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M&A後、従業員(社員)はどうなる?トラブルを避けるポイント

2019/10/08

はじめに

M&Aを進める上で留意すべきポイントのひとつが従業員(社員)に関するトラブルです。M&Aへの拒否反応をはじめ、買収先の従業員との軋轢、M&A後に大量退職者を発生させてしまう恐れ、そして最悪の場合には従業員がM&A自体を妨害しようとする事態に至ってしまうこともあります。こうしたM&Aにまつわる従業員とのトラブルを避けるポイントや“従業員のケア”について、M&Aの専門家・岸田 康雄氏に解説していただきます。


1.  M&A後も従業員やアルバイトの業務を円滑に継続させるためには

M&Aは経営者にとって大きな変革ですが、会社に在籍する従業員にとっても大きな環境変化になります。M&Aによって従業員が抱える不安を取り除き、M&A後もモチベーションを維持して円滑に働いてもらうために、“従業員のケア”は慎重に行う必要があります。

業務を円滑に継続させるために、次に挙げるような点を考慮しましょう。

M&Aの種類で変わる従業員の雇用契約

アルバイトを含む一般の従業員の処遇については、M&Aの種類によって次のように変わります。

■株式譲渡の場合

株式譲渡は、経営権を譲渡して会社ごと別の会社に売却するM&Aです。従業員の雇用契約はそのまますべて買収先の会社に引き渡されるため、雇用契約の変更はありません。就業規則など雇用条件も変わらないことが多く、処遇について特に心配する必要はありません。

ただし、買収先の会社が従業員の雇用契約を変更する際には、労働法など関係法令に則った手続きが必要となります。

■事業譲渡の場合

事業譲渡は、会社の事業の一部や資産の一部または全部を引き抜いて譲渡するM&Aです。什器や備品であればお金に換算して買収先の会社の所有に変更できますが、従業員との雇用契約についてはお金に換算することはできません。

そのため、従業員との雇用契約はいったん解消し、退職してもらいます。そして、買収先の会社と従業員の間で新たな雇用契約を結び直す必要があります。雇用契約が新しくなるため、従業員は給与や勤務条件について、新会社の規定について合意を経て勤務することとなります。

基本的には給与水準や勤務条件などが変わらないように契約をするケースが多く見られますが、新会社の給与体系によっては、これまでの雇用条件が適用できない場合も考えられます。そのため、M&Aの条件交渉の際には、「従業員の処遇は変えないこと」などと契約書に盛り込んでおき、できるだけ雇用契約のトラブルを防ぐのがポイントです。

モチベーションや勤務環境への配慮

M&Aの種類が株式譲渡か事業譲渡かどうかにかかわらず、目に見えない従業員の「心のケア」も大切なポイントです。勤務環境や雇用上の無用なトラブルやリスクを回避してM&Aを成功させるために、次のような点について事前に対策を考えておくと良いでしょう。

■従業員のモチベーションの維持

例えば、「今の社長がいるから仕事を一生懸命頑張っている」という従業員にとっては、M&Aによりオーナーや社長が変わることで、モチベーションが低下したり、退職を考えたりすることもあります。このようなモチベーションの低下をどのように防ぐのかも大切です。

M&A後も働き続けるかどうかは従業員の選択に委ねられますが、売手・買手企業の双方が従業員に対して、M&Aに至った経緯や目的、M&A後も雇用が継続されることなど、従前通り安心して働けることを誠意を持って伝えることで、従業員の不安を取り除くことも可能になります。

■売手・買手企業の従業員同士の人間関係

異なる2つの会社間で買収・合併などが実施された場合、従業員の人間関係にも気を配ることが大切です。

買収した側の従業員と、買収された側の従業員は、新しい職場環境で互いに接することになります。もともと異なる企業文化にいた従業員同士が働くことになると、事務処理ひとつとっても「これまでのうちのやり方とは違う」と感じるシーンが自然と発生するものです。

何の対策も打たずにこれを放置しておくと、「なぜうちのやり方に従わないんだ」、「自分たちの考え方のほうが優れている」といった根拠のない主張が横行するなどし、残念ながら従業員同士の不仲が生じることも考えられます。従業員同士が円滑に業務を遂行できるよう業務ルールを改めて周知するなど、あらかじめ対策を準備しておくと良いでしょう。

給与水準の違いが従業員の意識に優劣を生じさせることも

M&Aで見られるケースとして、従業員同士で立場の優劣をめぐるトラブルが発生する恐れがあります。

例えば、買収した側の会社のほうが、給与水準が高く、ビジネス展開にも勢いがある。一方、買収された側の会社は、ビジネスに勢いがなく、給与水準も低下傾向にある場合です。

買収した側の会社の従業員が、自らを「立場が強い存在である」と意識して、買収された側の会社の従業員に対して、嫌な仕事を押し付けたり、無理なノルマを課したりといった“嫌がらせ”を行ってしまうこともあります。買収された側は立場が弱いと感じて、委縮してしまうことも考えられるでしょう。

無用な優劣意識を生じさせないためには、パワハラ防止関連法や労働法など関連法令を遵守し、多様性があり安心して働くことができる職場環境づくりについての啓蒙や対策が大切です。

以上のように、M&Aを行うことで、売手・買手双方の従業員が何らかのトラブルの原因となったり、トラブルを抱えた職場で働くことに不安を感じて、結果として大量退職者を招くケースが考えられます。

これを防ぐためには、M&Aにより従業員が不安や不利益と感じるリスク要因について事前に分析し、しっかりと対策を講じておきましょう。

岸田康雄インタビューシーン1


2.M&A後の役員人事における変化

次に、M&A後の役員への対応で留意すべきポイントを見ていきます。

M&A後の役員人事における変化には、どのようなものがあるでしょうか?

中小企業の場合、引退する社長の家族が役員であることが多いため、役員も含めた経営陣が全員、退任して、M&A後の経営には関わらないケースがほとんどと考えられます。しかし、家族以外に役員がいる場合には、役員の処遇を決めてM&A後の役員人事を想定しておく必要があります。

役員には雇用契約がないため、M&A後に株主総会を開いて新役員の選任の手続きを行います。家族以外の現役員が継続して役員に留まりたい希望を持っている場合は、事前に報酬や役職などを含めた条件交渉を行うなど、円滑な移行ができるよう準備しておくことがポイントです。

また、M&Aに伴う役員への対応については、該当の役員が会社経営にとってキーパーソンか、そうでないかを考慮すると良いでしょう。

■キーパーソンとなる役員への対応

会社経営にとって欠かせないと判断されるキーパーソンの場合、M&Aがきっかけで退任されてしまっては事業運営に支障をきたすことは明白です。そのため、M&Aへの理解を促して手厚くケアをする必要があります。

できるだけ早いタイミングで情報を開示し、M&A後も継続して役員として活躍できるような条件提示や気持ちの整理ができる時間を確保するべきでしょう。一般の従業員と同じタイミングや直前に話したのでは、不信感が芽生えて、最悪M&A自体がつぶれてしまう恐れもあります。

事前に話を通しておき、場合によってはM&A後の事業運営について意見交換したり、当該の役員の処遇についても希望を聞いて話し合っておきましょう。

■キーパーソンでない役員への対応

勤続年数が長いがゆえに役員になっている方など、キーパーソンではないと判断される役員の場合、M&Aによって人員整理の対象となることがあります。この場合は、該当の役員の性格や立場など相手を見極め、どのタイミングで打診をするのか、また新しい条件や役職を用意するのかなど、人員整理を踏まえた対応を考える必要があります。

対応策の準備不足やコミュニケーション不足から、最悪の場合にはM&Aによって自身が解任されることを恐れてM&Aを妨害するような事態を招くこともあるため、十分に配慮する必要があります。

岸田康雄インタビューシーン2


3.M&Aに伴う“従業員トラブル”への対応例

M&Aを行う際には、従業員との雇用契約の変更や、勤務環境の変化に起因するトラブルが発生する恐れがあります。よくあるケースとして想定される“従業員トラブル”のひとつで、オーナーにとっても従業員にとっても回避したいのが「従業員が会社を辞めてしまう」というトラブルです。

M&Aを発表した瞬間に、従業員が拒否反応を示し、転職をしてしまうことがあります。また、最初は「問題ない」と経営者やオーナーが思っていた従業員が、M&A後に「どうも新しい会社になじめない」「前の社長のほうが良かった」と言い出して転職してしまうこともあります。

こうした従業員の退職トラブルを防ぐためには、M&Aを行うことを告知するタイミングで、M&Aや新会社に対する不安を払しょくすることが大切です。

ここで、ある大企業が小企業を買収した際の事例をご紹介しましょう。

買収された側の従業員たちは「M&Aにより、自分たちは大企業の従業員になる」という事実を突き付けられ、戸惑いを隠せませんでした。「これまでぬるま湯に浸かってきたような自分たちには、大企業の従業員として働くのは無理ではないか」と大きな不安を抱いたのです。

しかし、買収した側の従業員が彼らのもとを訪れて、こう伝えたのです。「M&A後も、わが社のルールをあなた方に押し付けることはしません。処遇や勤務時間なども、これまで通りとし、変更しません」。

このように、買収した側の従業員がわざわざ自分たちのもとを訪れ、処遇や勤務条件が変わらないということを明確に伝えたことで、買収された側の従業員の不安は解消され、無事にM&Aは成功しました。

では、買収した側の会社は、なぜこのようなことをしたのでしょうか?それは過去に行ったM&Aによって生じた“従業員トラブル”を教訓とし、事前に対応策を考えていたからです。

買収した側の会社は過去のM&Aにおいて、買収した会社の従業員に対して自社の厳しいルールを押し付け、その結果、従業員が次々と辞めてしまったという苦い経験がありました。その経験を生かし、事前に買収先の会社への適切な対応策を考えておき、それを実施することで従業員の不安を解消したのです。


4.M&Aを行うことを自社の従業員に告げる際の注意点

最後に、M&Aを行うことを従業員に開示する際のポイントについて見てみましょう。

■中間管理職へのM&A開示のタイミング

一般の従業員への開示タイミングは、M&A実施直前でも問題が発生することはないと考えられます。しかし、課長職や係長職など中間管理職への開示に関しては慎重になるべきです。

中間管理職の場合、一般の従業員と同じタイミングで開示することでプライドを傷つけてしまうことがあります。M&Aの円滑な実施に影響を与えない範囲で、開示タイミングを一般の従業員よりも早めにするように配慮すると良いでしょう。

■インサイダー取引規制に抵触しないよう留意

買収側が上場企業の場合、M&Aが株価へ影響を及ぼす可能性があります。役員や従業員への開示タイミングが早過ぎたり、不用意に情報を漏らしたりしてしまうと、役員や従業員、その周囲の関係者がインサイダー取引を行って、株価への影響を与えてしまう恐れもあります。

インサイダー取引規制は「金融商品取引法」で定められており、インサイダー取引を行うことは株式の不公正取引として禁止されています。M&Aについて早めに情報開示をする場合には、開示する相手に対して「インサイダー取引を行う、または誘引しないように」としっかり説明し、法令遵守を徹底しましょう。

 


話者紹介

岸田康雄プロフィール写真
事業承継コンサルティング株式会社
公認会計士
岸田 康雄

一橋大学大学院修了後、監査法人にて会計監査および財務デューディリジェンス業務に従事。その後、金融機関に在籍し、中小企業オーナーの相続対策から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継と組織再編のアドバイスを行う。

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