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薬価改定が調剤薬局に与える影響とは?長いピークを迎える薬局のM&A事情

2020/04/20
更新日:2020/04/20

はじめに

2019年10月の消費税増税との関連で行われた厚生労働省による薬価改定は、調剤薬局にとっては二重の打撃になっているのをご存知でしょうか。また、調剤薬局には医療機関と隣接し、連携していかなければならない特殊な事情もあります。

そんな調剤薬局の業界では、2005年あたりから大規模の調剤薬局による小規模の調剤薬局の買収合併のM&Aが、熱く静かに進んできているようです。そこで今回は調剤薬局業界のM&A事情に詳しい名南M&A株式会社の矢野さんにお話を伺いました。


1.調剤薬局の調剤報酬について

医薬品

調剤薬局の調剤報酬に関しては、基本的に厚生労働省が保険の点数を決めています。この点数には、実際の薬の点数だけではなく、調剤薬局の薬剤師が薬を調剤することによる技術点なども含まれます。その点数に基づく価格を、利用者である患者が支払うという形になっています。

また、調剤薬局自体が病院や医院などの医療機関の近くで運営されており、薬の調剤・受け取りも含めて、医療機関と近い場所で行われ、患者が一度に訪れることができます。これが基本的な事業体です。

(1)2019年の薬価改定

厚生労働省は2019年10月に消費税率が10%に引き上げられることに伴い、薬価基準を全面改定しました。薬価基準の収載医薬品と呼ばれるものが1万6,510品目を数えますが、改定前の薬価より引き上げられたのは6,121品目と一部にとどまっています。

それらを除く1万389品目については、改定前の薬価より引き下げられました。薬剤の価格をキープした品目もごく少数はあるようです。

薬価改定率に関しては具体的に以下の通りです。
● 実勢価格改定などは医療費ベースで0.93%(マイナス4.35%)引き下げ
● 医療費ベースで0.51%(マイナス2.40%)引き下げ
● 消費税対応分として医療費ベースで0.42%(薬剤費ベースでプラス1.95%)引き下げ

(2)調剤薬局の薬価改定の影響

調剤薬局にとって、厚生労働省による薬価改定の影響はどういうものでしょうか。薬価によって市場の規模も含めて変わっていくので、業界の再編が起こりやすいといえます。

現状はかなり保険の点数が下がっています。それに従って調剤薬局の業界も今後の経営課題というものが大きくなってきていることから、大規模な調剤薬局による買収合併などのM&A、ならびに事業承継などの動きも益々増えてくるでしょう。

今回の薬価改定の影響で、収入が減ることになる調剤薬局は相当多いと思われます。薬価改定以外にも仕入れの支払いに関して消費税がかかります。一方で薬剤を患者に渡すことで得られる売上に関しては、消費税はかかりません。

要するに消費税が増税されれば、シンプルに調剤薬局の利益が減っていくという構図になっています。それが調剤薬局の特徴であり今後の課題であるということです。

2.薬価改定の影響

薬局

2019年の10月からの消費税増税と薬価改定で、同じことをやって同じ売上を確保しても利益は自動的に減少するという厳しい環境に置かれているのが調剤薬局の状況です。詳しく見ていきましょう。

(1)薬価改定がもたらす深刻さ

薬価改定と消費税増税による厳しい経営環境のもと、小規模の調剤薬局では収益性が悪い事業を強いられており、薬局経営の困難さが深刻さを増しています。その中で患者にとって必要性の高い薬品は切らさず、優先しなければなりません。その結果、限られた資金繰りでたくさんの種類の在庫を抱えるわけにはいかないのです。

また、厚生労働省による無駄なものを省いていこうとする取り組みの中では、点数が下がっていくものもあります。大きな目立った変化の一例としては、昔は貼り薬の湿布薬にも保険が適用されていましたが、現在は適用されません。
そんな環境の中、小規模の調剤薬局は大手に吸収される以外に堅調な経営を目指すことが難しくなっているのが現状です。

(2)業界再編のトリガーに

薬価は今後も変化していくものですし、その変化を想定して運営できるかは難しい面があります。なぜなら、調剤薬局は隣の医療機関との連携を深めないといけないので、自分たちだけで判断をするのは事業上難しいからです。

調剤薬局が大規模化することによって対応能力を高めようということで、15年ほど前から緩やかに拡大してきたM&Aの流れが、いよいよ盛んになりつつあります。薬価改定と消費税増税は業界の再編を本格化させる一種のトリガーとなったのです。

3.薬価改定後の調剤報酬の現状

薬剤師

M&A・事業承継を検討している方へ

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今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。

調剤報酬の現状を確認してみましょう。まず前提として、従来から考えると調剤薬品の価格は、全体的には安くなっているといえます。

(1)変わりゆく調剤報酬の向かう先

最近よくいわれる「かかりつけ薬剤師」のように技術性専門性が高く、一人の患者にしっかり向き合っている薬剤師は重宝され、その評価に伴って調剤報酬の点数がしっかりと支払われているという現状があります。

ただ単に窓口で機械的に薬を出すだけで、誰がやっても同じだろうという状況の調剤薬局は、保険点数が基本点から少なくなっているようです。

このように、技術や専門性が高い部分に対しては、調剤報酬も相当に支払われ、誰でもできるような部分に対しては、ますます削られています。それが調剤報酬の現場であり、今後もその傾向は顕著になっていくでしょう。

(2)調剤報酬改定による影響と今後の見通し

特許期間が過ぎて他の業者でも製造できるようになったいわゆるジェネリック薬品においては、従来よりもはるかに価格の低いものが次々と作られてきています。

その流れを受けて、一般的な風邪薬や抗生物質なども、ジェネリック薬品が使われていくことが予想されます。つまり、高い価格や点数の薬品が無意味に高止まりのままになるということはなく、実用性や必要性が反映され、手に入れやすい価格や点数に見直しがされていくでしょう。

また、重病に対応するような革新的な新薬も開発されています。例えば、100万人に1人の難病に対して、素晴らしい効果がある薬が開発されたとします。その薬の価格や点数は高く設定されます。その薬品自体が大量に必要になるとは考えにくいので、今後も高い薬価は維持され、安くなる見通しは薄いといえます。

必要性の高い薬品に関しては、保険点数ならびに価格が維持されています。一方、厚生労働省には市販の薬剤でも足りるような薬品は、保険点数や価格を下げてでも使わない方向に持っていこうという意向が見られます。

調剤報酬の面から考えると、ジェネリック薬品が増え、実用性・汎用性の高い薬の薬価点数が下がる一方で、新薬の薬価点数は高いところを維持し続けます。よって一概に薬価全体が安くなっているかというと、そうではないかもしれません。

効能自体の的確な調査が、薬品情報のデータ化や医療システムのデジタル化に伴い効率的にできるようになってきました。そのおかげで、情報が反映され、昔よりも厚労省の薬価に対する対応が早くなっています。
調剤薬局の業界は、今後も調剤報酬改定の影響を受け続け、その都度隣接する病院や患者に合わせた経営を考えていかなければなりません。

4.大手による小規模調剤薬局のM&A

薬局

先述したように、薬価改定による調剤報酬改定が与える調剤薬局への影響は、仕方のないことです。
しかし、調剤薬局が抱える問題はそれだけではありません。

規模が小さい調剤薬局は、薬剤の仕入れがどうしても少量ずつにならざるをえません。仕入れ価格が高くなり 、人員の確保をすることも難しい状況になります。薬剤師を何人置かなければならないと決まっているので、優秀な人員の取り合いになることもあります。

このようなことから、M&Aをおこない、大手事業者で運営することで、適切な労働力の分配、人の派遣がおこなわれ、効率的な経営ができるのです。つまり、調剤薬局事業の不都合性自体が生む非効率性ゆえに、経営が悪くなり、薬価がますます下がることに対応できていないのが現状です。不都合性を改善できるM&Aにはメリットが多くあるのです。

調剤薬局は、大半が小規模な薬局が運営しています。こと数万件にのぼる薬局が単独で運営されています。大手はマツモトキヨシなどをはじめとした数社が思い浮かびますが、業界内のシェアを10%持っている企業がないという、独占どころか寡占にもなっていない状況です。

大手もスケールメメリットが取れないことによって効率が悪く、収益も上がりにくくなります。シェアを拡大すると、大手の事業者にとっても、メリットは大きいのです。

ただし、ここでネックになるのが、新しい店舗を出せばいいかとなるとそうではなく、あくまで調剤薬局は医療機関と隣接して連携をとっていかなければならないことです。

だからこそ、調剤薬局のM&Aは、人材を取り込む意義も含めて、大手が既存の小規模薬局を買うような形で盛んに行われています。今後も大手事業者による小規模薬局のM&Aは増えていくでしょう。

この業界自体、2005年辺りからM&Aがじわじわと進んできており、長いピークを迎えているような状況です。まだまだこれから、ゆっくりと時間をかけてM&Aが進んでいくことでしょう。

5.調剤薬局のM&A・事業承継におすすめのM&A仲介会社

薬剤師

調剤薬局のM&Aや事業承継はどこに相談するべきでしょうか?どこの業界でもあるように、事業者の横のつながりというものがあります。薬剤師の場合は学生時代のつながりなどもあるでしょう。そのような縁によって話が折り合い、円満に買収や合併をすることもあります。

銀行に相談するという方法も一般的ですが、調剤薬局自体はさほど銀行の借り入れを必要としないので、そもそも銀行との関係が希薄なのです。

最もおすすめできる選択肢としては、M&Aや事業承継のコンサルタントやM&A仲介会社に相談する方法です。M&A仲介会社を使えば、知り合い関係の中で探すよりもはるかに幅広い選択肢から探すことができるうえ、知り合いゆえのしがらみや忖度の必要がありません。

また、特に大手事業者から、いいところがあったら買いたいという情報が集まってくるでしょう。人材が足りなくて買収したい売却したいという大手からの相談を受けていることが多いのです。

ただし医療系に強いM&A仲介会社の数は多くありません。だからこそ、その少数のM&A仲介会社のところに上質な情報が集中している可能性があります。

6.まとめ

薬剤師

薬価改定によって揺れている調剤薬局の現状や問題点、M&A事情について解説しました。大手の調剤薬局のシェアが10%にも満たない中で、医療システムのデジタル化が薬価の適正化を後押しします。それによりを薬価改定が頻度を上げ、より効率的に薬剤の分配機能が高まるでしょう。

その中で大規模な調剤薬局がさらなる事業収益を追求するための、小規模の調剤薬局を吸収合併するM&Aは、今後益々増えていくことは間違いありません。

話者紹介

名南M&A株式会社
事業統括本部
医療支援部 部長 矢野 好臣

岐阜県出身。大学卒業後株式会社名南経営にて、M&Aアドバイザリー業務及び中国進出支援業務に従事。名南M&A株式会社設立後、医療・介護・薬局のヘルスケア産業分野に特化し事業承継、業界再編支援を手掛ける。講師として金融機関M&Aセミナーはじめ、医療介護M&Aセミナー・M&A勉強会、業界再編セミナーを多数開催。

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