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新型コロナウイルス禍でのM&Aはどうなっているのか?現状と展望、M&Aをする際の注意点を解説

2020/11/27
更新日:2021/06/01

はじめに

日本だけでなく世界各国において、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)の影響は深刻かつ甚大です。現時点では終息の気配は見えず、今後の見通しも立っていません。コロナ禍が社会全体の仕組みや経済構造、ライフスタイルの変革のスピードを加速させている状況があるといえそうです。大きな転換期にあって、M&Aの現状はどうなっているのか、そしてM&Aを進めていくうえで注意すべきことはなにか、M&Aの専門家であるM&Aベストパートナーズの松尾直樹さんに解説していただきました。


1.新型コロナウイルスがM&A市場に与えた影響

無人の会議室

新型コロナウイルスがM&A市場にどのような影響を与えているのか、まずはこれまでの流れと現状を説明しましょう。

(1)2020年4月から5月にかけてM&Aは大幅に減少

M&Aにおいてもコロナの影響はありました。特に緊急事態宣言が発令されていた2020年4月から5月にかけては、M&Aが成立した件数はかなり落ちこんでいます。M&Aを途中まで進めていた案件に関しても、いったん交渉を中断する企業も目につきました。買うことを検討されていた企業が買収計画の見直しをしたり、延期したりというケースが少なからずあったのです。しかしそうした状況がそれほど長く続いたわけではありません。6月以降、少しずつ改善の動きが見られました。

(2)2020年6月以降M&Aはむしろ増加

2020年4月5月に止まっていた分を再開する動きもあって、6月以降はむしろM&Aの件数は増えつつあると感じています。もちろんコロナ禍によって、先行きが不透明になっているから、買収を控えると判断する企業もありますが、大きな転換期だからこそ、攻めの姿勢でいこうと判断する企業もないわけではありません。

会社を売りたいという経営者は確実に増えています。これまで会社を売却するかどうか迷っていた経営者が、コロナ禍によって背中を押されて、売却を決断したというケースも少なくありません。将来の展望が見通せなくなったので、会社を売って、引退することを決意したということもあります。

M&A市場全体としては、コロナ禍の影響は確かにありましたが、6月以降、M&Aの件数は増えつつあり、トータルとしてはそこまでマイナスの影響は大きくないといえます。

2.コロナ禍におけるM&A、業界別の影響の受け方

無人の野球場の観客席
コロナ禍の影響をはっきり受けた業界、ほとんど影響を受けていない業界、むしろM&Aが活発化した業界と、明暗がはっきり分かれている状況があります。ここではコロナの影響でM&A件数が減った業界と増えた業界について説明しましょう。

(1)コロナ禍の影響でM&A件数が減っている業界

コロナ禍の外出自粛の影響が大きかった業界ではそうした状況を反映して、M&Aの件数も少なくなっています。特に影響が大きかったのは飲食店、マッサージなどの店舗、店舗の企画開発、旅館、ホテルなどの旅行業、イベント企画、アパレルなどです。それらの業界では売手の数は増えているのですが、コロナの影響がいつまで続くかわからないため、買手が見つからない現状があります。1、2年でこれらの業界への需要が戻る保証がないため、買手としても判断が難しいのです。

(2)コロナ禍の影響でM&A件数が増えている業界

コロナ禍以前よりもM&Aの件数が増えているのはやはりコロナ禍によって注目されている業界です。特に買手にとって人気の高いのはIT系、EC(ネット通販)などでしょう。医療業界、医療器具関連企業、ドラッグストアなども注目を集めています。

一時期、買収の検討を凍結していた企業のM&Aへのアプローチも少しずつ活発化してきました。コロナ禍の影響で本業の業績が伸びていない企業がIT業界への進出を考えて売手を探しているケースも目につきます。

もうひとつ、目につくのは大手企業が市場の変化に対応するために、M&Aによって、IT系、ECなどの企業を子会社化する動きです。卸売会社、健康食品メーカー、医薬品メーカーなどがEC(ネット通販)、D2C(自社による直販をネット通販で実現するシステム)領域での新規事情展開のためにM&Aを活用するケースも増えることが予想されます。流通を始めとする産業構造の変化がM&Aを促進する可能性が高いのです。

3.コロナ禍によって増えているスモールM&A

デスクの上のパソコンやタブレット

M&A・事業承継を検討している方へ

当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。

コロナ禍がM&Aに影響を及ぼした現象のひとつはM&Aプラットフォーム市場がさらに注目を集めるようになったことと、そうした状況に伴って、スモールM&Aが増えているということでしょう。その要因と現状を解説していきます。

(1)行政も後押しするM&Aプラットフォーム市場

近年、さまざまなM&Aプラットフォームが登場し、利用者の数も着実に伸びています。中小企業庁が2020年3月31日に全面改訂版として発表した「中小M&Aガイドライン」の中に「M&A プラットフォーマーはインターネットを中心に、譲り渡し側である後継者不在の中小企業及び譲り受け側の双方に向けて、中小 M&Aに係る意識醸成を図るために、各種のコンテンツや支援ツールを提供していくことが望まれる」という文章があり、3ページにわたって活用のガイドラインが掲載されているのです。さらにM&Aプラットフォームのシステム利用料が「経営資源引継ぎ補助金」の対象となりました。

出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン」(2020年3月)

行政の後押しだけでなく、さまざまな分野でリモートが活用されるようになったこともM&Aプラットフォーム市場活況の要因として挙げられるでしょう。コロナ禍により対面での交渉が難しくなったこともM&Aプラットフォーム利用の動きを加速させているのです。

(2)スモールM&Aが活発化

M&Aプラットフォームの環境が整ってきたことによって、個人がM&Aを検討できる機会が増え、スモールM&Aも活発化してきています。個人が会社を買うことのハードルが下がってきた状況がある一方、コロナ禍によって会社を売りたいと考える経営者が急増し、スモールM&Aにおける需要と供給がともに増加傾向にあるのです。

4.コロナ禍におけるM&Aの注意点

ノートパソコンと人のつながりを描いたイラスト

コロナ禍という状況の中で、中小企業の売買を中心としてM&Aの動きが活発化してきています。どんなことに気をつけなければいけないのか、買手と売手の立場で説明します。

(1)M&Aの買手が注意すべきこと

コロナ禍の影響を大きく受けた業界では、このタイミングで会社の売却を決断する経営者も増えています。そうした状況を受けて、通常時よりも希望売却価格の低い物件がM&A市場に出回るケースも出てきました。

個人で会社を買おうと考えている方もいらっしゃるでしょう。しかし安いからといって、安易に購入を即断するのは避けたいところです。飲食業界について知識のない個人がいきなり飲食店を買ったとしても、店の経営に成功する確率はかなり低くなります。採算の見通しが立たずに売りに出ている物件を買っただけでは、状況が改善されるわけではないからです。購入代金が無駄になるだけでなく、負債を背負うリスクもあります。慎重に検討することが求められるでしょう。

(2) M&Aの売手が注意すべきこと

まず現在M&Aの交渉が進行中の売手が注意すべき点を説明しましょう。コロナ禍の影響によって、M&Aの交渉が長期化している例もたくさんあります。長期化する理由のひとつとしてあげられるのは、コロナ禍によって、今後の業績の予想が困難になってしまう場合です。コロナ禍の影響が顕著になる前に交渉がスタートして、その後、状況が変化したことによって、見直すことになったという例もあります。早期の成約にむけて、多少の譲歩が必要になる場合もあるでしょう。

これから買手を見つけるという売手の方は厳しい状況になる可能性があることも踏まえておいてください。コロナ禍で業績不振となって、会社を売ろうとしても、買手を見つけることは簡単ではないことが予想されます。なぜならば、自分が買いたいと思える会社でなければ、他人も買いたいと思わないからです。

売手にとって会社を売るベストのタイミングは経営がうまくいっている好調な時期ということになります。しかしそのタイミングで実行するのは簡単なことではありません。会社が好調である場合、まだまだ続けられると判断してしまうケースが圧倒的に多いからです。いい時こそが売り時ということを念頭においてください。

コロナ禍という大変な状況の中ですでに業績が悪化し、売却を検討しているが、買手が見つからないケースもあるでしょう。買手の視点に立ち、買いたいポイントを探してアピールすることも考えたいところです。もし、コロナ禍の前まで順調に経営していたのならば、なんらかの強みがあるはずです。立地、人材、技術、設備などなど、強みを見つけることで、活路が開ける場合もあります。廃業を決断する前にM&Aで売却できる可能性がないのか検討してみましょう。

5.コロナ禍におけるM&Aの事例

客が入っていないカフェ

現時点ではコロナ禍という状況がM&Aの成立を左右した事例に関わったことはまだありません。しかし通常行われているM&Aでもコロナ禍の影響を感じることはあります。いくつかの例を紹介しましょう。

(1)コロナ禍の中で売却を決断

これまでは会社を絶対に売らないと言い張っていたある建設関係の会社の経営者が、コロナ禍がきっかけとして、売却に前向きになったというケースがありました。先々、どうなるかわからないので、体力のあるグループ会社の傘下に入ったほうが、社員を守れるのではないか、というのが決断の理由でした。現在、グループ会社と交渉中です。

M&Aを決断するうえで、将来への不安と社員の雇用を守りたいという気持ちが大きな要因となるケースはかなりあります。

(2)コロナ禍の中で売却に苦戦

こちらは結果が出ていない設計施工会社の例です。店舗の施工をやっている会社なのですが、9月以降まったく受注がないため、9月までに売りたいとの意向を持っていました。今後の受注がないことが大きく響いて、買手が見つかっていない現状があります。従業員が30~40名いて、長期的に雇用されていた方が多い会社ということもあり、なんとか売却先を見つけかったのですが、簡単ではありませんでした。

6.コロナ禍以降のM&Aの今後の展望

ビジネスマンが映っているモニター

先行きが不透明な状態はしばらく続きそうです。しかしM&Aに関しては大手による大型のものをのぞいては、すでに増加傾向が見られます。今後、M&Aがどうなっていくのか、今後の展望について、解説します。

(1)M&Aの需要は今後さらに増えることが予測される

コロナ禍によって、買手が弱気になるという傾向は見られるのですが、売手は増加しているので、M&Aは今後、増えていくと思われます。

ここ数年、企業の経営者の高齢化と後継者不足が問題となっており、M&Aを選択肢として入れる経営者が増えているという背景もあります。M&Aによって会社を売るやり方が世の中全般に浸透してきたことも大きいでしょう。M&Aの成約件数が増える流れは当分続くことが予想されます。

(2)業界再編

コロナ禍によって、産業構造や市場が変化してきています。そうした状況に対応すべく業界再編の動きが加速していることもM&A件数の増加につながっていくでしょう。

7.まとめ

ノートパソコンの画面から飛びだした手との握手

コロナ禍によって、将来が見えないこともあり、会社をたたむ決断する経営者の方もたくさんいるでしょう。しかしそうした状況の中だからこそ、M&Aの意義が大きくなります。廃業ではなく、M&Aを選ぶことによって、従業員の雇用を守り、資産を残すことが可能になる場合もあるのです。コロナ禍という先行きが不透明の時代だからこそ、さまざまな可能性を模索することをおすすめします。

話者紹介

松尾直樹さん
株式会社M&Aベストパートナーズ
代表取締役副社長 松尾直樹(まつお なおき)

大学在学時、箱根駅伝に2度出場。卒業後、大手証券会社にて富裕層向けのリテール営業を経験した後、大手M&A仲介会社のM&Aキャピタルパートナーズに転職。おもに不動産・建設業界を担当して、事業承継及びM&Aアドバイザリー業務に従事。不動産仲介、管理、ゼネコン、住宅メーカー、設備工事会社等における成約実績を多数有する。2018年、株式会社M&Aベストパートナーズに参画。

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