いことでしょう。子どもに引き継ぎたいのかどうかを明確にし、後継者候補としっかりコミュニケーションを取っていく必要があります。特に、会社を引き継ぐタイミングについて意識のすり合わせをしておくことが大切です。タイミングの認識が異なると、後継者を育成する時間も十分取れませんし、株式を段階的に移動させる時間も確保できなくなります。計画的に承継できるように、会社を引き継ぐタイミングのすり合わせをできるだけ早期に行い、承継後の会社の方向性についても共有しておく必要があります。

②(後継者)先代の経営者や従業員をないがしろにしない

これは後継者が守るべきことですが、先代の経営者や従業員をないがしろにしないことが大切です。つまり、先代の経営者に感謝の気持ちを持ち、従業員に配慮するということです。

後継者の中には「自分が社長になったのだから何でも自分の思うようにできる」と勘違いする方もいます。何でも自分で変えたがり、自分の色を出したがる傾向がありますが、大抵はうまく行きません。「先代を超えたい」あるいは「先代ができなかったことを実現したい」という気持ちを持つことは大切ですが、変えるための明確な根拠がなければなりません。変化することに妥当性があり、きちんと説明して従業員が納得を得た上で変革を進めるのであれば良いですが、そうでない場合、従業員は誰もついてこず、社内の混乱を招くだけに終わる可能性もあります。

③(経営者)家業だからと言って執着しすぎない

これは先代の経営者が守るべきことですが、家業への思い入れが強すぎて、人に任せることができないタイプの経営者がいます。これは一例ですが、ある創業社長がいて、娘の婿養子に家業を引き継ぎました。しかしその婿養子は経営者にはあまり向かないタイプで、そのことに創業者はずっと不満を抱え、実質的な経営権は創業者が握ったままでした。そして無謀にも、当時高校生だった孫に事業を継がせることを検討していました。創業者は、自分が立ちあげて育ててきたビジネスに執着するあまり、人に経営を任せることができないタイプの経営者だったのです。経営を人に任せる気持ちがあれば、第三者への事業承継であるM&Aという選択肢も検討できたのではないかと思います。


4.家業を継ぐタイミングと株式を移動させる3つの手法

家業を継ぐタイミングと株式を移動させる3つの手法

家業を引き継ぐ適切なタイミングは、経営者やそのご家族にしかわかりません。先代の経営者が死亡した際にはすぐに引き継ぐしかありませんが、そうでない場合は適切なタイミングを見計らって承継していく必要があります。そのタイミングは家族や当事者、取引先や事業環境などにより様々で、「承継するのは今だ」と思った時がタイミングだと思います。

ただ、これはあくまでも経営の承継の話で、自社株式の承継については別の問題です。自社株式は時間をかけて計画的に承継していく必要があります。これは、前述したように、税コストの負担が大きいからです。全ての株式を一度に移動しようとすると、まとまった評価額となり、税負担が重くなります。従って、複数回に分けて少しずつ段階的に移動していくことで税コストを抑えていくことが大切です。とはいえ、後継者が決まらないことには株式を移動させることができないため、まずは後継者を決めることが先決です。そして後継者が決まったら、経営の承継とは別に、できるだけ早い段階から株式の移動を計画的に進めていく必要があります。

【株式の移動方法】

株式を移動させる方法には、大きく「譲渡(売買)」「贈与」「相続」の3つがあります。この中で、親族内承継の場合、基本は贈与になると思います。

「譲渡(売買)」は、後継者が現金で株式を取得する方法です。相続でもめる心配もないため、後継者としての地位が安定します。ただし、株式を買い取るだけの資金力が必要です。贈与税や相続税を納付する場合よりも後継者が用意しなければならない資金量が大きくなる場合がほとんどで、後継者の負担感は大きくなります。

「贈与」は、後継者が無償で株式を受け取る方法です。無償で財産を引き継ぐことはできますが、その財産は贈与税の課税対象となります。年間110万円以下の少額贈与には税金はかかりませんが、それ以上の場合、贈与額が高くなるほど税率が上がり、税負担も重くなります。

「相続」は、株式を保有する現経営者が亡くなった際に、遺言などに基づき、亡くなった経営者の財産を特定の人が引き継ぐ方法です。ただし、その財産は相続税の課税対象となり、基礎控除額を超えると相続税がかかります。また、後継者に兄弟姉妹などが多かったりすると、株式を含む遺産の配分でもめることがあります。

【贈与時の注意点】

前述のように、贈与すると贈与税がかかってきますが、110万円以下の少額贈与には税金がかかりませんし、申告の必要もありません。毎年110万円以下の贈与をくり返して株式の移動を行うケースもあれば、110万円を超える金額を毎年贈与して少額の贈与税を支払いながら段階的に株式の移動を進めるケースもあります。移動する金額が上がると税率も高くなりますので、毎年の贈与額も考慮しながら何年間にわたって贈与していくかを検討する必要があります。税コストをできるだけ押さえるためには、できるだけ早い段階から計画的に株式を移動していくことが大切です。

加えて、株価の評価額が下がるタイミングで株式を移動することも大切です。株式の評価額は利益や資産の額に連動します。例えば利益が上がると株価の評価額も上がり、税コストも高くなります。従って、株価が下がる谷間の時期に多くの株式を移動することで、税コストを抑えることができます。例えば、現経営者に役員退職金を支給するなどして、株価の評価額を意図的に下げることも可能です。そのタイミングで、「相続時積算課税制度」を利用するのも一つの手です。「相続時積算課税制度」とは、60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子・孫への生前贈与について、子・孫の選択により利用できる制度のことで、2,500万円の特別控除があり、限度額に達するまで何度でも控除することができ、贈与税がかかりません。2,500万円を超えた部分には20%の贈与税が課税されますが、この贈与税は相続税の仮払いという性質です。相続時精算課税制度を利用して贈与した財産は、言葉の通り、相続時にその財産を相続財産に持戻して相続税計算を行い、精算します。相続時精算課税制度を利用するメリットは、財産の評価額を贈与時の評価額でできることです。この制度を利用することで、株式の評価が下がった時点で多くの株式を一気に贈与することもできます。

また、一定要件を満たせば、中小企業経営承継円滑化法で定められた「納税猶予制度」を利用し、贈与税や相続税の100%(2018年1月1日から2027年12月31日まで)を納税猶予することもできます。親から子へ事業を引き継いでいくのであれば、納税猶予は何世代にもわたって継続することができますので、活用を検討するようにしましょう。


5.会社の株式を引き継ぐ具体的な手順、流れ

非上場の会社の場合、ほとんどの会社が「株式の譲渡制限に関する規定」を定款に定めています。これは、株式を誰かに譲渡する場合は株主総会や取締役会で承認を得る必要がある旨を定款に記載するというものです。定款で定められた承認機関での承認を得ない限り、株式の譲渡はできないことを定めたもので、経営上、好ましくない人物に株式や議決権を取得されてしまうリスクを回避するための仕組みです。

具体的には、株式を譲渡する側が会社に対して株式譲渡承認請求書(誰に何株譲渡するかなどを記載)を提出し、それを受け取った会社は、定款で定めた承認機関(株主総会や取締役会)で承認すべきかどうかの議論を行います。そこで承認されると会社から株式譲渡承認通知書が譲渡する側に届きます。その通知を譲渡側が受け取ったら、譲渡側と譲受側は株式売買契約書を締結し、共同で会社に対して株主名簿書換請求を行います。株主名簿に譲受側の名前が記載されれば取引は完了です。株式発行会社の場合は、譲渡側から譲受側へ株券の受け渡しが行われる必要があります。


6.家業を引き継ぐ上でかかる税金

前述したように、中小企業であっても、業績の良い優良企業では株式の評価額も高くなり、会社を引き継ぐ際に莫大な税金がかかることがあります。どういう手法を選ぶか、いくら移動させるかによって、かかる相続税や贈与税も変わりますが、ここでは、家業を引き継ぐ上でかかる税金について紹介します。

【贈与】
前述したように、年間110万円までは非課税となり、年間110万を超えた分が贈与税の課税対象となります。そのため、110万以下に分け、数年かけて贈与を行うことで非課税になります。贈与税額の計算方法は、「(1年間の贈与額−110万円)×税率−控除額」で算出することができます。税率と控除額は課税対象となる金額に応じて異なり、例えば1,000万円超〜1,500万円超の場合は、税率40%、控除額は190万円になります。単年度だけで考えると、最も節税効果の高いのは年間510万円の贈与です。年間510万円の贈与した場合、「510ー110万円(控除)×15%ー10万円(控除)」で贈与税は50万円となります(特例税率の場合)。

【相続】
相続税の税率と控除額は、課税対象となる金額に応じて異なりますが、10%〜55%、50万円〜7,200万円となります。まずは亡くなった人が所有していた財産(現金預貯金、株式、不動産など)の合計額を算出し、そこから基礎控除を引きます。差し引いて余った部分を、法定相続分で相続したものとみなし、各相続人に配分するのですが、一般的に自社の株式は高く評価されるため、株式を相続した相続人は相続税の負担も高くなりがちです。

【譲渡(売買)】
株式の譲渡によって得た利益に対して、譲渡所得税が課税されます。譲渡所得は「譲渡価額−必要経費(取得費+委託手数料)」で算出することができます。非上場株式の譲渡所得にかかる税金は、所得税および復興特別所得税15.315%、住民税5%の合計20.315%です。

会社を引き継ぐ際にかかる税コストについて、細部まで理解できているという人は決して多くないはずです。贈与税や相続税など、資金面での問題がネックになって、事業承継をためらう人も多いため、この機会にどんな手法で会社を引き継ぐのか、どんな手法であれば税コストを抑えられるかについて、把握しておきましょう。早めに検討しておくことで、スムーズな事業承継が実現できるはずです。


ご相談・着手金は無料です 後継者探しは事業継承総合センターにご相談ください。第三者継承のお手伝いをたします。 まずは相談する (無料) お電話でのご相談 0120-15-7207 FAX: 03-5539-3514 受付時間: 平日10:00〜19:00

お問い合わせに当たり、プライバシーポリシー
同意したとみなされます。

ご相談・着手金は無料です 後継者探しは事業継承総合センターにご相談ください。第三者継承のお手伝いをたします。 まずは相談する (無料) FAX: 03-5539-3514 受付時間: 平日10:00〜19:00 お電話でのご相談

お問い合わせに当たり、プライバシーポリシーに同意したとみなされます。

本サービは、新規事業提案制度から生まれたサービスで、継続は一定の期間をもって判断されます。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

ピックアップ記事

  1. 高橋 昌也_トップページ3

    2019.7.26

    後継者探し・後継者選びに大切なことは?事業承継のプロ・税理士が解説!

    はじめに「そろそろ後継者探しを始めなければ」と考えている経営者は多いかもしれませ...
  2. IT業界(AI)イメージ

    2019.7.4

    IT企業のM&Aとは?通常のM&Aとの違いやトレンドを解説

    はじめにM&Aは業界を問わずに行われている経営戦略ですが、業界によってM&Aが行...
  3. 握手(M&A契約締結)

    2019.5.15

    【M&Aとは?】中小企業オーナー社長必見!事業承継を成功させるポイント

    はじめに新聞やテレビなどのメディアで、連日大企業のM&Aのニュースが取り上げられ...
  4. 税理士法人タクトコンサルティング 玉越賢治氏バストアップ

    2019.5.15

    【廃業とは?】廃業と倒産の違い、廃業の方法を事業承継のプロ・税理士が解説!

    はじめに廃業とは、個人事業主・企業の経営者が理由を問わず自主的に事業を辞めること...

※本サービスは、新規事業提案制度から生まれたサービスで、継続は一定の期間をもって判断されます。