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株式譲渡制限会社の落とし穴。よくあるトラブルの事例も紹介

2020/04/24
更新日:2021/01/06

はじめに

「株式譲渡制限会社」という言葉はあまり知られていませんが、上場企業以外のほとんど全ての企業は株式譲渡制限会社です。しかしオーナー自身もこのことをあまり分かっていないケースが多く、時としてトラブルにつながることもあります。
株式譲渡制限とは本来何のためのものであり、知らずにルールを破るとどういうことが待っているのでしょうか。今回は株式譲渡制限会社の事情に詳しい名古屋商科大学経営大学院教授でもあり弁護士でもある、植田統さんにお話を伺いました。


1.株式譲渡制限会社とは?

株式譲渡制限会社とは株式を譲渡する際に、取締役会あるいは株主総会の承認がないと譲渡できない会社です。これは会社を設立する時に定款に定められます。基本的に日本に存在する約3,500社の上場企業以外は99.9%が株式譲渡制限会社です。

普通に会社を設立すると、株式譲渡制限会社になるのが通例で、その会社が株式を上場する時に、定款を変えて株式譲渡制限を外します。そうしなければ、自由に株式の売買ができる株式公開会社にはなれません。

2.株式譲渡制限の本来の意義

株式会社というものは株主のものです。ある株主が50%超の議決権を持てば、その株主の一存でその時点の取締役が全員解任されてしまうこともありえます。そのため、知らない人が勝手に株式を持つと困った事態に陥るのです。

それが10%や20%ならそこまで影響はありません。しかし、例えば家族4人が株式を25%ずつ持っていたとしましょう。そのうちの2人が、もし他人から高く売ってくれという相談に乗って、合わせて50%と1株を知らない人に譲渡してしまうと、ほとんどの会社の意思決定をできるようになってしまうので、大変なことになります。

ほとんどの場合非上場会社は株式譲渡制限会社です。会社を作る時は司法書士か弁護士に頼みます。中小企業オーナーの理解がどこまであるかは分かりませんが、意識していなくても譲渡制限会社の定款になっているはずです。

株式譲渡制限とは、いわば知らない株主が勝手に株式を取得し、会社を乗っ取るような不慮の事態を避けるために設けられたルールと考えてよいでしょう。

3.株券発行会社であるかどうかも重要

株券

譲渡制限と関連して問題になるのは、株券発行会社であるかどうかです。平成16年の商法改正以前は、株券を発行することが基本原則でした。このため株式を発行しないのであれば、わざわざ定款に株券不発行の旨を定め、登記簿には株券不発行の旨を登記しなければならなかったのです。

しかし商法改正以降はそれが逆転し、普通に会社を設立すれば株券不発行会社になりました。仮に株券を発行したいのであれば、定款に株券発行の旨を定め、登記簿には株券発行の旨を登記する必要があるのです。

近年においては、株券を発行する会社はほとんどありません。この商法改正の意味合いは、実情に即したものであると考えられます。

しかし、世の中の多くの会社は平成16年までに設立されたものです。中にはきちんと株式不発行会社に定款を変更し、登記を済ませているところもありますが、おそらく半分以上は株券発行会社のままでしょう。
株券発行会社であるにも関わらず株券を発行せずに株式を譲渡し、しかも譲渡承認決議もないケースが多いのです。こういったことが起こると、時としてトラブルが勃発します。

4.株式譲渡制限に絡むトラブル

280万社あるといわれる中小企業のオーナーは、法律問題には詳しくない方も多く見られます。
株式譲渡は、法律上は株主総会ないしは取締役会での株式譲渡承認決議が必要です。しかしほとんどの場合、それが行われません。文句を言う人が出なければそのまま済んでしまうのが現状ですが、法律上は問題です。ここからは、よくある譲渡制限絡みのトラブルを見ていきましょう。

(1)家族間での無効な譲渡

実際には家族間で株を分け合っている場合が多々あります。近頃たまに見受けられるのが、株主と関係が希薄になっている孫の世代が株を引き継いでいる場合に起こるトラブルです。

譲渡承認決議を経ずに株が二代目三代目に譲られているのならば、法律的には全て無効です。他の正当な株主からひっくり返されるケースもあります。
本来は定款に書いてある通りに、株主総会あるいは取締役会で譲渡承認決議をして、株主総会議事録や取締役会議事録に残し、その上で譲渡するのが正しいやり方です。

(2)資産価値が上がった場合

例えば会社が所有している土地が再開発となり、高層マンションができることになると、それまでは大して価値のなかった土地が、いきなり10倍以上に上がるような状況になったりします。そんな場合に株主は少しでも多くの権利が欲しいために、株主間で争いが起こりがちです。

争いが起こると、法律的な本当の株主構成がどうなっているのかということが問題になります。譲渡承認決議を得ない譲渡が発覚すると、その譲渡は無効になり株主構成ががらりと変化します。

実際のところは、トラブルとなるのは1000社に1社あるかどうかぐらいの確率かもしれません。しかし実際に問題が起きた時には、会社の支配権をめぐって大トラブルになります。

5.顧問税理士も会社法は専門外

中小企業の場合、顧問税理士はいますが、顧問弁護士がいる会社は稀です。こうした会社では、法務を税理士に任せているところが多く、株式譲渡承認決議が抜けてしまうことがあるのです。

もちろんきちんとやっている税理士もいますが、税理士は法律のプロではありません。しかし、会社の方は税理士がやっているので間違っているとは思わず、あとで問題が発覚するに至るのです。

6.本当の株主構成を確認する重要性

会議

中小企業は戦後、1950年から1970年ぐらいまでの間に作られたものが多いのですが、会社を立ち上げた時に20~30代であったオーナーはもはや60~70代の高齢者であり、事業承継問題が起こってきています。

オーナーが自分の息子や妻にちゃんとした法的手続きを踏まずに株式を譲渡しているケースが多いのですが、オーナーが生きている間は問題が起こりません。老後の資金にするために会社を売却しようとする際に、初めて株式の帰属の問題がフォーカスされるようになるのです。

まずは、オーナーが自社株式の株主構成がどうなっているかを知る必要があります。当初はオーナーが100%を所有していた場合が多いと思いますが、それを徐々に家族や親戚に譲っていく段階で、譲渡承認決議が抜けていた、あるいは株券を交付していなかったという場合が多いのです。

遡って取締役会議事録・株主総会議事録を作ること、株券不発行会社にしてしまうことに、各役員・各株主が同意してくれれば問題ありません。しかし、最近では家族や親戚であってもそれを認めないというケースも見られます。そうなると、会社を売却しようと思っても、売却することができません。

最終的な解決方法は訴訟によって株式の帰属を明確にするか、金銭で解決するかのどちらかです。訴訟になると時間がかかる上、争いを抱えている会社が売れるわけもありません。

7.まとめ

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当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。

あまり知られていない株式譲渡制限・株券発行のルールは、時として厄介なトラブルを生むことが分かってきました。それを知らずに法律的な瑕疵を抱えたままであれば、将来の事業譲渡やM&Aにおいての障害となりえます。

中小企業オーナーはトラブルを未然に防ぐためにも、自社の本当の株主構成を今すぐにでも確認し、問題が起こりそうであれば会社法に詳しい弁護士に相談して、しかるべき対策を施しておくべきでしょう。

話者紹介

植田統(うえだおさむ)Osamu Ueda

弁護士、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授

1981年に東京大学法学部卒。東京銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。アメリカ・ダートマス大学MBAコースへの留学を経て、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン(現PWCストラテジー)入社、経営戦略コンサルティングを担当。その後、野村アセットマネジメントやレクシスネクシス・ジャパン株式会社の社長を経て、弁護士になる直前まで、アリックスパートナーズに勤務し、再生案件、1部上場企業の粉飾決算事件等を担当。2010年弁護士登録を経て、2014年6月独立して青山東京法律事務所を開設。現在は、弁護士業の傍ら、社会人大学院である名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論を学生に講義し、数社の社外取締役、監査役を務めている。

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