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印刷会社のM&Aの動向とは?納得のいく事業承継をするためのポイントを解説!

2020/04/01
更新日:2021/02/26

はじめに

印刷業界には、業界特有の業態や印刷の種類があり、印刷会社によって会社の運営状況や買手からのニーズが異なります。

今回は、印刷業界はもちろん、さまざまな業界のM&Aに長年携わってきた、かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社の岡村様に印刷業界におけるM&Aの動向やM&Aをする際のポイントについてお話を伺いました。


1.印刷業界の特徴とM&Aの動向

印刷会社のM&Aを考えている場合、印刷業界の特徴やM&Aの動向について知っておくことが大切です。
まずは印刷業界の特徴やM&Aの動向について説明します。

(1)印刷会社は工程によって3つに分類される

印刷会社は、大きく分けると、工程によって以下の3つに分類できます。

1.プリプレス(印刷の前工程)
2.プレス(印刷時の工程)
3.ポストプレス(印刷後の工程)

プリプレスは、 原稿の企画や誌面のデザインなどを行う工程で、文字入力や刷版となるフィルムへの出力といった製販を手掛けています。プレスは印刷物を実際に印刷する工程で、ポストプレスは断裁や折加工、製本加工といった、機械を使ってカタログや広告などを折り込み、印刷物を仕上げる工程です。この3つの工程の中でも、最も業種として多いのは、プレス、特に商業印刷をメインとしている印刷会社です。

また、印刷の種類を大別すると以下の4つに分類できます。

1.商業印刷
2.出版印刷
3.ビジネスフォーム
4.包装資材

商業印刷はチラシやポスターを中心に印刷をする業種で、出版印刷は雑誌や本を専門的に印刷する業種、ビジネスフォームは事務的な伝票や名刺の印刷を行う業種で、包装資材はダンボールや食品のパッケージを印刷する業種です。

このように、印刷会社と言っても、扱っている工程や印刷の種類が様々なことが印刷業界の特徴です。

(2)印刷業者を事業承継するハードルは高い

印刷業者を事業承継するハードルは高いといわざるを得ません。これには、印刷業界の構造上の問題があると考えられます。

印刷業界では、事業規模が小さくなるほど、より規模が大きい印刷会社の下請や孫請となっていることが多いです。大手の印刷会社が受注しきれない仕事を下請の印刷会社が受注し、そこが受注しきれない仕事を、孫請の印刷会社が受注するという構造です。

そのため、同業社の下請の仕事がメインになっている印刷会社を売却したいとお考えになられても、難航するでしょう。何故ならば、M&Aを検討する買手は、自社にないノウハウや取引先を求めM&Aを検討するため、取引先のほとんどが印刷業者だと、魅力がないと判断されてしまうからです。

(3)売上至上主義の売手が多いのが売却を妨げる要因

小職が、何人もの印刷会社の経営者様に会って思うのは、利益よりも売上を優先させる「売上至上主義」になっている会社が多いということです。とにかく機械を回さなければ売り上げが伸びない、と考えておられる経営者様があまりにも多く、その結果、利益率が低いことが現状です。先程申し上げたように、そのような会社様は、顧客層を見ても、今後も利益が伸びるようには思えない会社が多く、買手が見つかりにくいと言えます。

(4)印刷の種類によってニーズが異なる

では、印刷業界でもM&Aの需要が多いのはどこかと言いますと、包装資材を扱っている会社は、ニーズが高いと思います。近年、物流業界が活発化していることもあり、ダンボール等の包装資材に印刷できる会社はニーズが高く、そこに投資している会社が増えているからです。また、飲食店ののれんや看板、旗や抱き枕等、特殊なものに印刷できる会社もニーズが高く、高値で売買されています。商業印刷でも、デザインや企画に特化している会社は、需要があると言えます。一方、最もニーズが低いといわざるを得ないのが、出版物に関する印刷会社やビジネスフォームを扱う印刷会社です。市場では、底堅い需要自体はあるのですが、出版業界、帳票等はデジタル化が進んでおり、業界としては縮小傾向のため、そこに投資したいという会社は多くありません。商業印刷系については、前述のデザイン・企画等へ特化した事業者以外ですと、ビジネスフォーム程ではないと思いますが、同様に簡単にM&Aが成功する状況ではないと思います。

このように、印刷業界におけるM&Aでは、包装資材や紙以外への印刷が得意な会社は、高い評価を得やすいと言えます。また紙の印刷でも、地方の需要をほとんどカバーし、顧客と直接取引している量が多いなどの強みを持った会社も、業界が苦しいとはいえ売却しやすい会社だといえます。

2.印刷会社が事業承継を考える理由と課題

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印刷会社においても、さまざまな理由から事業承継を考える経営者が増えています。しかし、事業承継をするとしても、買手を見つけやすくするために早めにやっておかなければならないことがあります。
ここからは、印刷会社を事業承継する理由や事業者の抱える課題について説明します。

(1)年齢や将来への不安が理由

どの業界でも同じことがいえますが、経営者の高齢化といった年齢的な問題から「元気なうちに事業承継をしたい」と事業承継を考える印刷会社が多いです。また、印刷業界では業績が上がらず苦しんでいる会社が多いため、「雇用を守るために売却してしまいたい」と事業承継を考える場合もあります。

(2)将来の事業イメージを明確にしておくことが大切

一般的に、印刷会社は大がかりな設備が必要なので、数年後の設備投資など、経営者の中で将来のイメージや事業計画があるはずです。しかし、戦略あってこその機械・設備であるにも関わらず、実際には利益よりも目先の売上を優先し、闇雲に設備投資をしてしまい、結果的に利益を出せず困っている会社が多いというのが、実情です。

これは、多くの経営者が、紙への印刷物が右肩上がりで成長してきた時代から脱却出来ておらず、自社の構造を環境に合わせて変革出来なかったことに起因すると思います。だからこそ、将来的に売却を考えているのであれば、事業の将来像をちゃんと作成し、社内で共有して御商売をされておいた方が、業績も安定して買手が見つかりやすくなるでしょう。

3.印刷業界におけるM&A事例

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では、印刷業界において実際に行われたM&Aの事例を見てみましょう。そうすることで、この業界のM&Aがどのように行われているかがイメージ出来、自社の戦略の一助となります。

(1)地方都市の印刷会社が首都圏の印刷会社を買収する事例

印刷会社は、冒頭でご説明した通り、それぞれ専門としている工程・業種が異なります。首都圏では、プリプレス・プレス・ポストプレスの3工程が全て分業制になっていることが多く、ポストプレス工程である製本のみ扱っている会社もあれば、デザイン・企画といったプリプレスのみを扱っている会社もあります。首都圏の印刷会社の業種が分散しているのは、それだけ印刷会社が多いからでしょう。

それに対して、地方の印刷会社は首都圏より規模が大きく、複数の工程・業種を扱っているところが多いです。そのような地方の会社が、都心部に進出していくために、首都圏の印刷会社を複数買収するケースがあります。

(2)強みを持った地方都市の印刷会社が買収されていく

地方にしっかりとした基盤のある印刷会社は、様々な取引先と直接取引をしているケースが多いです。また、地元でのブランドや信頼もあるため、大手や中堅の印刷会社が、積極的に買収ターゲットとするでしょう。

地方の堅調な印刷会社は、創業者のカリスマで会社を大きくしてきたでしょうから、後継者の育成が上手くいっていないケースも散見されます。そのような会社は、ビジネス的に堅調であれば、今後進んでいく業界再編において、積極的に大手傘下になるでしょう。雇用も守られ、売手、買手双方にメリットがある話になる可能性が高いといえます。

4.印刷会社を買収する3つのメリット

では、買手から見たメリットを考えてみましょう。

印刷会社を買収するメリットは、以下の3つです。

1.売上規模を大きくすることができる
2.今までできなかった印刷ができるようになる
3.買収先の顧客を入手できる

上記3点を強化するにせよ、買収を検討する会社が保有する輪転機の種類、繁忙期の有無、最終事業者との直接取引の量を重点に確認すべきでしょう。保有輪転機によって、出来る仕事や繁忙期が容易にイメージ出来ますし、その機械が老朽化しているのであれば、利用状況を入念に調査すべきです。

5.印刷会社が事業承継を成功させるためのポイント

印刷会社が事業承継を成功させるためには、買手・売手双方とも押さえておくべきポイントがあります。

(1)買手は買収する意思をしっかりとアピールする

印刷会社を買収したいと考えている場合、定期的に付き合いのあるM&A仲介会社などに、自社の特徴や探している会社の特徴を頻繁に伝えて、買収の意思を積極的かつ定期的にアピールすることが大切です。そして、案件を紹介されたら、どの会社であっても門戸を広げて検討してみるという姿勢を持つ必要があります。そうしなければ、たくさんの情報を手に入れることができず、良い情報を見逃してしまう可能性が高いからです。
確かに近年、M&Aを仲介する新興業者も増えてきたため、全く意図していなかった売手を紹介されることもあります。しかし、そのような話であってもいつでも検討するという姿勢を持っておくと、結果的に良い案件に巡り合える可能性が高くなるでしょう。

M&A仲介会社以外で情報を探索するとなると、M&Aのマッチングサイトを利用し、売手を探す手段もあります。また、自社でリストを作り、手紙を書いて、直接相手と会ってダイレクト交渉をするという地道な方法もあります。どの方法が正解という訳ではなく、会社に合った方法で売手を探すと良いでしょう。

小職の経験則ですが、M&Aに関心の高い会社は、従業員に対してM&Aの情報が持ち込まれた場合の対応を決めているように感じています。感度の高い会社程、何処の部署に情報を持ち込んで欲しいのか、直ぐに教えてくれる一方、感度の弱い会社は、直ぐに電話を切られてしまうことが多いです。そういう会社の社長は、ご自身がM&Aがしたいと思っていても、良い情報が集まることは少ないでしょう。

(2)売手はセラーズデューデリジェンス(事前準備)を行う

売手が何らかの強みを持った会社であればすぐに売却出来、かつ高値で売却できます。しかし、多くの印刷会社はそうではないとお考えになる経営者様も多いでしょう。

できるだけ早く売りたいという気持ちは分かりますが、私たちはどの業種の事業承継であっても、まずは売手が行うデューデリジェンスである「セラーズデューデリジェンス」を実施するよう勧めています。売却前に自社に問題点がないかを調査し、売手がどのような会社で、どのような取引先が何件あるか、また、組織に属している人やキーマンなど、決算書では見えない会社の状況を全て挙げ、長所となる点を探していくのです。

特に印刷業界では、20年前の設備を現在も使用している場合もあります。従来の印刷機械と近年の印刷機械では、印刷スピードや印刷にかかるコストが大きく変わってくるため、設備面に関しても入念に調べておきましょう。

セラーズデューデリジェンスを行うと、会社の現状を客観的に把握できるようになるため、無理に売上を上げていないかどうかや、採算が合っていない原因などを把握できるようになります。また、経営改善が必要かどうかも調査しておくことで、思い通りの売却価格にならない可能性があることも理解出来るでしょう。これを行うことで、事業承継のタイミング、そのために必要なことが整理でき、結果、良い条件を得やすい会社に整えていくことが可能です。

もちろん、独自にセラーズデューデリジェンスができないようであれば、私たちがお手伝いします。セラーズデューデリジェンスにかかる期間は、必要な情報が揃っていれば、1、2週間程度です。また、輪転機などの設備が少ないような小規模な印刷業者の場合は、調査とヒアリングを含めて2〜3日でざっくりですが完了できます。ただし、セラーズデューデリジェンスに正解はないため、どこまで調査するかは売手次第です。

6.M&A仲介会社を選ぶ際のポイント

新聞

M&A仲介会社を選ぶ際のポイントは、以下の3つです。

1.業歴の長さ
2.M&Aに携わった件数
3.担当者の人間性

これらを意識してM&A仲介会社を選ぶことで、納得のいく事業承継ができるでしょう。

(1)業歴の長さ

M&A仲介会社の業歴の長さは絶対条件です。長くM&Aに携わっているということは、それだけ経験値が高くノウハウが蓄積されているということです。そのような会社は、必ず強い購買意欲を持ったストロングバイヤーを顧客として抱えているため、条件に合った売買相手を紹介してくれる可能性が高くなるのです。

(2)M&Aに携わった件数

M&Aの経験数が多いということは、M&Aのノウハウとして普遍的なものを持っているため、スムーズに売買する方法や、売買価格を瞬時にイメージできるでしょう。そのため、過去に携わったM&Aの実績数を正確に公表しているM&A仲介会社を選ぶようにしましょう。

(3)担当者の人間性

担当者によっては、急いで売買相手を見つけて早く契約を成立させようと考えている人もいます。値段よりもどのような人が承継してくれるのかを気にしている経営者も多いため、経営者のニーズを最優先に考えて会社を紹介してくれる担当者に仲介を依頼した方が良いでしょう。

M&A仲介会社によっては「過去に3か月で売買を成立させました」と実績を掲げているところもありますが、そのような公表方法には疑問があります。売手の経営者様は、何年もかけて大切に育ててきた会社を、短期間で売却したと宣伝されたいでしょうか?経営者の気持ちを大切にしてくれる担当者を探し、安心して事業承継を行いましょう。

7.印刷会社を事業承継する場合の注意点

契約

印刷業界には特別な許認可が無い一方、工場をお持ちの事業者様は多いと思いますので、工場をお持ちの場合は、土壌汚染の有無を確認しておくことが大切です。印刷会社は、輪転機にインクや油を大量使います。そのため、万が一印刷会社を買収した数年後に、その会社の土地を売却することになった場合、土壌汚染が発覚すると思わぬトラブルが発生する可能性があります。土壌調査は、専門家に依頼して調査してもらうのが一般的ですが、土壌調査をしない場合、買収前に実際に土地の状況を確認しておいた方が良いでしょう。

その他にも、消防法や建築基準法が遵守されているかどうかなど、基本的な部分を抜け目なく確認し、問題があれば事前に解消しておく必要があります。

このような注意点を瞬時に思い着けるかどうかというのは、今までどれだけM&Aに携わってきたかによって大きく変わってきます。実績の多いM&A仲介会社を選ぶことで、リスクを回避しながらM&Aができるようになると思います。

8.印刷会社のM&Aにおいて選択されるスキーム

交渉

M&Aによる事業承継を行う場合、他の業界と特別変わらず、株式譲渡、事業譲渡、会社分割等が選択されます。税金面の違いがあるにしても、それによって大きな変化は起こりません。そのため、売買する当事者の状況によって、M&Aを成立させるために最も良い方法を選択しています。

印刷業界には経営が厳しい会社が多いため、金融調整を行う私的整理や、民事再生等の法的整理を前提とするM&Aを選択することもあります。これらのスキームを利用することで、買手は過剰債務だけをカットして、事業承継ができるというメリットがあります。但し、通常のM&Aと異なり、売手の資金繰り等の理由から、時間的に充分な検討期間が得られにくい可能性もあります。

9.まとめ

印刷業界は経営が困難になっている会社が多く、買手が見つかりづらいという状況があります。そのため、M&Aを考えている場合、会社の運営状況がしっかり見えるようにすることが大切です。経営者だけでは難しいようであれば外部のコンサルタントを利用するのも手です。

ここで説明した内容を参考にして、納得のいく事業承継を実現させてください。

話者紹介

岡村 新太
かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社
岡村 新太

株式会社福岡銀行を経て、かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社に入社。
現在は主に、M&Aアドバイザリー、事業再生コンサルティング、財務分析業務を担当。
兼務するかえで税理士法人では、国内・外資系企業の税務業務に従事。
前職においては、有力地場中堅企業への事業性融資の担当、並びに事業承継を起点にオーナー一族の相続・節税対策、資産運用コンサルティングといったファミリービジネスに注力。
早稲田大学人間科学部卒。

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