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車販売業界M&A OBDへの対応とは?注意点やポイントを詳しく解説

はじめに

1960年代以降、モータリゼーションの発達で拡大を遂げた自動車業界。自家用車のIoT(Internet of Things)連携や車検制度へのOBD(On-board diagnostics)の活用などにより、業界自体が変化のタイミングに差し掛かっています。

車販売業界の中小企業の中には、オーナーの高齢化や業界の変化などの影響で、事業承継するか、あるいは廃業するかの選択を迫られている会社も少なくありません。
今回は、車販売業界の事情に詳しい株式会社フォーバルの山田さんにお話を伺いました。


1.車販売業の業界動向を解説

カーセンター

OBD検査の導入を控え、その変化への対応などの課題を抱える車販売業界の動向を俯瞰して見てみましょう。

(1)車販売業とは

車販売は、基本的に新車販売と中古車販売の二種類があります。さらに新車販売は、ディーラー直と独立系販売会社に分かれます。特にM&Aの対象になるのは、ディーラー直ではなく独立系販売会社です。

車販売会社は、メインとなる車の販売に色々なことをリンクさせてビジネスにしています。車の販売とその車に関わる保険関係と車検整備という3本柱を基本にしています。

(2)車販売業界の動向

1960年代以降、モータリゼーションの発達に伴い、マーケットが右肩上がりに推移しました。そして、ガソリン車がハイブリッド車や電気自動車になり、様々なタイプの燃料自動車に変わろうとしています。もはや、今後の自動車販売はこれまでの延長線上にはないと考えられるでしょう。

また、2020年4月の法改正で、従来の分解整備に加えて先進安全自動車に対応するため電子制御整備も整備項目に追加されました。おれに合わせて2024年からは車検制度にOBDを活用した検査が導入されます。OBDとは、自動車の各パーツに取り付けられるECU(Electrical Control Unit)にプログラミングされた自己診断機能のことです。これが車検制度に導入されれば、業界の動向も大きく変わらざるをえません。

(3)情報化が進んで車販売業者の儲ける仕組みが変化

これまで、車販売会社においては例えば50万円で買い取った車が100万円で売れるという場合もありました。なぜなら、一般のユーザーには中古車市場の相場を含む詳細な情報を知ることが難しかったからです。

しかし、現在は中古車関連の情報がかなりオープンになっており、以前のように販売会社が大きい利益を得ることは困難になりました。

これにより、現在の車販売業界は車の販売に加えて保険と車検に強いことが必須条件となってきています。車を売った瞬間に儲けるのではなく、売った後から儲けるようになってきたのです。

(4)2〜3割の整備工場が消える?変わりゆく車検制度

整備工場に目を向けると、車検制度の変化によって存続が危ぶまれる現状が浮かび上がります。

2024年からの車検へのOBD検査で、先進安全技術のエーミング(機能調整)作業を省略した車両は車検に通らないことが明らかになりました。エーミング作業とはASV(先進安全技術自動車)が正しく作動するための校正作業です。

工場内に一定の距離を確保できていても、センサーが確実に反応するのかを確かめる車間距離を必要とするケースもあり、狭い整備工場では検査が難しくなります。また、試験に必要なスキャンツールも数百万円ほどかかります。助成金制度もありますが、小さい整備工場であれば現実的には厳しいといえるでしょう。

車検制度の変化により、以前のような板金を叩いたりボルトを締めたりという職人の仕事内容も変わっていくでしょう。車を整備するということに、いわば電気工事士のような能力が求められるのです。

2024年に車検制度が変わるタイミングでは、現在7万社以上ある中小整備工場の2〜3割がなくなると予想されています。もっとも、この中には後継者がいないという理由による廃業も含まれるでしょう。

今後の業界の行く先を見据えれば、現状の人材力では対応できないことも明確なので、売却するよりは廃業を選ぶことが少なくないようです。また、整備工場の場所は土壌汚染の可能性がほかの業種に比べて高いので、売りづらいことも整備工場の廃業を後押しする要素であるといえます。

(5)アフターマーケットの変化

新車が販売された後の、いわゆるアフターマーケットも変化しつつあります。車販売業者が車を販売した後は、メーカーが購入者の車を自社がリリースするアプリと連携させるようになってきました。

このアプリはIoT(モノのインターネット)のツールで、購入者はスマホを介して自分の車の状態を知ることができます。アプリによって何か通知があった場合、購入者は整備工場ではなく直接、販売元のディーラーに行くのです。

そのディーラーで車検を繰り返し、また新しい車を買うというパターンが生まれます。この結果、ディーラーがユーザーを囲い込んでしまい、ユーザーは中古車マーケットに向かわなくなるのです。

2.車販売業界におけるM&Aの現状

売上規模が大きい販売会社は時代の変化に対応し、保険に詳しい人材や新しい車検に対応できる人材を雇えます。それに対応できない多くの会社は、ひっそりと消えていくということになります。

この業界の特徴として、そもそも自分の引退後に会社を存続させようという意識を持つ中小企業オーナーが、他業種よりも少ないことがあげられます。そのため、廃業を選ぶ企業が圧倒的に多く、買手から声がかかって初めて売却を考える可能性がでてくるのです。

このような状況で、中古車販売のみ扱う企業はM&Aの対象としてあまり魅力的ではありません。しかし、自社の指定工場で車検が通せるというのなら価値があります。車販売と整備がセットでできるところなら、M&Aの買手には魅力的に映るでしょう。

また、徐々に市場規模が大きくなるカーシェア業界からの引き合いがあります。これは、M&Aにより整備工場を買い取って、カーシェアを展開しているエリアで使用する自動車の整備を自社で行えるようにするという発想です。

3.車販売業界M&Aに必要なこと

キーを渡す場面

車販売会社がM&Aの対象となるには、整備工場を持つことが非常に大きなポイントであるといえます。自社で車検ができるかどうかということと、保険を車とセットで販売できる体制になっているかということが重要です。これが満たされていれば、車を売っても売りっ放しではなく、ユーザーを囲い込める体制をつくることができます。

また、整備士の平均年齢が若い会社は期待ができますが、整備士の平均年齢が50〜60代になると厳しいといえるでしょう。若い整備士は数が少ないので、貴重な存在です。さらに、指定工場であり続けるためには、検査員が何人以上いるなどの要件を満たす必要もあります。

4.車販売業界におけるM&Aの流れ

車販売業界のM&Aとしては、同業によるエリア拡大や売上規模拡大を目的とする買収があります。ほかには、大手の損保会社による中古車販売業者や保険を扱っている整備工場の買収です。ここからは、車販売業界のM&Aの流れを説明します。

(1)面談

M&Aを検討する売手企業は仲介業者に相談をします。仲介業者は、まずは面談で現状を聞き取りしたり、決算書を分析したりします。
その際に着目するのは、車の販売以外に保険の売り上げや整備工場のリフト数、年間車検台数、整備士の人数などです。これらを踏まえて仲介会社と今後の進め方を決めていきます。

(2)買手企業探し

仲介業者では、業界内のネットワークでM&Aを希望する売手企業や買手企業からのリクエスト情報が蓄積されています。相談があれば、仲介業者はネットワークを通じて売手企業が希望するエリアや条件に見合うものを探します。

(3)トップ面談

マッチングする売手と買手があれば、秘密保持契約を結んで情報を提供します。売手と買手双方の意見をすり合わせた上でトップ面談を実行します。双方に好感触があれば、お互いの会社や工場を訪問します。

(4)デューデリジェンス

双方の合意が得られれば基本合意契約をした後、デューデリジェンスを行って対象企業の価値とリスクを算定して売却価格を算出します。

(5)最終契約

トップ面談からだいたい2〜3カ月くらいかけて、価格交渉などの調整を行い、折り合いがつけば最終契約に至ります。

5.まとめ

カーセンター

車販売会社は、新たな車検制度やアフターマーケットの変化により、旧来の体制では立ち行かなくなってきています。業界の傾向としては、多くの中小企業オーナーが廃業を選択しがちです。とはいえ、その中でも事業の継続や発展を望むオーナーも当然います。新たな車検や保険販売に対応する準備を進めれば、良い条件のM&Aにつながる可能性が見込めるでしょう。

話者紹介

山田さん
株式会社フォーバル
事業承継支援部 山田健一

大手インターネット通販会社にてマーケティング業務を経て、大手M&Aアドバイザリー会社にて上場企業の経営戦略立案や数多くのM&Aを支援。その後、小規模企業の事業承継支援のため、2016年に(株)フォーバルの事業承継支援事業立上げに参画。日刊自動車新聞、日経トップリーダー等で多数コラム執筆の実績あり。

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