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M&Aで重要な「表明保証保険」について知りたい! メリットやデメリット、結ぶまでの流れ

2019/10/07
更新日:2021/02/26

はじめに

M&Aを検討している方は、売買の方法を調べていると「表明保証保険」というワードに遭遇することがあるかもしれません。表明保証保険とはどのような保険で、どのような人に必要なものなのでしょう。弁護士法人プラム綜合法律事務所の村永俊暁さんに教えてもらいました。


1.表明保証について

村永 俊暁さんのインタビューシーン1

表明保証とは、「契約書に表明保証事項として規定されている事実が真実である」ことを表明し、保証すること。表明保証保険は、M&Aの手続きで「表明保証した内容が真実とは言えない」ということに遭遇したときに、損害を補償してくれる保険です。

(1)表明保証の意味

一般的に、株式譲渡契約書などM&Aに関する契約書には、表明保証事項が規定されます。表明保証とは、契約当事者が自身あるいは対象会社、またはその事業に関して、過去や現在、または将来において、ある事物や出来事などが真実であることを表明し、その内容を保証するものになります。

M&Aにおいては、主に売手が買手に渡す情報が真実であることを保証することと言えるでしょう。例えば、M&Aのために売手が「この会社は事業に必要な資産を保有し、適法に使用している」と保証したにも関わらず、不動産などの資産を不法に使用していたことが真実だった場合、表明保証に違反したことになります。

(2)表明保証の機能

M&Aにおいては、「表明保証条項に違反していないこと」がクロージングの前提条件となり、また、クロージング前には解除原因とされるのが一般的です。そのため、表明保証違反が判明した場合、クロージング前であれば買手は代金を支払うことなくM&Aの契約を解除できます。さらに、それによって損害が発生している場合には、売手に補償してもらうことも可能です。ただし、ほとんどの場合、表明保証違反が判明するのはクロージングの後なので、その際は金銭による賠償のみが行われることになります。

2.M&Aのリスクを低減する表明保証保険

表明保証保険には、M&Aを行う企業のリスクを低減してくれる役割があります。

(1)表明保証保険は損害を補償してくれる

契約書に記載された表明保証事項に違反があった場合、被保険者が被る経済的損失を第三者である保険会社が補填してくれるのです。

(2)表明補償保険の種類

表明保証保険には、売手が保険契約者となる「売主用表明保証保険」と、買手が保険契約者となる「買主用表明保証保険」があり、基本的にはどちらか一方が加入します。

M&Aが実施された後に何らかのトラブルがあった際、「買主用表明保証保険」に入っていた場合は、買手が売手の代わりに保険会社に連絡して補償を受けることができます。M&Aにおいて表明保証保険が利用されるのは、もっぱら「買主用表明保証保険」。逆に、売手が「売主用表明保証保険」に加入するケースは、M&A締結時に条件の中で義務として定められる場合のみと言っても良いかもしれません。

3.表明保証保険のメリット

村永 俊暁さんのインタビューシーン2
表明保証保険には、売手と買手それぞれにメリットがあります。

(1)売手側のメリット

①表明保証違反により補償リスクを回避

もし表明保証に反してしまった場合でも、表明保証保険を適用することで補償を請求されるリスクを回避できます。

②係争を回避、買主との関係をこじれさせない

表明保証を巡り買手とトラブルになったとしても、表明保証保険があれば保険会社が補償リスクを負ってくれるため、係争を回避できることがあります。M&A実施後も売手が会社に役員や顧問として残る場合には、買手との関係をそれほどこじらせずに済むというメリットがあります。

(2)買手側のメリット

①スムーズなM&A交渉が可能

デューデリジェンスをきちんと行うことは大前提ですが、万が一の際にも保険会社が補償をしてくれるため、売買にまつわるストレスやプレッシャーが軽減されます。

②表明保証違反への備えになる

万が一M&A実施後に表明保証違反があった場合に発生する損害へのリスクに対して、備えることができます。

③補償請求がしにくい相手との取引に使える

売手が外国籍、あるいは資金の無い個人である場合など、損害賠償の請求や回収が煩雑であったり困難であったりする場合の備えになります。

4.表明保証保険のデメリット

村永 俊暁さんのインタビューシーン3

M&A・事業承継を検討している方へ

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表明保証保険のデメリットは、主に保険料および引受審査費用が高いことにあります。

①保険料分のコストが発生

表明保証保険を契約する際には、当然、保険会社に支払う保険料が発生します。保険の補償内容を広げれば、保険料も比例して大きくなるうえ、保険に入るための引受審査も高額になります。

②英訳する手間がかかる

日本国内の保険会社の表明保証保険であっても、保険証券は英文で発行され、引受審査は英語で行われます。そのため日本国内のM&A案件の場合英訳の手間がかかり、今日では保険の利用は日本の会社が海外の会社を買収する際のクロスボーダー案件にほぼ限定されているのが現状です。

5.表明保証保険が役立つ場合

村永 俊暁さんのインタビューシーン4
表明保証保険が役に立つのは、主に以下のようなケースです。

①デューデリジェンスで瑕疵を見抜けなかった

M&Aに際しての問題点は、デューデリジェンスで洗い出すことが大前提です。しかし、財務書類の内容が売手と買手に異なる解釈を与えるものだったり、設備の状態が申告と異なっていたり、クレームを隠していたりした場合には、表明保証保険が役立つことがあるかもしれまません。

②売手に補償能力が無かったり、海外の企業を買収したりする場合

一般的に、表明保証保険に入らなくてもM&Aは可能です。しかし、万が一のときに売手に補償する力が無かったり、海外にいるため補償を求めるのが困難だったりした場合に、保険会社が補償してくれることは買手の安心につながるでしょう。

表明保証保険加入の際にかかる金額と回収のコストをよく天秤にかけ、自分にとって必要なものかどうかを見極めることが大切です。

ただ、現実的には、国内の中小企業のM&A案件において現在の表明保証保険に加入することは、経済的にも手続き負担の面においても、見合わないことが多いのではないかと思います。表明保証保険はM&Aを推進するものであり、非常に有用な保険だとは思うので今後の発展に期待したいです。

6.表明保証保険を結ぶまでの流れ

表明保証保険に加入する手続きは、約3〜4週間ほどかかります。そのため、以下の保険契約までのプロセスを考慮しながら、M&Aのスケジュールと合わせて考えていくようにしましょう。

(1)保険会社と秘密保持契約を締結

保険会社と秘密保持契約を締結し、対象会社の決算書や株式譲渡契約書のドラフトなどについての情報共有を行います。

(2)保険会社による概算見積書の提示

共有した情報を基に、保険会社から概算見積書を提示してもらいます。この時に、概算見積書は1社だけでなく、複数の会社から提示してもらって比較検討するようにしましょう。

(3)正式引受審査の申し込み

引受審査を行う保険会社が決定したら、正式な引受審査を依頼します。保険会社と引受審査をする際に選任する弁護士などの費用の支払いなどに関する内容が記載された、経費契約(Expense Agreement)を締結。この経費契約締結後は、もし保険契約を締結しなかった場合でも手数料などを支払う義務が発生します。

(4)引受審査の開始(審査に必要な情報の共有)

引受審査を開始するため、デューデリジェンスレポートやマークアップ版の株式譲渡契約書などの情報を保険会社に渡します。この場合、各種資料の原典の提出を求められることがあります。

(5)電話会議(Underwriting Call)

審査終盤には、保険申込者や保険会社、それぞれのアドバイザーが参加する電話会議(Underwriting Call)が開かれます。その際、対象となる企業や M&Aの交渉経緯、デューデリジェンスの結果などについて、保険会社が申込希望者に質問します。

(6)最終的な保険条件の決定

引受審査が完了すると、保険会社から最終的な保険の条件が提示されます。交渉終盤に差しかかった株式譲渡契約書に記載されている表明保証条項を保険会社がチェックし、どの条項が補償可能でどの条項が補償対象外となるのか、または一部制限がかかる内容なのかなどについての説明がなされます。

(7)保険契約の締結

保険契約締結後は保険会社に保険料を全額支払い、保険適用期間が開始されます。

中小企業のM&A案件において、表明保証保険が利用されるケースはごく稀で、ほとんど無いと言っていいかもしれません。M&Aにおいて大切なのは、デューデリジェンスをしっかりと行うことです。ただし、万が一の場合に売手に賠償金の支払能力が無さそうなときには、表明保証保険が役立つことがあります。

保険料が全く負担にならないということはまず無いので、表明保証保険に加入する際は自分に本当に必要なものか、よく考えるようにして加入するようにしましょう。

 


話者紹介

村永 俊暁さん1
弁護士法人プラム綜合法律事務所
弁護士 村永 俊暁(むらえい としあき)

2005年 司法試験(旧試験)合格、2007年 中央大学法学部法律学科卒業、2008年 最高裁判所司法研修所(61期)修了。M&A取引に関する書類の作成・レビューのほか、関係当局との折衝、法務デュー・ディリジェンスなどを行っている。一般企業の法務にまつわる相談、紛争などの対応にもあたる。

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