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システム会社の現状とM&Aのポイントと事例を解説

2020/09/15
更新日:2020/09/16

はじめに

近年、さまざまな業種の会社で急速にIT化が進んでおり、システム会社が担っているシステム開発の需要は増加傾向にあります。IoTやクラウド化の加速により、おそらくこの流れは続いていくでしょう。システム会社は、M&Aによる高いシナジー効果を期待できる業種の一つであり、M&Aが盛んに行われています。

システム会社の現状とM&Aをする場合のポイント、さらにはM&Aの具体的な事例について、M&Aの専門家である、かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社の岡村新太さんに解説していただきました。


1.システム会社とはどんなものなのか?

デスクの上のノートパソコン
そもそも、システム会社といっても、どの分野なのか、開発のどの工程を専門的に行っているのかによって、業界内での立ち位置も呼ばれ方も異なります。今回は、特に企業からの依頼を受けて情報システムを開発するシステム会社に関する説明をいたします。
まず、業界の規模を見ていきます。システム会社は、所謂IT業界に属するのですが、業界は右肩上がりで成長しています。経済産業省の行う「特定産業実態調査」によれば、IT事業に係る売上高は2018年において約24兆円と巨大な市場となっています。リーマンショック後の2010年の統計を除き、基本的に右肩上がりで成長というのが、この業界のトレンドです。これが今、IoTやITサービスのクラウド化、EC市場の拡大に伴い、求められるスキルなども変化してきている状況です。
次に、業界の分類を見ていきましょう。システム開発と一言で言っても、システムの企画、要件定義等の設計、実際にプログラムを組む開発、運用受託、保守などの様々な工程があります。その全てを統轄している会社もあれば、一部の役割を請け負っている会社もあり、 様々な形態があります。システム会社に関わる仕事を分類すると、次の4つになると思います。それぞれ説明していきましょう。

(1)システム開発のすべてに関わるSIer(エスアイヤー)

システムの企画段階から提案、要件定義、設計、開発、運用管理まで全てに関わっている会社のことをSIer(エスアイヤー)と呼びます。SIとはシステムインテグレーション(System Integration)のことで、システムすべての工程を指し、「~をする人」という意味の接尾辞「-er」を付けて、SIerという言葉が生まれました。代表的な大手SIerとして、NTTデータ、富士通、NEC、日立製作所などがあげられ、大規模なシステム開発において、元請として機能します。

(2)外資系や大手傘下も多いITコンサルティング会社

システムの要件定義、設計、開発の導入プロジェクトの管理などを行うのがITコンサルティング会社です。外資系のアクセンチュア、大企業傘下の会社では野村総研などがあります。

(3)中小企業が多いシステム開発受託会社

SIerやITコンサルティング会社で作られたシステムの設計に基づいて、開発やテストを請け負うのがシステム開発受託会社です。その多くが中堅、中小企業となっており、今回メインでお話する分類の事業者様です。システムの受託開発を専門に受ける会社もいれば、SESといって、エンジニアを派遣する事業に特化している会社もあります。

(4)保守管理や運用管理会社

システムの保守管理や運用管理を請け負う会社もあります。この分類の事業者は、BPO業務等も受託することがあります。

2.IT、システム会社の業界全体の問題点

ノートパソコンをタッチタイピングする手
年々、市場規模が拡大しているIT、システム業界ですが、問題点もいくつか顕在化しています。くわしく見ていきましょう。

(1)慢性的な人手不足

業界そのものが、右肩上がりに成長してきたこともあって、常に人材不足であると言えます。また、パソコン・スマートフォンの普及、SaaS、IoT等のクラウド化やAI技術の発展により、IT化の動きは加速しています。これまでは、システム開発といえば、業務系、勘定系などの大企業が使うシステムをオーダーメイドで開発するというケースが多かったのですが、上記のようにクラウドサービスの登場により、案件の小型化が起きており、クラウドサービスを提供するための開発人材の奪い合いが起きていくことは間違いないでしょう。勿論、業務システムの改修のニーズは常にあるわけですし、また、web系のサービスについてもニーズが高まっていくことからも、人材不足は暫く続くと考えています。

(2)下請けの多層構造化と高コスト化

システム会社の業界の問題点として、下請けの多層構造化があげられます。急激なニーズの増加に対応するために、自社で処理しきれない案件を下請けに委託するやり方が一般化してきたのです。下請け業者がさらに孫請け業者に委託するという「ゼネコン」にも通じる多層構造化が進行し、クライアントから最終的な業務をしている会社まで、5~6社をはさむというケースも出てきました。

中間に入ってくる会社もそれぞれ利益を確保するので、必然的にクライアントが支払うコストも高くなります。その一方で末端の下請け会社のエンジニアの労働環境はハードになり、こうした現状は業界全体が抱える構造的な問題点となっているのです。但し、先程申し上げた通り、クラウドサービスの台頭に伴い、大型の開発案件が少なくなるでしょうから、ここの問題は段々薄くなっていくものと考えています。

3.システム会社のM&Aの動向

システム会社のM&Aは、かなり活発に行われていると言えるでしょう。その要因、特徴について解説していきます。

(1)大手が自社にないサービスを得るためにM&Aを行う

今後、大きなシステムの開発、大規模なプロジェクトは減っていくとの予測が立てられており、生き残りをかけて、自社にないサービスを保有するシステム会社のM&Aが増えていくと思います。
また、システム会社の中には、ほとんどの業務がSESである会社もあったりしますので、人材確保を目的にしたM&Aもあるでしょう。

(2)異業種からのM&Aが増加する

異業種がシステム会社にM&Aを行うケースも増えています。自社の外注先を吸収するという意味合いや、中には、自社の保有するビッグデータを活用するために、人材確保を目的にM&Aを行うケースもあり得るでしょう。

(3)周辺領域への進出を目的としたM&Aが増加する

従来の大型のシステム開発案件が減っていく中で、周辺領域であるwebサービスやwebマーケティングに関する事業に対するM&A事案が増えてくるでしょう。ニーズの高いwebサービスや、クラウドサービスの開発が増えていくと考えられますので、この手の話が、業界を賑わすかもしれません。ITコンサルティング会社が、webマーケティングの会社を傘下に置くということが、増えていくのかもしれません。

4.システム会社のM&Aのメリットとデメリット

上を指す親指と下を指す親指

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システム会社のM&Aのメリットとデメリットを買手と売手、それぞれの立場から見ていきましょう。

(1)買手にとってのメリット

①人手不足を解消できる

業界全体でエンジニアが不足している状況であり、募集しても簡単には不足分が埋まらないのが現状です。M&Aによってシステム会社を買収することで、エンジニアをまとめて確保することが可能になるため、人手不足の解消が期待できます。

②サービスを強化できる

システムにも基幹システム、会計システム、人事システム、顧客管理システム、webサービスなど、さまざまな種類があります。当然、会社によって、得意なシステムとそうでないシステムがあるでしょう。また、開発、運用、管理、保守など、工程によっても、会社ごとに強みは違います。苦手分野の解消という点でもM&Aは有効な手段となり得るのです。

(2)買手にとってのデメリット

①社風が合わずにエンジニアがやめるケースもある

エンジニアを確保するためにM&Aを行ったものの、新たな会社の社風が合わず、ほとんどのエンジニアがやめてしまったという話を聞いたことがあります。常に需要があり、専門性が高いことから、エンジニアが再就職先を見つけるのは比較的容易です。納得して働ける環境を提供することが大切になってきます。労働環境を向上させるとともに、従業員の要望を聞くなどのサポート体制も必要です。

②期待していたシナジー効果が得られない

思った程のシナジーがなかった、というのはこの業種に限らず全てのM&Aで起き得る話です。そういうことが無いよう、M&Aを決定する前には充分に話をして、お互い納得してから取り組みましょう。

(3)売手にとってのメリット

①売却益を手にすることができる

システム会社業界に限らず、すべての業界に当てはまることですが、売手の最大のメリットは売却益を手にすることができるという点です。廃業と違って、M&Aの場合は保有するすべての資産が資産価値のひとつとしてカウントされます。更に、買手が必要とする人材、技術、ノウハウなどを持っている場合であれば、高額でのM&Aの実現も期待できるでしょう。

②買手会社の傘下に入ることで安心感がある

システム会社のM&Aの特徴のひとつとなっているのは、売手が売却後も会社の運営に関わるケースが多いということです。大きな会社の傘下に入ることによって、より効率的な運営が可能になります。また、銀行との取り引きでの連帯保証を外すこともできるでしょうから、安心感も増すでしょう。比較的、若い経営者のM&Aが多いことが、理由の一つかもしれません。

(4)売手にとってのデメリット

①社風が合わず融合がうまくいかない場合もある

会社によって、独自の文化ややり方があるため、M&A後のPMIがうまくいかない場合もあります。最悪の場合は、従業員が反発して一斉に退職するといったケースも考えられるでしょう。取引先との関係が悪化することもあり得ます。

5.システム会社のM&Aで注意すべき3つのポイント

パソコンをタッチタイピングする手と数字の合成写真
ここでは売手の会社がM&Aを考える場合に、注意すべきポイントについて説明していきます。

(1)自社の社員の資格とスキルを把握

システム会社にとっての最大の資産は人です。システム開発に関する資格は多岐に渡っており、レベルもさまざまです。ITストラテジスト、システムアーキテクト、プロジェクトマネージャー、ネットワークスペシャリスト、データベーススペシャリスト、エンデッドシステムスペシャリスト、ITサービスマネージャー、システム監査技術者等の、高度情報処理技術者と呼ばれる資格者を何人抱えているのか、スキルはどのようなものなのか、しっかり把握しておくことは、会社の価値を適正に判断する上でも重要なポイントになります。
当然、従業員の皆様の使用できるプログラミング言語、経験年数も重要なポイントですし、SESで派遣しているようでしたら、派遣先での立場等は気になるところです。

(2)実績も勿論評価対象

今までの取引先・実績も、M&Aを検討する上で大事な評価ポイントです。どのようなサービスを提供してきたのか、できるのかは勿論、保守管理や運用管理を請け負っている会社であれば、保守契約の期間は評価のポイントとなります。SES事業が大きな収益源であるのであれば、派遣元との契約期間は勿論、どのような立場でプロジェクトにアサインされているのか等、今までの実績や取引先は都度、棚卸して可視化できるようにしましょう。

(3)労務管理は大きなポイント

労務管理が健全かどうかは、全てのM&Aにおいて大きなポイントとなりますが、システム会社のM&Aであれば入念にチェックされると思います。ポイントは、未払いの残業代はないか、従業員とのトラブルはないかといったことで日頃から健全な労務管理を心がけましょう。

6.M&Aの成功事例

ふたりのビジネスマンの握手
では、具体的な成功例をあげていきましょう。

(1)投資ファンドに売却したケース

A社は業歴こそ順調だったのですが、社長一人だけで経営していることに限界を感じて、投資ファンドに会社を売却したケースです。その経営者は売却後もしばらく、会社に関わっていたのですが、ファンドから経営者人材の紹介等、経営面での支援をしてもらったことによって、運営面での選択肢も増え会社の業績も良くなっていったケースです。

(2)異業種とのマッチングがうまくいったケース

自社のシステム開発のために、システム会社のM&Aを行った例があります。買手は、自社で保有するデータを活用して、IT商材を作りたいという野望がありました。しかし、人材を採用するのは簡単ではなく、計画は頓挫してしまいました。近隣エリアでM&Aの候補にあがったB社にM&Aを行い、上手く自社に取り込んだケースです。

(3)取引先に売却したケース

C社は、新規事業でwebサービスを展開していましたが、自社の販路では中々拡大できず、苦戦していました。別事業で取引のあった会社が、ちょうど同じようなサービスを展開していきたいと考えていたこともあり、サービスごとM&Aを行ったケースです。このケースは、買手が既に持つ自社商品へのシナジーを期待しての決断でした。自社では赤字事業でも、他所がやれば大きな利益が期待できる、ということはM&Aにおいては、良くある話でしょう。

(4)後継者がいないため売却したケース

D社は、社長が高齢になられていたものの、後継者がおらず次への方針が上手く打ち出せずにいました。従業員も真面目で、取引先も大手が多いことから、関西で順調に成長していた同業社へM&Aを行ったケースがあります。買手に取っては、業務の拡大を進めていたこともあり、前向きに検討され、D社にとっても、安心して事業を引き継いでもらえる相手と考え、M&Aが実現しました。高齢の社長は、2年間という条件で顧問として会社運営に関わっており、ゆるやかなリタイアが実現しました。

7.まとめ

ビジネスマンの上半身と右肩上がりのグラフの合成写真
いかがでしたでしょうか?今までのように、大型なシステム開発は減少傾向になるため、今後の10年間は、中堅・中小企業の社長様にとって会社運営の方向性をどうするのか、見極めが重要な時になってくるでしょう。これまでは、システム会社の中小企業の場合、SESで派遣、完成したシステムの管理や保守を請け負って、指示どおりに働く、またはソフトウェアを指示された期間内に納入するといったやり方で成立してきました。しかし今後は、世の中の変化に伴い、そういった商流そのものが通用しなくなる可能性があります。業界の収益の構造は変わりつつあるため、将来を見越した経営方針の転換が求められる可能性が大きいのです。
そのため、場合によってはM&Aも視野に入れて戦略を練る必要があります。すでにM&Aを選択肢のひとつとしているならば、まずは税理士などつきあいのある人に相談するのもいいでしょう。ただし本格的にM&Aを考えるのであれば、M&A専門の会社、それも経験があって成約実績の多いところに相談することをおすすめします。
M&Aを進めていく上では、アドバイザーとの相性も重要です。会計上の数字だけでなく、システム会社のビジネスの内容を理解して、会社の価値をしっかり判断できる会社を選ぶのが良いでしょう。

話者紹介

岡村新太さん
かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社
マネージャー マーケティング担当
岡村 新太(おかむら あらた)

株式会社福岡銀行を経て、かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社に入社。
現在はおもにM&Aアドバイザリー、事業再生コンサルティング、財務分析業務を担当。
兼務するかえで税理士法人では、国内・外資系企業の税務業務に従事。
前職においては、有力地場中堅企業への事業性融資の担当、並びに事業承継を起点にオーナー一族の相続・節税対策、資産運用コンサルティングといったファミリービジネスに注力。早稲田大学人間科学部卒。

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